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ドラクエⅤ・ドーラちゃんの外伝

作者:あさつき
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キラーパンサーに転生
  15いつか三人で

 ドーラちゃんがパパさんの前で無事に魔物を倒すことに成功してからは、パパさんも勝手に体が動くことはなくなったみたいで。
 ドーラちゃんにいろいろ教えながら戦ってるのであたしもそれを見て聞いて、勉強しながら戦ってます。
 戦いながらもドーラちゃんの様子を気を付けて見てるけど、ドーラちゃんもすっかりいつも通りです。

 もしかして、本当に気のせいだったのかもしれないけど。
 でも気のせいじゃなかったとしても、見せたくないものは演技でうまく隠しちゃうドーラちゃんが、普段からそんなの見せてるわけないんだから。
 気のせいだって流して見逃すなんてこと、あたしはしちゃいけない。


 パパさんにいろいろ教えてもらえて嬉しそうなドーラちゃんの姿にあたしも嬉しくなりながら、でも変わったことがあったら絶対に見逃さないように気を配りながら、旅を続けて。

 大きな川のほとりの、ラインハットの国への通路になってる関所に着きました。

 関所を守ってる兵士さんも感じのいい人で、パパさんとドーラちゃんはもちろん後ろに着いてるあたしのことも、なにも言わないで笑顔で通してくれて。

 ……町の子供ならわからなくても仕方ないと思うけど、この兵士さんにはあたしはどう思われてるのかな?
 旅する戦士さんほど戦う機会はないかもしれないけど、それでも戦うのもお仕事なんだから、ベビーパンサーを見たことがあってもおかしくないと思うんだけど。
 子供が連れてるわけだから、思い込みで猫だと思われてても、それも仕方ないと思うけど。

 でもこれからお城に行くんだから、たくさんいる兵士さんの中に一人くらい、あたしがベビーパンサーだって、魔物だって気が付く人がいてもおかしくないよね……。

 ……大丈夫かな?
 ゲームでは誰も気にしてなかったから、大丈夫なのかな?
 大人になった主人公くんがたくさん魔物を連れてても騒ぎにならないくらいだから、たぶん大丈夫かな?

 ちょっと不安はあったけど考えても仕方ないし、ドーラちゃんだけじゃなくてパパさんも一緒なんだからきっと大丈夫、と自分に言い聞かせながら、二人のあとに着いて地下道を通り抜けます。


 ラインハット側の川岸には、高く作られた堤防があって。
 反対の川岸にはそんなのなかったから、やっぱりラインハットって大きな国なんだ、と前世の学校で習ったことを思い出して考えながら、堤防の上に登っていくパパさんとドーラちゃんに着いていきます。

 階段を登りきってもまだ目の前を遮る壁があって、大人のパパさんはともかくまだ小さいドーラちゃんとあたしは、そのままでは壁の向こうの景色が見られなかったけど。
 ゲームだとここでパパスさんが主人公くんを肩車してあげるんだよね、とまた思い出しながら見守るあたしの前で、パパさんがドーラちゃんを肩に担ぎ上げて座らせます。

 ……さっきの戦闘中もそうだったけど、パパさんとドーラちゃんがこうやって仲良くしてるのって、絵になるなあ。
 ドーラちゃんはとっても可愛いし、パパさんもすごくカッコいいし。
 強くて逞しいお父さんと、可愛い娘さんが仲良く景色を眺めてるのって、とっても微笑ましい。

 ……ここに、キレイで優しそうなお母さんも、一緒にいたらよかったのにね。
 いつかそうできるようにするつもりで、パパさんはマーサさんを探してるのにね。
 二人のこんな姿を見るのも、これで最後になっちゃうなんて。

 ……ううん、ドーラちゃんは、諦めてないんだから。
 どうするつもりでいるのかちゃんとは聞いてないけど、きっと諦めてないんだから。
 それならあたしだって、諦めない。
 いつか三人でこんな日を迎えられるように、あたしはドーラちゃんを助けてあげるんだから。

 二人の姿を眺めながらまた決意を固めるあたしの前で、パパさんがドーラちゃんを下ろして。

 いよいよラインハットのお城に向かうんだね、と気合いを入れたところで、ドーラちゃんが。

「モモにも、みせてあげたいです!」

 言いながら、あたしを抱き上げてくれます。

 あたしはパパさんとドーラちゃんの微笑ましい様子を見られただけでかなり満足してたけど、あたしのことも忘れないでいてくれるなんて、やっぱりドーラちゃんは優しいね!
 ……でも、ドーラちゃんの身長だと、ちょっと無理があるんじゃないかな……?
 ドーラちゃん、いいよ、無理しなくて!
 もういいから、気持ちだけで十分だから、ありがとう!

 と、思っても伝えられないのでどうしようかと考えていると、今度はパパさんが。

「そうだな、お前もいたんだな。気付かなくて、悪かった」

 ドーラちゃんの手からあたしを引き取って、目の前の壁の上に乗せてくれます。

「ニャー!」

 ありがとう、パパさん!
 ドーラちゃんに無理はさせたくなかったけど、ドーラちゃんとパパさんが眺めた景色を、できればやっぱりあたしも見たかったから!
 この景色を二人が眺めてたんだって、これを今度は三人で見せてあげるんだって、よく覚えておくからね!

「ありがとうございます!よかったですね、モモ!」
「ミャー!」

 うん、よかった!
 二人が見た景色が見られて、ドーラちゃんに無理させなくて済んで、パパさんにあたしのことも気にしてもらえて!
 優しく撫でてくれたし大丈夫だとは思ってたけど、ドーラちゃんと一緒にいてもいいんだってパパさんにもちゃんと認めてもらえたみたいで、とってもよかった!

 あたしが景色を楽しんでいる間に、パパさんは近くにいたおじいさんと少しお話をしていて。
 あたしは景色に夢中でそれはまたあんまり聞いてなかったけど、お話が終わる頃にはあたしもすっかり満足して、壁の上から下ろしてもらって今度こそ出発します。

 すぐに関所を出てラインハットの国に入るのかと思ったら、なぜか地下道に一度戻ってたけど。
 ドーラちゃんもパパさんもなにも言わなかったけど、なにか忘れ物があったのかな?
 気になったけど聞けないし、聞いても仕方ないし。
 よくわからないけど、まあいっか。

 そんなことより、この先はいろいろと気にしないといけないことがあるもんね!
 あたしもドーラちゃんの邪魔をしないように、ちゃんと助けてあげられるように、頑張らなくちゃ! 
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