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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第81話 少年達は己の戦いをするようです

Side ネギ

「……ふぅ、ここまでくればもう良いかな?"解除"。」
ボゥン

街を少し離れた所で変身魔法を解いて、ダボダボになったローブと服を着替える。

着て来たローブを取り出して何気なく広げてみる。所々切り裂かれたり穴が開いてたり・・・ボロボロだなぁ。

それもそうだよね、日本に来てから一回も買い換えないで来ちゃったんだから。

でも、着慣れた感じと愛着と、思い出が詰まっているこれを、最後まで着ていたい。


「うん、やっぱりこっちの方がしっくり来る。」

「なんだよ先生。そのローブ買い換えねーのか?ボロボロじゃねーか。」


声に振り返ると段差の上に、元の姿に戻った千雨さんがいた。つけられてる気配はなかったんだけどなぁ。

アーティファクトの力・・・って訳でもないだろう。


「ち、千雨さん!何でここに……?」

「別に……てめぇは誰かが見ててやらないとダメだって結論に達したんでな。

昨日も言っちまったしな、神楽坂の代わりだって。」

「そ、そんなの気にしなくても……。」

「うるせぇ、私だって不本意だ。今は他に誰もお目付け役がいないからな、仕方なくだ。

それにずっとあのロリ体型でいるのは窮屈だかんな、息抜きだよ。」


口答えすんな、と先を歩き出す千雨さん。・・・まぁ、僕も一人よりは誰かに居てもらった方が安心と言うか

無謀な事もちょっとは控えられる・・・と思うし。でも、今は一つだけ言いたい事がある。


「千雨さん…………。」

「なんだよ、口答えすんなっていったr「……ツンデレですか?」 死 ね !」
ボカッ!

・・・・・・殴られた。やっぱり、余計な事は言わない方がいい。

………
……


「ラカンさーん、来ましたよー?」

「おっさーん、どこだー?」


あの時ラカンさんが言い捨てて行った遺跡を見つけ、少し歩きつつ声をかける。

けれど、全く反応が無いのは何でだろう?魔力の気配はするんだけれど・・・。


「オイ、本当にそのおっさん信用出来んだろうな?」

「ハイ、多分……。父さん達の仲間だって言うのは間違いないですし。」

「そこも心配なんだけどな……、アレだろ?空港でクウネル…アルビレオだったか?達と合流する筈

だったんだろ?それスッポかした適当な奴だってのがな……。」


・・・た、確かに、愁磨さんとアルさんの仲間って言う事は、少なからず適当で、少なからず変態だ。

うぅん、心配になってきたな・・・・。と、小さい砂浜のような開けた場所に、目的の人物を見つけた。

独特の呼吸法が聞こえてくるし、修行中だったのかもしれない。今も凄く集中してて、気が爆発しそうな―――

カッ!
「覇王!!」

「「うわっ!?」」

「炎…熱…轟竜・咆哮・爆裂閃光魔人斬空羅漢拳!!!」
ボキュッ!  ドッパァァァーーーーーン!!

・・・・・・・・変な踊り?から繰り出された正拳は凝縮された気を以て、水を蒸発させた。

な、何をやっているんだろう?技の練習?にしては隙がありすぎると言うか無駄しかないと言うか・・・。


「ダメだ……ッ、技名が長すぎる!語呂も悪いし……煮詰まって来やがった。やはりここはシンプルに?

基本に立ち返ってアイツの名前を入れて……うぅーん、『葱拳』!!ぐぅっ!ダメだやっぱり語呂が悪い!?

決めポーズ取ってる暇もねぇし………!!ダメだダメだこんなネーミングじゃぁ!!

とても俺印の必殺技は名乗れねぇぜッ!!」


黒板に何か漢字を書いては踊り→正拳の流れを繰り返すラカンさん。

必殺技・・・?『葱拳』・・・?まさか、僕に習得させる為の必殺技を考案中?

そ、そんなカッコ悪い名前の必殺叫びたくないぃぃーーー!!


「くそ、もう締め切りだどうするッ!?だがッ!燃えて来たぜッ!ハッ、漢字に頼り過ぎたのがマズイのか!

ぬぅぅぅ単なる右ストレートってのも素っ気ねぇし味気ねぇ。もっと斬新な………目からビーム?

いや、それだとちまっこいし決めポーズが取れねぇ……となればどこから出す?手……体……足……?

ハッ!!全身から出す!?それだッ!『エターナル―――』」


何か吹っ切れたような晴れ晴れとした顔で、堂々と構えるラカンさん。

そしてズバズバビシッ!とポーズを取り―――


「『ネギッ……!フィーバァー!!』」
P o w ! !
カッ ―― キュッゴォォォンン!

全身から放たれた気の超絶破壊エネルギーは、500m以上は離れている岩山に当たり、それを消し去った。

す、凄い・・・!しょうもない技だと思ったけど、威力も速度も完璧だ!

あの技は正直嫌だけど、この人なら僕の欲しい物をくれそうな気がする。


「ラカンさん、お待たせしました!」

「おお、来たかボーズ!ハッハッハ、正体はホントガキだな!お利口そうなナギって感じだな!

まぁんなこたァいい、丁度良いところに来たぜ!お前用の必殺技が完成した所だ!!

今なら特別に三割……いや、四割引で習得までコーチしてやるぜ!?」

「いえ、その技はいいです。多分ラカンさんにしか使えませんし……。」

「そうか?金ないのか?別にローンでもいいんだぞ?」


確かにお金ないのは確かなんだけど、その技は嫌だとも言えないし・・・。

僕が手に入れるべきは僕専用の必殺技だと思ったのは確かだけど、今はそれより。


「僕に……戦い方を教えてください!許されている時間は殆どないですが、強くなりたいんです!」

「フッ…………いいぜ。けど、俺の修業はキツイかもだぜ。」

「覚悟の上です!既にそれなりの修業はしてきたつもりです。」

「ハッハ!素直だなオイ。奴とは正反対だな、タカミチの言った通りだぜ!よーし、じゃあ早速行くか!

遅くても二週間であの影使いに勝てる様にしてやるぜ!」


それは―――凄い進歩なんだろうけれど、僕にはそれじゃあ足りないんだ。

カゲタロウも強かったけれど、あいつは・・・あいつらは、それよりも遥かに強い。多分―――


「それもいいんですけど……ラカンさんより強くなれますか?」

「ブッ……!!ワッハッハッハッハ!!すげぇ欲張りだ、気に入ったぜぼーず!!

そりゃいい!俺と同じくらいは強くなれるかもなぁ!そっから先はお前次第だな。

さぁて、するにあたり―――」


ドンッ!と何処からともなくスクリーンが出て来て、映像が流れ出す。


「まずはこの世界にあった事と、自己紹介をしないとな!」

「は、はぁ……。」

『コホン。解説しよう!二十年前、ここ"魔法世界"は未曽有の危機に瀕していた!些細な誤解と諍いから

始まった争いが、世界を南北に二分する大戦へと発展してしまったのだ!!

そんな中!無辜の民を救うべく颯爽と現れた男達がいた!名を"紅き翼(アラルブラ)"!そのリーダーは―――

言わずと知れた"千の呪文の男(サウザンドマスター)"ナギ・スプリングフィールド!当時14歳ながら、千の呪文を

操ったと言う最強の魔法使い!』

「しかしその実態は、使える魔法は数種類!しかもアンチョコ読まねぇと呪文も唱えられねぇと来た!!」

「えぇえっ!?それはどういう―――」


思わぬ補足説明に声を上げるけど、その間にも映像が流れていくので仕方なく黙る。

サムライマスターと呼ばれた詠春さんと、元政府の犬であったと言うガトウ・カグラ・ヴァンデンヴァーグ、

その弟子であったタカミチ、それと端折られたアルさんとゼクトさん。


「そして"千の刃の男"!伝説の傭兵剣士、自由を掴んだ最強の奴隷剣闘士!!サウザンドマスターの|好敵手《ライ

バル》!

勝敗は498対499!それがこの俺!ジャック・ラカンだっ!!」

「おぉ~…!!」
パチパチパチ
「………はぁ。」

「何だー、嬢ちゃんは興味なさそうだな?」

「まぁ……私とは直接関係ない世界の話ですんで。と言うかトンデモバトル勢に巻き込まないでくれ。

私は情報収集とかその他の事務仕事がしてぇんだ。」


ここまで来てから今更だけどな、と顔に書いてあるんですが・・・まぁ、追求しないでおこう。

また殴られたくないし。そ、それよりも僕は興味あるし、聞きたい事が山ほどあるんだけど!


「はーいはーい!僕は興味あr「あ、詳しい話を聞きてぇんなら十分で100万貰うぜ。」えぇぇぇえええ!!

そ、そんな!アルさんもゼクトさんも教えてくれなかったんですよ!」

「まぁまぁいいじゃんか先生、時間だけはあるんだしよ。それよりあんた、私達が来た日に合流する予定だった

んだろ?それが何でこんな田舎に居る上に酒飲んでたんだよ?」

「あー、それなぁ……実は………すっぽかした。」

「「そんな事だろうとは思ってましたけどねぇ!!」」

「仲良いなお前ら。いやホラ、メガロメセンブリアとか遠いしだりーし名前もなげーじゃん。

タカミチ以外が揃うってーから行かなきゃなーとは思ったんだが十年も隠居してると人里に出んのが億劫でよ!

と思ってたらお前らの方から近くに来やがった!いやぁ人間万事塞翁が馬!果報は寝て待てってよく言った

もんだなぁ!!」


こ、この人最低だ!今までも適当な人は居たけれど、大切な約束を面倒の一言で片付けた人は居なかったよ!!

・・・と言うかこの場合、寝て待つより練って待ってて欲しかったんですけどね!


「よぉっし、修業を始める……が、試験も兼ねてお前の力を見せて貰う!全力で俺に攻撃して来い!」

「ハ、ハイ!で、でも………。」

「いいから撃って来い!情けねぇパンチなら修業はなしだぞ!!」

「ハ……ハイ!『戦いの歌(カントゥス・ベラークス)』、『修羅の息吹(アルゴドーズ・セプトゥス)』!同纏・混装!『|戦闘

の為の協奏曲《バルトフェルド・コンチェルティア》 最大出力』!」

「違う!!!」


叱責に『戦闘の為の協奏曲(バルトフェルド・コンチェルティア)』はいつもの出力で止まってしまう。ち、違うと言われても

・・・。

僕の全力はこれ以外ないんだけれど・・・。


「闘技場や影使いの戦いを見るに、お前の必殺技は拳に何かしらを乗せて撃つ技だろ?

それの最大出力で撃って来い。」

「え、で、でも……。」

「ちょ、それってアレだろ?『桜花崩拳』とかこないだ使った『皇竜轟雷掌』の魔法技装填パンチ。

影使いのアレが全力じゃねぇのか?直撃喰らったら、流石の英雄様でも……。」


その指摘に、少し反応してしまう。確かにあそこで使える最大出力ではあったけれど、全力ではない。

そしてそれを知っているのは僕しかいない・・・筈。


「フフン。お嬢ちゃん、タカミチや影使い見たいなぼーやと俺を一緒にするなよ?

――いいかぼーず。まぁ俺がお前の親父より強いとは言わねぇが、少なくとも同レベルに居た事は確かだ。

で……お前の憧れってのは、お前みたいなヒヨッコがちょこっと修業した上の思い付き技でくたばると思うか?



「……!!」

「"最強"ってのはそんなもんか?どうだ、試してみろよぼーず。」

「―――あぁぁあああああああああ!!」


そう、今ここで・・・棒立ちのラカンさんにすら通じないならそこまでだ。隠していても意味が無い。

気になる事もある。ラカンさんが・・・意図的に避けているであろう事案に。


「"ラステル・マスキル・マギステル!! おお、神よ! 哀れな羊に祝福の裁きを! 三条九条の光持て!

断罪を!断罪を!断罪を! 貴様らは掌の上!"『天壌歌舞する天上の拳(ダーラッド・ヘヴンリィ・ヘヴン・ハルトゥス)』!!




「おぉ……戦術魔法を乗せるか…!!」



天空に呼び出されるそれを集束・腕に乗せる。周囲を薙ぎ払う力を右手一つに集束するから、威力は折り紙付き



だけど、その代償として、右手が"破壊"されて行く。長くは乗せられない―――

行きます、ラカンさん。父さん、愁磨さん・・・これが!!


「これが僕の全力―――『天壌天拳』!!」
ド ン ッ ッ ッ ! !
「わぷっ……!!相変わらず人間から出る物理エネルギーじゃねぇな……!つかあのおっさん大丈夫か?

ミンチになってんのとか勘弁だぞ………。」


周囲に奔った雷撃で蒸発した水が水蒸気になって、ラカンさんの姿は見えない。

完全に受け切られた手応えがあったから、ミンチにはなってないと思うけれど・・・風穴が開いてたり

しないよね?と、霧が晴れた先にいたラカンさんは―――


「す、凄い!むきz「ゲプァッ!」ら、ラカンさーん!?」

「いってぇなコンチクショウ!!」
ゴッ!
「まろんぼっ!!?」

「吹っ飛んだぁーー!!って、先生大丈夫かよ!?」


無傷かと思われたラカンさんだったけれど、どうやら少々効いていた様で、軽く吐血した。

そして逆ギレして殴られた僕は、遺跡の彼方へ殴り飛ばされる。

ひ、酷いよ・・・!自分で殴れって言ったのに!・・・でも、まさか僕の全力で無傷って・・・。


「オイオイ、お前一体どんな化けモンに修行つけてもらってたんだよ。一瞬意識飛びかけたぞ。」

「化け物……まぁ、アンタよか化け物かもしれねぇな。」

「その………麻帆良の学園長先生に……。」

「なにぃ!?あの"修羅"が師匠だって!?そりゃ数ヶ月で飛躍的に強くなるわなぁ。」

「あと……えぇと………しゅ、愁磨さん達にも………。」

「…………ハァ!!?愁磨とノワールさm…ゲフン、ノワールさんにも修行つけてもらってたのか!?」


一瞬ラカンさんの時間が止まり、素で驚く。そ、そんなに珍しいのかな?愁磨さんって、結構修行とかつけてる

イメージがあるから、そこまで以外じゃなかったんだけど・・・・。


「ハッハァ……あいつらになぁ。丁寧な正拳かと思いきや妙な鍛え方してんのはそのせいか……。

いや、大体分かったぜ。文句なし合格だ。」

「は、ハイっ!ありがとうございます!」

「第一関門突破か、良かったな先生。」


妙な、ってところが気になるけれど・・・とりあえず、弟子入り成功だ!

あとは隙を見て、父さん達の話を聞ければ目標達成だ。と、今度はラカンさんが妙な顔でこちらを見ていた。


「で……だが。何で強くなりたいんだ、ぼーず。」

「それは……強くなれば皆を、大切な人を守れるからです。最強か、それに誓い力があれば誰も傷つかずに

済む、と。」

「ほうほう………で?」

「それと……父さんや愁磨さん達のように強くなりたいと、ずっと前から…最近は強く思っていて。」

「ふむ……で?」

「…………で?」


ラカンさんの質問は、イマイチ要領を得ない。僕から何を聞きたいのか。

僕が強くなりたい理由・・・皆を守りたいから、麻帆良に帰りたいから。あとは―――


「……誰か、倒したい相手でもいるんじゃねぇのか?」

「―――!……はい、います。」

「フフン、それがライバルだろうが敵だろうが、男の目標はそういう明解な奴が良い。

で、誰だ?そいつは。」

「……フェイト・アーウェルンクス。それと、デュナミス・ヴァナミスと呼ばれていた二人です。

ゲートポートで僕達が戦った……。」

「……!?」


僕が出した名前に反応したラカンさんの驚きは、今度は危惧を孕んだものだった。

ラカンさんが知っていて、以前愁磨さんを猊下と呼んだ相手。やっぱり、何か関係が・・・?


「アーウェルンクス……そりゃまた懐かしい名前だな。あ、話聞きたかったら100万な。」

「えー!先手打たれた!?」

「まぁ……ぼーずの相手が俺の想像通りならかなり厄介だな。どれ、表にしてやろう。」

「表?」

「分かりやすく言うと、いわゆる強さ表って奴だな。」


黒板を縦にして、なにやら数字と絵を書いて行く。下から、ネコ0.5?一般人1、魔法使い2、旧世界達人・・・

ああ、強さを数字で表してるのか。なんて言うか・・・。


「頭悪そうな表だなー……。イージス艦て。つか先生竜より強いのかよ?」

「非魔法って書いてますから、低級なものかと……。」

「ま、あくまで目安だ。大体の物理的力量差と思え。戦闘ってのは相性他様々な条件で勝敗変わるから、

こんな表に意味はねーんだがな。お前だってイージス艦とか空母くらい沈められるだろ?」

「ええ、所詮は現代兵器ですし……火の『魔法の射手(サギタ・マギカ)』千本で一撃でしょうね。」

「あぁぁあぁ………頭のわりぃ会話だ……。悪夢だ……。」


なにやら、ふーむ、と表の僕を書き直すラカンさん。700だった強さが一気に倍になった。

て、適当だなぁ・・・。更に、イージス艦:1500の上にタカミチ・カゲタロウ(not本気):2000と

鬼神兵(大戦期):2800、リョウメンスクナノカミ:8000が書き足される。

話だけは聞いたけど・・・そっか・・・刀子先生は少なくとも8000以上なんだ・・・。


「まぁ勝負は相性・時の運とはいえ、力量差が大きくなれば勝ちは当然薄くなる。お前の相手……

フェイトの力量は、この辺りだ。」

「―――!!」


カッ!とラカンさんが記した位置―――リョウメンスクナノカミの少し下。数値にして、6000だった。

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後書き
色々と面倒になって来たので感想停止。淡々と描いて行く感じで。 
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