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ユーノに憑依しました

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それを始めの一歩にしました

 後日、聖王教会に呼び出された俺はシャッハと一緒に作戦会議室の一つに足を踏み入れた。

 中には複数の人間が居た、それも管理局の陸と海の人間、その中にはリンディさんやクロノ、ギル・グレアムにリーゼ姉妹、騎士ゼストにクイントさんも居る。
 シャッハに誘導されるままカリムの隣の席に座った所でカリムが会議開催の宣言をした。


「主役が揃った所で会議を始めたいと思います、今回皆さんにお集まりいただいたのは、地上本部の裏で勧められている戦闘機人計画についてです」


 ナカジマ姉妹についてか……なら何故? グレアムさんが陸の事件に呼ばれるんだ?


「クイントさんのDNA情報を元に事件を辿った所、アコース家から大量の資金が投入されている事が分かりました、本局グレアムさんからの情報提供に感謝いたします」


 ……ロッサの実家が資金提供ね、不幸の一端はコレか……裏付けをグレアムさんが取ってくれたと。


「……ロッサはどうしてる? 彼はこれからどうなる?」
「ロッサはグラシア家が引き取ります、無関係だったとはいえ彼には辛い決断でしたから……暫く時間を与えてあげて下さい」


 ……地球行った時の土産に翠屋のケーキとシュークリームでも持って行ってやるか。


「話を続けます、ロッサの捜索で違法施設の場所が判明しました、騎士ゼストの部隊と聖王教会騎士団で包囲した後、突入します」


 モニターにはとある研究施設の見取り図が詳細まで表示されていた。
 スバルとギンガが居る部屋がアレか……ん? 周辺の部屋に何やら特徴的な形をした壁があるな?


「目標の部屋にアンチマギリングフィールド発生装置らしき物があるんだが? 間違いないか?」
「はい、ロッサのレアスキル『無限の猟犬』でも潜入するのはギリギリでした、フィールド状況下で戦えない騎士と魔導師は近付かない様にして下さい」
「対抗策があるんだが参戦しても構わないかな?」

「……護衛にリーゼロッテさんとリーゼアリアさん、クイントさんを加えますが、よろしいですか?」
「わかりました、グレアムさんの護衛はどうするんです?」
「私はいざと言う時のバックアップだ、二人を任せたよ」
「……お預かりします」


 こうして、俺は突入部隊の救出班として参加する事になった。
 ゼストさんは研究員を押さえる強襲班、クロノもそっちだ。
 俺達はそれぞれのチームに分かれて作戦会議となった。


「それじゃ、救出班の作戦会議を始めたいと思います、リーゼさん達お二人は百戦錬磨の兵ですから具体案をお願いします」
「アタシ達の事は呼び捨てで良いよ、二人を同時に呼ぶ時はリーゼでね、作戦については前と後ろからの挟み撃ちに気を付ける位で部屋までは問題ないね」

「私達二人は使い魔だからフィールドの中だとかなり不利になる、護衛は部屋の前までだね」
「クイントさんも部屋の前で待機でかまいませんね?」
「そうね、ただでさえ室内だし、ウイングロードも使えないとなればフィールド内には入れない、行き帰りの足は任せて」

「では、クイントさんとロッテが先頭で突入、アリアと俺が後方への注意とサポートに回ります、部屋に着いて目標を救出後、速やかに離脱します、質問はありますか?」
「アンタのフィールド対策はどれくらい有効なんだい? 場合によっては作戦を中断して離脱するよ?」

「濃度にもよりますが通常でも数時間は軽く持ちます、移動できないのが欠点ですが、今回の作戦では問題なく使用できます、ご心配なく」
「わかったよ、お手並み拝見と行こうじゃないか」


 俺達が転移して現場に着くと研究施設の包囲は完了していて、北側から強襲班が攻撃を始めていた。


「救出班より包囲班に通達、南から『壁を抜く』引き続き足止めよろしく」
「壁抜きって、アンタ何するつもりだ!?」
「昔らか言うじゃないですか、道は自分で開く物で、壁は撃ち抜く物だと『デバイス:デビルテイル』起動」


 俺の左手に蒼い手甲と頭には八枚の羽が特徴的なインディアンハットが装備された。


「それがアンタのデバイス?」
「そう、危ないから鎮圧するまで離れてて、一番から八番まで起動……」


 八枚の羽形デバイスがそれぞれカートリッジをロードしながら雷を発生させながら魔法陣を描く。


「――――――収束砲てえぇえぇ!!」


 巨大な収束砲が緑色の光を撒き散らしながら研究施設の壁をぶち抜き、中腹まで巨大な穴を開けた。
 八枚の羽から空になったカートリッジがバラバラと零れ落ちる。


「……な、何なんだい!? そのとんでもないデバイスは!?」
「管理局の魔法技術だと十年先まで無理だったんだけど、探してたデバイスが『もどき』しか出なくてさ、捨てるのもなんだし再利用してるだけ」

「もどきって、アンタの探してるデバイスはどれだけ化物なんだ!?」
「今の一撃を放つのにカートリッジ八発ぐらい使ってたよね? 魔力のロスが酷すぎるんじゃないかしら?」

「……まあ、アリアから視たらそうなるよな、チャージが最速な分、無駄に魔力消費するし……何より、ロマンデバイスだからなコレ」
「ロマンデバイス? 物好きが趣味で持つ無駄に派手な効果だけを生むアレかい? それにしちゃ実用性高過ぎでしょ!?」

「超効率的な魔力馬鹿を、俺の師匠として崇めてるからだと思う」
「……アンタが誰の真似をしてるか良く解ったわ、レポートは見せて貰ったよ、アンタも物好きだね、アタシには考えられないよ」
「褒め言葉として受け止めとく……あちらさんの混乱は収まったようだ、反撃来るから離れてて、跳ね返すから」


 俺は変身魔法を使って大人の姿まで成長し、抜いた穴に向かって歩き始める。
 穴の向こうから実弾や魔法弾が雨アラレと降って来る、それを展開した八枚の羽が雷を発生させて実弾を受け止め、魔力弾は強制的に霧散させる。


「……魔力弾の威力から見て、Bクラス以下ばっかりだな、AAぐらいは居ると思ったんだが、さてお返しだ『マジックカウンター』」


 敵弾を散らしていた羽が霧散した魔力を収束をし巨大な魔法弾を作り上げた。
 仕組みとしては劣化版スターライトブレイカーと言ったところだな。
 次々と敵弾を吸収してデカくなる魔力弾に敵は撃つのを止めて壁に隠れた。


「さて……コレが直射砲だと誰が言った?」


 発射された特大魔力弾が穴に潜り込んだ所でピタリと止まった、最初っから誘導弾だよ。


「爆散」


 大量の十字手裏剣に変形した魔力弾が室内で炸裂した。


「――――無茶苦茶だ!? 敵の魔力弾吸収したり、誘導弾の形をワザワザ十字型に変えるなんて無駄過ぎにも程がある!!
 アレだけの魔力量込められるなら普通に撃って着弾させた方が効率的でしょうが!?」
「ロマンデバイスに何を言ってるんだか」

「実戦で使うなって言ってるのッ!! もっと真面目にやらんかッ!! それに何だその姿は!? 何で大人なんだよ!?」
「いくら敵とは言え子供の姿を撃たせる訳にはいかないでしょ? 管理局の評判も悪くなりそうだし」

「うッ!? で、でもな、さっきから収束を連続で使い過ぎだぞ、本体は子供なんだから後遺症が残ったりしたら大変なんだぞ」
「心配ありがとう、このデバイスは魔力を倍でロスする変わりに負荷もデバイスの方で処理してるから、俺にはほぼ無害だよ」

「その技術を管理局に売ったらかなり儲かるんじゃないか?」
「このデバイスもどきが管理局で再現できるなら是非ともやって貰いたい物だね……製造技術消失してるっぽいし」
「……それ、ロストロギアじゃないだろうね?」
「組み換えはしたけど、ちゃんとデバイスの範疇です、所持許可もちゃんと局から下りてますよ」


 俺の魔導師登録とデバイス所持のデータを表示する。


「それよりも、此処からは室内ですから砲撃も限定されます、下手に壊してエネルギーの高い所に直撃したらどんな目に合うか、ロッテとクイントさんの出番ですよ、前衛はよろしくお願いします、後方は気にしないで下さい、遠慮なくぶっ放せますから」

「……アンタが後方をやりたがる理由はソレかい」
「前衛を女性に任せる最低野郎だと思いました? その通りですから認識は変えなくても良いですよ?」


 そう、数年後には、なのはにフェイトにはやてと、俺なんか鼻で笑える最強がポコポコ出て来るのだ……あ、何か鬱になってきた。

 それから後方は俺とアリアで殲滅しつつ、十字路に篭って撃って来る敵には十字手裏剣を放り込んで無力化した後、クイントさんとアリアが突入する。
 そろそろ例の部屋なんだが、さてさて、どんな敵が居るのかな?


「ユーノ、あの扉で最後だ、アタシ達は此処で待機して退路を確保する、頑張って来なよ」
「了解、既にカートリッジが五分の一になってるが気にしない方向で」
「おい!? 大丈夫か!? まだ十分チョイしか経過してないんだぞ!? 帰りはどうするんだ!?」

「大丈夫ですよ、最終戦を乗り切るには充分です、帰ったらパーティーでもしましょうか、あの子達も含めて盛大にお祝いだ」
「それは良いわね、準備は任せて、ロッテも手伝ってよね」


 リーゼ姉妹に見送られて、最後の扉を強制解除して中を見ると、一人の男がスバルを抱えてロングナイフを首に近づけていた。


「そこまでだ、妙な真似をするんじゃねえ、管理局の犬っころ、コイツの首が身体からオサラバするぞ」


 ギンガは男の足元で泣きながらスバルを見上げている――――蹴られたか。
 男の特徴はかなり筋肉質だが……山賊のボスって称号が一番ピッタリだ。


「まさかこんなガキ二人の為に大部隊で突入してくるとはよ、そのとんでもねえデバイスをこのガキに渡せ」


 突入する所を見ていたのか――――当然と言えば当然か。
 俺は近付いてきたギンガに『デビルテイル』を解除して渡す。


「要求は呑んだ、その子を離せ」
「馬鹿だろお前? 此処から抜け出すまでコイツ等は人質だ、まずはお前から死ねッ! 化物がッ!」


 男が放った魔力弾を正面から貰い、俺は吹き飛ばされた。


「回復されると面倒だからな、アンチマギリングフィールドを起動させて貰うぜ」


 部屋にフィールドが展開されると、俺の身体から変身魔法が強制解除されて子供の姿に戻った。


「――――ガキだと!? アレだけ好き勝手やってた魔導師がただのガキ!? ははっは、管理局ってのはそこまで屑かよ」
「いや、いやああああ」
「うるせえぇ、此処から出るぞ!!」


 男がロングナイフを鞘に戻してギンガを掴もうとした瞬間、その腕にギンガの抱いていた羽根型のデバイスが突き刺さった。


「うおおおおおぉおおお!? 馬鹿なッ!? デバイスが起動しただと、クソッ!? 抜けねえッ!! 離しやがれッ!!」


 激痛に耐えられなくなった男がスバルを床に落とた。


「あーあ、好き勝手やりやがって、手甲が駄目になっちまったじゃねーか」


 頭から血が垂れて来る、手甲が破損して破片でも当たったか。


「てめえ!? 生きてやがったか!? 何だこのデバイスは!? 何で魔力が消えねえ!?」
「丁寧に説明するとでも思ってんのか? そのままくたばれよ、糞野郎」


 デビルテイルから雷が発生して、そのまま男の意識を刈り取った。

 男が気絶してもアンチマギリングフィールドが解除されない……傷が治せないじゃないか。
 デビルテイルもピクリとも反応しない、カートリッジを使いきったか。


「二人とも大丈夫か? 何処か怪我してないか?」
「うん」
「だいじょうぶ」


 ……俺の血を見て、お前の方が大丈夫か? と言う顔は止めてくれ。


「あーあ、完全にイカレちまってるな」


 デビルテイルのカートリッジシステムは全損寸前。羽の方はカートリッジが空だがまだ使えるな。


「コレ、貰っとくか? お守りだ」
「おまもり?」
「そう、コレがお前達を守ってくれる、そう言うおまじないだ」


 デビルテイルの羽をギンガとスバルに一枚ずつ渡す、一時的にマスター登録もしたから、流れ弾の一発二発ぐらいは止められるだろう。


「さて、此処から出ようか、あったかいご飯とお母さんがまってるぞ」
「……おかあさん?」


 男の襟首を掴んで無理やり筋力強化で男を引き摺る、フィールドがなければ楽だったのに……男も擦り傷だらけになるから良しとするか。


「目標を保護、これより撤収します」
「了解、ユーノ一人をこっちに、もう一人はクイントに渡して、アリア、ユーノの怪我を見て」
「大丈夫ですよ、これくらい」

「ほら、動かないで良く見せて……傷口は綺麗ね――――はい、おしまい、暫くすれば傷も目立たなくなるわ」
「ありがとうございます」
「良いのよ、これくらいしか役に立てそうにないし、さて、行きましょうか」


 アリアが俺に胸を押し付けて手を回すと、そのまま抱き上げられた。


「え? 何ですか?」
「脳震盪がまだ残ってるでしょ? 無理したり魔力を練ったりしないで絶対安静ね」


 ニコリと微笑むが、顔が近い、顔が近いぞ、アリアの目が何か――――その眼に引き付けられ……。


 あ、コレって魔眼――――――




 ……目を覚ますと、病院のベッドに固定されていた。


「……何この状況?」
「おー、起きたかユーノ、ネボスケだな」
「ロッテ、此処は何処? この状況は何?」


 ベッドの傍に居たと思われるロッテが平常運転だった。


「此処は管理局の集中治療室さ、ユーノに何かあったら大変だからな、暫くは検査入院だ」
「今直ぐ帰ってからやらなきゃいけない事が山ほどあるんだが?」
「ん~? レイジングハートの発掘か~?」
「解ってんなら今すぐ拘束を解いてくれ」
「いや~、それは駄目だね、アンタの化物デバイス、調べさせて貰ったが、とんでもない代物だったね、他にいくつあるんだい?」

「いくつと言われてもな、廃品を適当に組み直しただけだから、あの程度ならいくらでも作れる」
「誰かに売ったりしてないだろうね?」
「俺専用に設定してやっと数字を叩き出せるんだ、誰かに渡したとしても無駄が多過ぎて扱えないだろうな」
「そうかいそうかい、それを聞いて少し安心した」
「で、これ外してくれ、ベッドから降りられないじゃないか」


 ロッテは俺の胸に手を置くと、ニコッと笑って見せた……目が笑ってない、縦になってるぞ。


「アンタが師匠と仰ぐあの子がアレだからね、デバイスから掛かる負荷を徹底的に検証したんだよ」
「……壊れた部品から検証しても意味無いだろ?」
「いやいや、アンタが正常使用したデータが残ってるから、そこから割り出したのさ、収束に関してはほぼ完璧に負荷が軽減されてる、本当に凄いよ」

「……暇潰しに色々と試してみただけだ」
「……だが、デバイスを八枚、いや手甲まで含めたら九機のデバイスを同時起動させた時の負荷は何だい!? 収束を軽減した意味が全然無いじゃないかッ!?」

「……まあ、そこらへんは試行錯誤の積み重ねだな、今日より明日って奴だ」
「負荷が抜けるまで退院は無しだ、もちろん入院中にデバイスを作る事も許可しない、これを破れば二度とデバイスを所持させないからな!!」

「……わかりました、せめて安静先は選ばせて欲しい」
「一応聞くが何処だい?」
「海鳴」


 ゴスッ!!

 ロッテの拳が俺の頭に落とされた。


「アンタ地球の魔力と相性悪いんだろ!? 負荷が抜けるまで絶対に地球には行かせないからなッ!!」


 ……こうして、事件は収束して、俺の入院は確定した……闇の書復活まで後何日ぐらいだ? 考えるの面倒くせ。 
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