久遠の神話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五十八話 大刀その十
「解読は非常に難しいのです」
「そうですか」
「古代ギリシア文字、古代ギリシア語も」
それの解読はというと。
「解読には非常に高い学識が必要なのです」
「じゃあ銀月さんは」
「それだけでもかなりの方です」
剣士の戦いのことが記された古代ギリシアの書とそれに使われている文字を解読出来るだけでもだというのだ。
「一介の学生とは思えないまでに」
「学生とはですが」
「学者でもです」
学生よりも学識の面では遥かに上のそれを生業としている者達ですらだというのだ。
「そうは出来ないです。物凄い方です」
「そうだったんですか」
「一体あの方はどういう方か」
大石はその聡美への疑念も抱きだした。
「気になってきましたね」
「そうなんですか」
「その古文書に何が書かれているか」
大石もまた遠いものをその目に見て話す。
「気になりますね」
「そうですか」
「非常に」
「ううん、そこまで凄い人だったなんて」
「一体どういう娘だろうね」
高橋も腕を組み考える顔になっている。
「そのことが気になってきたね」
「俺もだ」
工藤も言う。
「あの娘がどういった娘かな」
「ですよね、本当に」
「ただの娘じゃない」
「ええ、一介の留学生の能力超えてますね」
「戦いのことを知っているのなら」
こうも言う工藤だった。
「聞きたいがな」
「知っていても言うかどうかはですね」
「言わないことも考えられる」
「そうですよね」
こんな話をしたのだった、四人は聡美にも大きな謎を感じていた。
上城は中田にもこの話をした、すると。
彼もまただった、考える顔でこう言ったのである。
「そうそう、あの人な」
「中田さんもですか」
「妙に思ってたよ」
こう答えたのだ、今二人は駅前の喫茶店マジックにいてそのうえで共に紅茶を飲みながら話をしている。
そこでコーヒーと一緒にザッハトルテを食べつつだ、中田は言ったのである。
「俺もな」
「戦いのことを知り過ぎてますか」
「それにな」
「それに?」
「いつも、本当にいつもな」
こう上城に話したのである。
「絶好のタイミングで出るだろ」
「そういえばそうですね」
上城も中田のその言葉に頷いた、聞いて考えてみればだった。
「あの人はいつも」
「そうだろ。凄くいいタイミングで出て来るだろ」
「戦いの時にも」
「何でここにっていう状況では」
聡美が出て来ることに気付いたのである。
それでだ、中田はこうも話した。
ページ上へ戻る