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インフィニット・ストラトスの世界にうまれて

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海に行ったら、黄昏る 序文

いきなりで悪いが少しだけ自分語りをしようと思う。
何でこんなことをするのかというと、前回俺は転生者ということ以外ほとんど語っていなかったからだ。
多分、長くならないはずだから少しの間だけ付き合って欲しい。

俺はイギリス生まれのイギリス育ち。
この世界に生まれる前は日本人だった。
前世での死因は事故死。
トラックに引かれて――というやつだ。
この世界に生まれて物心ついた時には、前世の記憶を持ったまま生まれたちょっと風変わりな人間くらいに思っていたわけだが、それが違うと解ったのは俺が五歳の頃に起こったとある事件が切っ掛けだった。
とある事件とは白騎士事件のことである。
今から十年前、篠ノ之束が発表したISは当初その成果を世界に認められることはなかった。
そしてISが発表されてから一ヵ月後にその事件は起きる。
日本を攻撃可能な二千三百四十一発のミサイルが一斉にハッキングされ、制御不能に陥り、発射された。
日本の危機に颯爽と現われたのは白銀のIS。
そのISは日本に飛んできたミサイルの半分を剣でぶった切り、残りの半数を当時まだ試作段階にあったとされている大型荷電粒子砲を空中に呼び出し、それで残りのミサイルを打ち落とした。
これを見た各国は、その性能に驚愕し、国際条約を無視して日本に軍を投入、ISの情報収集または捕獲、それができなければ撃破しようとしたが失敗することになった。
たった一機のISがミサイル二千三百四十一発、戦闘機二百七機、巡洋艦七隻、空母五隻、監視衛生八基を撃破あるいは無効化した。
ISは究極の機動兵器として一機でもあれば、他国の軍事力を凌駕し、圧倒する事実は、急速なIS運用条約の締結と開発普及を全世界へと促すことになった。
このニュースを知った俺は、初めて自分が生まれた世界がインフィニット・ストラトスの世界だと知ったのである。

話は変わるが、俺ん家の家族構成は父親のデービットと母親のステファニー、そして姉のドロシーの四人家族だ。
とはいっても三人とは血が繋がっていない。
俺は養子だ。
両親から聞いた話によると、イギリスの俺ん家の隣には今現在は誰も住んでおらず空き家になっているんだが、かつてはそこに若夫婦が住んでいたらしい。
その若夫婦が忽然と姿を消し、その家の中に産着に包まれた俺が取り残されていたそうだ。
何でも、俺のそばに若夫婦が書いた置手紙があり、こう書いてあったらしい。
『探さないでください』
それを聞いた俺は、手足もロクに動かせない赤ちゃんが親を探せるか! とツッコミを入れていたが、よくよく考えれば、俺を見つけた人間に宛てた言葉なのかもしれない。
よくも俺が干からびる前に見つけてくれたもんだ。
じゃなかったら今頃ここにはいなかっただろう。
今の両親に引き取られるまでに色々あったそうだが、強力に養子縁組を薦めたのは姉だったというのが笑えない。
その頃から姉は俺の事を猫可愛がりしていたのだろう。
早く言えば、重度のブラコンである。
俺がジュニアハイスクールに通っていた頃のとある日の放課後。

「学校が終わったら二、三時間ほど俺に付き合ってくれないか? きっと素敵な時間を過ごせると思うんだ」

「そう? どこに連れていってくれるのかしら」

「そうだね、帰りに甘いお菓子でも買って俺ん家にって感じだけど」

「ああ、なるほど。まあ、いいけど……どうせテストが近いから勉強を教えて欲しいんでしょ?」

「なんだ、もうバレたのか」

「当然でしょ」

ってな具合で一度ガールフレンドを家に招いたことがあったんだが、それを発見した姉は、

「彼女が欲しければ、私を倒してからにしろ!」

と言い、俺に向かってファイティングポーズをとってくる。
いつだったか忘れたが、俺に彼女が出来たら彼女に対して武力介入してやるとか言っていた気がするが、蓋を開ければ俺に武力介入を開始していた。
まったくわけがわからないよ。
その後、家の中で俺と姉の乱闘が始まり、家にいた母親に騒ぐなら外でやれと言われ、リングを家の前の庭に移し、試合を再開。
気がつけば俺は仰向けに転がり姉に横四方固めを決められていた。
そして、俺の耳元に唇を近づけた姉はこう言った。

「欲情したいなら姉でしろ!」

まったく何を言ってんだ、姉は。
昔のドラマの名セリフ、

「同情するなら金をくれ!」

みたいな感覚で言われてもな。
どちらかと言えば、こっちの方がまともに聞こえるのは俺の気のせいではないだろう。
これ以来、俺はガールフレンドを家に招く事がなかった。
というか、この時の騒ぎが噂になって家に遊びに来ようとするガールフレンドがいなくなった、というのが正だろう。
むしろその乱闘が見たいと言ったつわもの女子もいたが、こちらから遠慮してもらった。
数年後、IS学園に行くためにイギリスを離れることになった俺に姉は、
俺の胸にすがりつき、目に涙を溜めて、こんなことを言っていた。

「困ったことがあったら遠慮しないですぐに連絡するのよ。私の行く手を阻むものあらば薙ぎ倒してでもあなたの元に駆けつけるから」

なんてことを言っていたが、姉は本気で言っているんじゃないかと思えるところが恐ろしい。
姉の行動を止めるとすれば両親しかいないが、その両親を薙ぎ倒されたらたまらない。 どんなに困っても姉にだけは連絡すまいと堅く心に誓っていた。
こんな風にして俺はIS学園に来たわけだが、俺にとって姉から離れられる日本に来たことは僥倖だったかもしれない。
 
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