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世紀末を越えて

作者:のに
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プロローグ
  エンカウント・ワン

 
前書き
俺1ストックが、ストックがぁぁぁぁ…

俺2かなりのハイペースで更新し過ぎなんだよ

俺1だって、皆に読んでもらいたくて…

俺2キモ

俺1ああ!?

俺3このやりとりがきもい

俺1俺2ああ!?

 

 
 時刻は八時、とうに日は沈み、街灯も無い砂利道を、ただ炉端に建つ誰の家かも知れぬ木造の家から覗く微かな光を頼りに道を私は一人歩き続けた。学校からそう遠くない所に私の住んでいる家、この島に唯一存在する孤児院がある。私はいつも通り帰宅し、院長さんからいつものように説教を受けるはめになった。一日中学校をサボっていたのだからまあ当然の結果と言えよう。通常孤児という者は、親の何らかの理由でその子供を育てることが出来なくなった場合、というより育児放棄、虐待などから守るために施設がその親から親権を剥奪させ、子供はここに送られてくることになるそうだ。しかし私の場合は少々違った。私はある日の朝、この院長さんが私を見つけたそうだ。毛布にくるまれ、ゆりかごの中に入った状態で、玄関の前ですやすやと眠っている私を。だから書類上では、この院長さんが私の親ということになっているが、そんな訳で私には生まれつき親という者がいない、ということになっている。そんな私は今日、普段とは異様に異なる出来事が一つだけあった。私は、私の中で一度殺されたのだ。あれは一体なんだったのだろうか、それだけならまだしも、困ったことにその嫌な感じは今も続いている。嫌な気配と言った方が正しいのだろうか。ソファーやテレビの後ろ。カーテンの裏…。

「どうかした?」
「いいえ、別に何も。」
「どこか具合でも悪いの?」
「そういう訳じゃ無いんですが…。いや、少し気分が悪いかなって。」
「あなたが?ずいぶん珍しいわねえ。じゃあもう今日は中に入って早くお休み。」
「はい。」
「どうする?明日学校行く?」

 
 事実私が風邪を引いたことなんて、少なくとも私の記憶には無かった。体調が悪くなるなんてことも。それが表に出る程となれば、やはり普通のことではないのだろう。私は院長さんの言う通り今日は早く寝て、明日は学校を休むことにした。その原因なんて私には分かりきったことだ。他の人には分からない、話したって信用してはもらえない、私の中で起こった想定外の事態。あんなことは今まで一度も無かったのに…

「いいえ大丈夫です。では私はこれで、失礼します。」
 そう言い、私は部屋に戻る。六畳程在る私の部屋にはベッドと簡素な机しか置かれていない、私はベッドに横になり、溜息を一つ漏らした。

「いつまで続くんだろ。」

机の下、その影の奥を見つめる。そこでは何かが蠢く気配があった。それは今は私の目では捉えることは出来ないが、確かにそれは存在している。私は時折低俗霊が見えることがある。しかしそれらでさえ、私の顔をただじいっと覗き込み生前の愚痴を私に小一時間言い聞かせた後またふらりとどこかへ行ってしまうだけであったが、今回のこれは明らかに、特定の私に対してのみ用があるようだ。もう消灯時間はとっくに過ぎているものの、辺りは何故か普段より暗い気がした。
私に、何か用?こんな感情初めて、じれったいの。早く出て来てよ。何かあるんでしょう?
「わ…たしは、、。」
声がした。
「わたし、、は、、。」
言いたいことがありすぎて何から話せば良いかわからないのか、それとも単に話し方が分からないのか、それは繰り返し同じことを言い続けながらじりじりとこちらに近づいてくる。そこで初めてその黒い物体が人の形はしている事に気づく。それと同時に人とは異なる存在であることもまた一目瞭然である。それがこちらに近づけば近づく程に、私の体は動かなくなって来くる。
「あなたは私の中で出て来た奴とは違うのね、貴方の名前は何?貴方はどういった者なのかしら?」
「私は。ヒトデナシ。絶対の、悪の権化。闘争と、進化の象徴。と。呼ばれているのかもしれない。私がここにいる意味は、私というより寧ろ私の見つけたお前がそういった存在そのものなのかもしれない。」
どこか甘い誘惑の香りがした。自らをヒトデナシと名乗るそれは幾千もの多種多様な黒い剣を展開させ、ふりかざす。あれが幻でないなら受ければただではすまないだろう。
「私をどうするつもり?」
「殺す。」
「そう。私一人を殺すために随分とご苦労なことね。」
「これは、敬意だ。」
「ふうん、私から見れば、殺されることに何の変わりもしないのだけど?」
「死ぬのは怖いか?」
「いいえ、あまり怖くないわ。」
刹那。沈黙の闇を切り裂くようにけたましい音が鳴り響く。その音は私を金縛りから解き放ち、ヒトデナシを打ち砕いた。
ふと、その音の正体が私の孤児院に一つだけ設置されている黒電話のベルの音であることに私は気づく。先ほどまでその音とは思いもしなかった。何分あの様な状況から私を救ってくれたもののため、またあれさえもひょっとすると何か良からぬものなのではと少し怪しむのは仕方のないことだろう、そういうわけで私が出ずとも、他の人が取るだろう、と思い私はそのまま布団に包まりその場をやり過ごそうとしたが、私の思惑は外れ何時までたっても誰もその電話に応じることも無く、煮えをきらした私は否応無く電話に応じることにした。いったいどうしたことだろう。
「はい。ええっと、樋泉ですけど?」

今のあなたに服が創れる?

聞いたことの在る声だった。女の人だろうか。そう。あの後もう一度服を創ろうとしたのだが、何度やっても布地が霧散し、上手く作れないのだ。しかしどうしてそんなことを知っているのだろう。私がこのことを話したことが有るのはあのひとだけ、彼が他人に話したとしても、私が服を創るなんてあくまで私の中の話であって、他人に取って重要性は無いはずなのに、この人は何者で、何がしたいのだろうか。
「はい、もう私にはどうすることも出来ません。どうやったって、生地を織れないのです。ですが、あなたは一体誰なんですか?」

少なくとも、神とは異なる存在、だそうです。別にあなたをどうこうしようしようというわけではありませんから安心してください。私はどうすればあなたが再び服を創れるようになるかを知っています。ですがあなただけではどうしようもないでしょう。私の言うととおりにしなさい。

「どうすればいいのですか、教えてください。」
藁にもすがる思いで私は彼女に問うた。

まず彼に会うのです。彼はあなたのこと世界で一番良く知っている方だそうです。恐らく彼なくしてあなたは先へは進めないでしょう。事実彼は鍵を持っています。彼はいつまでもあなたを慕ってくれるでしょう。彼をたよりに、先へ進みなさい。そうすればあなたは再び服を創ることが出来るようになるでしょう。

「私には貴方の言っている意味が良く分からないのですが。」

さあ、もうじき夜も明けることでしょう。ではお元気で。さようなら。また、会えるといいですね。


「樋泉さん?何してるの?」
院長さんの声だ。あの人の言った通り、右手の玄関の磨りガラスからは朝の日差しが差し込み微かに埃の舞う廊下を仄かに照らしていた。私の右下には五歳の男の子が私の顔を不思議そうに見つめていた。
「あの、あと五分寝かせて頂けませんか?」
「何を言っているの?もう起きているじゃない。」
私の持つ受話器からは最早等間隔の電子音が流れるばかりであった。

ですが、少なくとも私は、貴方という存在の操り人形ではないでしょうに。
 
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