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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  ~無形物を統べるもの~

作者:biwanosin
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短編 あるお盆の物語 ②

「いらっしゃいま・・・せ?」

一輝たち十一人が、陰陽師課の予約した料亭に入ったときの、店員の反応がこれである。
だが、それもしかたない。

「こちらでお食事となります。部隊ごとに分かれて席にお着きください。」

これは光也の台詞。
彼はスーツをぴっちりと着ており、常に微笑んでいるので特に驚くことはない。

「ここか。いい雰囲気だな。」

これは白夜の台詞。
服装は歳相応のものだが、表情はなく、腰に一振りの刀を下げている。
店員が驚くには十分である。

「うむ。去年の店にも劣らぬ、よい店だ。」

これは慈吾朗の台詞。
服装が和服で白いひげは貴方は仙人ですか?というレベルで伸びている。
周りが若者ばかりの中にいるため、十分に目立つ。

「やっぱり、こういう店は落ち着かない・・・来年からもっと気楽な店にしない?」

これは一輝の台詞。
一輝は服装は歳相応、表情もけだるそうなものが浮かんでおり、無表情ではない。
持ち歩くものも全て倉庫に入れているのでこれといっておかしなことはない。
珍しく、まともだと認識される状態だ。

「そればっかりは慣れるしかありませんね。話す内容が内容ですから、これぐらいのところでなければ。」

これは前の台詞。
服装は慈吾朗と同じように和服で、腰のところに狐の面と小刀を九本下げている。
こちらもまた、普通ではない。

「この程度のところでその態度、情けないぞ。それでも日本の第三席か?」

これは豊の台詞。
服装などは歳相応の普通のものだが、手に持つ古びた本が異彩を放っている。
その本のせいで全体的におかしく感じる。

「あの・・・一輝さんは去年入ったばかりですし、仕方ないかと・・・」

これは美羽の台詞。
服装は歳相応で、おどおどした態度は気になるが、周りのメンバーほどではない。
強いて言うなら髪で左目を隠していることと、両手で持っている大きなカバンが気になる程度である。

「それに、こう言っては何だが、一輝の先代の鬼道はそこまで腕のいい陰陽師ではなかった。あまりこういった機会はなかったのだろう。」

これは匁の台詞。
服装は巫女服で、腰や背には合計八振りの日本刀。
目立つことこの上ない。

「そういった意味では、慣れるまではここくらいがいいだろうな。あまり本格的過ぎては美味しい食事を味わう余裕すらなくなってしまう。」

これは鈴女の台詞。
彼女はこの中では一番常識というものを知っているので服装は歳相応。
持ち物もズボンのポケットに式神を三体と、一部の式神を隠し持っているだけなので、この中で一番まともだ。

「でも、カズ君がこういうところに慣れるって想像つかないよね~。問題児だし。」

これは殺女の台詞。
服装は歳相応、他にも目に見えるおかしな点は見つからないのにどこか異質(・・)だと感じるものがある。

「俺は山で食料を集めてその場での調理を進めるぞ!あれが一番美味いし、誰にも聞かれる心配はない!!」

これは拳の台詞。
服装は袖が引きちぎられた道着。
露出している腕は傷だらけで本人の顔にも大きな傷が。
そしてこのハイテンションな大声なので、このメンバーの中で最も目立っている。

さあ、そんなメンバーが来店した光景を思い浮かべてみよう。
あの店員の反応は当たり前のものだと理解していただけるだろう。

「あ、予約していた陰陽師課のものです。料理の準備をお願いします。」
「・・・あ、はい!少々お待ちください!」

光也が店員にそう言うと店員は慌てて奥へ入っていく。
そちらから「ご予約された方々がいらっしゃいました!」「も、もうか!?まだ下ごしらえしか終わってないぞ!」「急げ!今なら他の注文は入っていない!」「全員総動員しろ!」とあせった声が聞こえているが、十一人は気にせず席に着き、一輝にいたっては

「肉料理全種類追加でー!!」

と嬉々として追い討ちをかけている。もとの苗字に恥じない、問題児に恥じない鬼っぷりである。

「そんなに食べれるのか?」
「墓参りに行ってたから、今日はまだ何も腹に入れてないんだよ。余裕でいけるだろうし、三人も食べたければどうぞ、って感じで。」
「あ~そういえば結構な数回らないといけないし、朝から呼び出されたもんね~。」
「お疲れ様・・・です。お体には、お気をつけて・・・」
「心配してくれてありがとう、美羽。」

一輝はそう言いながら、四人がけの席の一輝の隣を勝ち取った美羽の頭を撫でる。
美羽は一輝より年下で、撫でられるのが好きと知っているが故の行動だ。
まあ、そこに『一輝に』という言葉がつくことは知らないが。

「・・・♪」
「「・・・(ジト)」」

結果として美羽は気持ちよさそうにするが残りの二名からはジト目である。

「?どうしたの、二人とも?」
「「なんでもない、気にするな。」」
「そう?じゃあ、今回の殲滅についての話に入るけど、」

なんと、一輝はそのまま作戦の話に入った。

「はぁ・・・で、何を決めるんだ?」
「特に決めることはないかな。強いて言うなら、四人で固まって行動するか、バラけるかだけど・・・」
「「「固まってで。」」」
「よし、決まったな。」

それと同時に料理が全て届いたので、(なんと、肉料理もである。)食事を始める。

「そういえば、カズ君はいつ現地入りするの?」
「ん?もうこの後すぐ行く予定だけど。」
「またはやいな。どうしてだ?」
「入っちゃえばそこでかかった金は全部陰陽師課に押し付けれるから。それと、知り合いにあったら補修に来いってうるさいし。」

一人だけ全部サボっていればそういわれて当然である。

「行かないと、駄目ですよ・・・」
「ヤダ、面倒くさい。」
「カズ君はブレないね~。ま、私も同意見だけど。」
「二人はもう少し学業にも力を入れたらどうだ?そこそこに参加して、なかなかの成績を残せば文句は言われないぞ?」

匁はそう二人に言うが、

「「大丈夫、全教科学年トップは維持してる。」」

そう切り返す。
なんともまあ理不尽なことに、二人とも頭はよく、それこそ今すぐ大学に放り込まれても出席日数以外の項目でなら卒業できるレベルだ。

「そういえば、二人はそうだったな・・・まったくうらやましい・・・」
「本当です・・・私なんて、現状維持に必死なのに・・・」

そして、この二人は真面目なのに物覚えはそこまでよろしくない。
その上に真面目なので陰陽師の仕事も真面目に細かく行っており、勉強時間もない。
本当に、理不尽なものである。

「さて・・・もう皆食べ終わったようだし、解散にする?」
「そうだな・・・念のために刀の手入れをしておきたいので、残念ながらそれに一票だな。」
「私も一度家に帰らないといけないからな~。仕方ないか。」

匁、殺女の二人は心から残念そうにそういう。

「一輝さんは、この後どうするのですか・・・?」
「もうこのまま現地入りしてグータラ過ごすよ。皆と違って、『型破り』だし。」
「じゃあ、私もついていきます・・・もう準備は終わっていますし・・・いい、ですか?」

美羽は涙目の上目遣いで一輝にそう聞く。
どうやら、大きなカバンの中身はそのための準備だったようだ。

「いいよ、別に。じゃあ、残りの二人は当日合流で?」
「「明日には合流する!」」
「ヒッ・・・」

一輝の質問に対し、二人は軽く美羽を睨みながらそういった。

「じゃあ、一応後でどこに泊まってるかだけ連絡しとく。行こうか、美羽?荷物持つよ。」
「はい、ありがとうございます・・・じゃあ、また明日・・・」

一輝と美羽の二人はそのまま店を出て、一輝が出した水に乗って目的地まで飛んでいった。

その後は、美羽が作戦について話すという名目で一輝の部屋を訪ね、そのまま一輝と同じ布団で寝たり、残りの二人が次の日の朝一で来て四人で適当に遊んだりして二日間を過ごした。
翌朝からは、妖怪狩りの開始である。
 
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