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フロンティア

作者:フィオ
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一部【スサノオ】
  三章【ログイン】

電車に揺られること数時間…。
そこからタクシーで30分…。

都心にある国家保安連盟のすぐ隣に移住計画管理局はあった。
世界でも有数の移住計画研究施設の一つ…。

その規模はまさに壮大。
見上げれば首か痛くなり、見渡せば先が見えないような規模の施設。

これから自分はそこに入る。
権力者であっても易々とは入れないその施設に今から自分は入るのだと言う優越感に零司の口元はゆるむ。
また、同時に緊張からか身体の震えが目に見えて明らかだった。

「よしっ」

覚悟を決め、警備員の元へと歩み寄る。

「あの、先日フロンティアのユーザー登録していただいた者なんですが…」

警戒する警備員に片手をあげながらゆっくりとポケットから同封されていたIDを出し、警備員に見せる。
IDを確認すると無線で連絡をとり、そこからはボディチェックもなく、驚くほどすんなりと中へと案内された。

「ここでお待ちください」

そういい残し、警備員は再び持ち場に戻った。

「ここで、って言われてもな…」

周りを世話しなく行き来する研究者たち。
正直、自分の場違いな空気と緊張で居たたまれない。

「やぁやぁやぁ、待たせたね!」

いきなり後ろから聞こえた陽気な声に零司は飛び上がる。

「あぁ、ごめんごめん、僕は穐山(あきやま)哲二(てつじ)。フロンティア部門極東支部の責任者だよ!」

振り向くと、雑に気崩された白衣に牛乳瓶の底のような眼鏡をかけ、ろくにセットされていないボサボサ頭の男が満面の笑みを浮かべそこに立っていた。

「君がフロンティア参加希望者の…えーっと?」

「あ、初めまして、零ーー」

「まぁ、いいや!さぁさぁ、早く体験してみたいだろ!面白いよぉフロンティアは!」

「えっ、ちょっ!」

零司の自己紹介をさえぎり、なかば強引に手を引いて案内を始める哲二。

「君は移住計画のことは知っているかい!?」

「あ、いやニュースとかでなんとなく言葉だけは…」

「ふんふん!まぁ、どどのつまりこの地球によく似た惑星に移住してしまおうって計画なんだけどね!なんていうかほら、色々あるわけさ!問題ッてやつがね!」

「問題、ですか?」

「そうそう!まぁ、それを解決するためのひとつの手段として、このフロンティア計画が始められてね!…どんな計画かきになるかい!?」

歩みを止め、ずいっと顔を近づける哲二。

「え、あぁ、いや…特に…」

「そうかぁ、残念…」

少し悲しげな表情を浮かべ哲二は再び歩き始める。

「君が今から体験するのは人類の技術の最高傑作といっても過言ではない!この僕が言うんだから間違いないよ!」

「はぁ…」

「と、君の部屋はここだ!」

歩みを止めると、目の前には『F-121503』と書かれた部屋があった。
哲二に圧倒され気付かなかったが、他にも同じような番号が振られた部屋が連なっていた。

「俺の部屋、ですか?」

「そう、今日から君はこの部屋で暮らし、この部屋でフロンティアをプレイするんだ!」

哲二は零司にIDカードを催促すると、それを使いドアを開ける。

「ようこそ、フロンティアへ!」

広い室内には生活に困らないだけの家具。
そして、部屋の片隅には手術台にもにた機械仕掛けのベッドが一つ。

「さぁ、まずはログインの仕方から説明しよう!そこに寝てくれ!」

哲二が指差したのはその機械仕掛けのベッドだった。

「え、あ、はい」

訳もわからないまま横になる零司。
すると、哲二はおもむろにそのベッドについていたバイザーのついたヘルメットを零司に被せる。

「おわっ!」

いきなりすぎる行為と暗闇にに思わず大声をだしてしまう。

「ちょっとまっててねぇ!いま準備するから!」

そういうと、何やら作業をはじめる哲二。
カチャカチャと機械的な音がするが、暗闇の中何をしているか知るすべはない。

「よし、準備完了!さ、はじまるぞ!」

勢いよく回り出す排熱フィン。
すると、暗闇から一転、零司の目の前にはゲームのような背景画像が広がった。

《あー、あー、テストテスト!…聞こえるかい?》

「は、はいっ」

いきなり耳元に聞こえた哲二にまたもや驚かされる。

《まず君にやってもらいたいのは簡単なキャラクターメイキングだ!その辺のやり方は最近の子だからわかるよね?操作方法は簡単だ、こうしたいって事をイメージすればいい!そう、さながら手足を動かすように自然にね!》

「わかりました、やってみます」

戸惑いながらも、言われるがままに始める零司。
すると、哲二の言葉の通り髪型、顔、体格、すべてが簡単に形成されていく。

「あの、できましたけど…」

《よし、じゃあフロンティアを始めようか!プレイ方法はあっちの惑星でゲームマスターに教えてもらうとい!》

「えっ…あっちの惑星!?」

《さぁ、いってらっしゃい!》

「ちょっ!えぇっ!?」

強引でなげやり。
再び零司の視界は暗転した。
 
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