問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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短編 一輝と安倍晴明 ④
「さて、あっちは一輝君がやってくれるみたいやし、こっちも始めよか?」
一輝がザコの鬼を全て片付け、四天王プラスαを引き受けている間、晴明は酒呑童子と対峙していた。
「よいのか?あの小僧に加勢してやらんで?」
「問題ないよ、彼なら十分、あの鬼達を圧倒できる。それより、自分のことを考えや!」
晴明は袖から式神を六枚取り出し、同時展開する。
「さ、いこか。ボクの式神たち!」
その掛け声を合図に六体の式神が酒呑童子のもとにかけていく。
最初に狼のような式神がたどり着くが難なくかわされ、蹴り飛ばされて紙に戻る。
そのまま鹿、象、鎧武者、骸骨、猪が攻撃を仕掛けるも、全て一撃の元に紙に戻される。
「あら、一輝君のときもそうやったけど、そこまで弱くないはずなんやけど?」
「確かに、式神の出来はよい。だが、それでも所詮は式神だ。」
「やっぱり、そうなるんやな~。ま、ほかにも手はあるし、ええか。」
「それは怖いな。何かする前に葬るとしよう!」
今度は酒呑童子が晴明に襲い掛かる。
日本三大悪妖といっても、鬼であるためか肉弾戦が中心のようだ。
酒呑童子は晴明に殴りかかり、蹴り、様々な攻撃を加えるが、全てお札によって防がれる。
有名な、ゴボウ星の書かれたお札ゆえに、普通のものの何倍もの防御力を持っているようだ。
「その程度か?」
「いや、そのはずはないだろう!」
酒呑童子は虚空から棍棒と鎌を取り出し、再び晴明に襲い掛かる。
晴明はそれを再びお札で防ごうとするが、その防御を簡単に突き破ってくるので、慌てて避ける。
「あっぶないなぁ。何で攻撃が通るんや?」
「我が武器は、全てが少しばかりの神気を帯びておる。そのようなもので防げる道理があるまい!」
「なるほどなぁ。ほな、僕も別のを使おか。それに対応できるだけの武器を。」
晴明は式神を掲げ、そこに呪力をこめる。
すると、次の瞬間に晴明の手には木刀と五鈷杵が現れる。
もちろん、木刀もただの木刀ではない。神木を削って作り上げた、業物である。
そして、五鈷杵というのは蓮の蕾のような形をした、古い時代の武器である。
「その武器でどこまで出来るか、見せてもらおう!」
酒呑童子が獲物を使って攻撃を仕掛けるが、晴明は全て木刀で防ぐ。
神木を削って作り上げたため、それ自体が軽く神気を帯びているのだ。
そして、何度か打ち合い、がら空きになった胴に五鈷杵を突き刺すと、
「ナウマク、サンマンダ、バザラダン、カン。」
「ぐ、ぬううううう!」
自らの呪力を流し込み、内側から攻撃する。
そのまま、出来た隙に木刀を叩き込み、片方の腕を使い物にならなくする。
「ほう・・・なかなかの武器、のようだな・・・」
「まあ、母上からもらったものやからな。業物にきまっとるやろ。」
「母上、だと・・・?」
晴明の言葉に、酒呑童子は片腕を抑えながら晴明を見据え、一つのことに気づく。
「そうか・・・どこかで感じたことのある気配だと思ったら、貴様の母のものか。」
「ああ。一部遺伝したみたいなんや。ま、便利やからええんやけど。」
晴明がそう言うと同時に、晴明の周りを狐火が回り始める。
「ま、君との戦いでこれはつかわへんけどな。半分人間やから、あんまり多様は出来んのや。」
「それはありがたいな。同じ日本三大悪妖であっても、あの方との間には天と地ほどの間がある。」
酒呑童子は虚空から新たな武器を取り出す。
それは、日本刀だった。ただし、長さが異様に長い。
「まだあるんか?」
「もちろんだ。まだまだいくらでも出てくる。」
そう言いながら、酒呑童子は日本刀を振るう。
それを使う目的は晴明と距離を置き、五鈷杵を使わせないことで、案の定それは成功する。
「近づけへんなぁ、それ。」
「それが目的だからな。まだまだあるぞ!」
そう言いながら槍も取り出し、折れた腕に縛り付けて振るい、さらに距離をとる。
結果、晴明は距離を置かざるをえなくなり、五鈷杵をしまう。
「ようやくその武器を収めたか。」
「まあ、この状況で使えるとは思えへんしな。それに、遠距離の武器は他にもあるんやで?」
晴明はそう言いながら新たな式神を取り出し、呪力を流して武器にする。
それは、一般に銃と呼ばれるものだった。
「これなら距離があっても撃てるし、」
そう言いながら狙いを定め、一気に五回引き金を引く。
「呪力をこめれば連発も出来る優れものや!」
「まさか、そのようなものまで!」
急に現れた飛び道具に酒呑童子はあせり、武器を落としてしまう。
「さあ、いつまで避けつづけるんや?」
「く、忌々しい!」
酒呑童子は最初のうちは避け続けていたが、きりがないと気づき石を晴明の手にぶつけて銃を落とさせ、思いっきり踏みつけて破壊する。
「ああ、もったいない。結構高かったんやで?」
「そんなこと、我が知ったことではない!」
酒呑童子はそのまま肉弾戦に持ち込み、晴明を圧倒する。
所詮晴明は人間であり、式神などを使って戦うことがメインだ。肉弾戦はあまり得意とはいえない。
「わ、ちょ、殺す気かい!」
「当たり前だろう!何を今更!」
晴明はついに避けきれず、連打を喰らい始める。
「ああ、痛いなあ・・・ハッ!」
「熱!」
が、喰らい続ける気はないようで狐火を使って酒呑童子を遠ざける。
そして、その間に指先で星を・・・晴明紋を描き、
「喰らいや!」
「何だこれは!?」
そこから、膨大な呪力の散弾を撃ち始めた。
それには、一撃一撃が霊獣の命をも脅かす力がこめられている。
普通の陰陽師には決して、一輝ですら撃てない、晴明レベルだから撃てるものである。
「まあそれは、一発喰らえば分かるんとちゃうん?」
「それで致命傷になることは分かりきっている!」
「まあまあそう言わずに、試しにズガっと、」
「話を聞いていたか!?」
だんだん、晴明がボケ、酒呑童子が突っ込みになってきている。
「まあ、喰らわんならそれでええんや。」
「ほう、この攻撃を諦めたか。」
「いんや、そんなわけは無いやろ?」
「・・・は?」
「こんな時にするべきことは・・・」
「弾数を増やす、や!!」
晴明はさらに二個晴明紋を追加し、散弾の量を増やす。
「な、おい!この流れでそう来るのか!?」
「ああ!ちなみにこれは、一輝君の戦い方から学んだことや!」
そして、それすら酒呑童子が避けきったことからさらに十個という数を追加し、数ウ茶当たるの考え方で撃ちまくり、どうにか一発あてる。
「ようやく当たったな。ま、楽しかったで?」
「それはキサマだけだ。最後があのような終わり方では死にきれん・・・いつか蘇ってみせる。」
そういって、酒呑童子は死んでいった。
いや、確かにこんな終わり方はいやだろうな・・・
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