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久遠の神話

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第五十六話 中華街その十

「それもまた」
「私もでしょうか」
「下士官もですか」
「今は領事館にいますが」
 それがだというのだ。
「基地勤務に戻るかも知れませんね」
「貴方は確か元々は岩国にいましたね」
「はい、そこにです」
 日本にあるアメリカ軍の基地の一つだ、日本におけるアメリカ軍の基地は沖縄や横須賀だけではないのだ。
「いい場所ですよ」
「そうなのですか」
「はい、かなり」
「アメリカ軍の基地では」
「横須賀や厚木、佐世保が充実していますね」
「そうですね」
 こう話すのだった。
「海軍の基地が」
「その点空軍はどうしても」
「沖縄の基地はいいですよ」
「沖縄ですか」
「何かと言われますが」
 設備や厚生の充実はいいというのだ。
「この領事館にも負けない位です」
「いいですね。そういえばこの国の軍隊は」
「自衛隊ですね」
「厚生は我々より遥かに劣る様ですね」
「アメリカ軍は土日の午前中は保養施設はバイキングが出ますね」
「はい」
「それもお酒も非常に安く飲めます」
 味もいいがそれに加えてなのだ。
「食べるものと飲むものを非常に安く楽しめ」
「しかも味もいいですね」
「空軍や海軍は」 
 陸軍はこうしたことにおいてはどうしても劣ってしまう、陸軍はどの国でも料理の味は空軍や海軍より落ちるのだ。
 それでスペンサーも言うのだ。
「美味しいです」
「そうですね、陸軍は」 
 下士官は青い軍服を着ている、空軍の軍人である何よりの証だ。
「何度かお邪魔していますが」
「料理の味はどうしてもですね」
「よくないですね」
「それは仕方ありませんね」
「はい、本当に」
「しかし岩国はですか」
「いい場所です」
 空軍が入るにしてもだというのだ。尚アメリカ空軍の日本における最大の基地は言うまでもなく沖縄である。
「また行きたいですね」
「では私もそこに行けることを期待しています」
「それでは」
 スペンサーは政局のことも頭に入れながら部下と話していた。アメリカの選挙の結果は彼にも影響を及ぼす可能性のあるものだから。
 彼もまた動きの中にあった、そしてだった。
 中田はこの日も上城と共にいた、今は二人で中華街を歩いている。
 上城はあちこちの店を見回ってものを探していた、中田はその彼を見てこう問うた。
「あの娘への贈りものかい?」
「はい、それを考えてますけれど」
 実際にこう答える彼だった。
「何がいいでしょうか」
「そうだよな、だったらな」
「だったら?」
「あの娘の好きなもの何かだよな」
「結構可愛いものが好きなんです」
 上城は樹里の趣味を話した。
「ハンカチとかアクセサリーとか」
「成程な、それだったらな」
「何がいいですか?」
「アクセサリーっていうかそれになるか」
 こう前置きしてから言う上城だった。 
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