| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

ニシオリ信乃過去編
  Trick-11_西折(にしおり)は弐栞(にしおり)



哀川潤の襲撃で気を失った俺は、眼が覚めると
病院のベットに寝かされていた。

「ここは・・・」

「草薙さんの実家が経営している病院だそうや」

「波戸さん・・・」

ベットの傍の壁に背を預けて、波戸さんが優しい笑顔を浮かべていた。
哀川潤の襲撃時、通信が繋がらない状態だから心配していたけど
波戸さんは怪我もないようで安心した。

「結構やられてたみたいやから、大丈夫か心配したけど
 無事に目を覚ましたみたいで安心したで」

「・・・ご心配おかけしました。痛ッ!」

「無理して動こうとするな。重症なんやから大人しくしときや」

「・・・任務はどうなったんですか?」

「それやけど・・・」

「その先はあたし達が説明しよう」

「哀川潤!?」

俺をベットに寝かせた原因、哀川潤が部屋に入ってきた。
俺は反射的に立ち上がろうとしたが、体が動かなかった。それほどの重傷のようだ。

「なに戦おうとしてんだよ。もう戦いは終わったんだろ?」

「せや。別に哀川さんはお前と戦おうとしてここに来たわけやないで」

「上の名前で呼ぶな下の名前で呼べ。あたしを苗字で呼ぶのは敵だけだ」

「そら、すみません」

「俺の記憶が確かなら、怪我の原因はその女だろ!? だったら!!」

「信乃、落ち着かんかい! ここまでの怪我は予想外やけど、
 哀か、潤さんとお前を戦わせたのはASEの任務やったんや!」

「ASEの・・・任務?」

『それについては偉大なる私が説明しよう』

「その声は、友さん?」

哀川潤が持っていた端末のスピーカーから、
内通者と思っていた草薙水の声が聞こえた。
・・・この子、こんなハッキリとした話し方出来るの?

『ジェームス・波戸。ここからは私達だけで話をさせてもらう』

「わかってます、これも依頼に入っているんやから。
 ほな信乃。お大事にな。次会う時まで死ぬんやないぞ」

「お、お疲れ様です」

いつもと同じノリの別れの挨拶に、ついいつもと同じ挨拶を返してしまった。
それに振り返らず手だけを振って返事した波戸さんは部屋から出て行った。

「さて、そんじゃあたし達と今後について話をしようか」

「・・・・波戸さんが話をするのもASEの仕事って言っていましたけど、
 どこからが依頼で、どこからが依頼外になるんでしょうか?
 正直に答えてもらわないと依頼元へ契約に着いて話す必要がありますが・・・」

一応、意識を失う前は殴り合いをしていた相手と内通者だ。簡単には信頼できない。
でも殴り合いって言っても一方的な認識だと思う。哀川潤にしては、俺を相手にするのは
撫でてあげるのとなんら変わらないはずだ。それほどの実力差があったのだから。

「ASEの依頼内容か。なんだっけ、つーちゃん」

『一つ、ASE所属の≪西折 信乃≫を個人護衛として派遣する事。
 二つ、哀川 潤との戦闘する状況を作り出す事。
 三つ、以上の依頼内容には≪西折 信乃≫に知らせないものとする事。

 こんなところか』

「俺が、戦うこと自体が依頼だったのか?」

「そうだ。あんたの腕試しとしてね」

なんてこった・・・・こっちは死ぬ気で水さんを内通者であろうと守ろうとしたってのに。

「・・・なんでこんな事をした?
 それはあんたらがニシオリって、俺の苗字を別の発音で呼んでたよな。
 ニシオリ、弐栞。

 戦わせたのは≪弐栞の碧≫って言っていた事と関係あるのか?」

『察しが良いな。その通りだ。偉大なる私が誉めてつかわそう』

「結局、何がしたかったんだ?」

「お前の実力を測りたかったんだとよ。弐栞に迎い入れるために」

哀川潤はシニカルに笑った。


≪政治力の世界≫
信乃が生まれ育った≪表の世界≫と≪財力の世界≫と≪?????≫に並ぶ
世界の4分の1を司る世界。

その世界を牛耳るのが≪玖渚機関≫だ。別名≪アオの機関≫
日本における数少ない財閥家系の一つであり、その最上モデルでもある。
関連企業に傘下企業の数は21200以上。世界中に影響力を持つ。

壱外(いちがい)
 ≪弐栞(にしおり)
  ≪参榊(さんざか)
   ≪肆屍(しかばね)
    ≪伍砦(ごとりで)
     ≪陸枷(ろくかせ)
      ≪(しち)≫の名を飛ばして
       ≪捌限(はちきり)
そしてそれらを束ねる≪玖渚(くなぎさ)≫で組織されている。

≪草薙≫と依頼では名乗っていたが、本当の名は≪玖渚≫。
玖渚 友、玖渚 水の両名は、直径血筋であるとの事。

そして肝心の“西折”信乃との関係だが、察しの通り
本人は知らないが弐栞が本来の名前であるらしい。

西折信乃の祖父は、弐栞を継ぐはずであったが、弟の謀略により家から追い出されてしまった。

その後、弐栞から西折に改名して現代の西折信乃へと世代が変わった。

現在の弐栞の当主だが、才能が皆無でありながら大きな野望を持つと同時に
根拠のないプライドを持つ男らしい。

玖渚機関としても弐栞は必要な存在であるが、今は弐栞当主によりまともに機能していない。
そこで枝分かれした弐栞の血族を探して当代にしようと考えたのであった。

実際には西折信乃の父親を当代にしようと動いたが、死亡している事が判明し、
息子の西折信乃も、日本国籍上では死亡している。

だが、ASEの活躍の裏に10代前半の西折と名乗る『マルチエージェント』が
いる事を小耳にはさみ、もしやと思って哀川潤と戦わせて確認したらしい。

弐栞の特徴として『前世の記録』と『習得能力の早さ』、『習得能力の限界』がある。

『前世の記録』とは、前世の記憶とは若干異なり、前世を別の人間として
魂に刻まれた記録をいつでも見て読みだす事が出来るとのこと。

『習得能力の早さ』『習得能力の限界』とは、その名前の通り、習得能力の
早さと同時に、目で見て覚えた能力は、その8~9割の実力しか習得できない、
呪いといっても過言ではない限界値なのだ。

西折と名乗る『マルチエージェント』は、弐栞の特徴に該当していたのだ

そして何より、≪アオの機関≫である玖渚機関の一族の特徴である≪アオ≫を持っている。
一族の直系血筋を持つ者は必ず、体の一部に≪アオ≫を持っている。
そして弐栞は別名≪碧の弐栞≫と呼ばれている。

空の碧色と同じ色を持っている特徴も、西折と一致した。

そして調べれば、日本国籍の西折と同じ年代であり、作られたイギリス国籍など
様々な情報を考え見て、西折信乃は弐栞であると解ったのだ。





「つまり、俺の正体は≪弐栞≫である。だから機関に入れってことか?」

『その通りだ』

「お断りします」

『なぜだ? 偉大なる私からの話を蹴るつもりか?』

「はい、蹴ります。
 いきなりボコボコにして、いきなりお前は機関の人間だと言われて、
 はいそうですか、って言う人の方が少ないよ。

 それになに? 俺が技術を完全習得できないのは血の呪いだってか?」

「正確に言えば、呪いに近い才能だと思うぜ」

「俺はやりたい事を探している。その一環としてASEで、未熟者だけど
 『マルチエージェント』と呼ばれるような幅広い仕事をこなしてきた。

 でも、なんだ? 完全習得できない? どんなに頑張ってもできない!?
 呪い!? ふざけるな!! 俺がどんな気持ちで色々とやってきたと思ってんだよ!
 それを知らないで機関だか組織だかに入れってか!?」

「おいおい、信乃。落ち着けっての」

「出て行け! もうあんた達の話なんか聞きたくない!!」

「ち、しゃーねーな。つーちゃん、ここは引いとくのが吉だぜ」

『人類最強のお前が言うなら間違いないな。致し方ない。続きはまた今度だ』

「じゃーな、しのっぷ。縁があったらまた会おう!」

「二度と来るな!」

波戸さんと同じように後ろ手を振り、哀川潤は出て行った。



この数日間は俺はまともに睡眠を取る事が出来なかった。

玖渚機関の話が頭をグルグルと駆け巡る。でも答えには辿りつけない。

どうしようかと悩み続けている俺。

そんな所に、会うとは思わなかった人が訪ねてきた。


 コンコン

「あ~。どうぞ~」

なんだから頭が知恵熱でイッちゃっているから、返事は適当になった。

「失礼するよ」

「えっと、どなたさまで・・・・もしかして、師匠?」

「その呼ばれ方も久しぶりだね」

口元を少しだけ開けて微笑を浮かべたのは30代程の男性。

まだ母上が生きていた頃、年に1~2度ほど家に遊びに来てくれていた人だ。

師匠と呼んではいるが、この人に弟子入りしているわけでもない。
ただ単に名前が解らないからそう呼んでいるのだ。

母上も≪師匠≫と呼んでいて、師匠と言う言葉の意味を知らない頃から会っていたから
自然と俺からの呼び名も≪師匠≫となってしまった。

とは言ってみても、この人の≪戯言≫なる言葉遊びは弟子入りしたくなるほどすごい。
本人はしょせん口先だけとのことだが、戦わずして勝負する方法を知りつくしている。

そんな人を尊敬(笑)しているから、≪師匠≫という言葉も満更間違っていない。なんて戯言だけど。


しかし師匠と会ったのはずいぶん前だ。そんな人がなぜ俺の病室に?

「どうして・・・」

「うん、潤さんに頼まれたんだ」

「潤さん・・・哀川潤ですか?」

「そう」

師匠も関係者なのか?

「そうだよ。僕の名前、≪位置外(いちがい)≫だからね」

位置外、いちがい、壱外(いちがい)

俺の西折と同じ、本来の所属でもないのか。

「なかなかいい判断能力だね。友と水が欲しがるのも分かるよ」

「あの、師匠、さっきから俺、何も言ってないですよね?」

「ただの簡単な読心術と、会話術だよ。

 君が次に言うセリフは『いや、心を読まないで』・・・だ」

「いや、心を読まないで。・・・・はッ!」

ホントに読んでるよこの人!

「冗談はここまでにしておいて、僕が来たのには理由があるんだ」

「・・・哀川潤に何を言われたんですか?」

「別に大した事ないけど・・・それよりも潤さんの呼び名、注意した方が良いよ。
 『上の名前で呼ぶな下の名前で呼べ。あたしを苗字で呼ぶのは敵だけだ』って言われるよ」

「・・・別に敵認識でいいですよ」

「拗ねないでよ。潤さんからは信乃くんの退院手伝いをしてくるように言われたんだ」

「え? なんで哀川潤が?」

「潤さんは姫ちゃん、君のお母さんである≪西折一姫≫、旧姓≪紫木 一姫(ゆかりき いちひめ)≫の
 保護者なんだよ。信乃くんにしてみれば、戸籍上ではおばあちゃんみたいなもの。

 会って早々に戦ったみたいだけど、潤さんとしては信乃くんを気にしているんだよ」

「・・・・」

「とにかく、退院の準備をして。手続きとかは僕の方がやっておくよ」

「・・・お願いします」

哀川潤の知り合いということで、若干警戒レベルを上げたけど
話し合ってみると昔と同じく良くわからないけど良い人って感じのままだ。
それで警戒を弱めておこう。


数分後に着替えが終わり、タイミング良く師匠が部屋に戻ってきた。

「準備は終わった?」

「はい。荷物はほとんどないですし」

唯一の荷物と言えるA・Tはケースに戻して準備もできている。

「それじゃ、行こうか」

「行くってどこにですか」

師匠の口ぶりからすると俺をどこかに連れていくつもりのようだ。

ASEからの連絡では、任務は完了しているとのことで現地解散。
俺の予定では船の予約を取って、本拠地として住んでいるアメリカに移動するつもりだった。

「面白いところ」

「?」

師匠ははぐらかして進んでいく。まぁ、とりあえずは付き合ってみようかな。



「ぴあのばー、くらっしゅ・くらしっく?」

「いや、英語っぽく発音してとは言わないけれど、片仮名っぽく発音しようよ」

「Piano Bar,Crash Classic」

「流暢だね」

「拠点はアメリカですから。それで、なぜここに?」

「待ち合わせをしててね、赤色と」

「赤って!?」

「哀川潤さんだよ」

「・・・帰っていいですか?」

「だめ」

「はぁー・・・」

「諦めたら、試合終了だよ」

「今のタイミング、諦めは肝心って言うんじゃないの」

「戯言だよ」

「戯言ですね」

「さて、中に入るとしようか」

「・・・了解です」

いや、本当に諦めは肝心だよね。


バーの中は、クラッシュのイメージとはかけ離れていた
雰囲気の良いピアノバーだ。

ピアノを弾く燕尾服の人が1人、バーカウンターの座っている人が1人。

座っているのは赤色、哀川潤だ。

「よ、いーちゃん!」

「お久しぶりです、哀川さん」

「上の名前で呼ぶな下の名前で呼べ。あたしを苗字で呼ぶのは敵だけだ」

「そうでしたね、潤さん」

「は、分かっていて言ってるくせに。
 それとしのっぷ、数日ぶりだな」

「しのっぷ言うな」

「それはすまんね、弐栞」

「わざと言っているのか、“哀川”さん。
 俺の名前は西折信乃だ!」

「そう怒るなよ、クールに行こうぜ。
 曲識(まがしき)、良い曲を頼む」

「悪くない・・いや、良い曲を、だな。了解した」

哀川潤のリクエストにピアノの曲が変わった。

俺の怒りを落ち着かせるかのような、ゆったりした曲。

「・・・・」

「少しは落ち着いたかい、信乃くん?」

「ええ、師匠。

 でも、私も知らない家族事情を出されて、勝手に試されて
 勝手に当主になれと言われて、良い気持ちにはならないですよ」

「そうだろうな。あたしも依頼じゃ無けりゃ、身内と戦うのなんて御免だからな」

「あそこまで一方的な結果なのに、実際は戦いたくありませんでしたって言いたいのか?」

「依頼であれば、身内でも攻撃するぜ」

この人は・・・反省も後悔も全くないのか。

「とか言って、潤さん。
 水から聞きましたよ。結構手加減していたんでしょ?
 戦いの時もハンデをつけてたみたいですし。
 
 それに『あたしを一歩でも動かしたらお前の勝ちにしてやる』でしたっけ?
 一度吹き飛ばされたから信乃くんの勝ちじゃないですか?」

「か~、これだからお前の事は嫌いで大好きなんだよ。
 はいはい、勝負はあたしの負けですよ~。
 これで満足か!」

「満足しました。まぁ戯言ですけど」

「俺は、満足していない」

「ですって。どうします潤さん? 信乃くんはダメだそうですよ」

「んなもの、あたしがどうにかして出来るもんじゃないだろ。
 負けだって認めたのに、これ以上どうしろっての」

「・・・・」

「・・・あーやだやだ、めんどくせ~奴。
 あたし帰るわ」

「僕は残ります。信乃くん、話があるからもう少し残っててもらっていい?」

「・・はい」

「あばよ」

「さようなら」

「・・・・」

俺は無言だったが、哀川潤は気にせずに手を振って、店から出て行った。

「信乃くん、大丈夫?」

「ええ、師匠、心配ないです。
 なんと言いますか・・・哀川さんを許していないのは自分の意地だと
 わかっているんですが、分かっていても簡単には許せないみたいです」

「そっか。僕の場合、許せない感情があっても理性が納得すれば許してしまう。
 そういった激情に似た感情は嫌いじゃないよ」

「・・・・」

「さて、曲識さんの曲を聴くだけでもいいけど、少し雑談した方が良いかもしれない。
 悩んでいることをずっと悩むよりも、別の事を考えた方が頭がスッキリする事もあるし。

 君の家族事情は僕も知っているし、対象は関係しているけど
 それについては触れるつもりは無いから安心して」

「・・・わかりました」

「何から話そうか? そうだね、僕が請負人の仕事の話でもしようか」

そうして、しばらくの間、俺は師匠と色々な話をした。

師匠が言っている請負人とは、簡単に言えば何でも屋の事らしい。
何でも屋と言うが、師匠がメインにしている内容はトラブルバスターのようだった。
昔から口先だけが得意と言っているし、俺も尊敬するほど話が上手い人だが
まさか本当に口先を使って仕事をしているとは思わなかった。でも納得はした。

話の流れで、この世界を形成している4つの世界について話も聞いた。

≪表世界≫。概略すると、平和で戦争な世界。一般的な日常世界だ。凡庸ながらも最上位の力を持っている。
≪財力の世界≫。四神一鏡が占めている。表世界に一番近い世界らしい。
≪政治力の世界≫。玖渚機関が占めている。一種の結社みたいなものでその力は横向きに広いらしい。
≪暴力の世界≫。異形・異端・異能こそが支配する秩序で無秩序な世界らしい。

ここでは科学サイドと魔術サイドについては触れられてないので、勘付かれないように聞いてみた。

すると師匠も、科学と魔術の対立は認知していた。
科学と魔術は、どの世界に分類するか聞いてみたが、簡単には説明できないらしい。

先程の4つの世界(表、財力、政治力、暴力)を重複している人物はほとんどいないらしいが、
表の世界かつ魔術サイドなどの人間はいるらしい。

4つの世界と、科学サイド魔術サイドを同時に考えると複雑になるので、
この2つの世界概要は並行して存在するとしたほうが良いようだ。

例えるならば部活動と委員会。
サッカー部に所属して図書委員でもある人もいれば、野球部だけの人もいる。または風紀委員だけの人もいる。
4つの世界、魔術の世界、これらを混ぜて無理に分けると余計に分かりづらい内容のようだ。

ただ、科学サイドは別物らしい。
根本は科学サイドという組織だが、学園都市は基本的に表世界に所属し、かつ財力の世界と政治力の世界も手出ししているナイスカオスな組織運営だとか。

まったく知らなかった。そんな所で勉強していたのか、俺。

それから話したのは師匠の今前の仕事の話、他にも師匠が大学時代に様々な事件に巻き込まれた話だ。

その中で母上、紫木一姫の話もあった。
正直、その内容は否定したかった。母上は大量殺人をしていたんて・・・・信じたくなかった。
でも師匠は無粋な嘘はつかない筈だ。
むしろ母上のことを庇うようにフォローしてくれたから本当の事なのだろう。
それが俺には嬉しかった。


師匠の話は面白かった。表やら財力やら政治力やら暴力やら、裏も表も関係無く事件に関わっている。

謙遜というか捻くれているように師匠は言っているが、その実力は誇っていいと思う。
口先テクニックは最上級と思っていたが、神業級だったんだな。

他にも口で解決した話を聞いていた。
イギリス代表候補生、織田信長の子孫的な女性、お嬢様だけど実は重度のオタクッ子、
大爆発と共に現れた精霊の少女。
ただしどれも解決した後に求婚され、断ると攻撃してきたらしい。
良く生き残ったね、師匠。

口だけでは解決できないものを、部下として手伝ってくれている“崩子(ほうこ)”さんや
深空(みそら)”さん、“高海(たかみ)”さんに手伝ってもらって
力づくでの仕事もあるとか。・・・助手が全員美人女性なのは師匠の趣味だろうか?

師匠の話は尽きない。本当に興味引かれるものだ。
同時に自分の世界の認識が狭い事と、“弐栞”の呪縛が強い事を感じた。

表世界以外の人が聴けば、西折(にしおり)弐栞(にしおり)と受け止められる。
そして血族である事は違いない俺は、否定する事が出来ない。


つづく
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧