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ゲルググSEED DESTINY

作者:BK201
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第六十七話 勝利か敗北か

「レクイエム、砲門準備良し」

「エネルギー充填量、七十パーセントを超えました」

「発射準備良し、最終確認を怠るな」

月基地ダイダロス――――連合が作り上げた決戦兵器であるレクイエムを今、ザフトの部隊は運用し発射態勢を整えつつあった。

「デュランダル議長からの暗号通信来ました。目標、ポイントF―05のPー29」

「ようやく連合との長い戦いも終わるという事か。しかし、このデスティニープランによって戦争そのものは続くことになるんだろうな」

ダイダロス基地に待機していた司令はプラントの最高権力者であるデュランダル議長からのレクイエム発射の命令を受け、砲撃の準備を進める。狙うように指示されたポイントは施設等は無いはずの空間だ。だが、おそらくはそこに敵が集結しているのだろう。

「レクイエムいつでも発射できます」

「エネルギーは万全ではないようですが、どうされますか?」

どうやら百パーセントの出力で撃つには時間がもうしばらく必要らしい。だが、元々の威力が大きいので問題はないだろう。拠点や施設を潰すという目的ならばともかく、狙っているのはおそらく艦隊。ならば十全でなくとも殲滅可能だと予測する。

「構わない、そのまま発射できるようになったら撃て」

そして、後数分もすれば放たれるだろうと思われたその時――――

「未確認機接近!速いッ!?」

レーダーに数機のMSサイズの機体が接近するのを確認する。接近する未確認機の映像が映され、正体が判明した。しかし、それは彼らにとっては喜ばしくない存在だった。

「あの機体は!フリーダムの同系統機か!」

未確認のMSの正体。それはアークエンジェルに所属しているストライクフリーダムだった。それに追随するように移動している少数の機体はMA形態のリゼル。純粋に直線機動ならリゼルはストライクフリーダムに追いつくことも可能だ。そして、僅かに遅れてはいるものの、月面を滑りながら進んでいるドムトルーパー。彼らの狙いは明らかである。

「レクイエム防衛の為にMS隊に迎撃を命じます!」

オペレーターはそう言ってすぐにザフトのMS隊を発進させるように命じる。あまり多くはないものの、たった数機のMSを迎撃するには十分と言える戦力。だが、司令はフリーダムと同系統の機体という事から作戦を変更させる。

「迂闊に接近させるな!MS隊の連携を生かして足止めに専念させろ!」

たった数機に何を言っているのだといった様子を周りは思うが、そのような視線に構うことなく指示を出す。元々コーディネーターによくある傾向だが、各々個人の実力に対するプライドが高いのだ。だが、司令から見てしまえばそんなものは唾棄すべきものである。敵が強いことは認めなくてはいけない。自身の実力不足は認識し、どう補うのかをハッキリとさせなくてはいけない。そして何より――――

「我々の目的は目の前のMSの迎撃ではなく、レクイエムの発射だ。そこをはき違えるな!」

階級はなくとも指揮官としての組み分けは組織として当然存在する。そして、彼はこの場における最も高い指揮権を持つ。よって彼の命令にザフトの部隊は従い、ストライクフリーダムの接近を防ぐように攻撃する事となった。

「各機、散開して敵を攪乱せよ。レクイエム発射まで時間を稼げればこちらの勝利だ」

たった数機――――されど、その敵は油断することの出来ない相手。そう考えながらレクイエムの発射までの残り時間が迫っていた。







「クッ、どうしてこんな!これ以上、憎しみを広げちゃいけないって分かるだろうに!」

ラクスやエターナルとの連絡が取れなくなって以来、クライン派との関係は希薄なものとなっていた。元々、彼らはラクス・クラインやシーゲル・クラインという個人に対しての信奉が大きい。団結力という面ではラクスがいる限りは統一されているが、組織としては二流以下だ。何せ、ラクス個人が居なくなってしまえば瓦解してしまう。
結果、彼らはアークエンジェルに対する支援よりもラクス・クライン、エターナルの捜索に力を入れており、未だに手掛かりがつかめていない状況から組織内でも不和が起こり始めているらしい。元々アークエンジェルはエターナルを通じてクライン派と連携することが多いのも原因の一つだろう。
何はともあれ、結果的に情報網が壊滅的な状況となっていたアークエンジェルのクルーはレクイエムが発射されるかもしれないという噂程度ではあったものの情報を月都市のコペルニクスで手に入れ、彼らはその実態を確認しにやってきたのだ。そして、実際に発射されようとしていた様子を見て、それを止めるために出撃していた。

「なんでこんなものを使うっていうんだ!」

数機のザクがストライクフリーダムの射線を警戒しつつ、攻撃を仕掛ける。しかし、性能と技量の差は大きい。射線の警戒など無意味とばかりに両手にもつビームライフルが次々と敵の継戦能力を奪っていく。

『この野郎!』

ナギナタを回転させながら接近戦を仕掛けようとするゲルググとビームソードで叩き切ろうとするグフ、その様子を見て支援攻撃をしようとするガナーウィザードやC型装備を取り付けたザクやゲルググ。一斉にこれだけの攻撃を仕掛ければ或いは――――そんな淡い期待を持っていたのだろうが、キラの乗るストライクフリーダムを相手にするには不十分である。

「どいてくれ!」

接近戦を仕掛けてきた敵の攻撃を左手のビームシールドで受け止め、逆手に抜き出したビームサーベルでゲルググの腕と頭を切り裂く。ほぼ同時に攻撃を仕掛けてきたグフには機関砲によって頭部のモノアイを破壊し、体勢を崩した瞬間を狙って左手にそのまま持っていたビームライフルで撃ち抜いた。
しかし、数が多い。倒しきれない数というわけではないが、このままではレクイエム発射までに間に合わない。そんな風に考えていると焦りが動きに出てきたのか、単調な動きが出る。そして、数少ないその隙を狙って、一機のゲルググFS型が不意打ちを仕掛けた。
明確な隙を見せるタイミングを虎視眈々と狙っていたのだろう。相手もおそらくはエースパイロット。その動きには相打ち覚悟でも敵に傷を負わせるといった気概が見て取れる。キラも狙われたことに気付くが、既に回避が間に合う段階ではない。

(一撃を貰って反撃するしかない。でも、当たり所が悪ければ戦闘の継続が……そうなったらレクイエムを止める事が――――)

そう思ってせめて攻撃を受け止める部分を減らそうとばかりに機体を僅かに動かす。しかし、ゲルググFS型の攻撃はストライクフリーダムに届くことはなかった。何故なら、横合いからリゼルやドムトルーパーが攻撃を仕掛け、ゲルググFS型を撃ち抜いたからだ。

「バルトフェルドさん、ヒルダさん!」

『キラ君、先に行きたまえ。ここは我々で抑える。君は一刻も早くレクイエムを止めるんだ!』

『アンタがラクス様の為に平和を願ってるっていうならとっととぶっ壊してくるんだよ!』

そう言い放ち、バルトフェルドはリゼルのビームランチャーで接近していたローラシア級の艦を一隻撃ち落とす。そして、キラは彼の言葉を受け入れ、レクイエムに向かう事にした。

「すいません、ここはお願いします!」

すぐさま追いかけようとザフトのMS隊が動き出すが、そうはいかないとバルトフェルドとヒルダ等の部隊が立ち塞がる。

『今更出て来て何を成そうという。何故出てきた、もうお前達の時代ではない』

『言ってくれるね、だが――――だからと言って君たちの行いを認めるわけにはいかんのでな』

『お前達に認められる必要性などないな』

数機のMSが包囲することによって逃げ場をなくし、確実に仕留めようとする。武装としてのサイズが大きいビームランチャーは接近されてしまえば確実にデッドウェイトにしかならない。だからこそ、敵部隊は一度零距離まで近づいて攻撃を仕掛けようと画策するが、相手の腕も良く中々接近できずにいた。

『マーズ、行くよ!』

『はいよッと!』

リゼルを囲い込んだ包囲網に対してヒルダとマーズは横合いから攻撃を仕掛ける。包囲していた陣形を崩される事となったザフトの部隊はリゼルに追撃を仕掛けることも出来ずに、そのまま次々と迎撃されていった。

「間に合わせる――――もうこれ以上、多くの人を犠牲にしちゃいけないんだ!」

レクイエムが発射のさせようとしている中、キラのストライクフリーダムは駆ける。ドラグーンで周りの敵を近づけさせないようにしながら両手に持つビームライフルで牽制することによって敵の攻撃を掻い潜り、突破していた。

『これで戦争を終わられられると言うのに、まだお前たちは邪魔をするつもりか』

そうした中、戦線を突破してレクイエムを捉えるまであとわずかという距離で一機の機体が正面に立ちふさがる。

「あの機体は!?」

配色の違いと背面に取り付けられたシルエットが違うが見覚えのある機体――――インパルスだ。しかし、キラが驚愕したのはインパルスだからという理由だけではない。背面に取り付けられている武装を見たからだった。

『フリーダム――――容赦はしない、行くぞ!』

両肩から放たれる収束ビーム砲。テレスコピックバレルと言われた伸縮機能を持つ砲塔だ。そして、その攻撃にビームシールドで防いだフリーダムに向かって、インパルスはエクスカリバーを抜き放ち、二刀流の状態で斬りかかる。

「グッ!?」

咄嗟にキラは後ろに下がり、胸の収束ビームで攻撃するが両腕に装備されたインパルスのビームシールドによって弾かれた。その瞬間を狙い、ドラグーンが狙いを付けるが、インパルスは両腕に取り付けられているビームブーメランを投げつけ、ドラグーンを切り裂いた。

『どうした、フリーダム!こんなものか――――その程度だと言うのなら、このデスティニーインパルスに勝てると思うな!』

デスティニーインパルス――――機体スペックはバランスや整備性、エネルギーの問題、インパルスという機体としてのコンセプトから外れているといった多数の欠点を持つものの、性能面だけで見るならば目の前のストライクフリーダムと引けを取らないものだ。
VPS装甲は薄い赤紫のような色をしており、本来ならばマーレ・ストロードが搭乗したであろう一号機であることが推測される。だが、マーレ自身がインパルスを望んでいなかった事と、より性能が高いと言われている現在の搭乗機から彼がパイロットとして選ばれることはなく、乗っているパイロットは単純に相性と実力で選ばれた人間だった。

「邪魔をしないでくれ!」

しかし、適性と実力で選ばれたとはいえ、彼の技量はキラ・ヤマトに遠く及ばない。時間を稼ぐという役割としてはその実力は妥当だと言えたが、キラは最高のコーディネーターであり、デスティニーインパルスのパイロットはSEEDの因子すら持たないただの一パイロットだ。

『蚊トンボみたいに飛び回ってるだけか!』

エクスカリバーによる大振りはストライクフリーダムの機動性について行くことが出来ず、真正面から向き合っているにも関わらず、初撃の不意打ち染みた攻撃以外でまともに当てれてはいない。そのような状況に腹が立ったのか、デスティニーインパルスの攻撃はより単調なものとなっていく。

「今だ!」

『なッ、何!?』

キラはSEEDを覚醒させ、一瞬でデスティニーインパルスの大剣であるエクスカリバーを叩き切る。まさかの攻撃にパイロットは狼狽えつつも、距離を取って両肩の収束ビームを放った。だが、覚醒している今のキラはその攻撃を完全に見切り、避けつつも接近し、ビームサーベルで両肩のビーム砲をも切り裂く。

『くそ、何だよコイツ!?この距離から詰めるだと、化け物め!』

まだ武器は失っていないとばかりに両腕にあるビームブーメランを抜いてサーベルのように長く展開する。エネルギーが大きく消費されるものの、残されている武装が少ないのだから仕方がないのだ。

『これでッ!』

「その程度の攻撃――――意味がないって事ぐらい、分かるだろに!」

振り下ろされるビームブーメランをビームシールドで防ぎ、そのまま腰のレールガンで撃ち抜いて、吹き飛ばす。

『カハッ……!?』

コックピットに直接攻撃を受けた衝撃によってシートが揺れ、かなりの負荷が強いられる。それでもVPS装甲によって撃墜を免れたことで反撃とばかりにビームブーメランを投げつけた。撃墜は無理でも腕の一本はと思っていたが、そのような甘い考えは当然とばかりにうち捨てられる。

『まだ終わっていない!フリーダムゥッ――――!!』

「だったら、倒してでも――――押し通る!!」

月面に着陸し、近くにいたワイルドダガーの残骸からビームサーベルと思われる武器を取り上げ、データを打ち込んで展開させる。出力の規格があっていないこともありビームサーベルの展開部分から紫電が迸るが、そのような些事に気にする余裕はないとばかりにストライクフリーダムに向かって、最もエネルギーを食うであろう光の翼を展開させながら突撃する。

『ウオオォォォ――――!』

「ハアッ!!」

交差は一瞬――――ワイルドダガーのビームサーベルを振りかぶったデスティニーインパルスの渾身の一撃は確実にストライクフリーダムの軌道を読み切ったものだった。しかし、SEEDを覚醒させたキラはそれをあっさりと上回る。左手に持っていたビームサーベルを投げ捨て、デスティニーインパルスの右手首を掴んだのだ。
そしてそのまま残っている方の右手のビームサーベルで切り裂こうとする。デスティニーインパルスも左手で咄嗟にビームシールドを展開するが、キラはコックピットを狙わず、腕を切り裂いたために展開した意味はなかった。

『ガッ……だが、俺の勝ちだ……』

「な!しまった!?」

戦闘ではデスティニーインパルスのパイロットの完敗だった。だが、戦略で彼は勝利を収めた。レクイエムが今、発射された。
 
 

 
後書き
マーレが乗らなかったのでデスティニーインパルスは名無しのエースに引き渡されました。
そしてレクイエムは止まらず発射です。


それにしても先週レポート三本仕上げたっていうのに、今週中にいきなりレポート三本追加とか死ぬ。執筆作業も含めたら絶対作者は死ぬ(笑)
クラウ「それが定めなのだよ。さあ、俺と同じ目にあうといい」 
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