MS Operative Theory
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MSの大気圏突入①
——灼熱の大気圏突入を切り抜ける革新的機能とオプション装備——
MSが大気圏突入能力を持っていれば、宇宙から地球への侵攻が容易になることは明らかである。これまではHLVなどの大気圏突入艇や突入能力を持つ艦艇を利用することで地上への効果を行っていたが、対空攻撃からの防御策や展開速度、作戦の隠密性などを考えた場合、MSに突入能力を持たせた方が効果的である。
だが、強固な装甲が施されているMSですら、大気圏突入時の「摩擦熱」に耐えられる機体はほとんど存在しなかった。
この一般的に言う「摩擦熱」の大半は「圧縮断熱」と呼ばれる現象で発生するものである。「圧縮断熱」とは、空気を急速に圧縮した場合、周囲との熱交換が不可能となって高熱を発する現象で、大気圏突入時の圧縮断熱によって発する熱は1,000度から2,000度、突入速度によっては数万度にも達するといわれている。
旧世紀において、すでに大気圏突入時の高熱から突入艇を守る技術は開発されており、初期のカプセル・タイプには樹脂⁄セラミック塗膜の気化冷却を利用したアブレーション熱防御が採用され、またスペースシャトルのオービター(軌道周回機)には計5種類、10tもの耐熱⁄断熱タイルによる防御が施されていた。
宇宙世紀に入ってから一般的になった、地球・宇宙間往復シャトルの耐熱策も、基本的には旧世紀の技術の延長線上にあるものと言える。
だが、大気圏突入用艦艇はともかく、通常、大気圏突入が前提とされていないMSに、こうした処理は行われておらず、仮に装甲が熱に耐えられたとしても、内部機器が使用不可となるほどのダメージを受けることは確かであった。これは、U.C.0079,09,23、1,000度以上の高温に耐えることが可能と言われたザクⅡが、大気圏突入中に爆散していることからも明らかである。
一年戦争開戦以前の公国軍は、地球連邦が降伏した後に進駐軍として軍隊を地上に展開させるつもりであったために、最初からMSに大気圏突入を行わせることまでは考えていなかったのである。
ジオン公国軍とは逆に、MS単体での大気圏突入に興味を示したのが地球連邦軍である。連邦軍は最初期の実戦用MS開発計画である「V作戦」で開発したRX-78(ガンダム)に、「耐熱フィールド」と呼ばれる大気圏突入能力を搭載している。
この装備により、U.C.0079,09,23の大気圏突入戦において、ザクⅡが爆散する中、ガンダムは大気圏突入に成功している。以後の一年戦争の戦いにおいて、宇宙から地上への侵攻が行われたこともあり、連邦軍もガンダム以外の機体に大気圏突入能力を持たせることはなかった。
しかし、一年戦争後になって、オプション装備によって大気圏突入を達成するという発想に立ち、MS用大気圏突入装備である「バリュート・システム」を開発した。これにより、MSの行動領域と戦術はさらに拡大することになった。
補足事項
——大気圏突入が可能な艦艇や輸送艇など——
MS同様、宇宙艦艇においても、単独で大気圏突入を行えるものは少なく、バリュートなどの補助機器を必要とした。
この状況は艦艇にもビーム・シールドが装備されたザンスカール戦争まで続くこととなった。また、艦艇以外の大気圏突入用としてコムサイやHLVなどが一年戦争期に使用された。
■艦艇
宇宙での運用を前提に開発されていた艦艇は、その多くが大気圏内での飛行能力を持たないため、突入能力も有していなかった。
しかし、艦艇用のバリュートの開発と実装、そしてミノフスキー・クラフトの普及により、この状況は改善されることとなった。更にビーム・シールドの開発と搭載によって、単体での大気圏突入が可能となった。
●ホワイトベース
一年戦争時において大気圏突入能力を持つ数少ない艦艇。突入時には窓がシールドで閉ざされているのみね、他の装備などを必要としなかった。また、ジオン公国軍のザンジバルも単体での大気圏突入⁄離脱能力を有していた。
●サラダーン
ハマーン・カーン率いるネオ・ジオン艦隊の艦艇。U.C.0088の地球降下作戦にバリュートによる大気圏突入を行っている。他のネオ・ジオン艦艇やアーガマも同じバリュートを装備していたことが確認されている。
●リーンホース⁄ホワイトアーク
U.C.0153には艦艇にもビーム・シールドが搭載されていた。大気圏への突入の方法はMSと同じで、シールドを下に向けて展開し降下するものであった。対空攻撃への防御が可能で、さらに降下後の迅速な作戦展開が可能となるなどの利点を持つ。
■輸送艇など
ジオン公国軍が地球降下作戦で使用したHLVやコムサイなどが知られている。これらは、再利用が可能なものがほとんどで、コストパフォーマンスに優れていた。しかし、MSや艦艇用の大気圏突入用の装備が整えられるにつれて、HLVなどは使われなくなったようだ。
●コムサイ
ムサイ級巡洋艦に搭載されていた小型艇。一年戦争時では、単体での大気圏突入能力も有する数少ない機体である。また、カタパルトを使用することで、大気圏からの離脱も可能であった。U.C.0083には、大気圏離脱用のブースターを装備した機体が確認されている。
●HLV
ジオン公国軍が一年戦争で使用した大気圏突入用ポッド。ペイロードが大きく、6機のMS、もしくは10輌の大型車輌に加え、60名の兵員が搭載角であった。再利用も可能で、ブースターによる大気圏離脱能力も有していた。搭載量を増加させたHRSLなども知られている。
●シャトル
こうした民間シャトルは、グリプス戦役機に大気圏離脱用として用いられることがあった。これらのシャトルの中には、ガルダ級の輸送艇から発射された機体もあり、旧世紀のそれのように専用の発射システムを必要としないものもあったようだ。
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