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魔法少女リリカルなのは〜転生者の誓い〜

作者:muuma001
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第十三話・先を見る転生者


「そういえば…」


はれてなのはのジュエルシード探索への同行が許可されて僅か二日後の事

現在、俺は温泉旅館へとやって来ていた。

理由は温泉旅行で実に分かりやすい理由である。

ただしアリサちゃんやすずかちゃんの家族も一緒というかなり大所帯な旅行ではある。

もちろん最初はジュエルシード探索のために、なのはと俺は行かないつもりだったのだが


「この地域一帯は探し尽くしたし、ある程度離れた場所にも行ったほうが良いと思う」


というユーノの一言に加え

なのはが断った場合、アリサちゃんやすずかちゃんが悲しむのではないかという

考えが浮かんだ瞬間に俺達から行かないという選択肢は無くなったのだった。

そして、それならいっそ思いっきり休むかと思い

意気揚々と温泉に向かい

今まさに温泉の湯船に浸かろうとした瞬間に一つの事を思い出した


「…温泉といえばなのはとフェイトが戦う場所ではなかっただろうか?」


何気なく呟いたが

これがきっかけではっきりと思い出した、

間違いなく温泉でなのはとフェイトは戦うはずである。

俺というイレギュラーがどう影響するかは分からないが

今の所この世界のおおまかな話の流れは原作に添っているので確率的には高い

つまり、俺のとるべき行動は


「…なのはとなるべく一緒にいよう」


これだ。

無論、今から記憶をたどってジュエルシードを探すという選択肢はあった

いや、普通とるべき行動としては間違いなくこれだし

それになのはを危険な目に遭わせない為ならこれが一番良いのであろう。

しかし今までの失敗で俺は多くの人を悲しませたり心配させてきた

それは俺の勝手な自己満足と思い上がった自信の所為だ

それに俺は決して主人公などではない。

俺はなのはの兄だ

兄とは常に妹や弟の前を進むもの、ではない。

兄妹という名の絆の鎖で繋がれた共に歩むものなのだ

お互い助け合い、時にいがみ合い、そして前へと進む。

それが俺の描く理想の兄妹像

なのはに、皆に、気付かせてもらえた俺の大事な新たな信念だ。

よし、そうと決まれば・・・


「おい、みずなどうした早く入らないのか?」


と行動を起こす前に俺は呼び止められた

声の主は恭也兄さん。

どうやらなぜ温泉に早く入らないのかと聞いているようで

そこでようやく俺が湯船の前で立ち止まったままだという事に気付いた。


「あ、ああ、すぐ入るよ」


とりあえず返事をそそくさと返し俺は湯船の中へと入った

そして入れ替わりに兄さんが立ち上がり湯船から出口へと向かう

俺が湯船に浸かりきり、兄さんが出口の前に立った時そこで兄さんは立ち止まった

そして一言


「何か考え事をしてたみたいだが…、何か悩みがあったら言えよ?」


どうやら兄さんには俺が湯船の前で立ち止まった理由が見抜かれていたようだ


「分かった、頼りにしてるよ兄さん」

「ああ、任せろ」


そう言って今度こそ本当に兄さんは温泉から出て行く

その時の兄さんの背中は大きくとても頼もしいものに見えた。

いずれ俺もあのような立派な兄になれるのだろうか

今はまだ届きそうにもないがいずれ恭也兄さんみたいな立派な兄になりたいものである・・・



とりあえず

今は温泉を満喫する事にしよう。

せっかくの温泉旅行なのだから温泉を楽しまなければ損というものだ。

それから俺はしばらく温泉に浸かる

ぼんやりとただただ湯船に浸かった。

それから特にする事もなく温泉を堪能した

そして、気付いた。


「あ、ユーノの救出してない…」


温泉で暖まった体が急激に冷めた気がした。


「ま、まあユーノなら大丈夫だろ」


誰となしに呟いてみるがどうも心の慰めにはならないらしく

いまだ大きな失敗に気付いてしまった時特有の緊張感が失せる事はなかった。

しかし、件のユーノとなのはを含む女の子陣はすでに温泉内である

こんなとき俺がとるべき行動は・・・

いや、これ以上考えるのはやめよう。

様々な転生物のネット小説を読んだ記憶があるがことごとく温泉旅館において女湯に関わるのはフラグであった。

それも前に死亡が付くレベルの超級の地雷だ。

そして俺のとるべき行動は、


「よし、寝るか!」


無駄に明るい声でそう自分に言い聞かせ

俺は目の前の危機を回避した。

いや、したはずだった


「え、え?寝る?はへ?」


目の前にうろたえたアリサちゃんさえいなければ、だが・・・

マズい、何がマズいって

普通は温泉旅館にきて、風呂と寝室を往復し時には仮眠を取るのもおかしくはないだろう

しかし、現在の俺の状況を考えてみよう

ここをアリサちゃんに見られたかは定かではないがユーノを救出する方法が思いつかず女湯の前で思案顔でうんうん唸っていて

その後、急に目の前のアリサちゃんにむかって寝ようと口走る・・・

アウトだ、

それも同点のサッカーの試合でオンゴールを決めてしまった並で

いや、それにしてはアリサちゃんも寝るという単語に以上に敏感、いや小学生の勘違いとしてはいささか戦慄するものがあるが、

これが、フラグか



(強すぎんだろ、この野郎がぁ!)


余りの理不尽じみたフラグに心の中で怒りの声をあげるがもう遅い

こうなってしまった以上弁解のチャンスは与えられぬと思って良いだろう。

どうも先程からあの悪趣味な最高神のニヤケ面が頭から離れない

ああ、畜生めが、間違いなくアイツがタイミングやら運命やらを操作してるような気がしてきた

いや、それよりも今どうにかすべきは目の前のアリサちゃんだ

誤解を解けないと決まった訳ではない。

どうにかしなければ、とりあえず声をかけて・・・


「そ、そのアリサちゃん…?」


とそこで気付いた、アリサちゃんが覚悟を決めたような目でこちらを見ている事を


「あ、あのー、アリサちゃん?」


もう一度アリサちゃんに問いかけてみる、

すると消え入りそうな声で答えが返ってきた


「そ、そのあたし、みずなさんだったら…」


これは・・・、

いや、マズい。

先程までとマズいの含む意味こそ変わったが場合によってはもっとマズい。

どうすべきか、男として誤解としても女性にここまで言わせてしまった責任はとるべきなのか

それとも誤解をといてしまうのが懸命か

いや、小学生の女の子に対して責任を取るというのもそれはそれで大問題だが・・・

そんな思考の迷路に俺はとらわれていく

そしておかしな方向に俺の考えがまとまりかけた時


「あれ、二人ともどうしたの?」


我が愛しの妹、なのはが女湯から出てきた。

ああ、もう訳が分からない

どう考えてももうバットエンドに直行する未来しか見えない。

このとき、俺はもうこのフラグから逃げる事を放棄したのだった

その後はお約束というより、多分俺は人生初めてのなのはによるオハナシを受けた




いや普通にお話だったけどね、一時間ちかく延々と説教されるとは思わなかったが・・・
 
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