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流星のロックマン STARDUST BEGINS

作者:Arcadia
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星屑の覚醒
  15 覚醒の予兆

 
前書き
大分、間が空きました(泣)
スマヌです。
 

 
「.....」

彩斗が姿を変えたロックマン・カーネルソウルは目の前に屯っているウイルスたち3体を睨んだ。
正直、勝てる自信など全くない。
だがここで引き下がることは出来ない。
カーネルと数秒前に約束を交わしたばかりだ。
今、抱えている少女『アイリス』をつれてこの地獄のようなアンダーグラウンドから脱出する。
出口は明らかだ。
頭上の大穴、自分がセントラルエリアから落下してきた入り口であり出口。
しかし目の前の今にも襲いかかってきそうなウイルスを放置することは出来ない。

「...ハァァ!!!」

ロックマンは力強く一歩踏み出し右腕にサーベルを振りかざした。
カーネルのサーベルだ。
エネルギー出力の強さを示すレーザーの色が高出力の緑色。
普通のウイルスならば触れただけで消滅してしまうほどだ。
しかしこの地獄のようなジャングルで独自の進化を遂げたウイルスたちは一撃で消滅することはなかった。

「アァァ!!!タァァ!!」

斬りつけるとすぐさまターゲットを切り替え、蹴り倒して再び切りかかる。
『紺碧の闇』で鍛え上げられた感覚だった。
多くの敵に囲まれ相手にするときは、一体一体倒すのではなく、少しづつダメージを与え続ける方が効率的だった。
それを活かしながらロックマンはあっという間に最後のけもののようなウイルスを真っ二つに切り裂いた。

「ヤァァァ!!!」

アイリスを抱え、足に力を込める。
そして上を見上げ、一気に飛び上がる。
ロックマン=彩斗には驚きを感じることはなかった。
昨晩、シューティングスター・ロックマンと瓜二つの姿に変貌した時もこのように飛び上がり、ウェーブロードに飛び乗った。
人間の感覚の恐ろしいところは一度でも慣れてしまうと衝撃を感じなくなることだ。
飛び上がり辺りを見渡すと今にもデリート寸前で苦しんでいる大量のナビたちが見えた。

「っ....ゴメン」

ロックマンは唇を噛んだ。
全員を救うことなど出来ない。
助け出す頃には全員がデリートしてしまっている。
悔しくも一番救える可能性の高いアイリスだけを連れてこの地獄を後にする。
しかしナビたちは救いを求めている反面、『アイリスを確実に助けろ』というメッセージを送り賞賛しているようにも見えた。
まるで自分たちの意志を全て託すかのように。





















「Answer」

安食はGT-Rのアクセルを踏みながらそう口にした。
右耳にはMarque2を装着しているため、音声コマンドだけで通話に出ることが出来る。
着信は前もって用意していたLumiaへのものだった。
本来ならばもっと安価なヘッドセットで事足りるが、ビジネスの世界では電話を逃すわけにはいかない上に相手にはっきりと声を伝えるための高音質さも要求される。
そのため多少高くともValkyrieは全社員に最新の高音質モデルを支給するのだ。

「どうだ?」
『成功です。デンサンシティ及び才葉シティのインターネットエリアを統括するサーバーをDOS攻撃でダウンさせました。ソースコードもほとんど改ざんし、復旧には最短で半月程の時間を要します』
「そうか。では次の段階に計画をシフトする」
『了解しました。例のブツはプライムタウンの廃倉庫に移送済みです』

通話の相手はValkyrieの技術班の連中だ。
詳しいこのサイバーテロの手法に関しては知らないし興味もない。
専門用語を言われても全く理解できない。
安食は正直、機械オンチだった。
言われた通りの手順である程度のことは出来る。
一応、学習力はある方だが、何かのきっかけがなければ専門書を開くことはない。

「スマートフォンって今でも根強い人気だよな。特に我々のようなビジネスマンからは」
『は?..ええ、インターネット回線よりも電話回線の方が音声はクリアですし、ビジネスの要件ははっきりとクライアントに要件を伝える必要もありますし、インターネット回線がダウンした場合でも使えますから』

なぜ自分が今、文明の最先端であるトランサーではなく、スマートフォンを使っているのかといえば、自分たちの計画の中でインターネットは使い物にならなくなるからだ。
100%インターネットに依存しているトランサーやPETは使用不可能になる。
そのくらいは理解している。

「今夜で終わらせたいじゃないの」

通話を切ると安食は呟く。
計画がうまくいけば、今夜で全てが片付く。
残るは廃倉庫にあるブツだ。
それが決め手となるのだ。
しかし安食の脳裏には不安が拭い切れなかった。
言うまでもなく、なぜ自分の部下が昨晩殺されたのかだ。
ディーラーとの抗争が原因の可能性もあるが疑問が残る。
なぜディーラーがその場に現れたのか。
自分たちの動きがマークされていたといえばそれまでだが、しっくりと来ない。
1つの可能性が浮かんでいた。

「あのガキか?」

自分たちの顧客を殺した少年。
正確には少年かどうかは暗くて分からなかった。
男のようで女のような中性的な顔は今でも覚えている。
暗闇に紛れ、40人近い体のいい連中から貧弱な連中までも殺したような人殺しだ。
全く可能性が無いわけではない。

「......頼むから間違っててくれよ」

安食はイライラしながら片手を胸ポケットに伸ばし、ゴクリと水なしで薬を飲む。
感情を抑えるのにはいつもこの薬を使っていた。
中毒性があるのは玉に瑕だがかなりの効果がある。
これによって心の平穏を取り戻す。
反面、ただ一人の少年に不安要素を抱いている自分が何処か許せなかった。




















「ここは...?」

アイリスは目を覚ました。
先程の地獄とは一風変わった世界だった。
川のように緑と青のデータが流れる白を基調にした空間。
アイリスはゆっくりと体を起こした。

「目を覚ましたのかい?」
「あなたは...光くん?」
「え?僕を知ってるのかい?」
「いえ...人違い...みたい」

隣には1人の少年が座っていた。
彩斗だ。
アイリスには見覚えのある顔だった。
しかし彩斗はアイリスの知っている人間"本人"では無かった。

「私...デリートするはずだったのに...!?兄さんは!?」
「....」

アイリスは自分のメモリを遡りつつ、「自分がなぜ助かったのか?」、「カーネルがどうなったのか?」という当然の疑問に辿り着く。
だが彩斗には答えづらい質問だった。
首を横に振る。
アイリスも答えはなんとなく想像できていたものの、実際に答えを知ってみると悲しさを抑えられない。
涙が自然と流れてくる。

「カーネルは僕に君を託した。何があっても助けろって...。君はデリート寸前だったよ。でも...僕はプログラムを持ってる。どんなプログラムでも時間さえあれば修復できる...」
「....あなたはネットナビ?人間?」

アイリスは疑問を口にした。
自分の知っている彩斗はネットナビだ。
しかし目の前にいるのは電脳空間にいると言っても、どう考えても人間としか思えない格好だ。

「...多分、人間」
「そう」
「...ところで、君...僕と会ったことないかい?僕は君を見たことがある...夢で何度も僕の前に現れた」
「...いいえ、初めてのはず」
「そう、ゴメンね」

彩斗は疲れきったようにその場に横になった。
アイリスの修復で体力を使った。

「どうして私を助けてくれたの?兄さんに頼まれたからって...あの地獄なら誰だって見てみぬふりをするはず...」
「僕にも妹がいる。きっと同じような状況に置かれたら僕もカーネルと同じ事をするハズさ。だから...どうしても放っておけなかった。だから...これから...僕がカーネルの代わりになる。僕が君を守る」
「!?...ありがとう」

今までそんなことを言われたことはなかった。
ここまでこの程度の言葉が尊く思えたことなど無かった。
嬉しさで心が温まったような気分だった。

「ところで...どうしたの?何か悩んでいるような顔をしてる」
「...僕は何をやってもダメだった...友だちも守り切れず、人殺しにもなり切れず、おまけにナビたちも救えなかった....」
「....」
「友だちの復讐を...するための手段はもう手に入れているっていうのに。もう一度、使う勇気がないんだ」

彩斗は悲しそうな顔を浮かべた。
何をやっても中途半端になってしまう自分を恥じていた。
出来る事なら口にしたくはなかった。
だが自然とアイリスには話してしまう。
ミヤと同じだった。
なぜかアイリスとミヤを重ねる。
優しい性格のミヤならここで自分を止めるだろうと彩斗は理解できていた。
視界のアイリスがミヤに見えてくる。

「!?...」

『ねぇ、アキちゃん。もういいよ。やめて。私のことはもういいよ』

アイリスが本当にそう言っているように感じた。
だがアイリスが言ったことは違った。

「確かに辛いことだと思う...でも私の友だちはね、どんなことでも最後までやり抜いた。本当にやりたいことがあるなら、何もかもかなぐり捨ててやり抜けばいい。あの地獄から私を助けてくれたあなたならどんなことでも決断してやり遂げられるはず」

「...決断」

彩斗は例のメールを思い出した。
何かが吹っ切れたような気がした。
特別何か変わったのかと言われればそうではない。
彼女の話し方が何処かミヤと似ていた。
自分なんかダメだと過小評価して前に進めない自分に自身を持たせるような励まし方。
きっと出来る。
そんな希望が胸の中を掴む。
彩斗はゆっくりと深呼吸して立ち上がる。

「....ありがとう。アイリス...ちゃん」
「うん。あっ、そういえば、まだ名前を聞いてなかったわ」
「僕は...サイト。本名は知らないけど、妹が僕をそう呼んでくれるんだ」
「...よろしくね。サイトくん」

彩斗は少しだけ笑いかけると、プラグアウトした。















「兄さん!!大丈夫ですか?」
「ああ」

彩斗は現実空間で意識を取り戻す。
耳が痛んだ。
メリーが何度も鼓膜が破れるほど起こそうとしたのだ。
彩斗は深呼吸をして首を振り、頭を抑えた。

「大変なんです!これを見てください!!」
「ん?」

メリーはTouchSmartを指さした。
例の盗聴システムとの接続は切断されてしまっていた。

「ネットワークがダウンしたので、接続は切れてますけど、最後の盗聴記録が...」
「...くそ」

TouchSmartの画面にはSMSのログの盗聴結果が表示されていた。



デンサンシティ並びに才葉シティのインターネットシステムの破壊に成功。
これより計画を第二段階にシフトする。
Valkyrie本社よりエミッターはデンサンシティ・プライムタウンの第二産業ビル3階倉庫に移送済み。


それは計画が順調に進んでいることを知らせるメールだった。
彩斗は思わず拳を握った。
連中の計画はパニックそのものだった。
デンサンシティと才葉シティ。
この2つはニホンにおいては先進的な産業都市でインターネットシステムの中枢を担う街だ。
特にデンサンシティには世界的IT企業であるI.P.Cエンタープライズのニホン法人がある。
そんな重要都市のシステムが破壊されれば、ニホンは世界から孤立したも同然だ。
海外からの情報も伝わらず、株式取引も停止。
今まで誰もが考えもしなかったことだ。
それだけインターネットに人々の生活は依存しきっていたのだった。

「.....」
「孤児たちはみんな就寝時間なので眠っていますが、下の階ではパニック状態です。ディーラーの世界中の支部との連絡もダウンして....」
「....ありがとう。今日はもう休もう。僕らに出来ることは何もない」

彩斗はあっさりと諦めた。
そう言って椅子に背中を預ける。
だがキーボードに手を伸ばし、ウィンドウを表示させた。

「アイリスちゃん、見えてるかい?」
『ええ』

ウィンドウ上にはアイリスが姿を現す。
メリーはそれを覗きこんだ。

『あなたがサイトくんの妹さんですか?』
「ハイ...メリーです」

メリーは返事をしながら彩斗の顔を見た。

「さっきの攻撃の時に助けたんだ。今夜は彼女と一緒にいてくれないか?あれだけの災害の後だ。誰か一緒にいてくれた方が安心できるはずだから....」
「分かりました...」

彩斗はメリーにそう言ってPCに接続されたWEBカメラの電源を落とす。
メリーはそのままパソコンに自身をプラグインする。
これによって彩斗のPCと部屋は切断されたも同然になった。

「ふぅ...」

彩斗はため息をついた。
そして枕元で充電されていたトランサーを手に取る。

「僕はまだ...復讐を終えてない。トラッシュ、力を貸せ」
『...』

彩斗はウィザードウィンドウで全く口を開かずにこちらを見つめる狼と鷹の中間体のようなトラッシュに言った。
返事が無いため正直言って伝わっているかは確認しようがないが、そんなことは問題ではなかった。
彩斗はデスクトップに復元された『BEGINS.EXE』を起動する。
全く指の動きに引っ掛かりは無かった。
スムーズに予習でもして自信満々とでも言わんばかりに『Yes』のタブをタッチした。

「....トランスコード000、スターダスト・ロックマン」

彩斗はトランサーから排出されたカードを見た。
普通のバトルカードとは全く違う装飾がなされ、流星のエンブレム、銀色に青のライン、そして何よりも『TransCode 000 STARDUST ROCKMAN』とプリントされている。
彩斗は何かと親近感を感じていた。
スターダスト、すなわち「星屑」だ。
輝き過ぎずに地味ながらも何かの目的を果たせるようなネーミングだ。

「行こう...」

彩斗はそう呟くとトランサーを左腕に装着して一気に部屋を飛び出した。









 
 

 
後書き
最後までお読みいただきありがとうございました!

最近、受験で忙しくなってきたので、ほぼ休載状態が続きますが、時折更新することもあるかもしれません。

なのでたまに見に来ていただけたら幸いです... 
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