吉良の奇妙な生活
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第一部「吉良吉影は眠れない」
第五話「サンドイッチ窃盗犯」
前書き
はい、更新です!!
というわけで、ついにあいつが出ます。 出ますと言っても…メインでもサブキャラでもない立ち位置の彼ですがね。まぁ原作を知らない方も楽しんでいただけたらなと思います。
第五話「サンドイッチ窃盗犯」
サンジェルマン付近にてそれは起こった。私たちは今、サンドイッチ窃盗犯を追っている。しかも、スタンドの犯行で有ることも明確になるも私たちは見失ってしまった。
「おぃおぃ、どうするんだよぉ~吉影様~。」
「どうもこうも、これじゃ埒があかない。二手に別れるぞ。私は右へ。君は左を捜索するんだ。」
「わかったぜ。んじゃ気をつけろよな。」
「君に心配されるほど私も衰えていない。」
二手に別れた私と有伍は早速捜索にあたる。周りを眺めるが一向にそれらしき人物は見当たらないようである。
犯人はそう遠くにいないはずだ。スタンド使いにも射程範囲というものがある。だから本体である奴も私たちの行動には目を通しているのだろう。しかし、逃がさないぞ。この吉良吉影という名にかけて全力で捕らえてみせる。
「しかし、腹が立つな。面と向かって私と向き合わない奴はクズだ。小心者め。」
「なんだと!?」
背後に犯人らしい発言が耳元に入る。今、確実に私の背後にいる誰かが犯人だ。私は振り返る。
しかしそこから全く声が聞こえなくなり識別ができなくなった。
「気のせいか?」
聞いた感じだと学生くらいの声のトーンだった気がする。だが学生ならそこら中に溢れかえっている。一人一人尋問していってもいいがそれでは時間がかかる。その間に逃げられるだろう。
「しかたあるまい…念のためにサンドイッチを爆弾に変えてよかったよ。フー。安心安心。」
もちろんハッタリだ。スタンドのダメージは本体にも返る。それを利用すればいい。今の私の発言で犯人は私を警戒…もしくは仕留めにくるだろう。
「さてと…点火するかな。そして今日は帰るかな。」
「まてっー!!」
思った通りだ。食いついてきた。粛清タイムと行こうか。
「!?」
な、なんだと!?有伍!?サンドイッチを持っていないぞ、こいつは、本物か?いや、まて…もし本物の有伍なら飛びかかったりなどしない。偽物だ。なら構うことはない!!
「弱いッ!!」
バコンッ!!
飛びかかる有伍(偽)をキラークイーンで踏みつけにする。すると有伍は砕け、木片の人形になり変わった。
「こ、これは!?人形!?」
「ッチ…。迷わず倒したか。」
「お前か?本体は…。」
私の前に突如現れた学生服の男。服装の格好からして先輩。彼は片手にサンドイッチの入ったサンジェルマンの紙袋を2つ所持していた。彼がスタンドの本体…犯人。
「そうだよ。俺だ。まぁ自己紹介してやるよ。
俺は間田利雄三年だ。まぁ、俺の名を知ったところでお前は俺に敗れる運命だけどな。」
「運命?運命は私に味方してくれているんだ。君のようなゲスに名乗る名はない。」
ゴゴゴゴゴ…。
どうする?先手必勝でキラークイーンを叩き込むか、それとも奴の様子を見るか…。ここで奴を倒さなければならないのには変わりはない。
「だせよ。お前のスタンド。」
「なんのことだ?」
「とぼけるんじゃねえ!!さっきこのサンドイッチを爆弾に変えたとかなんとか言ってたじゃねえか!!んな安心できるわきゃねぇだろ!!」
「さぁ…なんのことかな?」
私はあえて知らんようなそぶりで奴の様子をみる。それからにする。奴がスタンドを出したと同時に叩き込む。スピードなら私の方が上のはずだ。
「すっとぼけるのもいい加減にしろよ!!ぶっ殺してやる!!サーフィス!!」
「キラークイーン!!な、なんだ!?」
間田は背中に隠していた人形を私自身に変身させ、私と向かい合わせになる。とても奇妙な気分だ。自分の分身と目を合わせることなどないだろう。それ故に私は動揺してしまった。
「どうだ?自分の分身を間近で見た感想は?ハハハw さぁ、やれよ。自分を殴ってみろよ!!」
「どうしようもないクズだな。貴様には慈悲の気持ちなど全くもって感じないよ。今すぐにでも吹き飛ばしてやる。」
グッ…。体が動かない。どうゆうことだ!?
「そうかいそうかい。愉快愉快。だけど僕の前には無力だよ。対象の人物に化けた人形は君を操作するからね。」
「な、なんだと!?操作!?そんな馬鹿な!!」
「さて、まずはその爆弾とやらを解除してもらおうかな。」
間田は私に化けた人形に命令を下し、サンドイッチを持たせた。
「どうだ?爆弾を解除できたか?」
「いいえ、この吉良吉影という人間は最初から爆弾など仕掛けてなどおりません。」
くっ…。ばれてしまったか…。というより、この男をなんとかしなければ…。
「へぇー。僕を出し抜いたんだねぇ~。まぁ、君らしいよね~。ったく…ハッタリかよ。」
「何が言いたい?」
「何?僕に逆らうのかい?まぁ逆らう奴はどうなるか、思い知らせてやるよ。」
間田は不適な笑みを浮かべ、人形を操作する。それと同じ動きをする私が恐ろしかった。そしてこれから起きるであろう身の危険を。
「オラッ!!オラッ!!」
ゴスッゴスッ!!
「うぐぉっ…ぐはぁっ…。」
動きを固定された私は一方的に殴り蹴りを加えられた。時間からして3分程度だがまさに地獄のように長かったような感覚だ。この怒り、絶対にぶつけてやる。
「へぇー。吉良くんって言ったよね?君、案外タフなんだね。まぁその方が都合がいいんだけどね。」
「貴様…どうなるか…わかっているんだろうな?」
「ん?何が?ハハハw 今の君は僕よりも悲惨だよ。散々すぎるよねぇ~。僕が受けてきたように君にも僕の気持ちをわからせてあげるよ。」
この男…頭がイカレてるのか?それとも元々頭のネジが飛んでいるのか?とてもとは思えないその残虐さに私は今までにない屈辱と怒りが私を支配した。
「そうだねぇー。次は、そうこの大事そうに着けてるそのネクタイ!!いいよね~。これって結構高いんじゃなーい?」
「!?やめろ!!それに触れるな!!」
「触るなって言われると触りたくなるよね~。そうだ、記念にもらっとこうかな!!」
バシッ…。
ネクタイが強引にも千切られてしまった。そしてそのネクタイは今、間田の足に踏みつけられている。…。殺してしまおうか?
「調子に乗るなよ…。」
「ぇ?なんだって?アハハ…負け犬の遠吠えって奴?ホント君はマヌケだねぇー。自分がどんな状況にいるのかわからな…」
プッツーン。
もう理性など知らん。私の思うようにさせてもらう。ネクタイ…そしてよくも私をコケにしてくれたな…。
シュババババババッ!!
突如怒りを露わにした私のキラークイーンは私の意思とは関係なく、間田に怒涛のラッシュを放つ。
ズドドドドドドドドッ!!
「ウゲェアアアァアァア!!」
間田は大きく後方に吹っ飛び、店内の窓を突き破り、倒れた。
「ゴホッゴホッ…。ど、どういうことだ!?な、なんで奴が動けるんだ!?わけわからない!!」
コツコツコツ…。
「なるほど…。よーくわかったよ。君がゲス以外の何者ではないことがな。もう過程や方法など選ばない。貴様を木っ端微塵に吹き飛ばすだけだ!!」
「ひ、ひぃいいい!!そ、そうだ、サーフィス!!僕を守れ!!」
地に突っ伏している彼は、人形を呼び起こそうとするが全く反応がなかった。その時、私は砕けた人形を晒し、彼の歪んだ顔を眺めた。
「ほぉー。君が言っているのは…これのことだな?」
「ひぃいいい…。ゆ、許してください!!お願いします!!何でもしますから!!」
「許す?誰が許すと言った?」
私の怒りはもはや誰にも止められない。歯止めの効かない歯車のようなものだ。さぁ、どうしてくれようか。
「お願いしますよぉ~!!この通り!!この通りだから!!」
間田は土下座を繰り返し、命乞いをしている。
だが私には関係なかろう。こいつは私をコケにしたのだ、もうどうなったって構わないのだ。
「わ、わかったよ。全部言うよ!!」
「ん?他に言い残したいことがあるのか?」
「いや、違うよ!!そ、そうだ…弓と矢の話。興味はない?」
「な…に…。」
弓と矢…。元はと言えば、最終目的はこれだ。
ぶちのめす、吹き飛ばすのはあと回しだ。聞くだけ聞いておくか。私も鬼ではない。
「なーんだ。やっぱり興味あるじゃん?」
「黙れ…吹き飛ばすぞ。」
「ひ、ひぃいい。わ、わかったよ!!そ、そう。弓と矢…僕はその弓に射抜かれてスタンド使いになったんだ!!その弓は対象を射抜けば射抜くほど、その対象となった人間は力を得るんだ!!そう、だから君のそのスタンドももっと強くなるはず!!」
強くなる?フフフ…なかなか面白い…。ぅ、いや、惑わされてはいけない。あくまでも平穏のため、それ以上は求めない。それが私のルール。
「…。確かに良い代物だ。しかし私が聞きたいのはそんなことではない…。」
「じゃあなんだよ!!何が聞きたいんだよ!!」
「所有者の名を言え。」
その瞬間、間田はぶるぶると震えだし、私に再度確認を取った。
「ほ、ほ、本当に…知りたいのか?」
「ぁぁ。それが私の求めている答えだからだ。」
「僕は、何も知らないぞッ!!」
「そうか、そうか。」
ゴスッ!!
白を切る間田に私は一蹴りに怒りを込め、彼の顔面にぶちまけた。
「ぐふぁっ…。わ、わかった!!だから暴行はやめてくれ!!」
「さっさといえ…。考えが変わった。言えば、お前を解放してやる。それならいいだろう?お互いのためにもな。それとも…何か言えない理由でも?」
「…。悪い。僕にもそれは言えない。僕にも追手は来ているんだ。下手をすれば、僕だけでなく君も始末されちゃうよ。」
追手?つまり組織的に弓と矢は守られているのか?そうなると厄介だな。ここで下手に話されては面倒だ。リスクのあることは私は好まない。
「…。そうか、ならば…」
「ひ、ひぃ。」
完全に怯え切っている間田は顔を覆い隠していた。しかし、私にはもう暴行など加える気なども微塵もない。有益な情報、組織的に弓と矢は関係していることが分かっただけでも進歩したと言えよう。ネクタイの件はこいつに同じものを用意してもらえばいい。
「私の下部になれ。君には私のために働いてもらう。嫌ならこの場で消すが?」
「つ…つまり…許してくれる?ってこと?」
「もちろんだ。ただし…ゴホッゴホッ…。」
私は声のトーンを低くし、印象付けようとしたが、思うように声が出ず、むせてしまった。みっともない。こんな醜態…見せるのは嫌だが仕方ないだろう。
「ゴホッ…すまない。」
「ぁ、うん。」
「ネクタイは…弁償しろ…ゴホッゴホッ…。」
「ぁ、はい。」
これでは台無しではないか!!何故こんなにも咳が酷いのだ。私も弱ったようだな。体力を付けなくては…。そうだ、近くにスポーツジムがオープンしたはずだ。今度そちらに行って見ようか。
後書き
オマケ 第四話「吉良の亀③」
私はその疑問を抱いた亀すくいという場で立ち尽くしていた。
これはなんだ?金魚すくいのようなものなのか?それの対象が亀?そんなバカな。
「すまないけど、これはなんだい?」
屋台の主は答えた。
「亀すくいだよ。知らんのかい?まぁ無理もないさ、今年始めたばかりだからね。」
「ほぅ・・・今年からか・・・」
「まぁ、最初で最後だがな。」
店主は悲しそうな表情を浮かべ、私にそう告げた。最初で最後。きっとこの人は来年この杜王町から姿を消す。どんな理由であれ、これが最初で最後であると彼は私に語ってくれた。
「そうか、それで話に戻るが、これはなんだ?」
「見たとおり亀をすくうのさ。」
「どうやってだ?まさかあの紙切れのようなものですくうわけじゃないだろうな?」
店主は引きつった笑みを浮かべ、背中に隠していたそれを投げ捨てた。
「いやいや、そうじゃないさ、あんな紙切れですくえると思うのかい?」
「いや、あなた…何か捨てましたよね?」
「気にするな。まぁあれだ、これも何かの縁だ。いいぞ。この中から一匹もって帰れ。」
店主は私に対し、亀を持ち帰れといった。正直私はその気になれなかった。その理由は2つだ。まずは単刀直入に、この店主は私に対しごまかそうとしていたこと。これでは私がバカにされているような気分だ。実に不快だ。そしてもうひとつ、それは私はこの後、祭りを台無しにすることを心に決めていたからだ。私は一度決めたことはやりとげるタチだ。しかし、生涯初めて、迷うことを知った。今私は迷っている。破壊を行使するのかそれとも・・・。
「・・・仕方ない、そういうのなら受け取らないわけにはいかないだろう。」
「それでこそ、君だ。さぁ選べ。」
私は破壊を拒んだ。決断の末、私はこの店主の気持ちを優先した。今までは自分を優先的に物事を運んできたが…やめよう、深く考えれば私の正気は保てなくなりそうだ。
「そうだな、こいつにするよ。」
「ハハハ、お前、見る目がいいな!!そりゃ大物だぞ。」
「そうかい。いいのか?こいつをもらっていって。」
「おうよ、どのみち、おめえさんと会うのもこれで最後だ。なんならもっといるか?」
「いや、結構です。それじゃ失礼するよ。」
私は一匹のミドリガメを手に取り、その場を去った。これが私と亀との出会い、そして店主との出会いであり別れだった。私は一匹の亀とともに生きていくことにした。
そしてそのミドリガメは私によって亀一郎と名付けられた。それからというもの私のそばに亀という存在が加わった。それが私の亀である。
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