医者の覚悟
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第二章
「俺達が出来ることなんて」
「この小さなキャンプだけで手が一杯だからな」
「ええ、そうですよね」
「しかしだ」
「それでもですね」
「その俺達でもいないよりはましだろう」
隆則は自分の無力さを感じそれに悔しさを感じていた、だが。
今はそれでもだった、目の前で苦しんでいる難民達のことを考えてそれで嘉一に対して言うのである。
「だから明日もな」
「はい、働きましょう」
「少しでも多くの人をな」
「助けないといけないですね」
「やるからな」
ここにいるからには、というのだ。
「絶対にな」
「そうですね、やらないと」
「ゼロよりはゼロコンマでも何かあった方がいい」
全くないよりは、というのだ。
「だからな」
「はい、じゃあ明日も」
嘉一は隆則の言葉に頷いた、そしてだった。
この日は休みそしてまた働く、そうしたのだった。
だが難民の数は減らず負傷者や病人の数も難民と比例して多くなるばかりだった、そして。
食料や薬、包帯等はそれと反比例して減っていく。嘉一は青い顔になりそのうえで隆則に対して話した。
「先生、そろそろです」
「風邪薬もか」
「はい、なくなってきました」
「食物はまだあるな」
「保存食ばかりですが」
そちらはまだ何とか、というのだ。
「どうしますか?」
「消化に悪いからな」
保存食はどうしても固くなる、それでだ。
「子供に食べさせるにはな」
「少し辛いですね」
「よし、水で柔らかくさせてな」
「そうして食べてもらいますか」
「体力がないとどうしようもない」
体力はエネルギー補給からだ、そういうことだ。
「だからな」
「まずはですね」
「栄養だ」
それを摂ってもらうというのだ。
「あと皆じっくり寝てもらう」
「それしかないですね」
「そうだ、今はだ」
薬がない、それならだった。隆則は医師としてこの場で最もいいと思われる対処法を出した。しかしそれはあくまで病気のことで。
負傷者についてもだ、嘉一は辛い顔で言うのだった。
「包帯もです」
「それもか」
「あと少ししか」
「補充もか」
「来るあてもありません」
それもないというのだ。
「それも全く」
「そうか」
「どうします?包帯は」
「代わりのものを使う」
隆則は苦い顔で答えた。
「そうする」
「といいますと」
「白い布があればな」
「それを使うんですね」
「そうする」
こう嘉一に話すのだった。
「わかったな」
「代用品ですか」
「ないなら仕方ない」
ないからといって手当をしない訳にはいかない、だからだというのだ。
「それを使う」
「わかりました、それじゃあ」
「足りぬ足りぬは工夫が足りぬっていうな」
隆則は苦い顔のまま嘉一に話していく。
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