男子校×全寮制=薔薇がさく
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第壱章 【転入編】
男子校×全寮制=薔薇がさく 【第二話】
前書き
今回は食堂での話。
椎名視点です。
{side 椎名}
部屋から出てきた伊吹を見て、思わず目を丸くする。
藍色の着物を茶色い帯できゅっと巻いている。
話すとそんな事はなかったが、伊吹は大人びた雰囲気の持ち主なので、その落ち着いた色がしっくりくる。
「伊吹、その着物どうしたの...?」
「あぁ、俺の私服って和服やから。実家で小さいころから着せられてたから、洋服は合わんくて」
「もしかして、伊吹の家ってあの書道で有名な?」
もしやと思い尋ねてみると、「そうやで~」と、きょとんとした顔で返された。
「なるほどね。それにしても似合ってるね」
そう言いながら伊吹の頬をなでて、くすりと笑う。
「えへへ。ありがとぉ~」
満面の笑みで照れる伊吹は、まるで飼い主に褒められた犬のようである。
椎名はなんとなく実家の犬を思い出しながら、伊吹の頭をなでた。
廊下に出ると、まだ5時頃だからか人は少なかった。
だが、大きな規模の親衛隊をもつ椎名と正体不明の和服美少年が、一人部屋のはずの椎名の部屋から出てきたら...
もちろん注目を浴びる。
「ねぇ、あの子誰だろ?すごく美人じゃない?」
「うん。椎名様の友達かなぁ...見たことないね」
「うわぁ。俺、あの子すっげぇ好みなんだけど」
心の中で「あ~あ、めんどくさい」と思う。伊吹のほうを見ると、困惑したように服の袖をつんつん引っ張られる。
「なぁなぁ、しいちゃん。俺たちめっちゃ見られてへん? やっぱ和服はあかんのかなぁ?」
伊吹が自身の着物をみおろして、しょんぼりしている。
なぜか伊吹を見ていると父性反応をくすぐられるな、と思いつつ安心させるために微笑む。
「大丈夫。みんな始めて見る伊吹がめずらしいだけだから」
「そっか、そうやな。ならええねんけど」
伊吹がホッとしたように笑うと、それを見た周りが悶えていたが伊吹に悪影響だと思い、さっさとその場を離れた。
*
「ここが食堂だよ。僕は料理なんてできないから、大体ここを使ってる」
「おおぉ...。めっちゃ広いやん!なんか美味しそうな匂いするし」
食堂は夕方時だからだろう、ほとんどの席が空いている。
ちらほらと来ている生徒は談笑しながら楽しそうに食事している。
椎名がカウンターへ、周りをボーっと見渡している伊吹の手をひき連れて行く。
カウンターにはかっこいいウェイターの男性が、きれいな笑顔で立っていた。
「こんにちわ。本日のご注文はどういたしましょう?」
「僕はミートスパゲッティ。伊吹はどうする?」
「ううんと、和食なら何でもいいで」
「では、ミートスパゲッティと和食定食でよろしいでしょうか?」
「はい」
「では少々お待ちください」
二人は一番端っこの窓側へ移動した。
「しいちゃんしいちゃん、今のうちに学園説明っていうんしてや」
伊吹がぐてーんと机に突っ伏しながら、椎名の指先をいじっている。
「うん、そうだね。ちょっと驚くかもしれないけど、この学園にはゲイが多いんだ。ノンケなんて一割くらい」
「......えええぇぇ!?...それほんま?」
「ほんとだよ。それでね、生徒たちから特に人気な子には《親衛隊》っていうものがあるんだ」
「しんえいたい?」
「簡単に言うと、アイドルのファンクラブみたいなものかな。ちなみに僕ももってるよ」
伊吹はすでについていけない、という風にぷるぷると首を振った。
きっと伊吹にも近い将来つくられるだろうけど、と思ったがあえて何も言わなかった。
「だから、ゲイのカップルを見ても受け入れてあげること。
親衛隊・特に生徒会の親衛隊は、過激な人が多くて、あまり近づくといじめの対象になりかねないから気をつけること。 分かった?」
「うん。たぶん、大丈夫」
なんとなく理解できたようだ。
伊吹の頭をなでていると、急にバッと顔を上げた伊吹が椎名の手をぐいとひっぱった。
「それやったら、しいちゃんとおる俺はいじめられんの!?」
「え、それは大丈夫だと思うよ。僕の親衛隊は穏便派だから」
ホッとしたような伊吹ににっこりと笑いかける。
〔それに、この学園はゲイとおなじくらい腐男子も多いし...〕
ちらりと視線を斜め前の席に移すと、可愛いチワワ系からゴツい体格の奴までがこちらを見て、話し合っている。
「あの二人、超萌える!」
「椎名様が頭なでなでしてるよ!かわいい~」
「かわいい×かわいいか...いいな」
...非常に喜んでらっしゃった。
しばらくすると、ウェイターのお兄さんが料理を運んできてくれた。
「ありがとうございます」と、伊吹が丁寧にお辞儀していた。
お兄さんは驚いていたが、すぐに嬉しそうにお礼を言っていた。
伊吹のことを弟のように接していた椎名だが、それを見て感心した。そして自分も見習って礼をしたのだった。
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【おまけ】 {モブ・腐男子視点}
「あ、しいちゃん。スパゲッティ一口ちょーだい!」
可愛い笑顔で、口を開く謎の和服美少年。しかも関西弁だ。
小さい口から赤い舌がちらちら見えていてエロ可愛い。
「しょうがないな、ほら。あーん」
椎名様がまるで愛しい子を見るような目で少年を見てらっしゃる...!
ここは楽園か!楽園なのか。ホモの神様ありがとう...!
「んん~、おいしいわぁ。ここの食堂気に入った♪」
そう言う少年の口元の汚れをティッシュで拭ってあげる椎名様。
かわいい×かわいいとか新境地なんですけど!新しい扉が今ひらく、なんつって。
「ほら伊吹、僕のあげたんだから、もちろんその卵焼きくれるよね?」
「えぇー、これ最後にとっとったのにぃ」
不満そうに唇を突き出す伊吹くん(仮)に有無を言わさない笑顔の椎名様。
しぶしぶと口元に差し出す伊吹くん(仮)と、それをぱくりと食べる椎名様。
ああ、私も萌えでおなかがいっぱいだよ。
これからは、この二人に注目せねば...。
【第二話】end
後書き
次はクラスに初顔出しです。
伊吹と椎名は無自覚で(椎名は計算かも)いちゃつきます。
伊吹は手を握ったり、頭をなでてもらうのが好きです。
椎名はさわり心地の良い伊吹の頭を気に入ってるとか。
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