マジカル☆ウィッチルフェイちゃん!
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マジカル☆ウィッチルフェイちゃん、等価交換を無視する!
幾度かの黄昏が訪れ、人々は寄り添い合い、自らの命を守る為に治める事を学びました。フィルツベルクはそんな人々が自由と自治の精神によって作り上げた街だそうです。
「あった。ここが、アーシャのアトリエよ」
「早く開けるにゃ」
「そうね!」
ベルちゃんは気にせず、鍵を開けて中に入りました。そして、お菓子を取り出してソファーにボフッと座りました。まさに勝手知ったる他人の家です。
「ベルちゃん、いくら知り合いの家で好きに使っていいと許可を貰ったとはいえ、お菓子まで……」
「美味しいよ?」
「いや、食べますけど……」
立ち上がったベルちゃんがクッキーを持って、私の唇に押し当ててきたのでそのまま食べました。美味しいです。というか、回復アイテムです。魔力や体力が回復しました。
「取りあえず、参考書を読ませて貰いましょうか……」
「えっ!? アタシはどうすんのよ! 暇じゃない!」
「……黒歌と白音のお散歩でもどうですか?」
本棚から本を取り出した後、浄化の魔術でアトリエ中を一気に綺麗にします。その後、ソファーに座りながら錬金術の参考書を解析していきます。翻訳魔術と解析魔術の同時使用で文字の勉強をしながら一緒に記憶していきます。
「いや、アンタ……駄目だこれ。仕方無いなーもう。ルフェイ、お金だけ貰っていくわよ」
「はいー」
ベルちゃんが何か言っていますが、私はどんどん読んでいきます。しばらく本に集中していると、誰かが訪ねて来ました。
「アーシャちゃん、居るの? って、誰かしら?」
でも、私は無視します。今は参考書の方が大切です。
「ちょっと、貴方……」
「たっだいま~」
「あ、ウィルベルちゃん。この子は?」
「ああ、本に集中してるから大概無視されるわよ。胸を揉んでも無視するし、頬っぺた引っ張っても無視するから。ただ、調子こいて遊んでたら本気で反撃されるからオススメしないわよ」
「そうなんだ……ところで、アーシャちゃんは?」
「しばらくしたら来るわよ。私達は先に行っておいてくれって頼まれただけだから」
「成程ね。それじゃあ、アーシャちゃんが戻ったら店に顔を出すように言っておいて」
「わかった」
数時間後、本を全て読み終えました。御蔭でこちらの錬金術もあらかた分かりましたが……私達は陣を書いて錬成するのに対して、こちら側の錬金術師は素材などを調合するようです。そうですね、この世界はエスカちゃんの出身世界でもあるようです。御蔭で錬金釜の事もわかります。やってることはほとんど変わりませんしね。分解して再構築するのです。
「ねぇねぇ、終わったの?」
「お腹空いたにゃぁ~」
「にゃあぁぁ~」
顔をあげると、辺りは真っ暗になり、ランプを付けた状態で黒歌と白音を膝に乗せたベルちゃんが恨めしそうにこちらを見ていました。机の上には食べ散らかされてお菓子がありますが、足りていないようです。
「何を食べたいのですか?」
「カレーライス!」
「あれは美味しくて好きにゃ」
「にゃあ」
「じゃあ、カレーライスにしましょう」
私は錬金釜に向かい、火を入れます。
「ちょっ、ルフェイ、それで作る気なの!」
「ええ。玉ねぎ、にんじん、じゃがいも……」
ルーの材料も全部叩き入れてぐるぐると混ぜます。魔力を流し込んで光ったらお皿を投入し、しばらくすると底にはカレーライスがありました。まさか、錬金釜で料理を作れるというのは恐ろしいですね。味はいいですし、特殊効果もついています。むしろ、錬金術で料理するなんて誰が考えたのか……私達はどちらかといえば漫画でいえば国家錬金術師の方ですしね。
「はい、どうぞ。っていうか、猫に玉ねぎはダメだった気が……」
「悪魔だから平気にゃ」
「そうですか」
「ほら、早く食べよ!」
「はいはい」
お食事をした後、お湯で身体を洗うだけだったのでベルちゃんと洗いっ子をします。既に女の子として、平気ですよ。もちろん、黒歌達もしっかりと洗いますが。最後に浄化で綺麗さっぱりです。
「というか、浄化で解決だよね!」
「ベルちゃん、様式美ですよ」
空いているベットの一つに2人と2匹で入って寝ました。次の日は黒猫の散歩道に行きました。そこには赤い髪の毛をポニーテールにしたお姉さんが居ました。
「お、昨日の子ね」
「えっと、誰ですか?」
「私はメリエッタよ」
「ルフェイが本に集中している間に来たのよ」
「ああ、そうでしたか。私はルフェイ・ペンドラゴンです。どうぞ、よろしくお願いしますね」
「ええ、こちらこそ」
それから、挨拶をしたあと、色々と必要そうな物を買っていきます。こちらの錬金術も素材=完成品の等価交換が基本ですので、素材は必要です。まあ、等価交換を無視する事も出来るんですけどね。その分、魔力を取られますが。そちら関係は私達の錬金術の方が優位ですね。汎用性では負けていますが。
「それにしても、困ったわね」
「どうしたの?」
「いえ、アーシャちゃんにお薬を頼もうと思ったのよ。それも大急ぎで。ほら、こないだスラグの暴走事件があったじゃない。それで薬の注文が殺到しているのよ」
「なら、ルフェイが作ったら? 薬ぐらい作れるでしょ?」
「まあ、確かに作れますが……」
「なら、お願いできないかしら? 報酬はちゃんと支払うから……」
「分かりました。報酬はお金でお願いします。こちらのお金は持ってないので。あ、これも買取できますか?」
私は金のインゴットを取り出して渡します。元石コロですが、問題有りません。
「金ね……なら、これぐらいかしら」
「では、それで。薬に必要な素材は……」
メリエッタさんに必要な素材を伝えて、いっぱい購入します。それから、錬金釜で調合します。
「アンタ、魔女っていうより錬金術師じゃない?」
「何を言っているのですが、ベルちゃん。魔女は釜の前でぐつぐつ煮るのは基本ですよ」
「いや、それってかなり古いからね! あと、しかも特殊な連中だし! むしろ、そっちが錬金術師と別れた連中だよ!」
「では、両方魔女です。何も問題無いですね」
数日かけてエリキシル剤を作成しました。体力魔力共に回復・極。効果遮断に戦闘不能も回復・強。更に再生回復・強。病に効くまで追加出来ました。
「アンタ、どうやったらそんなのできるのよ!」
「何って、魔力でゴリ押しして賢者の石替わりにしただけですよ。肉体再生すら可能です」
「アンタ、真理の扉を見た?」
「あんなの、自分を錬成して、通行料を寄越せと言ってくるのをねじふせて押し通れば簡単です。なぜわざわざ通行料を支払う必要があるのですか。真理なんて、世界の法則なんて我が前にひれ伏させる。それこそが魔女ですよ、ベルちゃん」
「いや、そんなのはアンタと大婆様だけだからね! 目指してるけどさ!」
「通行料を踏み倒すとか、悪魔より悪魔にゃ」
「にゃあ」
猫とベルちゃんを放置して、メリエッタさんに納品しに行きました。すると、無茶苦茶驚いていましたが、薄めて使えばひと瓶で十分に効果を得られると、喜んでいたので問題無いでしょう。私がアトリエに戻ると、アーシャさんとニオさんが帰っていました。
「ルフェイさん、お帰りなさい」
「お帰り、ルフェイちゃん」
「ただいまです。さあ、アーシャさん。さっさと弍番館に案内してください。私の理想郷に」
「えっと、流石に休憩させて欲しいな……なんて~」
「問題有りません。このエリキシル剤を飲んで強行軍を行えば直ぐです」
「いや、えっと、勿体無い……というか、失われた神々の霊薬ですよね!」
「そうともいいます。ほら、行きますよ」
「アーシャ、アタシはニオとゆっくり向かうから頑張ってねー」
「ベルちゃぁぁぁん、助け……」
私はアーシャさんを掴んで、白嬢に乗って、空へと飛び出しました。
「ひゃあああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
空中でアーシャさんを後ろに乗せたあと、断鎖術式ティマイオス・クリティアスの時空間歪曲機構を使って超特急で向かいました。30分で到着しましたが、アーシャさんはヘロヘロになっています。ちゃんとしていてくれればもっと早かったのですが、残念です。取りあえず、中に入ると、大量の本が私を出迎えてくれました。
「ようこそ当弍番館にいらっしゃいました。私はここの管理人をしているオディーリアと申します」
綺麗な水色の長い髪の毛をしたゴスロリの女性が迎え入れてくれました。彼女はオートマタのようで、背中から機械の羽が生えています。そして、頭にはネジがあります。
「ルフェイです。読書しにきました」
「どうぞ、思う存分にお読みください。アーシャはこちらで引き取ります」
「お願いします。おじ様……キースさんは?」
「今は出かけております」
「分かりました」
オディーリアさんにアーシャさんを預けたあと、纏めて作ったエリキシル材を栄養剤替わりにして、無数の本を一気に魔術で展開し、思考を分割。十冊ずつ、1分で読み切り記憶していきます。読んだ本は全て戻して次を引き抜いていきます。とっても楽しい至福の時間です。
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