緋弾のアリアGS Genius Scientist
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
イ・ウー編
武偵殺し
3弾 拳銃、刀、徒手格闘
前書き
タイトルにセンスが無くてごめんなさい。
主機関が壊れ停止したセグウェイたちを宣言通り解体してから、俺は体育倉庫に戻った。
中ではアリアが、なぜだか跳び箱に入り直していた。
跳び箱から上半身を出した状態で、「今、私の目の前で何が起きたの?」という顔をしている。
そして俺と目が合うと、ぎろ! と睨み目になって、モグラ叩きみたいに跳び箱の中へ引っ込んでしまった。
……何だ。
何でか怒っているようだ。
「――――お、恩になんて着ないわよ。あんなオモチャぐらい、あたし一人でも何とかできた。これは本当よ。本当の本当」
強がりながらアリアは、ゴソゴソ。何やら跳び箱の中でうごめく。
どうやら服の乱れを直しているらしい。
だが……それは少し難しいだろう。さっきお姫様抱っこしている際に気付いたが、アリアのスカートは最初の爆風のせいか、ホックが壊れてしまっていた。
「そ、それに、今のでさっきの件をうやむやにしようったって、そうはいかないから!あれは強制猥褻! れっきとした犯罪よ!」
と、アリアは跳び箱の指を突っ込む穴から紅い瞳でこっちを睨んでくる。
「さっきも言った気がするが、それは誤解なんだよ」
別にこのまま放っておいてもいいのだが、女の子をスカートの壊れたままにしておく訳にもいかないので、俺は――――シュルッ……と。
ズボンの留めるベルトを外して、跳び箱に投げ入れてやった。
「あれは不可抗力ってやつだ。断じて故意じゃない」
「あ、あれが不可抗力ですって!?」
アリアは跳び箱の中から、俺のベルトで留めたスカートを押さえつつヒラリと出てきた。
ふわ。見るからに身軽そうな体が、俺の正面に降り立つ。
え?
立ったのか? それで?
というぐらい、やはりアリアはちっこかった。ツインテールを留めているツノみたいな髪飾りで上乗せしても、145、ないだろう。
「ハ、ハッキリと……あんた……!」
ぶわああぁ。
アリアは言いながら睨み目になり、真っ赤になっている。
ぎゅう、と拳も握りしめている。
そして、わわ、わわ、わ。ローズピンクの唇を震わせてから、がいん! 言葉を発する勢いづけのためか床を踏みつけた。
「あ、あたしが気絶してるスキに、ふ、服を、ぬ、ぬぬ、脱がそうとしてたじゃないっ!」
そんなに恥ずかしいなら言うなよ。あと、俺は別に脱がそうとしていたわけじゃない。
「そ、そそ、それに、む、むむむ」
がいん!
また床を踏んだ。床になんか恨みでもあんのか?
「胸、見てたぁあああっ! これは事実! 強猥の現行犯!」
胸見ただけで強猥になるなら、全国のすべての男は犯罪者だな。
ぼふっ。
と頭から噴火しそうな勢いで、アリアはさらに赤くなった。耳まで真っ赤だ。
「あんたいったい! 何する! つもりだったのよ! せ、せ、責任取んなさいよ!」
がいん! がん! ががん!
新しいタイプの地団駄だな。それ。
ていうか責任って何だ責任って。
「よしアリア、冷静に考えよう。いいか。俺は高校生、それも今日から2年だ。中学生を脱がしたりするわけないだろ? 歳が離れすぎだ。だから――――安心しろ」
所々ため息を挟みつつ言うと、アリアは、わぁあー! という口になって両手を振り上げた。
声が出てないのは絶句しているということらしい。
そして――――ぎぎん! と涙目になって俺を睨みつける。
「あたしは中学生じゃない!!」
がすんっっっ! 踏みつけた床がとうとう弾けて木片が散った。よく耐えたな、床。あれだけ踏みつけられても抜けないなんて。
それにしても――――まずいな。
説得しようとしたが、しくじったようだ。
どうやら歳のことで、さらに怒らせてしまったらしい。
女というやつは、実際より歳上に見られると怒る習性があるらしい。しかもこの子は凶暴だ。このままだとそろそろ体育倉庫の床が抜ける。フォローしておいた方がいいだろう。
「……悪かった。インターンで入ってきた小学生だったんだな。助けられたときから、そうかもなとは思ってたんだ。しかし凄いな、アリアちゃんは――――」
勇敢な子だな、と続けようとした時……今度は、がばっ。
アリアが、顔を伏せた。
顔の上半分が、影になって見えなくなる。
そして、ばし、と両ふとももに左右の手をついた。
今度は何だ。忙しいやつだな。
「こんなヤツ……こんなヤツ……助けるんじゃ、なかった!!」
ばぎゅぎゅん!
「うおっ!」
足元に撃ち込まれた2発の銃弾に、俺は青ざめた。
コイツ、撃ったぞ! それも二丁拳銃で!
「 あ た し は 高 2 だ !! 」
一難去ってまた一難、再び――――だ。
「ま、待てッ!」
さらに至近距離から銃を向けてきたアリアに――――
俺はむしろ飛びかかり、その細腕を両脇に抱え込んで後ろに突き出させた。
ばりばりばりっ! がきんがきんっ!
アリアは反射的に引き金を引き、背後の床が着弾した音を上げる。
今の――――音でだいたい分かる。おそらく2丁とも弾切れだ。
強襲科の授業を、一学期だけとはいえマジメに受けておいてよかった。そうじゃなかったら、今ごろ鉛玉を何発も喰らって床をのたうち回っていただろう。
俺たちはそのまま、取っ組み合うような姿勢になった。
「――――んっ――――やぁっ!」
くるっ。
体をひねったかと思うと、アリアは柔道でいう跳ね腰みたいな技で、体格差をものともせず俺を投げ飛ばした。
「うっ――――!?」
コイツ、徒手格闘もできるのか? しかもやたら巧い。
辛うじて受け身を取ると、俺は――――その勢いを殺さず体育倉庫から転がり出た。
「逃げられないわよ! あたしは逃走する犯人を逃がしたことは! 1度も! ない!――――あ、あれ?あれれ、あれ?」
叫びながら、アリアはわしゃわしゃとスカートの内側を両手でまさぐった。
弾切れになった拳銃に再装填する、弾倉を探しているのだろう。
「どんまい。諦めろ」
俺はさっき投げられた際にスカートからスリ取っておいた予備弾倉を掲げ――――あさっての方向へ投げてみせる。
「――――あ!」
遠くの茂みに落ちていくそれを目で追ってから、アリアは無用の長物になってしまった拳銃を上下にブン! ブン! と振り回した。
やったな! やったな! という怒りの動作らしい。
「もう! 許さない! ひざまずいて泣いて謝っても、許さない!」
ひざまずいて泣いて謝ったら許してくれたのか。そういうことは先に言ってくれ。
アリアは拳銃をホルスターにぶち込むとセーラー服の背中に手を突っ込み――――
じゃきじゃき!
そこに隠していた刀を、二刀流で抜いた。
銃、徒手格闘ときて、今度は刀かよッ――――!
唖然とする俺に――――だんッ! アリアは人間離れした瞬発力で飛びかかってきた。
そしてその寸詰まりの日本刀を、俺の両肩めがけて流星みたいに突き出してくる。
ザザッ!
俺はなんとか、背後に転がってそれを避けた。
「強猥男は神妙に――――っわぉきゃっ!?」
勢いよく俺の方に踏み出したアリアは、新種のヤマネコみたいな声を上げ――――
見えない相手にバックドロップでも喰らったかのように、真後ろにブっ倒れた。
その足元には、アリアの弾倉から抜いておいた銃弾がいくつも転がっている。
さっき、投げた弾倉に向こうが目を奪われた隙にバラ撒いておいたのだ。
「こ、このッ……みゃおきゃっ!」
立ち上がろうとして弾を踏み、また両足が真上を向くぐらい勢いよくコケている。マンガやアニメみたいだな。
このスキに俺は、とにかく一目散に逃げることにした。
アリアは常人離れした戦闘力を持っている。だが、今は怒りと羞恥心で冷静さを欠いている状態だ。
対する俺は、強襲科にいた頃はGenius――――『天才』とまで呼ばれていたんだ。
冷静さを欠いた武偵1人くらいからなら、余裕で逃げ切れるさ――――
そう思いながら俺は、背中で、彼女の捨てゼリフを聞き流すのだった。
「この卑怯者! でっかい風穴――――あけてやるんだからぁ!」
それが俺、薬師丸ミズキと。
後に『緋弾のアリア』として世界中の犯罪者を震え上がらせる鬼武偵、神崎・H・アリアの……
硝煙のニオイにまみれた、最低最悪の、出会いだった。
後書き
最初から律儀に読んでくれてる皆様はお久しぶり。「この話から読み始めた。これでもう何も怖くない」という、文脈が滅茶苦茶でティロフィナーレな人は初めまして。白崎黒絵です。
更新が止まるとでも思いました?私は思いました(笑)
でも何とか根性で更新しましたよ!頑張りました!
それでは今回の話は、と………アリアが暴走してますね。はい。
そしてまたも、二次創作なのにやってることが原作と同じですね。何故でしょうね?
今しがた言ったように(書いたように?)この作品は二次創作です。
「二次創作とか言うんだったら、この(ほぼ)原作通りの話をなんとかしろよ!」
そう言いたい方もいらっしゃるでしょう。本当にごめんなさい。努力はしてるんです。
そんな方に、今回もまた、本作のヒロインの一人であるアリアさんから一言。
「細かいこと気にしたら、風穴あけるわよ!」
それでは皆さん。読んでくださってありがとうございました。また次回、更新されたら読んでやってください。お願いします。
疑問、質問、感想など、苦情以外は、ばんばん受け付けていますので、どしどし送ってください!
ページ上へ戻る