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久遠の神話

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第五十三話 十一人目の影その三

「しないみたいなの」
「別にしてもいいんじゃないかな」
「そこはお父さんの考えだからね」
「誰も言えないんだ」
「何か私や零にも気を使ってるみたい」
「村山さん達にも」
「私も別にいいと思うけれど」
 樹里は微妙な顔になって村山に話した。
「それでもなのよ」
「継母とかいうことかな」
「今でもあるからね、そうした話って」 
 樹里はポトフの方をちらりと見て言った。
「それを気にしてるみたいなの」
「けれどそれって」
「相手次第よね」
「うん、いい人ならそういう問題は起きないし」
 逆の場合はもだった。
「悪い人なら悪い人で気をつけて対応してね」
「お父さんの選ぶ人だったら問題ないけれどね」
「おじさんならなんだ」
「そうよ。上城君を見ていいっても言ったし」
 それで彼はこの家に出入り出来る様になっているのだ。彼は親公認の彼氏という訳だ。
「お母さんだってね」
「いい人だったから」
「そう、絶対に大丈夫よ」
「けれどそれでもなんだね」
 上城は今もオムレツを切って食べながら応える。ワインも飲む。
「おじさんは村山さん達に気を使って」
「そうみたいね。本当に気を使うことないのに」
「おじさんにはおじさんの考えがあってにしても」
「そういう気遣いってかえってね」
 樹里は少し苦笑いになって述べた。
「足枷に感じるから」
「いらないんだ」
「子供が親の足枷になるのって嫌じゃない」
 親孝行の樹里らしい考えだった。
「そういうのって」
「その逆もあるよね」
「逆って?」
「うん、親は子供の足枷になってはいけない」
 立場は逆だがその内容は同じだった。
「そう考えてると思うよ。おじさんも」
「そうでしょうね。だからそういうのってね」
「好きじゃないんだ」
「とにかく私は誰かに気を使われるのが好きじゃないの」
 樹里の性格的にそれはどうしても抵抗のあることなのだ。
「そうなのだけれど」
「ううん、けれど村山さんって」
「他の人にはっていうのね」
「凄く気を使うよね」
「まあそれはね」 
 樹里は上城の言葉にバツが悪そうに返した。
「何ていうかね」
「いいんだ」
「そう、気になって」
「何かそういうのって損だと思うけれど」
「そうかしら」
「だって。他の人は村山さんにいい風jにしてもらって村山さんはっていうから」
「別にそうは思わないけれど」  
 樹里は上城にこう返した。彼の言葉に他事いて。
「特にね」
「えっ、そうかな」
「だって。私も人によく出来ていい気持ちになるじゃない」
 いいことをすれば気持ちがいい、人は悪事を行うよりも善行で満足するものだからだ。
「それでなのよ」
「それでいいんだ」
「私もね」
「成程ね、そういう考えもあるね」
「そうでしょ。とにかくね」
 樹里はまたポトフの鍋を見た。そして壁の時計も見てこう彼に言った。 
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