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IS-最強の不良少女-

作者:炎狼
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挑発

 
前書き
今回はいつもより長いです。

詰め込み過ぎた感はありますがさっさと戦闘を書きたくなってきたのでw

ではどうぞー 

 
 シャルロットが自分を女だと明かしたその日の深夜。響は一人夜風に当たっていた。六月の夜は熱いとまでは行かないが、わずかに夏の香りを感じさせてきていた。

「……にしても、最近弛み過ぎだな」

 自嘲する様に響は俯く。

「……友達になりたいなんていってきた奴はアイツぐらいだったからか? それで自分が痛い目見るのはわかってたはずなんだけどなぁ」

 俯きながら響は呟いているが、口元は少しだけ笑みをこぼしていた。だが目は笑ってはおらず、悲しげだった。

「でもまぁ一回了承しちまったもんはもう曲げられねぇよな。……よっし! がんばってみますかね」

 髪をかきあげながら響は大きく言い放った。

 その声からは先ほどまでの悲しげな雰囲気は感じられず、むしろ楽しんでいるような雰囲気をかもし出していた。

 だが言った直後、響は苦虫を噛み潰したような表情になった。

「そうなるとアイツも含まれちまうのか……。それはめんどくせーな」

 心底けだるそうに響は溜息をついた。




 翌朝。響はセシリアとシャルロット、本音と共に朝食をとっていた。

「ふぉうひえはひーひゃんははふねんへふふぉーなふぇんふぉにはへないんらっへ?」

「口に食いもん入れたまま話すな!」

 もがもがと口に朝食を詰め込んだ本音の問いに響は思わず声を荒げながら答える。実際、セシリアたちもかなり苦笑いを浮かべている。

「ごくんっ。……いやぁゴメンゴメン、それでさ学年別トーナメントには出ないんだっけ?」

「出たって意味ねぇしな。つか飯粒ついてんぞ?」

「え? どこどこ?」

 響の指摘に本音が頬を撫でるが、ご飯粒がついているのは逆の頬だった。するとそれを見ていた響が痺れを切らしたのか、

「だーもうまどろっこしぃ!」

 響は身を乗り出し本音の頬に手を添えるとついていたご飯粒を取り、それを自らの口に運びそのまま飲み込んだ。

 それを見ていたセシリアとシャルロットが本音を見つめるとほぼ同時に小さく一言。

「……いいなぁ……」「……うらやましいですわ……」

 二人は心底うらやましそうに目を潤ませていた。

 それに気付かない響の前で本音が軽く俯きながら、

「……こういうことを何の気なしにできるのが凄いよねぇ……」

「あん? なんか言ったか?」

「んーん、なんでもないよー」

 本音の呟きが聞こえたのか響が問うが、彼女はいつものようにのほほんとしながら返答した。だがその顔はわずかに赤く染まっていた。

 

 だがそれを見逃さなかった女子二人。

 ……ま、まさか!? 布仏さんも響さんを? だとしたら不利ですわ……布仏さんは響さんと同じお部屋ですし。一体どうすれば!?

 ……まさかセシリアの他に布仏さんも狙ってるのかな? うー……でも響は誰でもああいうことしそうだし……。もしかしたら他にもいるのかも……。

「「はぁ」」

 二人の溜息は見事に重なった。

 すると響が席を立ち三人に言い放った。

「さてと、そろそろ教室行こうぜ?」

 響の言葉に三人ははたとしたように頷くと立ち上がった。




 食堂で朝食を終えた響達が廊下を歩いていると、ふと響が呼び止められた。

 振り向くとそこにいたのは、どうやら二年生のようだ。手にはなにやら小包のようなものを手にしている。

「なんか用スか?」

 響が前にでて二年生に聞くと、二年生は少し顔を赤らめ俯きながら小さく告げた。

「えと……。四月のこと覚えてるかな?」

「四月? あー……もしかしていじめの?」

 その言葉に二年生は頷く。

「あの時は助けてくれてどうもありがとう。鳴雨さんが助けてくれなかったら私今もいじめられてたと思うし……」

「気にしないでいいスよ。ホント気まぐれなんで」

「でもお礼がしたかったから。これ、受け取ってくれるかな?」

 彼女は持っていた小包をズイッと響に差し出す。一瞬響は戸惑ったような表情を浮かべるがやがて観念したようにため息をつくと。

「じゃあもらっときます。でもホントにあんま気にしなくていいスから」

「そう……でもこれで最後にするから言わせて。本当にありがとう」

 二年生はそれだけ言うと踵を返し、その場から去っていった。

「……ありがとう、ね」

 気恥ずかしくなったのか頭を掻きながら響が本音達のほうを向くと、

「ひゅーひゅー、ひーちゃんモテモテー」

「響さん……誰なんですの今のお方は……?」

「僕も詳しく教えてもらいたいなぁ……」

 本音は面白がっているものの、他の二人から出るオーラが尋常ではなくなっている。

 セシリアは目に光が灯っていないし、シャルロットは笑っているもののなぜか異様な威圧感がある。

「はぁ……結局こうなるわけか」

 軽く溜息を漏らしながら響は二人の方に手を置き静かに告げた。

「あとで説明してやるから今は抑えろ」

 その一言で二人は渋々ではあるが頷く。そしてそれを確認した響はそのまま教室へと歩き出した。





 教室に到着した響は荷物を置き、セシリアたちの下に行くと先ほどの女生徒が誰であるか、またなんで知り合ったのかを話した。ただし念を押して三人には絶対に他言無用だとドスを効かせながらだったが。

 それを聞き終えたセシリアとシャルロットは少し俯き加減だった。

「それであの人をいじめてた人たちはどうなったの?」

「さぁ? 最近見ねーし退学にでもなったんじゃねーの?」

 シャルロットの問いに響は手をひらひらとさせながら答える。

「ところでひーちゃんさぁ。さっきもらった箱開けたの?」

「いんや。一人のときに開けようかと思ってよ」

 そこまで響が言ったところでちょうどチャイムが鳴った。

「んじゃあこの話はこれで終わりな。最後に言っとくが……絶対に他のやつにしゃべるなよ?」

 最後の最後で再度ドスを効かせ響は自分の席へと戻っていった。




 昼休みになるといつものように屋上にやってきた響。今日はセシリアの姿はなく一人での昼食だ。別段セシリアに用があったわけではなく。今日もいつものようにセシリアが誘ってきたのだが、響から断ったのだ。

 その理由としては唯一つ。

「さてと、じゃあこれ開けてみますかね」

 そういう響の手には朝もらった小包があった。そう響はこれを空けるために一人でやってきたのだ。

「割と重さがあるんだよなぁ……」

 箱の包みをはがしながら響は呟く。若干顔にも笑みが見られるのは人間として仕方のないことだろう。

 誰しもプレゼントの中身が気になるのは当たり前のことである。

「ほんじゃまぁご拝見っと……。これって……鎖か」

 包みをはがし終えた響の目に飛び込んできたのは、鈍い銀色をした鎖だった。鎖の先端に当たる部分にはなにやら三日月の様なものがつけられている。

「ふーん、なかなかいい趣味だなあの二年生。ありがたく頂戴しときますかね」

 響は立ち上がると腰のベルトの辺りにその鎖を取り付ける。既に母から受け継いだ鎖やら、妹からもらった鎖やらがまいてある為、はたから見れば鎖が増えたことになぞ気付くものはいないだろう。

「さすがに三本は少し重くなってきたけど……まいっか」

 満足げな笑みを浮かべ、腰の鎖をジャラジャラと鳴らしながら響は屋上を後にした。




 屋上から降り、教室に戻ろうとしたところで不意に響が立ち止まった。

「納得がいきません! 何故このようなところで教官が指導をしているのですか!」

「何度も言わせるな。私にはここでここの生徒達を指導する使命がある」

 聞こえてきたのはラウラの悲痛な声と千冬の冷淡な声だった。

 響は壁に背中を預けながら二人の話に聞き耳を立てる。

 ……なんか面白そうだからしばらく聞いとこう。

「大体この学園の生徒は教官が指導するに値しません」

「ほう。何故そう思う?」

「意識が甘く、危機感も疎く、ISをファッションかなにかと勘違いしている。そのような程度の低い者達に教官が時間を割かれるなど――」

「――そこまでにしておけよ、小娘」

「っ……!」

 ラウラの言葉に千冬がいつもの声よりさらに、声音を落とした凄みのある声を放った。

 ……おーおー、こえー。ありゃあ母さんと同じくらいかねぇ。

 少し口角を上げた状態で響は静かに笑いをもらす。

「しばらく見ないうちに随分と偉くなったものだな。十五歳でもう選ばれた者気取りとは恐れ入る」

 冷徹で凄みのある声にラウラは言葉を詰まらせる。実際二人からそれなりに距離がある響のいるところまで千冬の覇気が感じられるのだ。それを目の前で受けているラウラの緊張は計り知れないだろう。

 だが千冬はすぐに声音を元に戻しラウラに告げた。

「授業が始まる、教室にもどっていろ」

「……」

 その促しにラウラは黙ったままその場から小走りに去っていった。

「……そんじゃ私もこれで――」

「そこの素行不良生徒。こっちに来い」

 響がそこから離れようとした時、千冬が響に声をかける。

 その声を聞いた響は大きく溜息をつきながらも千冬の前に姿を荒らすと、小首をかしげながら千冬に問う。

「ばれてました?」

「ああ。盗み聞きとはあまり趣味がいいとはいえんぞ鳴雨」

「別に聞きたくて聞いたわけじゃないんですがねー。聞こえてきたと言うか」

「フン、どうだかな。ところでお前はラウラのことをどう思っている?」

 千冬の思いもよらぬ問いに響は少し驚いた表情を浮かべる。

「どう思うって言われましてもねぇ……。随分と織斑先生にご執心のようだとしか」

「そこは……まぁ否定はしない。その他だ、例えばラウラの性格とか」

 ……否定はしないのか。

 内心で笑っていると千冬がそれに気付いたのか、響を軽く睨む。

「今失礼なことを考えなかったか?」

「いーえそんなことないですよー。……ボーデヴィッヒのことなら私の観点から言わせてもらえば、プライドが高すぎるんじゃないんですかねー。さっきの話聞いててもこの学園の生徒を見下してる感がありましたし」

 響はポケットに手を突っ込みながら壁に背を預ける。

「やはりか……」

「やはりって……知ってたなら別に聞かなくてもいいんじゃねーですか?」

「いや、あいつと同年代のお前の意見が聞きたくてな。ああ、それとあと一つ。アイツのああいう性格を直すにはお前だったらどうする?」

 千冬は響と対角線上の壁に背を預け、腕を組みながら聞く。

「そりゃあもうアレでしょ。一回ぶちのめしてやれば大体は何とかなるでしょ」

「ふむ……なるほどな。もう行っていいぞ、そろそろ戻らんと五限が始まるだろう。私の授業だからサボることは許さんぞ」

「へいへい」

 響はそのまま教室に戻っていった。




 夜になると響はまたも外に出ていた。だが今回は夜風に当たっているわけではなく、ある人物を探しているのだ。

「お、いたいた」

 響の視線の先にいるのはラウラだった。彼女は少し俯き気味だったが、その手は力強く握られていた。

「おい! ボーデヴィッヒ!!」

「っ!? ……なんだ貴様か」

 ラウラは響の声にすぐさま振り向き構えを取るものの、響だということを確認するとすぐに体勢をを元に戻す。

「なんだとはひでーいいようだな」

「フンッ、それで私に何か用でもあるのか? ないのであれば即刻ここから消えろ」

「まぁそう言うなっての。今日はちょいとお前さんに宣戦布告しようと思ってな」

 宣戦布告という言葉に反応したのかラウラの冷徹な表情が若干動きを見せた。

「宣戦布告だと? 貴様が私と戦うというのか?」

「ああ。今度学年別のトーナメントがあるだろ? それに私も出ようかと思ってよ」

「ク、ハハハハハ! いいだろう、貴様とは私も戦ってみたかったところだ。受けて立ってやる」

 ラウラはにやりと笑い不適に響を睨みつける。その目には余裕が感じられた。

「そうか……じゃあトーナメントの日を楽しみにしてるぜ。ドイツ軍IS配備特殊部隊『シュヴァルツェ・ハーゼ』隊長。ラウラ・ボーデヴィッヒ少佐」

「っ! 貴様……何故それを知っている!!」

 自らの個人データを響に言われ、ラウラは確かな殺意を響に向けるものの、対する響は「さぁな」とだけ答えると踵を返し、寮へと戻っていく響は後ろで声をかけるラウラに振り向きもせず、ただ言葉だけを返し、その場を去ってった。



 ラウラと離れ寮の入り口へと差し掛かったところで、響は不意に声を発した。

「あんな感じでいいですかね? 織斑先生」

 響が言うと木の影から千冬が姿を現した。

「盗み聞きは趣味が悪いんじゃなかったでしたっけ?」

「安心しろ、盗み聞きではなくただ聞こえてきただけだ」

 昼間響が返したのと同じような返しをする千冬。だが彼女は笑ってはおらず、眉間にしわを寄せていた。

「私はお前にあんなこと頼んではいないが?」

「昼休みのアレで明らかに頼んでたも同然でしょ。心配なさらず、絶対アイツの性根叩きなおしてやりますから」

「そういう問題ではないのだが……。まぁいいだろう、だがそう簡単にラウラに勝てると思うなよ?」

「上等! それぐらいなきゃ面白みの欠片もないってもんですよ」

 千冬の警告にも似た言葉を笑いながら返した響は寮の中へと消えていった。




 時間は経って翌日の放課後。

 第三アリーナにセシリアと鈴音の姿があった。

「あら? 鈴さん、どうしたんですのこんなところで」

「ちょっと次のトーナメントの特訓をしようかと思ってね。アンタもここにいるって事はトーナメントに参加するの?」

「はい。私の力を響さんにお見せする絶好の機会だと思いまして」

 セシリアは完全に緩みきった表情で熱い息を吐いていた。その姿たるやまるで何かに興奮しているようである。

「あーはいはい。アンタは響にぞっこんだもんねー」

「むっ! そういう鈴さんだって織斑さんにぞっこんではありませんか!!」

「な、ななな何言ってんのよアンタ! そんなこと……なくもないけど」

 セシリアの反論に受身を取っていなかった鈴音が顔を真っ赤にしてしまう。

 だがそんな和やかな空気を耳をつんざく様な金切り音が切り裂いた。

「「!?」」

 二人は緊急回避を取りそれを避ける。

 見ると先ほどまで二人がいたところが、発射されたであろう砲弾によって大きくえぐれていた。二人は砲弾の飛んできた方向を見やるとそこにいたのは、

「ラウラ・ボーデヴィッヒ……」

 二人の視線の先にいたのは黒のIS、『シュバルツェア・レーゲン』に搭乗したラウラの姿だった。

「いきなりぶっ放すなんていい度胸してるじゃない。それともドイツではそういう挨拶が流行ってるの?」

 鈴音が挑発するようにラウラに声をかけるが、ラウラはそれを鼻で笑うと、

「中国の『甲龍』にイギリスの『ブルー・ティアーズ』か。実際見てみると随分弱そうだな」

 明らかな挑発に鈴音の口元が引きつる。

「何? 本当にやりたいわけ? わざわざドイツから日本まで来てボコられに来たの? そうだとしたらとんだマゾヒストっぷりね」

「鈴さん、あまり挑発に乗っては……」

 鈴音をセシリアが制しようとするものの、ラウラがそれを邪魔をする。

「フン。量産機にも勝てん貴様ごとき喚こうがうるさいだけだ。どうせなら二人まとめて相手をしてやってもいいぞ?」

「お断りですわ!」

「なに?」

 ラウラの申し出をセシリアはばっさりと否定した。

「わたくしや国のことを貶したいのであればどうぞお好きになさってくださいな。ですがそんなこと程度で私が動じるとでも思っているのであれば、貴女はただの子供と同然ですわ!!」

 言い切るセシリアの声には確かな力があった。この返しには予想外だったのか、ラウラ自身もかなり驚いたような表情を浮かべる。

 鈴音もセシリアの様子に驚きを隠せないようだった。

 だがラウラはさらに挑発を続けた。

「ハ!! ようは貴様は私と戦うのが怖いだけだろう?」

「そう思うのであればどうぞご自由に。そうでしょう鈴さん?」

「え、ええ! そうね、馬鹿にしたいなら好きにしなさいよ」

 セシリアの呼びかけに鈴音も頷く。

 そして二人が後ろにさがった時、ラウラが二人に最後の挑発を言い放った。

「やはりあんな愚かな女や種馬とつるんでいるようでは腑抜けになるものなのだな!!」

「愚かな女……?」

「鳴雨響と言ったか? 奴のことだ。奴の殺気は確かに目を見張るものだがそれだけだ! ただそれだけの女が私に勝とうなど愚か以外に何がある?」

 ラウラは響のことを明らかに馬鹿にしていた。それと同時に、セシリアの頭の中で何かが切れる。

「……許しませんわ、わたくし自身や国のことを馬鹿にされたぐらいなら我慢できますが。……わたくしの思い人のことをあろうことか愚かな女などと――」

 セシリアは展開してある『スターライトMk-Ⅱ』をラウラの方に向けると間髪いれずにビームを打ち込む。

「――絶対に許しません!!!!」

 怒りのこめられた声を発しながらセシリアはラウラを睨む。

「あーもう! そこで切れちゃダメでしょうがセシリア!! でもまぁいいわ、アンタはここで叩き潰す!!」

「フン、やってみろ。力の差を教えてやる」

 ラウラの声と共に、戦闘が開始された。



 
「それにしてもまさか響が出場するなんてな、でも何で急に?」

「ちょいとな」

 響と一夏、そしてシャルロットは三人で廊下を歩いていた。

「ところで今日使うところって何処だっけ?」

「第三アリーナだ」

「「うわぁ!!?」」

 突然の箒の登場に一夏とシャルロットは驚きの声を上げる。

「そんなに驚かなくともいいだろう」

 箒はむっとする。二人の反応が思ったより大きかったことに少し眉をひそめていた。

「まぁ篠ノ之がいきなり出てきたことは置いといてよ。さっさと行こうぜ?」

 思わず立ち止まっていしまっている一夏たちに声をかけ、あごで第三アリーナの方を指し響は歩き出す。

 その響の隣にシャルロットがつき、二人の後ろに一夏と箒が続く形となった。

 だが第三アリーナに近づくにつれなぜか周囲が騒がしくなり始めた。先ほどから小走りに急ぐ生徒達が目に付くのだ。

「なぁ箒。今日は確かあんまし使用人数いなかったはずだよな?」

「そのはずなのだが……とりあえずピットに行く前に様子を見ておくか?」

 箒の提案に皆が頷き、ピットの方ではなくアリーナの観客席の方のゲートに向かう。

「もしかしたら誰か模擬戦しててそれを見てるのかもしれねーぜ?」

「でも……それにしてはちょっと様子がおかしくない?」

 シャルロットが言った瞬間。大きな爆発音のようなものが響いた。

 爆発音がしたほうを見ると、もうもうと土煙が立ち込めている。するとその煙を切り裂き鈴音とセシリアが飛び出した。

 二人のISは所々傷ついており、装甲が剥げかけているところもあった。セシリアと鈴音の視線の先には『シュヴァルツェア・レーゲン』に搭乗しているラウラの姿があった。彼女のISは二人とは違いまったく傷ついていない。

「鈴! セシリア!」

 戦う鈴音達を心配してからか、一夏が声を上げるがアリーナ全体に展開されているバリアフィールドのせいで声が届いていない。

 二人はラウラに攻撃をしているものの、ラウラが右手を突き出しただけで、鈴の衝撃砲もセシリアのブルー・ティアーズもラウラの元に届くことはなく、まるで機能を停止してしまったかのように動かなくなっている。

「……故障ってわけじゃなさそうだな」

「うん、なにかフィールド的なものが展開されていると思う」

 響の呟きにシャルロットが答える。

「そんなこと言ってる場合じゃないだろ響!! このままじゃ二人が!」

「んなこたぁわかってる。だからこそ落ち着くのがいいんだろうが」

「でも――!」

 一夏が言った瞬間、再度轟音が響く。

 セシリアが弾頭型ビットをラウラの至近距離で射出させたのだ。その爆風でセシリアが大きく後ろに吹き飛ぶ。

 二人は肩で息をしていたが、その顔にはしてやったりといった色が伺えた。

 だが爆煙が晴れた瞬間、二人の顔は蒼白に染まった。

 その瞬間ラウラが瞬時加速で鈴音の元に詰め寄り、鈴音を蹴り上げる。さらにセシリアに近距離で砲撃を浴びせる。だが攻撃はやむことはなく、ワイヤーブレードが吹き飛ばされた二人を捕らえ、ラウラの元に手繰り寄せられると、そこから一方的な暴力が始まった。

 二人を殴りつけるラウラの顔はいつもと変わらぬ冷徹な顔をしていたが、ふとその顔が愉悦に歪んだのを響は見逃さなかった。

「これ以上はヤバイな――」

 響が言った瞬間、隣にいた一夏が『白式』を展開させバリアフィールドを切断するため雪片二型を構築すると『零落白夜』を発動させた。

「おおおおお!!」

 そしていざバリアを破ろうと切りかかろうとした瞬間、一夏の目の前でバリアが粉砕された。

 見ると一夏の隣で響が『夜天月』の左腕だけを部分展開しバリアを文字通りその巨大な左腕で粉砕された。

「響……!?」

「お前はそこにいろ。お前が行ったって軽くあしらわれて終了だ」

「だけど!」

「うるせぇ黙ってろ」

 なおも食い下がる一夏に対し、アリーナの中に入りながら響が後ろ目で睨むと一夏はたじろいだ。

 それを確認した響は部分展開していた『夜天月』を待機状態に戻すとなんと生身のままアリーナに降り立つ。

「響!? 一体何を!!」

 シャルロットが響を止めようとするが響はそれに聞く耳持たずラウラに向き直る。

「……いい加減、やり過ぎだぜ黒ウサギちゃんよ」

 響がそう呟いた瞬間、その場にいた全員の体にまるで上から圧がかかった様な感覚が襲った。

「!?」

 ……な、なんだこれは!? まるで教官と同じ! いや、それ以上の殺気が……!?

 あまりのことにラウラが響の方を見やると、響が静かに歩み寄ってきていた。彼女の目には確かな怒りがこめられていた。

 やがて響が近くまで来ると、先ほどから感じられた重圧がさらに強くなった。

「ようボーデヴィッヒ。随分と私のダチいじめてくれたじゃねぇか」

「っ!!」

 響きの声とともに、ラウラは大きく後ろに後退した。先ほどまでの彼女とは打って変り、その行動はとても焦っているように見えた。

「ひ、響さん……」

「しゃべんな。じっとしてろ」

 セシリアが響を呼ぶと響は安心させるようにセシリアの頬を撫でる。するとラウラが声を上ずらせながら響に問うた。

「……貴様は本当になんなのだ!?」

「さぁ?」

「ふざけているのか……!?」

 口元を不適に歪ませながら響が言ったことにラウラが苛立ちを募らせる。

 そこでふと響がラウラに向けて問う。

「ボーデヴィッヒよぉ、お前とはトーナメントでヤリ合おうかと思ったけどどうするよ? 今ここでヤルか?」

「……いいだろう。そこまでやられたいのであれば今ここで貴様を葬ってやる!!」

 ラウラも頬に汗を流しながらも、響と戦うため戦闘態勢に入る。

 だが、

「そこまでだ!」

 声の主は千冬だった。彼女は響とラウラの間に割って割ってはいるとさらに言葉をつなげた。

「両者その場から動くなよ。……貴様らがいくら模擬戦をしようと構わんがバリアを破壊するなどという事態を発生させるな。貴様らの戦闘は学年別トーナメントの時までとっておけ」

「教官がそう仰るのであれば」

「……了解」

 ラウラのほうは素直に頷きISの展開を解除する。

「ではこれよりトーナメントまで一切の私闘を禁止とする! 解散!!」

 千冬はアリーナの生徒全員に聞こえるように大きく言い放つと、パンッと手を叩き解散の合図をした。



 

 アリーナから戻った響たちは校舎内の保健室にやってきていた。セシリアと鈴音は既に手当てを受け、包帯をところどころに巻いた状態でベッドの上に座っている。

 鈴音はむすっとしているがセシリアのほうはがっくりと首を落としている。

「そう気を落とすなセシリア。負けなんて誰にだってある」

 響はセシリアの頭をポンポンと叩きながらセシリアを励ます。

「いえ……負けたことも悔しくはあるのですが、それよりもボーデヴィッヒさんの響さんへの暴言を訂正させることができなかったのが悔しいのですわ」

「……。そっか、ありがとな私のために戦ってくれたのか」

 響は軽く息をつくと少し微笑を浮かべながらセシリアを後ろから優しく抱いた。

 いきなりの行動にセシリアが戸惑いの声を漏らすが少しすると、すぐに静かになり顔を紅く染め縮こまってしまった。

 それを見ていた場の全員が多少顔を赤らめていたが、響だけは変わらずにいた。

 因みにシャルロットは物欲しそうな目で、箒と鈴音は一夏をじっと見つめていた。対する一夏は目のやり場に困っているのかあさっての方向を向いている。

「さて……一夏。ちょっと来い」

 セシリアから離れた響は一夏を廊下に連れ出した。

 廊下に出た響は壁に背を預け腕を組んだ状態で一夏に告げた。

「一夏。今度の学年別トーナメントの仕様が変更になったのは知ってるか?」

「え? どうなったんだ?」

「タッグ戦になるんだとよ。だからお前に提案があってな」

 響は口元をにやりと上げ、

「私と組まないか?」

「え? 響とか?」

「ああ。今回のことでお互いに共通の敵ができただろ? できれば目的が同じ奴と組んだ方がいいと思ってよ。勿論無理にとはいわねぇ」

 彼女は「どうだ?」といいながら一夏に投げかけるように手のひらを一夏に向ける。

 一夏はその提案をあごに手を当てながら数瞬考えると頷き、

「わかった。よろしく頼む」

「おう、そうこなくっちゃな」

 響は拳を一夏に向ける。

 すると一夏もその意図を理解したのか、差し出された響の拳に自分の拳を合わせた。

「トーナメントが終わるまでよろしくな」

「ああ! こちらこそ頼んだぜ響」

 ここに二人のタッグが結成された。 
 

 
後書き
以上です。

いやー長かったw

冒頭の部分でのアイツの正体明かしは夏休み辺りです。

思い切ってシャルロットと組ませるのではなく、一夏と組ませてみました。
といってもここから恋愛になることなんて皆無なのでご安心くださいwww

次はいよいよトーナメント戦です!
響のIS『夜天月』の新たな武装のお披露目です!!

感想などお待ちしております。 
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