よるむんがんどっっっっ!!!!!
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一部
出逢い
私、お金で売られる?
前書き
初投稿でございますが、なにとぞ宜しくお願いします。
暇つぶしにどうぞ!!!
タイ、バンコクのとある会社のオフィスにて。
肌を真っ黒に焼きつぶしたアジア系の筋肉質な男と、耳にピアスをつけたイタリア系の金髪の男が机を挟んで取引の真っ先中だった。
金髪の男は、にこやかな、ともすると胡散臭さ満載の、笑顔を顔に張り付けて喋っている。アジア系は緊張している様子で時折ハンカチを取り出しては汗を拭きとっていた。
ここからでは話の内容までは読み取る事はできなかった。
「っま、どーせ碌な話じゃない」
私は誰ともなしに呟いた。勿論、それに答える者はいない。
「ってか、普通の商談な訳ないよねー。だって護衛もガンガンにつけてるし、狙撃主だって一人、二人、三人…六人もいるんだもん」
また、呟いた。ま、今のは愚痴に近いんだけど。
「でも、まあ…ね、出来ない仕事でもないし。楽ではないが、無理ではないってね」
私は勝利宣言をした。そう、今から私、人を殺します。
「そろそろですねえ、お決め頂かないと。こちらも時間が無限にあるという訳ではないんですよ」
目の前に座る男がにやにやと人の好い笑顔で脅してきた。
「どこがご不満なんです? 最新のレーダーに、米国製の拳銃五十。マシンガンが三十、これで占めてこの値段です。お得だと思うんですがね」
俺が話してる、この気に入らないイタリア男はキスマーニ・ロッペン。その界隈では有名な武器商人らしいが…。
「人の足元見やがってえ…」
「ん? 何かおっしゃりましたか?」
「い、いや、何でもありません。す、すみませんが、もう少しだけ時間を…」
「そう無駄に時間を使ってもられないんですよ、ウチは。アンタらみたいに暇じゃないんだから」
何だと!! とウチの社員が叫んだ。ロッペンの護衛が銃に手をかけるのが見えたので、俺は社員をなだめる。
「やめろ!! …すいません、ウチの社員が」
「アハハ、いいんですよ。別に気にしてませんから」
ロッペンはへらへらとした表情を変えないで言った。クソ! どこまでも気に入らない野郎だ。
でも、俺たちはコイツに頼る他なくなっていた。俺たちの会社はいわゆる不動産。土地を扱っていて、マフィアとの繋がりも深い。というか、そもそも俺たちだってマフィアだった。それが独立して、事業も順調に業績を伸ばしてこれからって時に、部下の一人がヘマをこいた。タイの裏社会を操るマフィア、ギガルファミリーと土地の所有権でもめやがったのだ。しかも、話が上手くいかなかったらしく、逆上して先方を殴り殺してしまった。血気盛んなウチの社員でも一番のガキンチョだったヤツだが…。全く厄介な事をしてくれた。そいつは三日も経たない内に物も言わない死体となってウチの会社に送りつけられてきた。そして、それ以来というものヤツラの影におびえてやってきたのだ。俺も我慢の限界だし、部下たちも皆そうだった。だから、なんとか武器が必要なんだが…。
「高すぎる…、とても払える額じゃない」
ふざけた笑みを崩さないロッペンが憎らしい。武器商人の癖に調子に乗りやがって、この野郎。
「さて、そろそろ決めてくださいますか。次の約束もございますので」
ロッペンは俺たちの取引はどうでもいいって顔をしていた。
「どうします…?」
クソが。
「と、取引させていただきます…」
「そうですか、それは本当に良かった。賢明な判断だと思いますよ。
それでは、この紙にサインを…」
ロッペンが契約用紙を取り出した、その時だった。
プン。
空気が裂けるような音がして、ロッペンの護衛の一人が赤い血を頭から撒き散らして音もなく倒れた。
続いて一、二と同じ炸裂音がすると、同様に護衛が身構える間もなく頭を爆ぜさせる。部屋が一瞬にして血の海と化して鉄の匂いにまみれた。
「っは、っはははは、、、、、だだだ誰だっっっっどこからっ!
おい、お前ら、俺を助けろっ、、、、、、」
ロッペンは腰が抜けた様で、格好のつかない姿勢で叫んだ。俺はそこでやっと遠方射撃されているのだと気付いた。
クソ、どこのどいつだ。まさか、ギガルファミリーか?
どちらにしても窓を背にしている今のままでは狙撃主の的だ。
そこで俺はすぐさま、机を盾にして部屋の扉へと走った。
「ううぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
扉のノブにもう少しで手が届く、そんな時にパフンとどうにも気の抜けた炭酸を空けた様な音がして、俺の意識は闇へと消えた。
「っと、ターゲットと違う方に当たっちゃった…、悪い癖だなあ、どうも左を意識して撃っちゃうよお」
ぱん、ぱん、ぱん、と喋りながら撃っていった。左から順に護衛の三人が赤い血花を咲かせて地面に倒れこんでいった。
「ああ…本当にごめんね…、君たちは只のぼでぃがーどなのにね…、でも生かして返す訳にはいかないんだよ」
長い銃身から薬莢がスコッスコッと心地の良い音をたてて弾き出された。その度に銃弾が標的を正確に射抜いていった。
「うわあ、机持って走ってくよ…、逃げられたらマズイかな、やっぱりマズイよねえ…。撃たなきゃダメかな、撃たなきゃ、ダメ、だよねえ」
言葉と共に愛用のドラグノフSVUの引き金を引いた。持っていた机を貫いて弾丸は標的の命を刈り取った。机が吹き飛んで死体もろとも扉付近に弾け飛ぶ、それが幸いというかなんというか、部屋の唯一の出口を塞いだ事になった。
「不本意だなあ、不本意だよねえ、ったく。殺したくもない人を殺さなくちゃいけないなんて、、、」
その瞬間、私の頬を一発の弾がかすった。
「あっつ!! てかあぶなっ!」
私はすぐに銃を担いで部屋を飛び出す。急いで逃げたら、すぐにその部屋は蜂の巣になった。もう部屋の原形がなくなるぐらい撃ちまくられる。
階段を駆け上がって、上の階の部屋に飛び込んだ私はやっと一息つく事が出来た。
「はあ、はあ、、、。あぶなぁ。マジ今のはやばかった。死ぬかと思ったよ、だからやなんだ、こんな仕事。やりたくないなあ…」
そーっと下を覗きこむと、向かいのビルに一人、その両隣にも一人ずつスナイパーがいるのが確認できた。
はあ、とため息をついて銃を抱きしめた。
「ああ、おいしいご飯が食べたい。肉がほしい、肉が。牛はもちろんだし、鶏もおいしい、豚もなかなかいけるんだよな…羊や馬なんてのもマニア受けがする絶品だよお」
口からこぼれていくよだれを拭きもしないで私は想像した。山の様なお肉を目の前にした自分を、よりどりみどりのお料理にかこまれた自分自身の姿を。
「ああ、どれもこれも美味しいなあ、全部は食べきれないよお、ウフフフフ…」
私は決めた。これが終わったら絶対肉を食う。おなかいっぱいになって動けなくなるぐらい食ってやると。
その為には、仕方がない。早くこの任務を達成してお店に行かなくちゃ。
「もう、私は本気になったぞお!!! お肉が私を待っているうううううう!!!!!」
窓から銃身を突き出して私はスコープを覗きこんだ。
「はあ、はあ、、、、がんばったかなあ、私、いや、がんばったよね、私。あそこからなかなか普通の奴じゃ任務を完了できないもん。しかも、銃声を聞いて通報されたのか警察に囲まれて必死の思いで逃げてきたんだもんね、ボスだって褒めてくれるよ、きっと。そしたら、いっぱいのお肉を思う存分食べれるはずだよね!」
小さな町の一角にある小料理屋の厨房の奥に歩いて行くと、我らがファミリーのほーむぐらうんどがある。とんとん、とドアをノックして、いいぞ、と声がしたので私は部屋に入った。
「よお、マリー、、、おかえり?」
いつになく上機嫌なボスの顔と対面する羽目になった。唇の端はぷるぷると震えていて、額に青筋がもう数えきれないぐらい浮き上がっている。目も全く笑っていなかった。
「あ、あははは、、、。もしかしてボス、…怒ってます、か?」
「え? 何か怒るような事でもあるか、うん?」
「いやいや、ないならいいんです、うん。ですよね、怒る事なんてひとつも…」
「そら、そうだ、マリー、怒ることなんてなあ、一つだって………一つどころじゃあ済みゃしねえよっっっっっ!!!」
突然ボスの顔が悪鬼に変わった。机を拳で叩いて、私にメンチをきってきた。ああ、目からビームでてんじゃないかってぐらいこえええ。
「てめえ、またあ、やりやがったな、このすっとこどっこい!!
何度言やあ、気が済むんだ、お前って女はよお!」
頭をずんぐと掴まれてむちゃくちゃに揺らされた。ボスの怒りはボルテージに達しているようだ。
「うわあん、やめてくださいよお、、、やめてえーん!!!」
「ふざけんな、何がビル一棟爆破だ、てめえこの馬鹿!! どこの誰が街を破壊してこいっつったよ!!!」
「だってえええ、警察に囲まれるとは思わなくてえええ」
「黙れ、この戦闘狂め!! もっとマシな逃げ方はできねえのかぁ、この脳みそはよ!!!」
「ああ、やめて、とめて、やめて、とめてええええええ!!!!!
ずびばせんでいじだあああああ、もうしません、もうしませんよおおおお」
涙と鼻水を撒き散らして私が謝ると、ようやくボスは私の頭を離した。そして、椅子に坐り直すと、息をついて言った。
「で、もちろん、全滅させたんだろうな?」
「すん、すん、ぐすん…ば、ばい」
「ああ、もう、鼻水拭け」
ボスがポケットから取り出したハンカチを私に投げつける。
私は、鼻水をちーんとかんだ。
これでも花も恥じらう乙女、十八歳である。
「ありがとうございますう…」
ハンカチを返すと、ボスは心底嫌そうな顔でそれを受けとった。
「ああ、それ保存とかしないでくださいよお」
「誰がてめえのきったねえ鼻水保管するか、ボケ!!!」
そう言ってハンカチをゴミ箱にジャストシュートした。
「ああ、ひどい、そんな…」
「黙ってろ…はーああ」
ボスは疲れた顔で椅子に深く倒れこんだ。
「なーんかよお、もう限界だわな…」
不吉な予感を感じて私はボスに詰め寄った。
「え! ボス! 今のどういう意味ですか!? まさかクビ? 嫌だ、嫌だ、クビは勘弁してください、後生だから! クビになったら、私どうやって生きていけば? ボスに見捨てられたらご飯も食べられなくて餓死しちゃいますよ、っていうか首吊って死にます!!! ですから、どうかどうかクビだけはご容赦をおおおお!!!」
泣いて喚く私の肩をぽんと叩いてボスは言った。
「とにかく、坐れ、マリー」
「…はい」
その後、ボスは奥の部屋に引っ込んだ。必要な書類を取りにいくのだそうだ。ああ、もし解雇用の書類とかだったらどうしよう…、てか絶対そうだよ、間違えなくそうだ。嫌だな、嫌だな、明日からホームレス生活に逆戻りかあ、ひもじいのは嫌だよお、、、。
そう思ってボスの用意した椅子に座ってしくしくと泣いていると、ボスは一つのある書類をもって帰ってきた。
「さて、だ。今回マリー、おめえに言わなくちゃいけねえ事がある」
「…はい。どんな処分も甘んじて受けます。ですから、クビだけは…!」
「クビ…とはちょっとばかし違うんだが、ま、似たようなもんかな」
ボスのその言葉に私は絶望の淵に叩きこまれた。
ああ、さようなら、私の最高食事ライフ…。こんにちわ、私のホームレスライフ…。
「あはははは、あははははは、、、」
「っおーい、マリー聞いてるかー?」
はい、きいておりますよ。死刑宣言でしょう?
「確かにお前はクビだが、再就職先を紹介してやる。
ほら、この男がお前の次の雇用主だ」
こ、よう、ぬし?
私が半信半疑で写真を見ると、そこに写っていたのは銀髪の優しそうな初老の男性。名前は…
「ふろいどへくまてぃある? …ってフロイド・ヘクマティアル!? あの、HCLI社社長、海運の巨人のフロイド・ヘクマティアルですか!?」
「なーんだ、それぐれえはおめえも知ってたか」
「当り前じゃないですか!? こんな世界に生きててフロイド・ヘクマティアルを知らない奴なんていませんよ!
世界最大の武器会社、裏で戦争を自分らの好きなように操ってるって噂のとこですよ!!」
私が目を丸くして言う。当然の事だ。HCLI社社長、海運の巨人ことフロイド・ヘクマティアルは世界の中でもビップ中のビップ。ひょっとしたら世界の軍事の頂点にいるような男だ。
そんな男の下で私が働く姿も想像できなかったし、彼とボスに部下を紹介出来る程のつながりがあるとも思えなかった。
「まーな、驚くのも無理もねえが、ちょっとした腐れ縁があってよ、アイツとは。お前を手放すか、悩んでたら声をかけてくれたんだよ。それなら、貰い受けますよってさ。
正直、俺らのファミリーじゃあ、おめえの力は制御できねえ。なんつーか強すぎんだよ、てめえは。分に合わないっていうか、なんていうか…。十八にして一人で重要な任務もこなすし、平気で小さい組織なら潰せる。味方にいてこんな頼もしい事はねえがよ…」
ボスは一旦言葉を区切って言った。
「切れすぎる刀は嫌われるって事だよ、マリー。最近、お前のあまりの強さに他の部下がビビってる。もし、敵になったりでもしたら、ってな。
だから、お前を殺しちまおうって言うヤツがでるのも時間の問題だった。
俺は曲がりなりにもボスだろう? だから、ファミリーに優劣をつけるような事はしたくねえし、誰も殺したくねえからよ…」
「だから…、私を追い出そうって事ですか…」
「すまん。本当にすまん。俺の力不足だ」
普段は見せない様な苦渋の顔でボスは頭をさげた。唇を噛み締めてテーブルに手をついて謝っている。
「ずるいですよ…、こんな時だけそんな顔するなんて…」
「本当に…すまん」
私は一回大きく深呼吸すると、意を決心して言った。
「もう…分かった、分かりましたよ、行きゃいいんでしょ、行きゃあ。
どこへなりとも行ってやりますよ、HCLI社だろーが、フロイド・ヘクマティアルのとこだろーがね」
「すまんな、エミリー…。
それで、だ!!!」
途端にボスの雰囲気が人が変わった様に明るくなった。あれ、雲行きが怪しいんだけど。
「諸々の話はもう先方とついてる、後はてめえが、うんと言うかどうかだけだったんだが。ああ、そうか、行ってくれるか、良かった、良かった。恩にきるぜ、マリー、ヌハハハハ」
「ねえ、ねえ、ボス。さっきまでの部下との軋轢を生まない為に仲間を追い出さなくてはならない厳しい判断をせまられて止む無くかわよい私を手放す事にした哀愁のある顔はどこへいったんでしょうか、、、」
「お前の荷物はもうここにまとめてあるし、後は迎えを待つだけだな。
…そろそろ時間か?」
「おーーい、荷物まとめたっていつの話でしょうか、、、」
全く話の通じないボス。
その時、パラパラと回転音が外から響いてきた。
「おおう、もうきやがったか!」
ボスが窓を開けると、うちの前の大きな道に人だかりが出来ていた。そして、その真上には
「ヘリィーーーー!?」
「ヌハハハハ!! さすがHCLI社、やることが派手だねえ!」
圧倒的な存在感をもって下りてきたヘリはゆっくりと地面に着陸した。ぶわあ、と風がうちにも入ってきて部屋の色んなものが吹き飛ばされる。
完全にモーター音が消えて、ちょっとすると、がちゃあ、とヘリの扉がスライドして中から武装した女性と、銀色の髪をした男性が出てきた。男性は薄気味の悪い笑みを顔に張り付けて、女性は明らかに堅気とは思えないタトゥーを右腕全体に刻んでいる。うわああ、こっちに歩いてくるよ。
「こんばんわ、Mrガンボッチ! 話はまとまったようですね」
「よう、キャスパー! きっちり話はついたぜ!!」
「さすが父の旧友です、話が早くて助かる。僕も無駄な時間は浪費したくないものでね」
ボスとキャスパー氏が既知の友人の様に話している。そして、私の預かり知らぬ所で話はまとまっているようだった。
「さて、初めましてMsロロシア。僕はキャスパー・ヘクマティアル。隣は僕の部下のチェキータさん」
「よろしく、マリーちゃん。私の事は、チェキって呼んでね?」
二人が次々に握手を求めてきた。私は思考停止して、機械みたいにお辞儀と握手をした。
それで、二人の顔を見比べてようやく言葉が出る。
「あ、あ、貴方が、武器商人のキャスパー・ヘクマティアル!? 業界じゃあ、あの男が通った後には塵一つ残らないって噂の、あのキャスパー・ヘクマティアルさんですかあ!?」
「あれー、僕ってそんな風に噂されてるんだ。なんか心外だね、チェキータさん」
「あながち否定できないんじゃないの、キャスパー?」
「フフン、そりゃあ僕は武器商人だからね。武器をいっぱい売るよ、それで飯を食ってるんだから。でも、それで戦争だの紛争だのするのはあっちの責任でしょ、僕の所為みたいに言われたくはないけど。
でも、まあ、間接的には戦いを起こしてるとも言えるから仕方ないかな、アハハハハ」
何、笑ってんだろ、この人。むちゃくちゃこええ。てか、何、この状況。私って一体どうなっちゃうの。
「さて、そろそろ時間だ。行こうか?」
時計を確認したキャスパー氏が私に問いかけた。え、どこへ? そう聞く間もないまま私はボスにキャリーケースを腕に抱かされ、帽子とセーターとパスポートを持たされる。
「キャスパー、こいつをよろしくな。それと、例の件もちゃんと伝えといてくれよ」
「もちろんです、Mrガンボッチ。必ず、謝礼と注文の武器、お届けしますよ」
「あああああーーー!!! ボスッ! さては私を金と武器で売りましたね!!! もしかしなくてもさっきの話って全部…」
「ああ、嘘だ!」
「なんだとおお、この禿野郎めえ! 大切な部下を金なんかで売りやがって!! 何がファミリーを傷つけたくないだ、私の心は今激しく傷つきました!!!」
「キャスパー、このうるさいの早く連れてけよ」
「はい、何度も言う様に無駄な時間は少しでもなくしたいのはこっちなので。よろしくねチェキータさん」
「了解、了解」
私の体はチェキータ氏に一瞬で担がれてがっちり腕と肩にホールドされて身動き一つ取れなくなった。やばい、拉致られる!!!
「はーなーせーっ!!! 私はあの禿野郎に一発ぶちかましてやらないと駄目なんだい! 十八の乙女の身柄を簡単に売り飛ばしやがって! この変態ロリコン! 奴隷商人!! 守銭奴めええええーーーー!!!」
けれど、私は有無を言わさずヘリにぶち込められてシートベルトなのか拘束具なのか分からない紺色のベルトと椅子に結び付けられた。扉が閉まって、上のプロペラの回転音がすると、徐々に地面が遠ざかっていった。
ボスも遠くを見るように額に手を掲げて私が連れてゆかれる様を黙って見ている。
「いつかーーーーー、ぜったい、ころしてやるううううううううううううううううう!!!!!!」
そのまま、私は空中の牢獄に閉じ込まれ、タイ、バンコクの地を去ることになってしまったのだった。
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