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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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とある応龍の怠惰目録・ⅸ

 
前書き
正直「宝剣演義・其ノ八」はおまけの内容的に「イラネ」って文句言われると思ってた。
ポイントが3000点を突破したこの小説は果たしていつまで続くやら・・・

今回は風呂敷をたたむ、その準備回。

10/24 おぉう、素でナンバリングミスってた・・・ⅷじゃなくてⅸです 

 
~???~

ここ、どこよ。

俺が真っ先に抱いた感想は、なんか猛烈にデジャヴを感じる純粋な疑問だった。そして前回と違い、俺は此処がどこか何となく知っている。気が遠くなるほど多く並んだ本棚、足元に散乱した紙媒体の海、そして無駄に高級感ある事務机に座る見覚えのある司書。

そう、ここは―――俺が応龍皇を押し付けられた(?)あの空間だ。

『こにゃにゃちわ~♪』
「死んでください」
『二つ返事で毒吐かないで!?』

いたいた。何か前にあった時より心なしかぶん殴りたい顔に見えなくもないが俺も一応前世では社会人でしたから勘弁しておく。命拾いしたな!

『初めての時と一転して随分攻撃的になったねぇ・・・やっぱ力を得たら人は変わっちゃうのかしら。いやね~』
「キモイので死んでください」
『・・・ちゃんと話進めるから君もちゃんと聞いてくれる?』
「内容によっては死んでください」
『親切心半分でこの場を設けたのに何で私罵倒されてんの!?』
「打算半分だからでしょうが死んでくれ」
『バレた?』
「死ね」

ここに来てから語尾に呪詛がつくがきっと俺ではなく司書のせいなので気にしない。とはいえこのままでは何故呼ばれたのか分からんので仕方なく話を聞いてやる。なんかコイツは恐らくすごい存在なのにちっとも敬う気になれない。
・・・本人がそう振る舞ってるせいかもしれんが。

驚いたことに今回のこいつはここから一切おふざけなしらしい。ふざけんなてめぇ読者はおふざけを求めて此処に来てるのにおふざけなしとかカレーライスのカレールーをおかゆに変えるようなもんだぞ分かってんのか!!
でもおふざけで生きているような存在の俺に対して真面目なら何かしらの緊急事態かもしれんので真面目に聞くことにする。

『君のいるフラスコには今までもいくらか劇物を入れてきたんだ』
「二次創作で言うチート転生者だろ?」
『厳密には全然違うけどその解釈でいいよ。僕も説明面倒だし。時代も場所もバラバラだけど劇物たちはその殆どがちゃんと歴史の流れに収まった。ここが多元世界をある程度立証した世界枠だからこそフラスコとしては最適だったんだ』

要するにフラスコとしての強度と容量が大きかったってことか。他にもいい感じのフラスコはあるらしいがそこは重要ではないと話は続く。

『多くの劇物が自分の在り方にある程度納得して住民たちと一緒に行き、時には戦い、交わり、そして朽ちていった。でも全員がそういう道へ行けたわけじゃない』
「まだ生き残りがいる、若しくは自分を受け入れられないヤツがいる?」
『ご明察。その劇物は自分以外の劇物の存在に偶然にも気づけなかったんだ。自分の存在さえ疑ってるし、僕の事も夢か何かだと思ってるだろうね』
「はぁ・・・」
『で、さびしがり屋のその子が近々ヤケクソ起こして能力暴走を起こそうとしてるんだ』
「止めろと?」
『いや、劇物を見つけてケアしてほしい』

・・・どぅーゆーこと?だってヤケクソ起こすんなら止めてやるのが普通じゃない?それにあちらも俺、若しくは俺以外のナカーマを探してんだろ?ド派手にやるなら嫌でも見つかるだろうに。

『所がそうはいかないんだなー』

司書は事務机の書類を全部払いのけてDON!とでかい本の1ページを指さした。何やら書いてあるので読めという事か。
どれどれ・・・ふむふむ・・・なるほど・・・ホホー!

「さっぱりわからんから説明しろ」
『君ねぇ・・・まぁいいや。ここは意外とアフターケアのしっかりしている部署(?)でね。この空間は某アニメで言う「嘘のない世界」にちょっと似た場所なんだ』

この空間では自己の存在を認識しやすい、嘘の概念が無い、精神が安定しやすくなる、真実を受け入れやすくなるといった知識や認識方面への法則性が働いている。だからこそ俺を含む転生者たちは自分の死を最低限のショックで受け入れ、この司書の言葉を疑わない。それは司書自身にも当てはまるらしい。そういった説明がそのでかい本に書いてあったようだ。

『でも偶にこの空間に対する抵抗を無意識に試みる劇物がいる。キミも実はその一人だよ』
「俺が?何で?」
『ここに来たとき寝不足みたいな倦怠感を感じたでしょ?そして苛立ちから口数が多くなった・・・それは君がこの空間の法則を拒絶しようとした証なのさ。そして例の劇物くんはそれが著しく強かった』
「怪物君みたいな言い方すんなよ・・・」
『いや君ら怪物みたいなもんでしょ。自分のスペック分かってて言ってる?国際警察機構のA級エキスパートを倒せるとか人外の証だよ?』
「マジかよ!言われてみりゃそうだった・・・こいつぁうっかりだ!」
「「HAHAHAHAHA!!」」

閑話休題。
劇物君は自分が死んだのも受け入れない。チート能力も存在を信じない。挙句の果てに司書の存在もフラスコ内に入ってから否定してしまったらしい。極めつけが無意識に能力を発動させているのにそのことに気付いていない・・・そして能力の内容を司書の存在と一緒に忘れているのが最大の問題とのこと。

『劇物・・・仮称Aとしようか。Aの能力は「理想を現実に変える能力」・・・いかにもな力だね。選んだ理由は「自分の現実を返してほしい」とか言う言葉を聞いてそうなった』
「わー、その手があったか・・・俺もそれにすりゃあ良かった」
『何言ってるんだい。デメリットを考えると君の龍が劣っているとは言い難いものだよ』
「・・・デメリットか。規模がデカすぎて使えないとか?」
『いいや違う。デメリットはその名もずばり「生体には使用できない」、そしてもう一つが真のデメリットだよ』

生体には使用できない。つまり「お前は死ね!」とか「死ぬな、生きろ!」とかは現実に出来ないというわけだ。で、結局のところ何なんだもう一つの真のデメリットって。

『実はね?チート能力には「論理解釈」という補正が掛かるんだ』

例えば応龍皇には元々部屋もなければ無限力による何でも製造などの機能は本来備わっていなかった。だが”負の無限力によってしもべを生み出せたならば創造の力もある”と言った感じで力が拡大解釈された結果俺の応龍皇にはそんな力が備わった。

例えば劇物Bの持つ剣は本来「存在確立を操り対象を崩壊させる」と言う力しか書かれていないが、”存在確立を操れるなら破壊の反対も出来る””不確定性原理を用いれば可能”という補正が働きとても便利な剣へと変わった。

まぁこんな具合に能力が都合のいい方に解釈されてしまう半面、都合の悪い方に解釈されてしまう能力もある、と。

『理想を現実に・・・の『現実』の部分に補正が掛かってね。”本人がイメージできないものを実現することは出来ない”と縮小解釈されてしまったんだ。おかげで彼が今現在能力を発動させる範囲は彼の想像できる範囲・・・とても狭い範囲に限定されている』
「ははーん?さては今まで自分が能力を持ってることに気付かなかったのもそいつのおかげって訳か?」
『ちょっと違うかな。彼は自分の身の回りにおかしなことが起こりすぎている事を自覚している。ただ・・・ネガティブな子でね?覚えのない記憶があることも相まって『自分は呪われてるんだー!!』とノイローゼになってるんだ』
「・・・・・・難儀な奴だな、としか言えんぞ」
『そんな彼をこの空間に呼んで話を聞かせても意味がない。だから劇物同士で話をつける必要があるんだ・・・その劇物の事を思って、この頼み引き受けてくれないかな?』
「ちっ、何かそういう話聞いちゃうと断りにくいよなぁ・・・」

なまじ人より耐性があったばかりに現実を受け入れられなくなったそいつをほんのちょっとだけ可哀想に思った俺は、後頭部をぼりぼり書きながら受諾の意思を表示した。

『サンキューベリマッチョ!!』
「Die」
『御免これ以上真面目とか無理だったわ。で、だけど・・・劇物Aは君と同世代で海鳴市に住んでるよ』
「ほうほう、で、性別とか特徴は?」
『うーん”劇物の存在”は本来自力で見つけなければならないから存在確認に直接関わる情報は教えても夢から覚めた時に忘れちゃうんだ。ただ、目立った子ではないよ。それだけは確かだね』

目立つ奴だったら応龍皇が発見しとるわい。
この世界矢鱈と法則だの方向性だのが多いな。つーか夢なんだなここ。俺をここに呼び出すのは法則的にいいのか?

『そこはそれ、現場の判断って奴さ。というかこの空間に抵抗力がある君以外には頼めないんだけどね』

この空間にいるってことは知らないことを知っているわけで、それは矛盾なのでフラスコ内に戻るとその内容を”うっかり”忘れ、最低限の情報だけ残る方向性が働く(司書の存在、及び自分が頼んだ能力は必須事項という事になっている)。だがそれに抵抗力のある俺は何とかなる。そういう解釈でいいらしい。らしい尽くしだが感覚で分かればそれでいいとのこと。

『ロジカルでなくセンシブルで行こう!では後は頼んだよー』
「もーめんどくせーなー・・・」

夢から覚めたら忙しくなりそうだ・・・ま、やるからには手を抜きたくないのが難儀な所かな。




――――――――――――――――――――――――――



あたーらしーいーあーさがーきたー きーぼーうのーあーさーがー・・・ん?

なんか左右にある生暖かい何某(なにがし)のせいで体が動かん!何だこれ金縛りか!?

「うにょ・・・くー・・・」
「にゅふふ・・・ドッグフード1年分だぁ・・・ぐぅ」

右腕を金髪幼女、左腕をオレンジのケダモノが枕にしていた。ベッドには入って来るなとこの前言ったばかりなのに人の話を聞かない奴だな・・・金髪幼女こと義妹のフェイトは普段と違いストレートヘアなのでちょっと新鮮だった。シャンプーの香りがする。良い奴使ってんな、いいシャンプーはマジでいい匂いするんだよなー。
キューティクルすげえなこの髪・・・維持してんのがフェイト本人でなく使い魔と保護者なのがアレだが。
そしてケダモノはいぬ形態。俺の腕を封じた罰としてお腹を撫でまわしてやろうかと思ったが義妹が片手を開放してくれないのであきらめた。

犬好きとようじょ好きにとっての希望の朝・・・俺にとっては自力で顔を洗う事も出来ない絶望の朝だが。

「こいつら幸せそうな顔しやがって・・・しょうがねえ、二度寝しよう」

フェイトの長い髪が腕をくすぐって何とも落ち着かない気分になりながら俺は再び惰眠をむさぼることにした。

あと諸君。小学生ようじょが好きな奴はロリコンじゃなくてアリコン(アリス・コンプレックス)だ!
そこん所間違えんなよ!!でわ!




――――――――――――――――――――――――――



・・・ってアレ?

『また来たのキミ?』
「アンタが連れて来たんじゃねえのか?」
『いや、今まさに夢コード切断しようとしたら君が入ってきて・・・』
「・・・ってそれAV端子じゃねえか!?何だそのアナログ!?」

司書が俺をここに連れてくる方法は意外とアナログだった。おいコラそのナーヴギアのパチモンみたいなそれ何だコラ!!カヤバーに許可とって作って(ry


結局次の目覚めまでに十数分かかったシャインであった。
 
 

 
後書き
『理想を現実に変える能力』 作品元・・・漫画『うえきの法則』より

物体に理想の性質、性能を付加する能力。レベル2という追加能力で、理想化したモノに触れたモノの重力を変えることもできる。生物には使用できない、能力を一度使用する度に寿命を1年削るという条件(物語内では限定条件と呼ぶ)があったが、原作で「能力によって失った寿命をある程度元に戻した」と言っていたのでそもそも限定条件自体が戦いの公平性をきたすために後付された法則だったものと推測する。よって劇物Aに限定条件は存在しない。 
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