逃れられぬ運命
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第三章
「私はアルゴスの王位やそうしたものには何の興味もないのだ」
「それでもです」
「何故だ、私はお祖父様に対して何もすることはない」
「ですが何度もお話している通りです」
「お祖父様はこの国にはおられないのか」
「その通りです、ですから」
「そうなのか」
「貴方は王にはお会い出来ません」
絶対にだというのだ。
「ですからお帰り下さい」
「そうなのか・・・・・・」
いないのでは仕方なかった、ペルセウスも諦めるしかなかった。
彼は意気消沈してアルゴスを去った、ペガサスに乗りそのままこの国を後にした。
その途中彼はラーリッサに立ち寄った、丁度そこに入ると。
祭りの最中だった、彼はそれを見てエチオピアに帰る途中祭りに参加して祖父に会えず意気消沈している気持ちを紛らわそうとした。
それで祭りに入った、それで楽しんでいると。
競技も行われていることを知った、それでラーリッサの者にこう頼んだ。
「よければ私も参加させてくれるか」
「貴方もですか」
「私はエチオピアから来た者だが」
ペルセウスはたまたまここでは名乗り忘れた。
「他の国から来た者だが」
「あっ、いいですよ」
競技の参加者を集める者は快く受けた。
「それは」
「外国の者でもいいのだな」
「今日はお祭りですから」
だからだというのだ。
「誰でも参加出来ます」
「そうか、それは何よりだ」
「それに貴方は見たところですが」
「私は?」
「はい、非常に澄んだ目をしておられますね」
ペルセウスのその目を見ての言葉だ、実際にその青い目はエーゲ海の様に澄んでいる。
「顔の相もいいですね」
「顔もか」
「人の心は人相に出ます」
それを見ての断だったのだ。
「貴方は素晴らしい英雄か戦士ですね」
「そう言われるに相応しい者とは思わないが」
「ここで自分からそうだと言う人はそうした人ではありません」
素晴らしい英雄や戦士ではないというのだ。
「ですから貴方はです」
「競技に参加していいのか」
「どうぞ、そして素晴らしいものを見せて下さい」
「有り難う、それではな」
ペルセウスは名乗らないまま競技に参加した、そして。
アクリシオスもだ、ラーリッサの王テウタミデース、古い友人である彼にこう誘われたのだ。
「共に競技をか」
「そうだ、見ないか」
テウタミデースは昼食の場でアクリシオスと共に食事を摂りながら彼に問うた。
「そうしないか」
「競技か」
「我等はもう歳で参加は出来ないがな」
「観ることは出来るな」
「競技は観るのもいい」
参加するのもいいが、というのだ。
「だからどうだろうか」
「そうだな、そういえばこの頃競技を見ていなかった」
アクリシオスも競技は嫌いではない、若い頃はよく参加して楽しんだ。
だから今こう思ってそしてだった。
「ではだ」
「決まりだな」
「うむ、観に行こう」
「特別に席を用意しよう、共に観よう」
テウタミデースは水で割った葡萄酒を飲みながら笑顔で言った、こうしてだった。
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