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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第66話 大乱闘が始まるようです


Side ネギ

「………正気?ネギ君。」

「はい、正気です。」

「む、無理ですー。携帯電話使うので精一杯なのに、ロボットなんてとてもー……。」

「わ、私も、流石にロボットの操縦なんて自信無いです。」


超さんのロボット軍、特に巨大な機体に対抗する為に、こちらもロボットを使う事にしたんだけれど、

案の定拒否された。でも、こっちの人達がこう言う事に弱い事は分かってたから、その問題は確認済みだ。


「大丈夫です。このロボットは、三つの操作方法が設定されています。

一つ目は、レバーやボタンとかを動かしての操縦操作、二つ目は、神経系に接続しての思考操作、

三つ目は、機体と体を融合させる直接操作があります。」

「一つ目はゲーム感覚でやれそうですね。二つ目と三つ目の違いって、何ですか?」

「二つ目は"思った"通りに動いて、三つ目は"動いた"通りに動きます。

皆さんは、実際にやった方が早いと思います。」


何だかんだ言いつつも、自分好みの機体に乗って行く。どうやら、殆どの人が直接操作を使うようだ。

結構自由に動いてるけれど、蹴りを放っても大丈夫な程度には離れてるから、大惨事にはなっていない。


『ネギくーん!これ、外に出て動かせる?』

「ドックの外に演習場みたいな所がありましたから、そこで動かせます!

今扉を開きますから、待っててください!」


スイッチを押して扉を開くと、奥から赤い機体が飛び出して行く。

その後ろから、危なっかしくも歩いて四機が出て行く。あ、あの凄いの誰だろう?


『フハハハハハハ!全員かかってこぉぉぉぉぉぉい!!』

『ち、千雨さんが御乱心ですーー!!』

『いくら上手く動かせた所で、初心者なのは変わらないよ!とったぁぁぁぁぁ!!』

『どっっこを狙ってるんだぁ!!』
ガギョォン!!
『わぁぁぁぁぁーー!?』

『分野が科学なら負けんよ!!』


「千雨ちゃん、元気ねー。」

「ええ、水を得た魚ですねー。って、明日菜さん。どうしたんですか?」


正面の演習場から聞こえて来る戦闘音を聞いていると、横に明日菜さんが歩いて来た。


「ロボットが動かないんだけど、私はどうすればいい?」

「えーと………実はここに来た時、メッセージが再生されたんです。

隠しドックに二人乗りの機体があるから、僕と明日菜さんで使え、って。」


ドックの一番奥、右の隅を押し込むと壁が開いて行く。その奥にあったのは、顔が二つある真紅の機体。

頭と胴体の口が開いてあって、コックピットになっている。


「これ………なんか、他のと違う?」

「はい。ちょっと古い機体で………愁磨さんと、父さんが使ったそうです。

京都に居た鬼神を倒す為に使ったと言ってました。あと、根性とか気合でパワーが上がる、とも。」

「何それ………ホントにロボットなの?」


分からない、としか言いようがない。けれど、やれそうな気もする。

不確かな物は嫌いな性質だったんだけれど、ヤキが回ったのかもしれない。


「とりあえず、動かしてみましょ。何日か動かせば、勝手が掴めると思うし。」

「はい。明日菜さんはどっちに乗りますか?」

「上は私には小さいし、下に乗るわ。」


その後、皆がある程度動かせるまで練習して、戦闘のテストもした。

・・・千雨さんは群を抜いて上手く、全員相手に勝った。これで希望が見えて来た。後は――――


「(超さんの話を聞かないと、ダメだよね。)」


笑い声と鋼鉄音がするドックから、僕はこっそり抜け出す。

そして超さんを探しに、薄暗くなって来た大通りを歩いて行った。


―――――――――――――――――――――――――――――
subSide まき絵

「超、ようやく見つけたアルよ!」

「古に楓、まき絵じゃないカ。珍しい取り合わせダネ。」

「随分大胆でござるな?つい先程、学園長達が捕まえに来たと言うのに。」


超さんを探しに出ていた私達だけど、この学園広い上に学祭で人多いし、しかも隠れてるテロリスト、

って言うの?を探すのは思ったよりも難しくて、暗くなって来たし、

ネギ君の所に戻ろうか―――って所で、超さんが自分から出て来た。


「危なくなったら、愁磨サンが助けてくれるからネ。それで、今更何を聞きに来たのかナ?」

「なぁに、ただの確認でござるよ。………本気で、人類を滅ぼそうなんて事を考えているのか?

まるで、RPGのラスボスみたいでござるよ。」


和やかな口調だけど、空気が冬みたいに冷えて行く。こ、怖いけど、逃げていられない。

クラスの皆も、お父さん達も消えちゃうなんて・・・・そんなの、許せない!


「ああ、私は本気だヨ。人間なんて、全員消えてしまえばいいんダ。」

「超………何故、そんな事を………。」

「言ったところで分からないヨ。当事者でなければ否定し、止めようとスル。『正義』とはそういう物ダ。」


許しちゃいけない事なんだけど、超さんの笑顔が凄く、歪んで見えて・・・

中学生の私には分からない重荷とか背負ってる、んだと思う。超さんは話は終わった、と背中を向ける。


「それじゃあ、明日を楽しみにしているヨ。」
ボンッ
「待つアル、超……!!」

「無駄でござるよ、古。あのタイプは、言葉では止まらない。結局、思いを通すのは力ある者でござるよ。」

「だったら…………。だったら、けっちょんけちょんにして黙らせるアル!!」

「ハッハッハ、旧友の目を覚ますか。私も手伝うでござるよ。」


くーちゃんと楓さんは肩を叩きあって、暗くなっちゃったテラスから飛び降りた。

私はどっちかと言ったら体育会系だけど、あの二人みたいな・・・

ネギ君たちみたいな、"戦い"を知ってる人達のノリは、イマイチ分かんない。

だけど、私だって・・・・頑張れるし、頑張りたい!だから今は――――


「待ってよーーー!置いてかないでーーー!!」


今は、追いつくように頑張ろう。

Side out
―――――――――――――――――――――――――――――


「超さん、見つけましたよ。」

「おやおや………ネギ坊主にまで見つかるとはネ。気配遮断と魔力放出量を減らすべきカネ?」

「探知なんかしなくても、(にお)いで分かるモノです。」

(クサ)い言われたネ!?女として死ね言われたヨ~!」


見つけたまでは良かったけれど、下手な事を言ったせいで煙に撒かれそうになる。

この人達ってなんでこんなに、雲を掴むような性格なんだろう。・・・煙に撒かれる、雲だけに。

・・・・・・・僕まで良く分からない事になって来た。


「話を聞きに来たんですが………聞かせてくれる気は、ありますか?」

「仮に、あったりなかったりしたラ。どうするネ?」

「あったら聞かせて貰いますし、無いならこのまま捕まえます。

………なぜ、あんな事をするんですか?愁磨さん達まで引き込んで。」


僕の問いに、複雑な笑みを浮かべる超さん。

嘲笑のような、胡散臭いような。悲しいような、嬉しいような・・・・。


「"魔人"殿も幸せ者ダネ。家族以外にも信じてくれル人がいて。

そも、彼は信ずるに値するほど語ってくれた事があるのか?少なくとも私には、『騙って』くれた事しかないヨ。」

「………僕がほんの小さい時、愁磨さんは真実を語ってくれました。それだけで十分なんです。」


『ナギも言っただろ?考えるよりも行動した方が良い事もある。

答弁の時は方便と詭弁を使い分けろ。そして、目を逸らさず感情を隠せ。

目を逸らしていいのは、女の子が恥ずかしがった時だけだ。』


「いや、違う違う。ここじゃないです。」

「…………君も存外、阿呆な思考回路を持ってるネ。」


凄く複雑な事を言われたけど、今は無視。で・・・そう、そうだ。

『自分が目を逸らさないで見てれば、嘘か本当かくらいは分かるもんだ。

まぁ、読める深さは過ごした時間と経験に左右されるけどな。だから、分かればいいのは二つ。』


「その人の言ってる事の真偽と、喜怒哀楽が分かればいいって。だから、超さんの事もなんとなく分かります。」

「君に、何が、分かるのかネ………?」


瞬間、超さんの胸のあたりに魔力か何かの歪みを感じる。ギチリ、ギチリと空間が捻じれ始める。

示威行為なんだろうけど、今の僕には――――悲しく映る。


「覚悟のせいで、友達を裏切って。嘘の笑顔で、自分を傷つけて。

悲しいのを、覚悟と怒りで埋めようとして………。寂しそう、です。」

「そんな事は、無い。あるものカ……!!」

「ありますよ、分かります。だって………。」


かつて、そんな表情を見たから。他でも無い、この話をしてくれた人を見たから。


「………フゥ。本当に君達は気にくわない。

いがみ合って、嫌い合っている様に見えて、本当の所では仲が良いから性質が悪だから―――――」


超さんの目がスゥ、と細められ、同時に怖気と寒気に襲われる。


―――背後、上。


体内に埋めておいた肉体強化の遅延呪文を発動して、左に全力で跳ぶ。


ガッ!
「ぐうっ……!!『天馬疾駆』!『天掴む雷神の双手(ケーリュケイオン・アドルバナブル)』!!」

―――ドガァァン!!


壁にぶつかるのと同時に、剣が地面を叩き割る。四方八方に地割れが発生して、石礫が飛んで来る。

高速移動魔法と強化魔法を使うと、腕に雷が纏わり足に翼が生える。

地割れを低空飛行で避け、石を弾く。


「ふぅむ、小僧にまで避けられるとぅうはぁ。もっとマシな肉体を用意できんのかぁ?」

「文句ばかり言うネ。それとも、若い者の相手はご老体には苦しいのカナ?

魔王と言えども、所詮はひよっこアルね~。」

「貴様よぉり弱くなるようにぃ、リミッターをかぁけている癖にほざきよぉぉるわ。」


マントを翻し、再び剣と古い銃を構える禍々しい男。

超さん、今、魔王って言った・・・・?それにこの男、どこかで見たような―――


「(って、そうだ!森で愁磨さんと戦ってた男だ!)」

「ええい、面倒だ。無ぅ理矢理にでも外すしかあるまいて。」


頭の中で、男=魔王=(愁磨さん曰く)信長という構図が出来る。

そして愁磨さんに手傷を負わせられる程の男が、かけられているリミッターを外そうとしている。

なら、ここで選べる戦法はただ一つ――――


「脇目もふらず即時撤退!!」

「ぬぅぅぅ、まぁたんか小僧!!侮られたまま逃ぃがしてなるものかぁ!!」

「待てと言われて待つ人は以下略です!」


男が撃って来る銃の乱射と剣波を必死で避け、その場をなんとか離脱する。

一端街の反対側まで走り後ろを確認すると、追って来ていないようだったので図書館島へ戻って来た。


「まさか超さん、あんな秘密兵器まで隠していたなんて………。

映像にはいなかったけど、もし出て来たら………。」


つい今しがた感じた殺気を思い出して、身震いする。

ロボット軍の攻撃は、成そうとしていることとは異質な、お遊びの様な・・・躊躇う様な雰囲気を

感じたけれど、アレは違う。『戦う以上は殺す事が当たり前』と思っている。


「(魔王、織田信長――――歴史通りの人なら、人を殺すのが当たり前で当然だ。

呼び名が第六天魔王とかあったけど、本当に魔王とか………。)

アレが出て来たら、学園長先生に任せるしかないんだにょわぁーーー!?」
ドガーーーーーーン!!
『あったたたー。ネギ坊主、大丈夫アルか?』

「く、古さん。何事ですか?」

「いやぁー、千雨どんが強くてネ。つい熱が入ってしまってるアルよ。」


古さんが乗ってる機体、ゴッドガンダムが視線を動かした先。

演習場を見ると、千雨さんが乗った真紅の機体、紅蓮聖天・・・何だっけ?

その紅蓮が、六対一で戦っているのが見えた。


左手に持った短刀と長い右手で攻撃を防いで、攻撃は蹴りと右手の突きだけ。

シンプルだけに、強さが際立ってる。飛行も可能だし、何よりも右手の一撃必殺"輻射波動"がある。

そのまま練習で使う訳にはいかないんだけど――――


『これでラストぉぉぉぉぉぉぉぉお!!』
ドシュウゥゥゥッ!
『『『『ギャーーーーーーーーーーー!!』』』』


―――噂をすればなんとやら。千雨さんはその輻射波動で練習を締める。

輻射波動にも種類があって、今のはエネルギーを拡散させて機体を止める技。

人体に影響が無い様で、これから始まるロボット軍との戦いだと、凄く便利な技だ。

と、千雨さんはさっぱりした顔で紅蓮から降りて来た。


「おお、先生。意外と楽しいぞ、これ。ありがとな。」

「い、いえ……。楽しんでもらって何よりなんですけれど。随分慣れてるって言うか………凄いですね?」

「思ったとおりに動かせんなら、私の得意分野だからな!」


千雨さんは珍しく(最近はそうでもないけど)嬉しそうに基地に帰っていった。

この分なら、敵のロボ軍団は問題なさそうだ。あとは、あの魔王を倒すために、あの魔法を完成させないと。

Side out


――――翌日


Side 愁磨

『さぁやってまいりました麻帆良学園祭最終日イベント!

天才超鈴音と最凶教師織原率いるロボ軍団と教師・生徒、

さらには一般のお客まで交えた"麻帆良大戦"が開催されております!!弾が切れた方は――――――』


最終日。予定通りの時間から『イベント』が始まり、

始めは初期戦力である歩兵と多脚戦車が海岸より上陸し、集まっていた防衛軍と当たった。


「ハッハッハ!楽勝楽勝ぉーー!!」

「弾だぁ!弾持って来い!撃ち足りんよ、こんなものではぁ!!」

『さーて東海岸。野球部と古式弓道部の一個中隊が奮戦!

敵兵を瞬く間に粉砕!玉砕!!大喝采だぁ!!

続いて西海岸、少々遅れて他所も討伐完了!速い、早い、迅い!』


第一陣はその殆どが海岸で討たれ、討ち漏れも市街地で討たれた。

続いた第二陣では多腕型・獣型、更には4m以上もある巨人型機械兵が各所に5機ずつ投入される。


「クソッ!このでかいのつえーぞ!?」

「銃じゃ駄目だ!手榴弾とロケランも持って来い!」

『Gogogoooooooooooooooooooooo!!』

「「うぉわおあああああああああああ!!」」
キンキンキンッ―――
ドンドンドンッ!!


巨人型の腕が振り上げられ、一般兵の頭上へ振り下ろされる―――寸前。

人間の胴よりも太い腕が細切れになり、頭と胴体に風穴が開いた。


「サムライ部隊、参る!!」

「ガンナー隊、続け!!行くぞぉお!!」

「おぉお!?なんかカッコいいの来たぞ!!」

『さぁ皆さん!ここからは護衛部隊が各所に登場し、一緒に戦ってくれます!

彼らはランキングに関係ありませんが、任せ切りだと上位には行けませんよ!!』


各所で苦戦し始めると魔法を使う部隊、つまり防衛側の主戦力が投入された。

表上は学園祭も催しなので、イベント性を高めるための得点ランキングも置かれており、

防衛側のモチベーションは上がり続けていた。


「ふぅむ、ナカナカ頑張るじゃないカ。追加追加~♪」

「ゲームバランスを崩すなよ?」

「貴方の娯楽至上主義な考えハ理解しているヨ。敵に回られても困るしネ。軍師としテの采配をご覧アレっと!」


戦場に見立てたホログラム盤を、超は嬉しそうに操作し続ける。

俺と超は司令部兼最終兵器の天空要塞に常駐するラスボス、

他の皆は防衛部隊長的な役割としてロボ射出場の奥(と言うか上空)に待機していて、

隊長がある程度のダメージを負った時点で退避、その拠点は奪取される設定になっている。

実際は一合二合したら撤退するのだが。


『ガガガッ!』(み゛ーーーーーっ

「ちょ、わ、きゃぁっぁぁああああああああああ!!!」

「うっそぉ!?マジで脱げんの、これ!?」


第二陣で、ロボの攻撃を受ける者がやっと出てきた。

ビーム系攻撃は一発で服が消し飛び(下着は残るが)、ミサイルやガトリングは被弾したところだけが無くなる

仕組みになっている。


ベネ(良し)グラッツェ(ありがとう)。」

「おっさんカ、あなたは。」

「失敬なことを言うな、君は。俺はまだこんなに若いのに。年齢だけで行けば曾曾おじいちゃん位だけど。」

「なら枯れていてクレないカ……。」


アホな事を言いつつも、超は手を休めていない。

俺が『答えを出す者』で答えを得るよりも早く答えを出し、戦場へ采配を送る・・が、


「貰ったぜぇぇぇええええ!!」
ドグォォォォオオオオオオォォオオォォォオォオォン!!!

「あぁ~、全滅してしまったネ。てりゃ。」


ここで第二陣も破れた。

それにより、全六陣中最多の第三陣――隊長機以外の全機種が投入され、全部隊の35%の兵が一気に出た。


「ふっふっふ。防衛軍と言えどモ、この大軍相手には少々骨が折れるだろうヨ。」

「いいや、それはどうかな?」

「む、アレは、まさカ……!?」

「思ったよりも大分早い。が、想定内ではある。

刹那、木乃香、しずな、もみじは隊長機で戦闘準備。出番だ、四天王が来たぞ。」

『アイアイサー!まっかせて!』   『り、了解しました。』

『はぁ~い、任せてぇな!』  『あらあら、随分早いですね。』


全員が搭乗する間に、堰を切った濁流の様に機械兵の隊列を縦に切り裂いて行く四つの影。

彼らこそ、四拳王に各々付き従う四天王。全員が達人であり、一人で一個大隊を相手取る猛者。

とは言え一機で四人を相手に、十二分に勝てる筈だが・・・・・。


「(刹那の様子がおかしいんだよなぁ・・・。いや、理由は分かっちゃいるんだが。)

刀子、アリア。機体が破壊された場合は頼んだ。」

「……はい、お任せください。」

『・・・・・・うん、分かった。』

「ヤレヤレ、過保護と言うか何と言ったものカ。

そんなまどろっこしい事をせずとも、言う事なら簡単に聞かせられるだろウ?」

「生憎と、人形を愛でる趣味は無いんでな。ネカネ、後はよろしくやってくれ。」

「分かりました。……気を付けて、くださいね?」

「ああ、お前らも気をつけてな。」


二人の頭を撫でてやり、第五陣の最終調整へと向かう。

ああ、そうとも。本番はこれからだ。祭りは、これからだ。

Side out



―――――――――――――――――――――――――――――――――――
subSide 刹那

愁磨さんの指示に従い、四天王の一隊が突き進んで行った場所へと巨大な機体―――

"従王聖剣『ギャラハッド』"を操り、向かう。

そう、私に与えられた機体は、王に従う剣の王・・・。


「(私は、どうしたらいいのだ・・・!!

愛する人と、愛する人達と戦う事は嫌だ。けれど、彼らを諌める事は、私には―――)」

「………機械の巨人、いや操縦者よ!我が名は東拳王"修羅"が四天王、剣聖"朱雀"!!

貴様には迷いが見えるぞ!この戦いに疑問を抱いているのではないか!?」


私が広場の真ん中で止まっていると、蒼碧の派手な鎧を付けた人が

機体の正面に立ち、叫んだ。

・・・迷い、は確かにある。人を、全人類を消すなんて事あってはいけない。

だけど、私は・・・・・・!!


「私は、王に従う剣!だから、王に従い、戦います!!」

「……愚か、いや、哀れだな。皆、この赤子は殺すな。主の采配に委ねるようぞ。」

「「「承知。」」」

「右方、"修羅"が剣王"青龍"。後方、剣神"白虎"。左方、剣帝"玄武"。

いざ、尋常に――――」

「「「「「参る!!」」」」」


五人が同時に動き出す。

いや、唯一武器を出していない私が一瞬出遅れる形になり、四方から剣の突撃が迫る。

しかしこの機体の副武装である両手十本の指、射出型短槍"スラッシュハーケン"を

撃ち出し振り回し地面を砕く。そこで出来た僅かな隙、空中へと飛び出す。


「……成程、赤子かと思ったがある程度の使い手らしい。ならば一撃で決めよう。」

「出来るものなら、やってみてください………!!」

「いいとも。ああ、君はそれの弱点に気づいていないようだからな。」


空中で主武装"聖剣エクスカリバー"を抜き、奥義の為の気を溜める。

四天王も空中へ飛び上がり、それぞれの剣を上段に途轍もない気を凝縮させる。


「神鳴流奥義………『雷帝剣』!!!」

「「「「四天剣連義!『四重十字斬』!!」」」」


私の巨大な剣と四本の剣が激突――――せず、エクスカリバーは只の一本の剣によって

簡単に砕かれ、殆どのエネルギーを残したまま、四本の剣がギャラハッドを切り裂いた。


機体ノダメージガ限界デス 機体ノダメージガ限界デス 搭乗者ハ今スグ――――――――
「そ、んな……なぜ………!!」

「当然だ。その様な巨大な機体に気を回し、剣に集約出来る筈も無かろうて。

今は眠れ、若き獅子よ。」


ギャラハッドの目の前に飛び上がった朱雀が爆発寸前のギャラハッドを切り裂き、

私を引きずり出す。

そして抵抗する事も出来ないまま、意識を刈り取られた。

Side out
―――――――――――――――――――――――――――――――――――


Side 超

「超さん、第四陣ももうすぐ突破されます!」

「そのようだネ。全隊長機の準備ハ出来てるカネ?」

「予想全滅時間まであと8分。刹那さんのギャラハッドは先程の報告通り大破、

アリアさんのダイゼンガー・アウゼンタイザーが3分、真名さんのパトリオットが1分遅れで出撃可能。

愁磨さんの機体に至っては、システムの起動すらしていませんので………。」

「………まぁ、最初からアテにはしていなかったがネ。

元々、戦力としてハこの"魔城剣アンサラー"と私の"ムスペルヘイム"だけで十分なんダ。」


私の発言に不満少々、ほぼ同意顔のネカネ殿。

とは言え、初期のアンサラーでは攻・防両面に少々不安が残ってはいたんダ。

殲滅力には長けていたガ、精々学園を吹き飛ばす程度。

下手をすれバ拳王共に止められ、人類を殲滅する事は難しかっただろウ。


「残りの四天王三隊、機械兵団を突破!各隊長は迎撃に出てください。」

「(ふーむ、機兵の配置は全て同数だった訳だガ。となると刹那の所が一番の手練れだったのカ?)

………知っていタ、か?ワザと?しかしナゼ…………?」

「はい、なにか?」

「あぁ、いや。なんでもないヨ。では私達も下降開始、上空10㎞地点で待機。

私はムスペルヘイムとリンクを始めてくル。」

「了解しました、ご武運を。」


・・・実の所、織原一家の中で一番分からなイのはこの子だ。

優秀ではあるガどう見ても普通の少女であり、人殺しなどを容認出来る子には見えなイ。


「なぁ、ネカネ殿。君ハ何故こちら側にいるんダ?君のような子ハ、それこそ――――」

「ネギ側に居るか、花でも愛でている方がお似合いだと?ええ、私もそう思います。

でも、愁磨さんがいますから。」

「…………それだけ、かネ?」


ええそれだけですよ、とコンソールに目を戻すネカネ。

ああ、やはり分からなイ。恋とか言う下らない事に現を抜かしているくせに、人を消す事になんの

抵抗もナイ。・・・成程、魔人殿の言う事がそんなに信用なると言うのならば。


「見せてくれよう、この世に地獄と言うモノを。顕現させてあげよう、火の神を、炎の魔を。」


私の存在意義とハ、それが全て。

精々苦しんで死んで逝け。私達の姉妹の様に、友の様に。それ以上に。戦火に悶え、死んでしまえ。

Side out 
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