皇太子殿下はご機嫌ななめ
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第10話 「あえて言おう。ショタであると」
前書き
嘆く、皇太子殿下と、作者。
投稿するの忘れて、寝ちゃってた。
第10話 「まともなやつはいないのか byルードヴィヒ」
軍務尚書エーレンベルク元帥、帝国軍統帥本部長シュタインホフ元帥そして、宇宙艦隊総司令長官ミュッケンベルガー元帥の三名は、顔を付き合わせていた。
フェザーンからもたらされた、自由惑星同盟がイゼルローンに、五個艦隊という大軍を持って、攻め込むという情報が原因であった。
「まったくこのような時期に」
「この様な時期だからこそ、攻め込んできたのだ」
軍務尚書エーレンベルク元帥の言葉に、ミュッケンベルガーは苦い物を噛んだように、顔を顰め、言い返した。
「我らがいがみ合っていても、どうしようもなかろう。どうするのだ?」
「イゼルローンに増援を送るほか、あるまい」
「いや、そうではない」
と、帝国軍統帥本部長シュタインホフ元帥が、他の二人を見回しながら、言う。
「ではなんだ?」
「皇太子殿下は、どのように仰っておられるのだ。それが気になる」
「皇太子殿下は、行けと。ミュッケンベルガーを増援に向かわせろ。ついでにオフレッサーに例のMS部隊を連れて行かせるように、との事だ」
「増援の規模は?」
「そのような事は、仰っておらぬ」
「殿下に、そのような事まで、決めてもらわねば、動けぬとでも言うのか?」
「私としては、三個艦隊の動員を考えている」
ミュッケンベルガーが低い声で言う。呟きとも唸り声とも思えるほど、低い声だった。
「そうだな。せっかく殿下に准将まで用意していただいたのだ。連中の働きも確認せねばなるまい」
「うむ」
「では、三個艦隊でよいな」
こうして増援は、三個艦隊と決まった。
駐留艦隊と合わせ、同盟と同数であった。
■宰相府 マルガレータ・フォン・ヴァルテンブルグ■
叛徒たちがイゼルローンに攻め込んでくるというので、軍関係者が色めき立っています。その中で宰相府だけは、いつも通りの雰囲気を保っていました。
まったく動揺の色を見せない。皇太子殿下のお蔭かもしれません。
落ち着いていると言おうか、動揺しないというよりも、度胸が良すぎるのかもしれませんね。
「俺も行きたかったなー」
そう呟いては、アンネローゼに睨まれています。
意外とアンネローゼって、束縛系?
世話好きの女は、たいがい、そうですけどね。
皇太子殿下の姿が見えないときには、不安そうに、そわそわしてる事もあるんですよ。殿下は多分知らないでしょうけど、ね。
それにしても、変われば、変わるもんよねー。
あの、アンネローゼが。
「俺のクシ○トリア……」
とも、皇太子殿下が呟いています。
皇太子殿下の専用機だそうです。
四枚の大きな盾? 羽? 見たいな物をつけた機体なんですよ。
ザ○よりも少しだけ、明るい感じの緑色。ザ○はダークグリーンですし。
ですが、皇太子殿下が、クシ○トリアと呟くたびに、アンネローゼが小さく、壊してやろうかしら、などと囁くのが怖いです。そのうち本当にやりそうですわー。
隣の席のわたしの事も考えて欲しいです。
エリザベートは、ジークを見ては、にやにやしてますし。
まともなのは私だけと、断言しても宜しい。
あえて言いましょう。
私のみが正常である。と……。
「おい。いきなり立ち上がって、なに自己主張してやがるんだ?」
うおう。皇太子殿下の突っ込みが入りましたー。
「そうですよ。ラインハルトを見て、はぁはぁしてるくせに」
「ほほう。では、ジークを見ても、にやにやしていないとでも?」
「ガキ見て、にやつくな」
「なに言ってるんですかー。ラインハルトにジーク。かわいい男の子がっ!! 二人もいるんですよー。圧倒的じゃないですかー。我が宰相府は」
「へ、へんたいだー」
なにを失礼な事を。皇太子殿下といえど、許しませんよ。
うんうんって、エリザベートも頷いてますよ。
あっ、なんですか? その呆れたような目は?
そしてアンネローゼを指で、呼んでますね。
「アンネローゼ。しばらく席を外していよう。ヘンなオバサンになっては、いけないからな」
「……はい」
うん、まー。しおらしい顔をしちゃって。アレは絶対、ないしん、うきうきしてるに違いない。
わたしには分かる。
皇太子殿下と二人っきりで、どこ行く気よー。
リヒテンラーデ候に告げ口してやるぅ~。
「そんな事まで、聞きたくないですな」
不意をつくな。このじじい。
年取って、気配を隠す術を身につけたか、これだからじじいは、嫌なの。
「ところで、皇太子殿下は、どこへ行かれたのですかな?」
「今頃は、アンネローゼとしっぽりと」
「ほほう……」
にやりと笑うな。じじい。
じじいが笑っても、かわいくないぞー。
「なにを言うのだ。これでも今を去ること、五十年ほど前。当時のわしはぁー。紅顔の美少年として、近隣でも有名だったのだ」
「歳月って、怖い」
「ふふん。貴様らの夢を打ち砕いて、くれようぞ。これを見るが良い」
そう言って、リヒテンラーデ候は自分の席の、引き出しから一冊のファイルを取り出しました。
中に収められているのは、ご幼少の頃の皇太子殿下の写真。
「うわー。なんて、つぶらな瞳」
「か、かぁいいー」
「こんなにかわいい少年が、あの皇太子殿下になるなんて……」
「今の精悍な雰囲気が、どこにも感じられない」
「いったい何があったっていうの?」
「そうじゃろ、そうじゃろ。男は変わるものなのじゃ。いまにシークも、皇太子殿下のように、ふてぶてしさを身につけるはずじゃ」
高笑いをするじじい。
おのれー。ってあれ? いま、わたし、やばい事に気づいちゃった。
「なんでー。リヒテンラーデ候が、皇太子殿下のご幼少の頃の写真を持ってるの?」
ま、まずい。私、消されちゃうのかしら……。
「な、なにを言うかっ、陛下に命じられて写真を撮ったのは、わしじゃ。予備ぐらいは、持っておるわ」
顔を真っ赤にしても、説得力ないぞー。
ハッ。そうか、そうだったのか……。
「リヒテンラーデ候、貴方も同士だったのですね」
「ち、違う。わしは、正常じゃ。まともじゃ」
エリザベートがもう、何も言わなくていい。とでも言いたげに、リヒテンラーデ候を見つめました。自分に正直になった方が楽になれます、よ。
「ラインハルト派ですか? それともジーク?」
「どちらかというと、ジークかのう」
「語るに落ちるというお言葉は、ご存知?」
「おのれ、謀ったな。エリザベート」
「いえいえ、とんでもない。同士リヒテンラーデ候」
貴方は良い上司だったが、貴方の性癖がいけないのだよ。
■宰相府 ラウンジ アンネローゼ・フォン・ミューゼル■
「あいつらって……」
席に着くと、皇太子殿下は疲れたように、ぼそっと仰いました。
同僚の性癖に、わたしも疲れてしまいます。
わたしは正常ですよ。皇太子殿下。
「そうであって欲しいよ」
「はい」
「ラインハルトたちは、しばらく呼ばない方がいいかもな」
「そうですね~」
ふふふ。ラインハルトには、悪いけれど、しばらく皇太子殿下は独り占めね。
計画通り。ふふふふふふふ。
「あれ?」
「どうかしましたか?」
「いや、なにか寒気が、な」
「それはいけません。今日のところはゆっくりと、おやすみになるべきです」
「そうだな。明日は軍関係に、激励に行かなきゃいかんしな」
「ええ」
■オーディン 幼年学校 ジークフリード・キルヒアイス■
ラインハルト様の背中が、ゾクッとしたように、震えました。
どうしたのでしょうか?
なにやら辺りを見回しています。
「キルヒアイス。ばかばかしいと思うが、嫌な予感というものを、感じたのだが……」
「また、皇太子殿下が悪巧みをしているのでは?」
「そうかもしれない。あれさえなければ、いい奴なんだが……」
「ラインハルト様は、皇太子殿下の事、お嫌いですか?」
「い、いや。嫌いではないぞ。嫌いでは……」
どうしたのだろう。どことなく顔が赤いのですが……。
「そういうキルヒアイスはどうなのだ?」
「私は皇太子殿下の事を尊敬していますよ。問題から逃げずに、立ち向かっておりますし。帝国の事を真剣に考えているのは、皇太子殿下でしょう」
「うん。歴代の皇帝がみな、奴のようであれば、帝国はもっとマシになっていたはずだ」
「戦争もなかったかもしれませんね」
「そうだ。このような無意味な戦争など、なかったはずだ」
そう仰りつつも、目は衣装ダンスの中を、彷徨っておられます。
最近、女装に対して、拒否感がなくなってきているのでは?
かなり心配になっているのですが……。
ラインハルト様はいったい、どうなってしまうのでしょう。これもまた、皇太子殿下の策略でしょうか?
いつのまにか、皇太子殿下に染められてしまっていますね。
しかもそれに、ラインハルト様は、気づいておられないっ!!
恐るべし。皇太子殿下。
怖いお方だ。
後書き
宰相府の行く末が心配になって来ました……。
こんなはずじゃ、なかったのに。
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