プリテンダー千雨
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桜通りの吸血鬼編
第五話
ある日の放課後。エヴァと茶々丸の2人はパソコン室にいた。現在、茶々丸がパソコンのうち一台と接続しハッキングを行っていた。そして、彼女は得られたデータの内容を告げる。
「マスターの予想通りです。やはり、登校地獄とは別にマスターの魔力を押さえ込んでいる『結界』があります。これは学園全体に張り巡らされていて、大量の電力で稼働しています。」
「そうか、しかし魔法使いが電気に頼る時代が来るとはな。」
時代の移り変わりをエヴァは感じていた。
「ですが、これで今夜に計画を実効できるますね。」
茶々丸が言った。
今日は年に二回の学園都市全体のメンテがあり、夜8時から深夜12時の間一斉に停電になる。そして当然、その間は電力で稼働する結界も停止する。そして、エヴァの魔力はほぼ全盛期まで回復するというわけだ。
「ふっ、そうだな。今夜は坊やの血をたっぷりといただくぞ。」
《千雨Side》
今日は二回の学園都市全体のメンテナンスの日だ。この日の夜は麻帆良全体が闇に包まれるから誰も外出しない。だから私と父さんは夜間訓練の約束をしていた。
そして現在。私と父さんは夜の麻帆良の上空を並んで飛んでいた。
「レイン!ちゃんと着いて来れてるか?」
「ああ。なんとか・・・」
私のビークルモードはもちろん、ロボットモードでは派手な黄色の父さんもビークルモードでは紺色なので夜は見えにくい。まあ、私たちは本来宇宙戦闘機なんだからこの色は当然なんだろうけど。
そうこうしているうちに訓練開始予定位置まで到達した。
「よし、じゃあこの辺りで始めるぞ・・・って何だあれは!?」
だけど、そこで私たちは戦闘らしき光を見た。
「まさか、デストロンかクインテッサが攻めてきたのか!?」
「どうする、父さん!?」
「訓練は中止だ!私は様子を見に行くから、お前は寮に帰っていろ!!」
「父さん一人で!?何言ってんだ!私も行く!!」
「ダメだ!お前は夜間戦の訓練がまだなんだぞ!!初めての本格的な実戦がこれなのは危険だ!!!」
「・・・分かった。」
私は渋々Uターンして寮の方へと向かった。
《ホークSide》
レインが帰って行ったのを確認した私は戦闘が行われていると思われる場所、麻帆良の外周部にある森の上空へと移動した。そこで見た物は・・・様々な種類の怪物の群れと戦う魔法使い達だった。
「そう言えば、ここは関東魔術協会の本部を兼ねていると言っていたな。」
よく見ると、黒いローブを身につけたり、神主のような格好をした人物達が怪物達に命令していた。おそらく、関東魔術協会と敵対する組織の人間なのだろう。もしくはそれに雇われた傭兵か・・・
レインを苦しめる原因を作った張本人達だったからあまり快く思っていなかったが、彼らもまた苦労があるのだな。
そう思った時だった。森の一角で他とは比べ物にならない程の火柱が上がったのは。
「何だあれは!」
私は直様機首をそちらへ向けて急行した。すると、そこには・・・鋭い牙を備えた裂けた口を持ち、尾の先にハンマーの着いた手足の生えた魚のようなロボットが居た。
「あれは“シャークトロン”!と言う事はクインテッサか!!」
シャークトロンはクインテッサ星人が自身の手下として生み出したロボットだ。知能は低く、その代わり数による戦いを行う。我々サイバトロンにとっては雑魚だが、人間達にとっては大きな驚異だろう。現に、人間達の放つ魔法は全て奴らの装甲に弾かれてしまっている。
クインテッサが関わっているのなら無視出来ないな。
「トランスフォーム!!」
私はロボットモードに変形し、両手に持ったジェットライフルを発射する。それでまず二匹を仕留めた。だが、それで向こうもこちらに気付いたようで、ロボットモードにトランスフォームして銃を撃って来る。
「さあ、こっちだ!」
私は応戦しつつもシャークトロン達を市街地とは逆方向へと誘導した。
《千雨Side》
父さんに言われた通り、私は寮まで戻って来た。もちろん人間の姿でだぞ?でも、そこで私が見たのは・・・寮から飛び出して行く神楽坂の姿だった。
こんな時に何やってんだよ!デストロンかクインテッサが来てるかもしれないんだぞ!!
私は慌てて神楽坂を追った。
暫く走り、やっと神楽坂に追いつくと、そこは麻帆良と外を繋ぐ道の一つ“麻帆良大橋”だった。そこで神楽坂は何故か絡繰と戦っていた。その上空では先生とマクダウェルが魔法の撃ち合いをしている。多分、今日決着をつける気なんだな。
「ラス・テル・マ・スキル・マギステル 来たれ雷精 風の精‼」
「リク・ラク・ラ・ラック・ライラック 来たれ氷精 闇の精‼」
二人は向き合って互いに呪文を唱える。
「雷の暴風!!!」
「闇の吹雪!!!」
そして、先生は雷を纏った竜巻を、マクダウェルは吹雪を纏った黒い砲撃を放った。二つは互いにぶつかり合い、最初は互角なように見えたが・・・しだいにマクダウェルの方がお仕事始めた。よく見ると先生が持っている杖はいつも使っている馬鹿でかい奴じゃなくて、先端に星の飾りのついたタクトみたいな奴だった。それ以外にも年季の差とかもあって押し負けているんだろう。
それでも、先生は諦めていない様子だ。でも、あの小さな杖であんな魔法を撃つのは無理があったのか、杖にはヒビが入り始める。そして、その細かい破片が先生の鼻を刺激して・・・
「ハックション‼」
くしゃみが出た。すると、その勢いで先生の魔法はマクダウェルの魔法を押し返し、マクダウェル自身に直撃した。って何だそりゃ!?って言うかマクダウェル無事か!?くそっ、煙で全然見えねえ!
と、私が騒いでいる間に煙は晴れた。そして、そこから出てきたのは・・・素っ裸になったマクダウェルだった。
って、おい!くしゃみのせいで裸になるってなんかデジャヴを感じるな。私も一回似たような目にあったぞ!
と、考えていると街に電気が灯った。あれ?まだ十二時には少し早いんだけどな?するとその時、マクダウェルに向かって何か力みたいなのが流れて行った。するとマクダウェルはぐったりと力を失って落下して行く。その真下には湖が・・・って、危ねえ!!
「スーツオン!!」
私はバトルスーツを装着すると飛び出し、落下して行くマクダウェルをキャッチ・・・しようとしたが、その前に杖に跨った先生がキャッチした。
「大丈夫ですか。エヴァンジェリンさん。」
「坊や・・・何故私を助けた。」
「え?だってエヴァンジェリンさんは僕の生徒ですし。」
「そうか・・・」
「あれ?どうしたんですか?」
「今日の所は私の負けと言う事にしておいてやる。」
「え!?いいんですか!!」
「ああ。だが、それより・・・長谷川千雨。いつまでそこで見ているんだ。」
あ、やっと気付いてくれたみたいだな。って、何ナチュラルに私の正体バラしてんだよ!!
「え!?千雨さん!?」
すると、先生もこっちに気付いた。ああ、こりゃまた面倒い事になりそうだ。
「私と坊やの一騎打ちの直前辺りで来たようだが、盗み見とはいい趣味とは言えんな。」
「いや。私はお前らの間の揉め事には関わる積りは無かったし、さっきもいい感じだったから空気を読んだんだよ。」
「待て、いい感じとはどう言う意味だ。」
私の言い方に異を唱えるマクダウェル。その時・・・
「待って下さい!あなたって千雨さんだったんですか!?」
先生が大声で聞いてきた。やれやれ、どうすんだよ。やっぱ説明しなきゃなんないのか?
「なあ、マクダウェル。どうすればいい?」
「お前の父親が私にしたのと同じ説明をすればいいだろう。」
やっぱそうなるのかよ・・・
「分かったよ。でもここでやるのは危険だし、一回寮に戻ろうぜ。」
「危険?どうしてですか?」
先生が聞いて来たので私は答える。
「麻帆良の外周の森で戦いみたいな光が見えたんだよ。」
「ええ!戦い!?」
それを聞いた先生はやっぱり驚いてた。だが、マクダウェルの方はと言うと・・・
「何だ、そんな事か。」
かなりあっさりとした反応だった。
「そんな事って、どう言う意味だよ!!」
「いや、だって夜中に敵が攻めて来るのは麻帆良では日常茶飯事だからな?」
は?なんじゃそりゃ。
「ここは関東魔術協会の本部だ。日が暮れたら夜闇に紛れて敵対勢力が攻めて来るのさ。」
・・・そう言う事かよ。じゃあデストロンとかクインテッサじゃなかったのか。
「ええ!?そうだったんですか!!!」
あ、先生も驚いてる。
「だがまあ、もうこんな時間だ。それに場所的に考えてもここで説明をするのは得策では無いだろうな。」
確かにそうだな。
「じゃあ先生。明日、神楽坂を連れて私の部屋に来てくて。」
「分かりました。」
さて、じゃあもう帰るとしますか。そう思った時だった。
「大変です!マスター!!」
橋の上から絡繰が叫んだ。
「どうした、茶々丸。」
「橋の向こう側から巨大な反応が近付いて来ます。」
「巨大な反応?」
マクダウェルと一緒に私と先生は橋の向こう側へと視線を移した。そこあったのは・・・巨大な影だった。見た所、首が二つある龍のように見える。
「バカな!?何故あんな物が!!」
流石のマクダウェルも驚いてるみたいだ。すると、月明かりが影を照らしその姿が明らかになる。確かに、そいつは双頭の龍だった。だが、背中に翼は生えておらずさらに・・・その巨体は鱗では無く白い金属装甲で覆われていた。そして、奴は絡繰と神楽坂の前までたどり着く。
「お前ら何だ?」
「邪魔だそこどけ。」
すると、二本ある首がそれぞれに言葉を放った。
「でも俺腹減ってる。」
「丁度二人居る。」
「だからお前ら食う。」
さらに、奴らは絡繰と神楽坂を捕食しようと口を開いて首を伸ばした。二人はそれをバックステップで回避する。
「まさか、あいつは・・・」
人型をしていないが間違い無い。デストロンかクインテッサだ。
「プリテンダー!!!」
私はロボットモードになると、双頭龍ロボへ向かって突撃した。
《ネギSide》
エヴァンジェリンさんに勝ててこれでお終い・・・かと思ったら今度は首が二本あるドラゴンのロボットが出て来た!しかもアスナさんと茶々丸さんを襲ってる!!早く助けないと・・・
「プリテンダー!!!」
と思っている間に千雨さん(らしい)が何かを叫んだ。すると、千雨さんの姿がどんどん大きくなって、最終的に大きなロボットに・・・って言うかレインさん!?どうなってるの?
ええと、つまり千雨さんが茶々丸さんのロボット仲間で、ロボット仲間がレインさんで・・・ああもう訳が分からないよお!!
《千雨Side》
ドラゴンロボに向かって突撃した私はまず両手で二本ある首を掴んだ。
「はなせ!!」
すると、ドラゴンロボは私を振りほどこうと暴れ始める。くそっ、なんつうパワーだ。喋り方からして頭はそんなに良さそうじゃなかったけど、その分力は強いらしい。そして、ついに私は振り飛ばされてしまう。
「くそっ!」
私は何とかバランスを取って着地する。そこで私が見たのは・・・
「トランスフォーム!」
聞き慣れた掛け声とともにロボットモードへ変形した敵ロボットだった。その胸には目つきの悪いロボットの顔を模した紫色のマークが描かれている。
「間違いねえ。お前、デストロンだな。」
「そう言うお前はサイバトロン!」
余談だが、私の機体の胸には柔和な顔つきのロボットの顔を模した赤色のマークが刻まれている。これがサイバトロンの証だ。クインテッサ星人が支配していた時はそれぞれ兵隊と奴隷を表す印だったらしいが、今はそれぞれ恐怖と自由を表す物になっている。
「サイバトロン倒す!」
敵は片言な口調で敵意を表すと、銃を取り出して撃ってきた。だが、私はスラスターで急上昇してそれを回避する。
「逃げるな!」
敵は怒鳴りながらさらに撃ってきた。にしても・・・下手な射撃だな。最近練習し始めた私より下手だぞ。どうもこっちのパラメータもパワーに取られているらしい。これなら冗句からちまちまとジェットライフルで攻撃すりゃカタが付くかもな。と、私が思った時だった。
「後ろです!レインさん!!」
突然、先生が私に向かって叫んだ。それに反応して振り向こうとした直前、背中に衝撃が走った。
《ネギSide》
巨大ロボットになった千雨さん、と言うかレインさんが変形したドラゴンロボットと戦っている。助けたいけど、エヴァンジェリンさんとの戦いで殆ど魔力を使っちゃったし、どうすれば・・・そう考えた時だった。レインさんの後ろから鳥みたいな形をしたロボットが迫っていたのは。
「後ろです!レインさん!!」
僕はそれを知らせようと叫ぶ。でも間に合わず、鳥ロボットの脚についた鋭い爪がレインさんに叩きつけられた。そして、レインさんは橋の上に叩き落される。
「レインさん!」
僕はエヴァンジェリンさんを抱えたままレインさんの元へ急いだ。そして顔の近くまで行って声をかける。
「大丈夫ですか!」
「ああ。何とかな・・・」
すると、レインさんは返事をして起き上がった。良かった、無事みたいだ。でも、そうこうしている間に鳥ロボットが人型に変形して橋の上に降りてきた。ドラゴンロボットと一緒にレインさんを挟み撃ちにする形だ。
「どうします、レインさん。」
「前も後ろも敵。それなら・・・横に逃げる!」
そう言ってレインさんは横方向に飛び出した。僕もそれに続く。でも・・・目の前でサメに手足が生えたような姿をしたロボットが橋の上へと這い上がってきた。
「何!?」
僕とレインさんは慌てて止まり、反対側を向く。でも、そっちの方からもよくわからない怪物の姿をしたロボットが這い上がってきた。
「「トランスフォーム!」」
そして、その二体も人型に変形した。
でも、それだけじゃ終わらない。今度はドラゴンロボットの後ろから若干小型な黄色い双頭龍のロボットが出て来て人型に変形した。
《千雨Side》
くそっ、5対1かよ・・・数が多い。ん?待てよ。こんなにデストロンがこっちに来てるって事は、戦いを見に来た父さんは・・・
「お前ら!父さんはどうした!!」
私はデストロンどもに怒鳴りつける。すると・・・
「そう心配せずとも、奴なら今頃シャークトロンどもの相手をしているハズだ。」
奴らとは別の声が上空から響いた。上を見上げてみると、そこには複数の顔を持つタコみたいな奴が空飛ぶ椅子に乗っていた。
「複数の顔にタコみたいな身体・・・クインテッサ星人か!」
「いかにも。我らこそが貴様らトランスフォーマーの生みの親、クインテッサ星人だ。」
こいつが私らのご先祖様を作ったって奴らの一人か。でも、こいつらも何か機械っぽいな。
「で、一体この麻帆良に何の用なんだ?」
「何故か?それは貴様を倒すためだ。」
「え?」
何だって?つまり私一人を倒すためにわざわざやって来たって言うのか?
と、私が考えている間にクインテッサは勝手にしゃべり出す。
「全てのトランスフォーマーは元々我らが生み出した存在。ゆえにその行動パターンは大体予想する事が可能だ。」
その割には反乱起こされてたけどな。
「だが、奴らは人間のような別の種族と力を合わせる事で我らの予想だにしない行動をし、予想だにしない力を発揮する。」
なるほど。つまり、こいつが言いたい事って言うのは・・・
「これだけでも充分な脅威だというのに、貴様は人間との間に生まれた存在。ゆえに、我らクインテッサの栄光のためにここで消えてもらう。さあ、やれ!テラートロン!!!」
クインテッサが命令すると敵ロボット、テラートロン部隊が一斉に武器を構える。その時、先生に抱えられた状態のマクダウェルが口を開いた。
「話を聞いた時にも思ったが、とんだ三下だったようだな。貴様らクインテッサは。」
「何だと?小娘、それはどう言う意味だ!!」
「貴様らは器が小さいと言いたいのさ。そんな事だから自身の生み出した存在に反逆されるんだ。」
「ええい!言わせておけば!!テラートロン部隊!オボミナスに合体してこの小娘にもその力を思い知らせてやれ!!!」
クインテッサが命令すると、テラートロンは合体し始めた。白い双頭龍型が胴体となり、黄色い双頭龍型が右脚、鳥型が左脚、サメ型が左脚、そして最後によくわからない形をした奴が右腕となった。
「さっきから思ってたんだけどさ。何でデストロンのこいつらがお前らの言う事聞いてんだ?」
「こいつらを直接作ったのは我らだからだ。デストロンには貸し出してやってるだけに過ぎん。」
そう言えば、こいつらって武器商人やってるって言ってたな。デストロンと商売いるって事は、多分私らを戦争で自滅させる積りなんだろう。
「さあやれ!オボミナス!!奴を叩き潰せ!!!」
「ぐああああああああああああああああああ!!!」
クインテッサに命令されると、合体ロボ“オボミナス”は獣のような雄叫びを上げてその巨大な拳を振り下ろした。私とマクダウェルを抱えた先生は左右に飛んで回避する。奴の拳はそのまま橋の上に叩きつけられ、巨大なクレーターを作った。なんつう馬鹿力だよ!!
「ネギ!エヴァちゃん!長谷川!早くこっち!!!」
すると、絡繰と一緒に橋の麻帆良側に居た神楽坂が叫んだ。私たちは一旦そこまで下がる。
「皆、大丈夫!」
「ああ。何とかな。」
私はさっき橋の上叩きつけられた時のダメージが少しあるだけだ。でも、先生とマクダウェルは・・・
「僕も大丈夫です。でも、もう戦うだけの魔力は・・・」
「私も同じだ。」
さっきの戦いで既にガス欠の状態だった。
「って事は、戦えるのは私だけか。」
「ちょっと!私と茶々丸さんも居るわよ!!」
私の分析に神楽坂が反論する。
「でもよ、武器や魔法無しで人間があんなのと戦うのは無理だぞ。」
「 うっ・・・そりゃ私はそうかもしれないけど。でも、茶々丸さんなら・・・」
「申し訳ありません、アスナさん。いくら私でも装備無しであれに挑むのは不可能だと。」
「そんな!じゃあ結局長谷川だけで戦わなくちゃいけないって事!!敵は合体して強くなってるのに!!!」
そう怒鳴り散らす神楽坂。でも、一つ勘違いしてるな。
「神楽坂。確かに、合体して奴らは強くなった。でもな、同時にやり易くなってんだぜ。」
そう言って私は飛び出す。後ろで先生と神楽坂が叫んでるけど。気にしない。でも大丈夫だ。こういうデカい敵との戦い方もちゃんと父さんに教えてもらっている。
「ぐああああああああああああああああああああ!!!」
私が接近するとオボミナスは再び野獣の咆哮とともに拳を振るってきた。だが・・・野獣だけにその軌道は直線的で避けるのは容易かった。
そして、拳を回避した私は奴の後ろに回り込み、右肩の関節つまり合体のジョイントに向けてジェットライフルを発射する。こういう合体ロボはジョイント部分が弱い事が多い。オボミナスもその例外に漏れなかった。と言うか特に弱かったようで一発当てただけで奴の右腕は吹っ飛んで行き、橋の下の湖に落ちて行った。
「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
痛みによるものかどうかはわからないが、オボミナスは叫び声を上げて残った左腕を振り回す。だが、ただ単に野獣の本能と怒りのままに振るわれた拳じゃあスピードタイプの私を捉えることは出来ない。さらに、大振りな一撃はオボミナス自身に決定的な隙を生んだ。
「もう一丁!」
それを私は逃さず、今度は左脚のジョイントにジェットライフルを撃ち込む。こちらも右腕と同じくあっさり外れた。そして、片足を失ったオボミナスは巨体を支えきれず、橋の下の湖へと落下していった。
「まだやるか?」
そう言って私は橋の上に残ったオボミナスの左脚を構成していたロボットとクインテッサ星人にジェットライフルを向けた。
「おのれ!覚えておれ!!」
すると、クインテッサは小物っぽい捨て台詞とともにテラートロン最後の一体とともに逃げて行った。
続く
後書き
クインテッサ星人の持つ五つの顔にはそれぞれちゃんとした意味があるそうです。
ドクロみたいなの:死
赤い怒った顔:怒り
頭に一杯イボイボしたのがついた老け顔:裁き
紅葉みたいな髪の奴:戦争
頭に緑色のターバンを巻いた奴:智慧
何か、内容が中二病っぽいような・・・
因みに、G1のキャラクター達の正悪が逆転したシャッタードグラスでは『幸福・平和・満足・慈愛・愛』となっており、それに伴って表情も柔和な物になっています。
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