| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

友人フリッツ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第三幕その六


第三幕その六

「まるで天国にいるような」
「天国はこの世にもあるということだね」
 笑顔でこう話すダヴィッドだった。
「ここにもね」
「やあ、お見事」
「全ては君の裁量によるものだね」
 皆がダヴィッドの今回の行動を讃えた。
「おかげで二人は幸せになった」
「誰もが」
「そうだね。それじゃあ」
 ここでダヴィッドはフェデリーコとハネゾーを見て言うのだった。
「次は君達だよ」
「僕達がかい?」
「また何でだい?」
「何を言ってるんだ、君達もまだ独身じゃないか」
 このことをであった。
「そうだろ?だったら」
「結婚かい」
「それか」
「愛はこの世で最も尊いものだよ」
 ここでこうも言うダヴィッドだった。
「だからね。その愛を君達にもね」
「是非にそう願いたいね」
「いや、本当にね」
 二人はわりかし真剣な顔で彼の言葉に応えた。
「誰かいないものかな」
「僕達のいとしい人が」
「それは遠くないうちに出て来るよ」
 こう二人に話すダヴィッドだった。
「きっとね」
「そうよ」
 ペッペが笑って二人に告げてきた。
「それはきっとね」
「きっとかい」
「僕達にも」
「私にしても」
 ペッペは今度は自分自身のことを話してきた。
「長い間一人だったのに今幸せに包まれているから」
「それじゃあ私も」
 カテリーナもぽつりと呟いた。
「誰か相手を見つけて」
「さあ、皆」
 ダヴィッドが音頭を取ってきた。
「皆で二人を祝福しよう」
「うん、是非ね」
「皆でね」
 フェデリーコとハネゾーが彼の言葉に笑顔で応える。
「二人を祝福しよう」
「この世の幸せを」
「さあ、それじゃあ」
 皆の手にワインが配られる。カテリーナ達が出して来たのだった。
 そうしてフリッツとスーゼルを囲んで。そのうえで、であった。
「さて、それじゃあ」
「ダヴィッド、有り難う」
「おかげで」
「いや、御礼はいいよ」
 満面の笑顔でそれはいいとしたのだった。二人に対して。
「それよりもね」
「それよりも?」
「喜ぼう、そして祝おう」 
 ここで高らかに言った。
「この愛を」
「そうだね」
 ダヴィッドの今の言葉に頷くフリッツだった。
「それを皆で祝おう」
「はい」
 スーゼルも彼の言葉に続く。
「皆で愛の尊さを」
「その輝かしい光を。皆でね」
 全ての者が乾杯し明るい音楽の中で祝福の杯を飲み干す。幸せが明るい農園に満ちていた。フリッツとスーゼルを中心として。


友人フリッツ   完


              2009・10・27
 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧