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ビビッド“ダ・ガーン”オペレーション

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第3話 北米の風

 
前書き

私は黒騎れい。緑が原中学の二年生よ。
やっと日常を取り戻した私だけれど、地球に数十年ぶりの宇宙からの侵略者がやって来た。そして、私はかつて侵略者と戦ったロボットの隊長に任命されてしまったの。
今目覚めているのはダ・ガーン一人だけ。この前合体出来るようになってピンチを切り抜けたけど、敵の力は未知数だからまだ心もとない。だから、世界中で眠っていつって言う他のロボット達も目覚めさせないと!
 

 

緑が浜中学校。
男女共学の公立校で、緑が浜に住む中学生の大半はここに通っている。れい達もまたその一員だ。

「こらそこ!派手なアクセサリーは校則違反だ!!」

学校の風紀委員長、桜小路芽衣はいつも通り校則違反者の取締を行っていた。

「けっ、宇宙人の癖に地球で偉そうにしやがって。」

注意されたいかにも不良な学生は悪態をつく。

「私が何であろうが、貴様が校則違反をしているのには代わり無い。」

「うるせえ!!」

すると、不良は芽衣に殴りかかった。だが、彼女は一切動じずに腰にベルトのように巻いたムチを取り出す。そして、向かって来る拳をムチで叩き落とした。

「いってえ!このドS星の王女が!!」

「何度言ったら分かる。私はワイルダー星人だ!!」

そんな二人やり取りを見ている三人の男子達が居た。

「ええなあ。あいついつも桜小路さんにムチをうってもらって・・・」

「宇宙人とのハーフでエルフ耳、さらに風紀委員長にムチと属性多過ぎぜよ。」

「だがそれがいい。」

・・・何ともダメ過ぎる会話である。

「相変わらずバカだな、お前ら。」

そんな彼らに後ろから声をかける少女が居た。

「高杉!それに黒騎さん!!」

「・・・なあ、何であたしが呼び捨てでれいはさん付けなんだ。」

声をかけた少女、星矢は少年達の反応に不満があるようである。

「いや、だって黒騎さんはお前と違って可愛いし。」

「高杉の中身は実質男と同じやろ。」

「俺っちの中で高杉は男という扱いになってるぜい。」

「よし。てめえら表に出ろ。」

答えを聞いた星矢はボキボキと指を鳴らしながら三バカに近付いて行く。

「せ、星矢!落ち着いて!!」

そんな彼女をれいは止めようとする。その間に三バカは逃げて行った。

「何をやっているんだ。」

すると、そこへ騒ぎを聞きつけた芽衣がやって来た。

「芽衣!いや、これはその・・・」

「どうせ男子どもに“男女”とでも言われたのだろう。」

「うん。間違っちゃいないけど、何故かそれが無性に腹が立つ。」

芽衣の物言いに星矢は額に青筋を立てる。

「と言うか。またスカートをそんな短くして。それにその派手な髪飾りといい、見た目だけでも女であることをアピールしているようだが・・・中身がそれでは無駄だぞ。」

「もう頭きた!覚悟しやがれ!!」

そして、ついに逆鱗に触れられた星矢は何処からか竹刀を取り出して構えた。

「面白い。今直ぐお前を模範生徒へ更生させてやる。」

すると、芽衣も負けじとムチを構えた。

「ちょっ!二人とも落ち着いて!!」

れいはそんな彼女達をなだめようとする。

「れい止めんな。これはあたしとこいつの戦いだ。」

「戦い?何を言っている星矢。これは私による指導だ。」

「へっ、言ってくれるじゃねえか。」

まさに一触即発。いつの間にか周囲にはギャラリーが集まり、もはやれいには止める事は出来ない。だが、その時・・・

「随分騒がしいな。」

誰かが声をかけてきた。その声を聞いて当事者である三人はもちろん、周囲の生徒も震え上がる。そして、恐る恐る声のした方を見ると・・・そこには一人の女性教師がいた。スーツをピシッと着こなし、逆三角形の細いメガネをしたいかにも厳しそうな教師だ。

「き、“鬼神”・・・」

三人のうち誰かが思わず呟いた。
彼女の名は“鬼塚神楽”。通称“鬼神”。れいの担任教師で、星矢と芽衣の所属する剣道部の顧問でもある。

「随分な挨拶だな。」

「い、いえ!今のはその・・・」

威圧感を放ちながら言ってくる“鬼神”にれいは必死に言い訳をしようとするが、中々言葉が出ない。

「まあいい。だがそれより・・・高杉。」

「な、何でしょうか!!」

ドスの効いた低い声で呼ばれ、星矢は直立不動となる。

「私はお前に竹刀を喧嘩に使うよう教えたハズなど無かったが?」

「そ、そうでしたっけ?あははは・・・」

必死で誤魔化そうとする星矢。だが、その態度はむしろ逆効果であり・・・

「そうか・・・なら、部活でみっちりしごいて教えてやろう。今日はサボるんじゃないぞ。」

「はい・・・」

事実上の死刑宣告が成され、星矢は真っ白になった。
だが、それだけでは終わらず“鬼神”の鋭い視線は今度は芽衣の方に向いた。

「それと桜小路。校内の騒ぎを鎮める風紀委員が騒ぎを大きくしてどうする。」

そう言うと“鬼神”は辺りを見渡す。芽衣もそこで周りにギャラリーが集まっている事に気付いた。

「で、ですが。大元の原因は風紀を乱した星矢で・・・」

「責任転嫁するのか?」

芽衣の方も言い訳をするが、鋭い視線とともに放たれた言葉によって黙殺される。

「この件は風紀委員会に報告しておく。委員長といえど罰は逃れられんぞ。」

「・・・分かりました。」

そして、芽衣は自分が悪いと潔く認めたのであった。

「お前らもとっとと教室に戻れ!次の授業が始まるぞ!!」

最後に“鬼神”は周りの生徒達にそう呼びかける。彼らはそれに従い、教室へと戻って行くのであった。




放課後。
生徒の大半が部活に精を出している時間。れいもまた自分の所属する弓道部へと向かおうとしていたが・・・

「れい、頼むよ!見に来るだけでいいからさ!!」

“鬼神”のしごきを恐れる星矢に捕まっていた。

「一人で道場に行くのは心細いんだ!だから頼むよ!!」

「心細いって言うか、鬼神が怖いだけじゃ・・・」

「そうとも言うけどさ!!」

れいとしては早く部活に行きたいのだが、星矢が離してくれないのでどうにも出来ない。一体どうした物か。そう思った時・・・ダイレクターの着信音が鳴った。れいは自分と星矢以外周りに誰も居ないのを確認するとダイレクターを取り出し通信に出る。

「どうしたの、ダ・ガーン。」

『星史からの命令だ。仲間を復活させるために出撃する。私は学校の裏で待っているから直ぐ来てくれ。』

どうやら、星矢からは逃れられるようだが、どのみち部活には行けないらしい。

「ごめん、星矢。そう言う訳だから。」

「・・・仕方ねえな。」

世界を守るためとあっては星矢も引き下がらざるを得ず、れいから手を離した。

「弓道部の先輩にはあたしから言っておくからさ。任せとけって!」

「ありがとう、星矢。」

れいは星矢に礼を言うと、学校の裏へと向かった。





学校の裏ではビークルモードのダ・ガーンが待っていた。早速れいがそれに乗り込むと、何と既に星史が運転席に乗っていた。

「星史さんも行くんですか?」

「ああ。サポートすると約束したからな。」

れいが聞くと彼ははっきりとそう答える。

「それで、何処へ行くんですか?」

「防衛機構軍のアメリカ支部だ。」

「アメリカ!?」

まさかの海外にれいは驚愕した。

「何を驚いている。俺が隊長だった頃は世界中を飛び回ってオーボス軍と戦っていたんだぞ。」

地球を守る隊長に選ばれた星史の戦場は日本だけでは無かった。ある時は南の島、またある時はアフリカ大陸、さらには南極に行った事だってある。

「いや、でもどうやって行くんですか?」

「心配無い。ひとまず、ダ・ガーンを発進させて海岸の方まで行くんだ。もちろん、太平洋側だぞ。」

「分かりました。」

ひとまず、星史の指示に従ってダ・ガーンを発進させるれいであった。




ダ・ガーンに乗ったれい達は海岸付近まで着いた。

「それで、これからどうするんですか?」

「ダイレクターで“ダ・ガーンジェット”を呼ぶんだ。」

「ダ・ガーンジェット?」

「ほら、早く。」

「わ、分かりました!」

れいは指示通りにダイレクターを取り出す。

「来て!ダ・ガーンジェット!!」

れいがそう呼ぶと、一分も経たないうちに一機の大型戦闘機が飛んできた。

「あれは!?」

その姿を見てれいは驚愕する。なんと、ダ・ガーンのサポートメカであるアースファイターの下にアースライナーがぶら下げられていたからだ。すると、ダ・ガーンは海に面した崖を利用して飛び上がり、戦闘機の後部へとドッキングした。

「これは・・・」

「ダ・ガーンとサポートメカのもう一つの合体の姿“ダ・ガーンジェット”だ。中が狭いのが欠点だが、長距離の移動には役立つ。」

「星史さんはこれで世界を飛び回っていたんですね。」

「いや、もっぱら中の広いセイバーズを使っていた。」

「セイバーズ?」

「これから会いに行く仲間だ。」





青い太平洋。
ダ・ガーンジェットはアメリカを目指してこの上を飛んでいた。その時間を利用して世界中に散らばっている勇者の石の現場について説明していた。
勇者の石のうち、ダ・ガーンのように工芸品に埋め込まれておらず、地中へ埋まったままの物は軍に発掘され研究が行われている。だが・・・どのような最新機器を使っても、その全貌は掴めていない。

「それじゃあ、軍が回収した勇者の石の研究は全然進んで無いんですか?」

「ああ、そうだ。」

れいの言葉を星史は肯定する。

「勇者の石とは地球の分身たる勇者の魂。我々人類では到底解明出来ない物だった。」

「人類では到底解明出来ない物・・・」

その言葉でれいは自分の世界を蘇らせた『始まりと終わりに存在するもの』を思い出す。

「ん?どうかしたのかい?」

「い、いえ!何でもありません!!」

「?まあいい。それで、これから行くアメリカ支部には“ジェットセイバー”と“シャトルセイバー”の石が預けられている。彼らの身体もだ。」

「身体も?」

「ああ。かつて勇者が宿ったマシンに何か痕跡が残っていないか調べるために石とともに研究されている。こちらも、成果は出ていないがな。」




太平洋を飛行するダ・ガーンジェットを上から監視するモノがあった。キャンデロロの偵察メカである。光学迷彩を始めとした多種多様なステルス能力を持っているためダ・ガーン達には見つけられない。その代わり戦闘能力は皆無だが。
それが送ってくる映像をキャンデロロは母艦のブリッジにあるモニターで見ていた。

「あかいろさん。リチェルカ・ドゥエさんとファルコ・ティラトーレさんの準備は?」

「いつでも出撃可能です。」

キャンデロロが聞くと、赤毛をポニーテールにしたメイドあかいろさんは答える。

「彼らが向かう先。そこにはきっと新たな勇者が眠っているハズ・・・目を覚ます前に救済してあげるわ。」




地球防衛機構軍アメリカ支部。
ここの研究施設は主に航空宇宙関係が専門だ。セイバーズ二人の勇者の石とボディが預けられているのもこのためである。
そこにある飛行場に一機のジェット機、ダ・ガーンジェットが着陸した。そこからダ・ガーン本体が分離し、れいと星史が降りる。

「お待ちしていました、高杉大佐。」

彼らを白衣にメガネという、いかにもな姿の研究者が基地に所属する兵士とともに出迎えた。

「そちらのお嬢さんが新しい隊長ですか?」

「ああ。黒騎れい君だ。」

「黒騎?高杉大佐の娘さんでは無いのですか?」

れいの苗字を聞いて、研究者は怪訝そうな表情をする。

「残念ながら、オーリンが隊長を選ぶ基準に血縁は入っていなかったみたいでね。」

「そうですか。まあ、私にとってはどうでもうい事です。」

研究者としては勇者に関する研究には隊長が誰であろうと関係が無いようだ。

「既に準備は済んでおります。こちらへどうぞ。」

そして、かれは二人を格納庫の一つへ案内しようとした。その時・・・基地の警報が鳴った。




「一体何が起こった!」

「お待ち下さい!」

星史が叫ぶと、近くに居た兵士が管制室へ連絡を取る。

「大変です大佐!正体不明のロボットがこの基地へと近付いています!!」

「なんだと!?」

星史がそう叫んだ時、遠くで爆発音が響いた。この場に居る全員がその方向を向くと、そこには黄色い円盤の上に乗ったロボットが居た。猛禽類のような嘴と鋭い目を備えた顔で、その手には大型の機関銃が握られている。

「ダ・ガーン!敵が現れたわ!!応戦して!!!」

『了解!!』

それを見たれいは直ぐにダ・ガーンへ出撃命令を出した。彼はそれに従い、敵へと向かって行く。

「お二人は早くシェルターへ!!」

すると、兵士はれいと星史をシェルターへと案内しようとする。だが・・・

「いや、今は勇者達を目覚めさせるのが優先だ。あの敵がダ・ガーン一人で倒せると言う保証は無いからな。」

「分かりました。こちらへ!」

星史の言葉を聞いた兵士は、二人を格納庫の一つへと案内した。




「チェーンジ!ダ・ガーン!!」

敵の直ぐ前まで来たダ・ガーンはロボットへと変形した。

「ここから先へは行かせん!!」

そして、右胸に内蔵された三発のミサイル“ダ・ガーンナパーム”を発射した。敵はそれを両手で構えたマシンガンで撃ち落とす。

「ダ・ガーンマグナム!!」

次に、ダ・ガーンは右足に収納された拳銃を取り出し発砲する。すると・・・敵は背中から翼を広げ、円盤の上から飛び上がった。そして、バックパックのスラスターを噴かしてダ・ガーンの上を飛び越える。

「待て!!」

当然、ダ・ガーンはそれを追おうとする。だが・・・今度は円盤がロボットへと変形した。変形機構こそ最初に戦った敵と同じだが、サイズは一回り大きく、拳銃も大型の物を両手に装備している。そして、奴はその銃口をダ・ガーンへと向けた。




れいと星史の案内された格納庫には無数の機材が運び込まれていた。おそらく、勇者の石がマシンと融合した際に起きる現象を観測するためだろう。その証拠に、無数のカメラやセンサーが中央にあるスペースシャトルと青い戦闘機へと向けられていた。

「勇者の石は何処だ!」

星史がそう言って中を見渡すと、避難して行く研究者の姿が見えた。彼の手には一つのアタッシュケースが握られている。

「そこの君!!」

直様、星史は彼に声を掛けた。それを聞いて振り向いた研究者は驚く。

「高杉大佐!どうしてシェルターでは無くここに!?」

「勇者を復活させるためだ。それより、勇者の石は?」

「このケースの中ですが・・・」

「よし、今直ぐ復活させる!」

「待って下さい!既に私以外の研究員は皆避難しれしまっているので、このままではデータの収集が・・・」

「そんな事を言っている場合か!!」

緊急事態にも関わらず、勝手な事を言う研究者に星史は食ってかかる。その時、一人の兵士が飛び込んで来た。

「大佐、大変です!敵がこちらに向かっています!!」

「何!?もうダ・ガーンがやられてしまったのか!?」

「そんな!!」

その報告に星史はもちろん、れいも驚愕する。

「いえ、奴の乗っていた円盤がロボットに変形して足止めを行っています。そのせいでダ・ガーンはこちらに来れません。」

「今のを聞いただろう!早く勇者の石を出せ!!」

「・・・分かりました。」

研究者は観念し、アタッシュケースを開けて勇者の石を出した。

「れい君!オーリンをかざすんだ!!」

「はい!!」

星史の指示通り、れいはダイレクターを取り出し、オーリンをかざす。

「目覚めて!ジェットセイバー!シャトルセイバー!」





猛禽顔のロボット“ファルコ・ティラトーレ”のメインカメラを介してキャンデロロは戦場の様子を眺めていた。

「あのジェット機に乗っていた人間達が入って行ったって言う事は、そこに新たな勇者が眠っているのね。ファルコ・ティラトーレさん、やってしまいなさい。」

キャンデロロが命令すると、ファルコ・ティラトーレはマシンガンを構え、格納庫へ向けて連射する。それだけで格納庫は瓦礫の山と化した。

「うふふふ。これで終わりね。じゃあ、リチェルカ・ドゥエさんはデータ収集じゃなくて殲滅を・・・」

それを確認したキャンデロロはダ・ガーンと戦っているロボットに新たな命令を送ろうとする。だが、その時・・・

『ジェットディスポーザー!!』

『シャトルブラスト!!』

瓦礫の中から放たれた二本ずつの振動波と火炎放射がファルコ・ティラトーレを襲った。

「何ですって!?」

それを見たキャンデロロは驚愕する。すると、瓦礫の山から二体のロボットが立ち上がった。




敵の弾丸が格納庫に降り注いだ時、れいは思わず目をつむった。だが、いつまで経っても弾丸や瓦礫は降って来ない。目を開けてみると、そこには目元がゴーグルで覆われた赤いロボットが自分と星史を守るように立っていた。その隣では青いロボットが兵士と研究者を守るように立っている。

「初めまして、キャプテン。私はシャトルセイバーです。」

「こちらはジェットセイバーであります。隊長!」

赤と青のロボットはそれぞれにれいに挨拶をする。

「どうやら、間一髪だったようだな。」

何とか間に合った事で星史は一息ついた。

「おや?もしかして、貴方は前のキャプテンですか?」

「そう言えば・・・」

すると、シャトルセイバーとジェットセイバーが星史に気付いた。

「ああ、そうだ。君たちも覚えてくれていたのだな。」

「もちろんです、元キャプテン。」

「あの戦いは絶対に忘れないであります。」

「そうか。だが、ゆっくり話している暇は無いぞ。」

そう言って星史は上を見上げる。釣られてセイバーズ二人もそうすると、上空にはまだ敵ロボットが居た。

「では隊長、命令を。」

「お願いします。」

敵を確認したジェットセイバーはれいに命令を求める。シャトルセイバーも同様だ。

「分かったわ。二人とも、あいつを倒して!!」

「「了解!!」」

れいが敵を指差しながら命じると、二人は突撃して行った。

「そう言えば、ダ・ガーンは!?」

そこで、れいはダ・ガーンの事を思い出した。辺りを見渡すと、黄色い2丁拳銃のロボット相手に苦戦していた。それを見たれいは直ぐにダイレクターで通信を送る。

「どうしたのダ・ガーン!早く合体しなさいよ!!」

『私は君の命令が無ければ合体出来ないのだ。』

「そう言えばそうだったわね。」

ダ・ガーンに指摘されるとれいは星史に説明された事を思い出し、ダイレクターでダ・ガーンジェットを呼ぶ。すると、飛行場に着陸していたダ・ガーンジェットが発進し、ダ・ガーンの元へと向かった。

「来たわね。」

ダ・ガーンジェットが来たのを確認したれいはダイレクターを掲げて合体命令をする。

「ダ・ガーン!合体よ!!」

すると、ダ・ガーンジェットがアースファイターとアースライナーに分離し、合体シークエンスを開始した。
まず、アースライナーが横に折りたたまれ、先頭部分が爪先になる形で下半身となった。そこへ、ビークルモードとなったダ・ガーンが車体を二つに折りたたんでドッキングする。さらに、アースファイターが機首を折りたたんで上半身のパーツとなり上にかぶさった。最後に頭と拳が飛び出し、背中の翼が X の文字を描くように展開される。

「合体!ダ・ガーンX!!!」




「やっと出て来たわね、ダ・ガーンX。」

リチェルカ・ドゥエのメインカメラを介した映像を見てキャンデロロは呟いた。

「さあ、リチェルカ・ドゥエさん。彼の相手をしてしっかりとデータを集めて下さいね。」

以前のヴィットーリアとダ・ガーンXとの戦闘からは充分なデータは得られ無かった。そのため、今回はダ・ガーンXにリチェルカの後継機であるリチェルカ・ドゥエをぶつけたのである。

「ファルコ・ティラトーレさんも、新しい勇者さん達をしっかりと“救済”してあげてね。」

そしてもう一機、ファルコ・ティラトーレは新たな勇者を倒すために送り込んだ機体だ。その性能はヴィットーリアに引けを取らず、空中戦においてはむしろそれを上回る。二体居たのは予想外であったが、ファルコ・ティラトーレなら余裕で勝ってしまうだろうと考えていた。だが・・・




「空中戦なら我々も負けていません!」

「そうであります!!」

ファルコ・ティラトーレと戦うシャトルセイバーとジェットセイバーはその高い空戦能力と、奴より一回り小さい体による小回りの良さを利用して優位に立っていた。さらに、二人の抜群な連携がファルコ・ティラトーレを追い詰める。

「ジェットブレード!!」

そして、ついにジェットセイバーの剣がファルコ・ティラトーレのマシンガンの銃身を切り裂いた。それにより奴は最大の武器を失う。丸腰となった奴に二人はトドメの一撃を加えた。

「ジェットタイフーン!!」

ジェットセイバーのマッハ2の突風が装甲を削り

「シャトルランサー!!」

シャトルセイバーの岩をも砕く槍がその胴体を貫いた。




リチェルカ・ドゥエは以前得られ無かったダ・ガーンXの遠距離攻撃能力を解析するために、弾幕を張ってダ・ガーンXの接近を許さなかった。

「アースバルカン!!」

ダ・ガーンも両手の拳を収納し、代わりに出した機関砲で応戦する。だが、それでは決定打を与えられず、戦闘は膠着状態になっていた。だが、その時・・・

「ダ・ガーンX!」

「助けに来ましたよ!!」

ファルコ・ティラトーレを撃破したジェットセイバーとシャトルセイバーが救援に駆けつけた。

「さあ、行くでまりますよ!!」

まず、ジェットセイバーがその機動性を生かし、弾幕を掻い潜ってリチェルカ・ドゥエへと接近した。

「ジェットスライサー!!」

そして、主翼で敵が右手に持った剣術を腕ごと両断する。シャトルセイバーもそれに続いた。

「シャトルブーメラン!!」

彼は主翼をブーメランのように投擲し、こんどは左手の銃を腕ごと両断する。

「今だ!ダ・ガーンX!!」

「ダ・ガーンブレード!!」

ジェットセイバーが合図をすると、ダ・ガーンXはダ・ガーンブレードを抜き放った。そして、そのまま突撃し、白銀の刃でリチェルカ・ドゥエを串刺しにする。最後にダ・ガーンブレードを抜いてXの文字を描くように振るってから腰に収めると、奴は大爆発した。




「くっ・・・また!!」

母艦で戦闘の様子を眺めていたキャンデロロは表情を歪める。

「今回も収集出来たデータは僅かでした。」

「ダ・ガーンXに対抗出来るロボットを作り出すにはまだ情報不足です。」

そんな中、彼女の背後でももいろさんとあかいろさんが淡々と告げる。

「言われなくてもそれくらい分かっているわ!!」

それを聞いたキャンデロロは持っていたティーカップを床に叩きつけながら怒鳴り散らす。

「でもまあいいわ。まだ時間はある。その間にじっくりとデータを集めて仲間もろとも“救済”してあげるわ。フフフフ・・・」





翌日、いつも通りれいは登校していた。

「お、れい。どうしたんだ。」

「やけに機嫌いいじゃないか。」

すると、そこへ星矢と芽衣が声をかけて来た。

「実はね、昨日一気に仲間が二人増えたの。」

「へえ、そりゃ良かったじゃん。」

「心強い話だな。」

そして、いつも通り会話していると学校に着いた。だが・・・

「やあ、黒騎。」

何故か弓道部の部長が怒気を放ちながら仁王立ちして待ち構えていた。その際、何故か弓道部所属であるれいでは無く、星矢がヤベッと声を洩らす。

「ぶ、部長!?どうしたんですか?」

「どうした?部活を無断でサボっておいて何を言っている。」

「無断!?ちょっと星矢!どう言う事なの!!」

昨日は確か星矢に欠席する事を伝えるよう頼んでいたハズだ。すると、星矢は苦笑しながら答える。

「いやあ、れいと分かれた後直ぐに鬼神に見つかっちゃってさ。伝えに行く時間無かった。」

「星矢、あなた・・・」

無責任な星矢を睨みつけるれい。すると、部長はそれを見て何があったのか察したようだ。

「どうやら、事情があるみたいだな。」

「は、はい!」

もしかしたら罰が回避出来るかもしれない。そう期待するれいであったが・・・

「罰として筋トレ三倍増しを言い渡す積りだったが、昨日の分を入れた二倍で勘弁してやろう。」

世の中はそんなに甘く無かった。れいはがくりと肩を落とす。

「まあ、その・・・頑張りな。」

星矢はそんな彼女の肩に手を置いて励まそうとする。

「他人事だと思って・・・誰のせいよ!!」

「ちょっ!落ち着けって!!」

が、原因である星矢がそんな事を言ってもれいにとっては腹が立つだけであった。

「こら、喧嘩をすると言うのなら風紀委員長として取り締まらせてもらうぞ。」

すると、そこへ芽衣が割って入る。れいは一応大人しくすることにしたが、星矢を睨む事だけは止めなかった。

「ほら、早くしないと遅刻するぞ。れいも部長と鬼塚先生の二段コンボは嫌だろう。」

「うっ・・・」

が、芽衣の一言で大人しく校舎へと向かうのであった。



続く

 
 

 
後書き

次回予告

今度の勇者の石はオーストラリア本部にあるらしいわ。早速そこへ向かうけど、星史さんは寄りたい所があるそうなの。そこで芽衣の力を貸して欲しいみたいだけど・・・何故か星矢まで着いて来てしまったわ、全く。
え?ここって確か恐竜博物館じゃ・・・

次回・ビビッド『ダ・ガーン』オペレーション

眠る竜達

隊長は、私
 
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