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転生者拾いました。

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ノルン火山
  叫宴

 徐々に近づいてくるシルバをただ見つめることしかできない。
 四つん這いの姿勢で近寄る様は何とも扇情的で短剣に魔力を回すことさえ忘れてしまう。後にいる二人の息をのむ音がする。

「ッ!」
「あっ!?」

 突然繰り出されたシルバの左手に短剣が弾かれ、オレに大きな隙ができた。
 そこをつけ込まれ一気に懐に飛び込まれる。
 足を彼女の足に固定され二の腕を抑えられる。セリナ達はとっさに逃げてせいか無事だった。

「何のつもりだ。」
「シルバさん……。」
「ちょっ、あなた──!」

 透き通った蒼い瞳に見つめられる。鏡のようにオレを映す目は心の奥深くを見透かされている気になる。

「ワタシは、あなたについて行く。死神、盟約の証を刻んでほしい。」
「め、めめめめめ盟、約の、ああぁあ、ぁ証!!??」

 急にエリザが大声を上げオレの耳を遠くさせる。強化しすぎるのも考え物だ。
 
「カズヤ様は渡しませんよ!」
「関係ありません。」

 エリザが声を張り上げてシルバを牽制するがシルバは一向に引かない。それどころかシルバはオレの胸の上に横たわり、顔を近づけている。

「死神、ワタシはあなたのモノ。」

 魅了の魔法にかかったように頭が働かず人としての本能に従いたくなる。現にイロイロヤバい。何がって?訊くな。

「────ダメェェェェェエ!!」

 今度はセリナが大声を上げてシルバを突き飛ばす。不意をつかれたシルバはベッドに着地し損ねて落ちていった。

「はぁはぁ……。」

 危なかった。もう少しでやられるところだった。あと数分アクションが遅れていたら理性が吹き飛んでいただろう。
 ノロノロとシルバはベッドに這い上がりまたオレの前に来るが今度は座ってこちらを見る。オレも寝たままでは気分が悪いからこちらも正座する。

「何が目的だ?」
「さっき言った。盟約の証が欲しいと。」

 それは聴いたがその「盟約の証」とやらは何ぞ?

「エリザ、盟約の証って何?」
「え?いや、あの、その、……。」
「なんなんだ?」
「ですから、あの……。」

 エリザは顔を伏せてもじもじしつつ答えようとしているがなかなか答えを出せない。

「盟約の証とは主従の証として何かしらを捧げること。意味はどう捉えてもらってもいい。」

 エリザがもたもたしている間に対面するシルバが答えた。
 まさかだとは思うが所謂男女の営みをエリザは想像していた?
 いやいや、何かしらを捧げるだけなら「自分の命を捧げる」とか「一生ついていく」とかでもいいはず。
 しかしシルバも女の子だ。この世界には奴隷制度もある。実質的にバニッシュデーモンはオレの隷属部隊、多少荒い使い方をしても問題はない。いくらオレ達に敵対したとはいえ女の子を奴隷として扱うには抵抗がある。
 
「奴隷にしろとは言わない。ついて行くことを許可されるだけで良い。」
「お前はもう白光教会の人間ではないと?」
「先日破門を受けた。もう戻れない。」

 いったい何かあったというのだ。破門を受けるほどの失態?教会への冒涜か?
 だが、そう易々と仲間にしてしまえばうしろから刺されるやもしれない。

「死神、心配はいらない。白光教会に楯突く気はある。ワタシはお買い得。」

 この言葉を丸飲みして良いものか。二重スパイとかもこの世界にはある。よほど懐が広くないと信用できない。

「所詮はあなたの兵士と同じ。死んでも問題はない人種。」
「なに?」
「さっきのは強引だった。今度は交渉して行う。」
「は?」

 まさかさっきの続きをするのか?イヤイヤ、この小説はR指定じゃないんだぞ!?

「死神、ワタシの初めてを捧げる。」
「────ダメェェェェェエ!!」
「────だめですぅぅぅぅう!!」

 説明しよう、今オレの体を挟んでセリナ、エリザ、シルバが押し合いへし合いの喧嘩を始めた。そんなわけだからオレには流れ弾も当たる。強化しているとは言え結構痛い。
 さてシルバの処遇はどうしようか。 
 

 
後書き
火の島に至る水の道
陰陽のない襲撃者

次回 いざ 
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