ゲルググSEED DESTINY
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第四十三話 運命の光
オペレーション・フューリーが発動してついにMS戦が開始される。艦隊の攻撃は未だに収まる気配はないが互いの距離がMS戦の支援を行うのに最適な位置にたどり着いたからだ。
「ムラサメ隊を発進させろ!なんとしても町に敵部隊を入れさせるな!地上のアストレイは海岸線沿いに防衛線を張らせろ!戦車でも自走砲でもいいから維持させるんだ!!」
ユウナは司令部で大まかな指示を出していく。トダカ准将はそれを受け、出来る限り最適な布陣を形成していた。しかし、敵の数も質もこちらより圧倒的に上だ。ムラサメの性能は確かに高いが敵MSの主力であるザクと同等クラスであり、グフやゲルググに比べると若干劣っていると言わざる得ない。
無論、エース寄り向きの機体であるため、実力の高いパイロットが乗っていればその限りではないがそう言ったパイロットの数は限られている以上、どうしても押し込まれてしまっていた。
「クッ、連合の部隊の方はどうなっている!」
藁にも縋るようなこの状況で支援の為に連れてきた(名目上だが)ロゴスの連合部隊は如何しているのかトダカ准将は尋ねる。
「いくつかの部隊は支援してくれているのですが、それでも戦況は厳しく―――残りの部隊はアズラエルとジブリールの護衛の為に動くわけにはいかないと言って聞かず、そのまま……」
報告を聞き、止む得ないと判断する。正直に言えば、すぐにでもその部隊にも支援してほしい所だが、そんなことで言い争いになるよりも少しでも被害を減らすように指揮するしかないのだ。
「タカミツタガ大破!周辺のイージス艦も落とされています!」
「タカミツタガが落とされたことで十一時の方向に戦線の穴がッ――――敵部隊接近!イチジョウ隊、アマダ隊が全滅!?」
十一時の方向―――ミネルバとラー・カイラムという二隻の艦が中心となって展開している場所だ。おそらく、あの二隻のMS隊が出撃したのだろう。トダカは厄介だと考える。少数の敵部隊が先行してきているという事はそれはエースだ。落とすことが出来ればこちらが押し返すことが出来るだろう。だが、以前の戦いでもそれが無理だったことを考えると失敗する確率は高い。
「迎撃準備、弾幕を張れ!第二陣のミサイルを使ってでもMS隊の接近を許すな!」
「しかしそれでは敵の第二派に対してこちらが隙を見せることに……」
トダカが判断に迷っているとユウナがそう指示をする。指示を受けた管制官は困惑する。管制官からしてみれば敵艦隊の第二派を迎撃するために用意しているミサイルをここで使うのかという思いだ。ヘブンズベースすら短時間で落とした敵(連合の部隊はいないのだが)を相手にしながらオーブが抑え込んでいるのは敵が戦力を小出しにしているからだ。
オーブの強みは海上・空中の戦力が充実していることと、その防御における堅牢さである。となれば艦隊や弾薬を消耗させた上で攻めたてた方が有利だと相手の指揮官は判断したのだろう。そして、持続的にプレッシャーをかけることでオーブからロゴスを出さないようにする気なのだ。
故に、敵部隊の第二派に対するミサイルを現段階で放てば、その堅牢さを失うことになるやもしれないのだ。しかし、ミネルバのMS隊の脅威を知るトダカ等は決断する。今止めねばどのみち突破されることになると。
「いや、ミサイルを発射させろ。敵部隊の接近を許せばどのみちミサイルは落とされる。ならば相手の足を止めにかかるべきだ!」
トダカの判断に従い、管制官はミサイルを放つよう指示を送る。発射されるミサイル。そして近づくことを許さぬとばかりに敵のエースと思われるMSに襲い掛かる。しかし―――
「ミ、ミサイル―――全弾落とされましたッ!?」
「何だと!?」
ミサイルの攻撃が全弾迎撃されたという報告。それは現状のオーブにとって最悪の悲報とも言える。本来なら多数のMSを迎撃する為に用意されたミサイルを少数のMSに向けて放ったにも関わらず、それが総て、そしてごく短時間で撃ち落とされた。それは単純計算するなら敵のMSはその少数で大部隊と同等の戦力ということである。
「―――タケミカヅチを二時の方向に展開、逆にそちらの艦隊を下がらせろ。戦線を引き下げる。防衛ラインを第二次防衛ラインへと変更。急がせろ!相手はやすやすとは引き下がらせてくれんぞ!」
「はっ、はい!タケミカヅチ、二時の方向に展開―――その後、艦隊は二時の部隊から中心に後退せよ。防衛ラインを第二次防衛ラインへと変更する。繰り返す―――」
トダカ准将は戦線を後退させることを選ぶ。未だ戦線の多くは持ちこたえているが、突出した少数の敵部隊が後方から戦線を荒らすことになるだろう。ならば、そうなる前にこちらから一度戦線を崩して立て直す。戦線は相手に崩されるのと自ら崩すとでは大きな差を見せるのだから。
◇
時間は少し遡り、ラー・カイラムのMS部隊であるマーレとルドルフが出撃する直前、ミネルバでは待機要員と出撃要員に分けることがアスランから提案される。シンやレイも先日の戦いで特務隊のフェイスとなったが、先任であり指揮能力が最も高いだろうと判断されて未だにアスランが隊長のような役割を果たしていた。
「つまり、部隊を二つに分けて片方は待機ってこと?」
ルナマリアが提案された案がどういうものなのか自分なりに噛み砕いてこういう事かと尋ねるが、アスランは首を横に振って否定する。
「正確には四つに分ける事になる。先陣、後続、護衛、そしてロゴスの行動を警戒して待機の四つだ」
「じゃあアスラン。誰がどの組み分けになるんだ?」
ハイネがそう尋ねる。部隊の人数が六人である以上、二組は二人だが、もう二組は一人になる。
「先陣はハイネ―――お前に任せたい」
「俺か?構わねえぜ。戦線を切り開いてやるよ」
笑って応えるハイネ。デスティニーは確かに先陣を切り開くのに向いているためハイネを選ぶのは順当といえた。先陣をデスティニー二機にしないのはデスティニーの突破力は一機の方が逆に安定するからだ。二機が並んでしまえば、お互いに自由に動くことが出来ず、相手に対して意識を割かねばならない。それならば逆に一機で突破させた方が良い。無論、実力が伴っての話ではあるが。
「後続の部隊はシンとレイだ。ハイネとの合流後は彼の指示に従ってくれ。二人とも構わないか?」
「了解しました」
「―――ああ、わかった」
後続部隊はシンとレイ。二機にした理由はハイネの撤退の可能性の考慮と連携は彼らが最も上手くこなすことからだ。最近はお互いの機体に目でもついているのではないかと思えるくらいに上手い連携を見せる。尤も傍から見ればアスランとの連携も同様レベルのものなのだが。
「艦の護衛は俺とデイルの二人で行う。最後にルナマリアはミネルバで待機だ。この中でインパルスが最も状況に対応できる機体だからな」
デスティニーのコンセプトはインパルスの全部盛りともいえることだが、インパルスはそれの取捨選択が自由に行えるという利点がある。だからこそ、アスランは待機メンバーにシンやハイネのデスティニーではなくルナマリアのインパルスを選んだ。
「ハイネ、頼んだぞ―――」
「ああ、任せときな―――」
そう言ってデスティニーに乗り込むハイネ。出撃の準備は既に整っている。カタパルトに足を置き、ハイネのデスティニーは出撃準備を整える。ハイネのデスティニーにも今回若干の改良が加わっている。とはいっても単純なものだ。手首にワイヤーを取り付けただけ。スウェンの乗っていたストライクノワールを参考に敵を捕らえるワイヤーが本人の希望によって取り付けられたのだ。
「ハイネ・ヴェステンフルス、デスティニー―――出るぜ!」
出撃するデスティニー。光の翼を展開し、一気に加速する。ハイネの最初の狙いは敵艦隊だった。敵陣に突撃し、回避を続けながら収束ビーム砲を構えて一隻の敵艦の艦橋を貫く。それを見たムラサメ隊は怒りをあらわにしてデスティニーに突撃を仕掛けてきた。
『ウオォ―――!よくも俺たちの母艦ォォォ―――!』
敵のムラサメ部隊の母艦だったらしい。おそらく親しい人間も多くいたことだろう。しかし、ハイネとて一人で切り込んでおり、そういった感傷に付きあってやる気はない。
「戦場で割り切れない奴は、死ぬぞ―――」
アロンダイトを放ち、一閃とばかりにムラサメを真っ二つに斬る。隊長機と思われるムラサメがその様子を見てサーベルを抜き放ち、デスティニーが斬りかかって来るがそれを受け止める。
『下がれッ!こいつはエースだ!!』
アロンダイトとビームサーベルが衝突する。相手のムラサメのパイロットは中々に優秀なのだろう。高速移動に幻影を発生させたデスティニーに対して攻撃を読み切り受け止めたのだ。しかし、それは悪手だった。
「悪いが、アロンダイトにそいつじゃ無理だ―――」
アロンダイトはビームコーティングが施されている対艦刀であり、ビームサーベルを受け止めることが出来た。そして、アロンダイトは質量、出力共にトップクラスの近接武器である。それが示す事、すなわち―――
『た、隊長ォ―――!?』
『管制塔!早く援護してくれよ!!』
アロンダイトによってムラサメのビームサーベルは押し切られ、真っ二つにされる。更にハイネはビームブーメランを一機のムラサメに向かって放ちそのまま沈める。だが、オーブもハイネの快進撃を止めんとするためにミサイルを放ってきた。
「こいつは!」
本来ならば本隊を止めるために使うのであったのだろう程の数。なるほど、相手はこちらを高く見積もっているらしい。そんなことを考えながら突破する方法を模索する。VPS装甲で防ぐ?否だ―――ミサイルを防げても、隙は生まれる。そうなれば今度はビームの猛射が襲い掛かる事だろう。
「迎撃か?チッ、弾幕兵器がCIWS位しか無いんじゃ無理かッ!」
ミサイルの数は多い。ビームライフルやCIWS程度では防ぎきれないだろう。だが、だからといって受けるわけにもいかない。回避も間に合わない。
「確証はないが、あれを使うしかないか?」
ヘブンズベースでのデストロイの戦いを思い出す。あの時、どうしてミサイルが撃墜された?理由があるはずだ。そう思い、一つの仮説を立てた。だが、その仮説が間違っていれば確実にデスティニーは落とされる。
「ハッ、どっちにしても落とされるなら、やらないよりやれるだけやってみるか!」
光の翼の出力を引き上げる。エネルギーを無理矢理供給する為、機体がオーバーヒートする可能性もあるが構っていられない。
「いくぜッ!!」
光の翼を展開させる。今まで以上の出力によって加速がこれまでと比べ大幅に上がり、一瞬その機動に意識が遠のきそうになる。だが、賭けは成功した。ミサイルは次々と爆発し、加速によって直線軌道上にあるミサイル以外を引き離す。
製作者たちがこのことについて黙っていたことに対しては少々苛立ちが浮かぶが、今は機体によって助けられたことに感謝した。
『う、嘘だろ!?』
『ミサイルを全部落としやがった……』
思わず後ずさるムラサメ隊。その様子を見てハイネは自軍の士気を上げるために、そして相手の士気を下げるために言う。
「怯えろ!竦め!モビルスーツの性能を活かせないままに死んでいきな!!」
オレンジカラーのデスティニーはまるでオーブを裁きに来た悪魔のように映った。
◇
オーブに降下することの出来る衛星軌道上で二隻の艦が待機している。一隻には蛇のマークが描かれている傭兵サーペントテールの印。もう一隻はエターナルだ。
「キラ、本当に大丈夫なのでしょうか?」
キラがフリーダムに乗って落とされた時、怪我をしたと聞いている。そして、今回のオーブとの戦闘にラクス達やアークエンジェルが介入する危険性も承知していた。だが、それでもキラ達は戦うことを選んだ。カガリがアカツキで出たのは正体をばらさない為、アークエンジェルもムラサメ隊は出撃するが、ストライクルージュとアークエンジェルは出撃しない。
つまりは彼らは新型、或いはオーブ軍の機体で戦場に介入する。そうすることで自分たちの正体を表立っては隠すつもりだ。例えそれがばれているものだとしても、こちらが表立って言わない限り、そして物的証拠が存在しない限り、彼らが断定することはできない。
「責任を負う―――カガリさんはそう仰っていましたけど……それは、こういう事ですの?」
己の正体を明かさない。否、明かせない。それでもおそらく、戦闘が終了したらカガリはオーブに降り立つのだろう。だが、ザフトとの戦闘が終わるまではただの一個人の増援として現れるつもりでいるのだ。
そして、それが終われば――――――
「総てを背負って、罪を受け入れると―――そう仰るのですね」
彼女は自らの罪に背を向けないとそう断じたのだ。オーブを守った後、自らの罪を受け入れると。だったら、まずはその為にもオーブを守らなくてはならない。
『降下シークエンス、最終調整完了。いつでも行けます』
MSが降下していく。一つは降下ポッドだ。中には三機のMSが積まれており、予定ではオーブの地上に降下することになっている。そして二機のMSは自力で大気圏を突破していく。紅い機体と碧い機体。二機ともサーペントテールの二人が搭乗しているが、片方はそのまま戦場には向かわずアークエンジェルが待機している方に降りることになっている。彼にその新しい剣を届けるために。
「思いだけでも、力だけでも―――また、その両方を持ってしても平和を成すことが出来ないというのなら、私たちは平和を得るために何を得るべきなのか。今の私にもそれはわかりません。ですが、それを知ろうと思い、そして成し遂げようとするために歩むことを止めてはいけないのです」
そうして戦場は第二局面へと移行する。
後書き
大部隊に当てるつもりだったミサイル全弾光の翼で叩き落とすとかハイネスゲー。最強のSEED補正とNT補正無しでの最強のオールドタイプって実はクラウじゃなくてハイネ?ますますクラウの存在意義がなくなるやん(笑)
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