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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第31話 ホテルアグスタ

 
前書き
こんにちはblueoceanです。

とうとうパソコンが崩壊寸前。
応答なしが何時間も続いて、全く打てない日もあったり………
しまいには警告まで出るようになってしまった………

金銭的に余裕ないのに………ちくしょう……… 

 
「はぁ………疲れ……た………」
「信也君!?」

連休明けの機動六課は連休前と比べてもかなり忙しく動き回っていた。
ロストロギア強奪事件によりロストロギアの輸送の際には必ずスターズかライトニングが繰り出され、それが終わり次第戻って訓練。他にも他部隊と共同で任務に当たったり共同訓練なんかもあった。

そしてそんな慌ただしい毎日を過ごしたエローシュには限界が来ており、そしてとうとうその場に倒れ伏した。

「足プルプルいってるわね」
「エローシュ、もっと鍛えないと」
「エローシュ君暫くフリードに乗せてあげない」

「黙れ化け物ども……そしてキャロ様、それだけはどうかご勘弁を………フリードに乗せてもらえなかったら俺、マジで帰れなくなる………」

プルプルいっている足を引きずりながらキャロに向かって正座するエローシュ。

「あぎゃー!?」

そんな無理をしたためか足をつってしまい、のたうち回るエローシュ。

「何してんや?」
「あっはやてさん、エローシュ君が足をつっちゃって………」
「エローシュ、あんたパンツ見たいからってそんな演技を………」
「鬼ですか!?この状態を見て演技に見えますか!?」
「そう言えばフェイトちゃん、パンツ透け透けの奴間違えて履いてきちゃったって………」
「うおっー!!燃え上がれ俺の何かー!!!」

そう大声で気合いを入れたエローシュはつった足を引きずりながらとかげのように食堂の外へと動いていった。

「足の痛みがあるのになんて奴!?」
「精神が肉体を凌駕している………」

そんなエローシュの行動に驚くエリオとルーテシア。

「じゃあ俺は行ってくる………フェイトさ~ん!!!」

ドアの前でサムズアップした後、食堂の外へ出たエローシュ。

「エローシュ!?」
「貴様、何をしている!?ええい気持ち悪い!!!」
「ぎゃあああああああああ!!!」

締め切ったドアの外からシグナムの大きな声と共にエローシュの大きな悲鳴が。

「あれエローシュ?」
「邪魔よ、こっちに来ないで」
「おうっ!?」

吹き飛ばされた先に居たティアナに虫を払うが如く、回し蹴りを喰らい悶絶するエローシュ。

「あぎゃ!?」
「おっ、悪い見てなかった」
「あれエローシュがゴミのように転がってる。………えい」
「おふっ!?」
「ヴィヴィオちゃん、人を踏んづけちゃ駄目だよ!!」
「心配するななのは。こいつは例を見ないド変態だ。恐らく今もヴィヴィオに踏まれる快楽とお子様パンツが見れて大満足だろ」

「「キャー変態!!」」
「ぎゃああああ!!」

息のあったヴィヴィオとなのはのダブルシュートはエローシュにとって止めの一撃に等しいダメージを喰らった。

蹴っ飛ばされたエローシュはぼろ雑巾の様にフェイトの足の下に。

「す、透け透けパンツ………」

最後の気力を振り絞ってフェイトのスカートの中を覗く。

「こ、これは………!!スパッツによって透け透けか分からない!?」
「きゃああああああああ!!!」

フェイトに顔面を連続で踏みつけられるエローシュ。悲鳴をあげる前に轟沈した。

「エローシュ、どうたった?フェイトちゃん透け透けやったか~?」
「黒スパッツで見えなかったです………でも………スパッツもエロくて有りです!!」
「ゲスな発言ありがとな~みんなお帰り~ご飯にするで~」

全く動けないエローシュに手刀をかまし、完全に気絶させるはやて。

「………ねえルー」
「言いたいことは分かってるわ。私達もはやてさんには気を付けよう」
「そうだね………」

はやての所業を見ていた2人が小さく呟いたのだった………











さて、エローシュの件でひと悶着あったが、夕食は久々に全員で食べられる事もあり、いつもより賑わっていた。
そして楽しい夕食も終わり、お開きな雰囲気になりつつあった時、はやてが立ち上がった。

「さて、みんなお疲れさん~取り敢えず次の任務が終われば1日丸々休日が取れそうやからもう少し頑張ってな!」
「任務?確か明日は一日訓練の予定だった筈だよね………」
「フェイトちゃんの言う通り、本来ならその予定だったんやけど急遽本局から通達があってな、ホテルアグスタでロストロギアのオークションが行われるんやけど、その警護を担当せよとの事や」
「また面倒な事を………」
「バルトさん、そんな事言わんといて。本当なら警護は地上の部隊に任せる予定やったんやけど黒の亡霊の件でお偉いさん達が慎重になってな、ロストロギアに関してやから機動六課に回ってきたんや」
「なるほど………」

はやての説明に1人口に出して納得するなのは。

「ティア、警護だってさ。また出るかな………」
「出たとしても今度こそしっかりやりきってみせるわ」
「ティアナ、あまり気負わなくて良いわよ」
「そうよ、そんなに気負っているといざというときにミスが出るわ」
「分かってます、大丈夫です」

加奈とギンガの言葉も右から左に流れるティアナ。

「大丈夫かしら………」
「いざというときには私達がカバーするしか無いわね………」

そんなティアナを見て、2人は静かにそう話した。

「それと明日の予定なんやけど、ホテルアグスタの警護の前に皆の身体検査をする事になったから」
「身体検査ですか?」
「そうや、まあ身体測定やと思って気楽に受けてくれればええから」
「身体検査か………」
「ねえねえルーちゃん、私身長伸びたかな?」
「優理といい勝負ね」
「………負けないもん」

ルーの言い草に頬を膨らませて言うキャロ。

「それじゃあ今日はゆっくり休んでな~」

そんなはやての言葉により、お開きとなった………










夕食を食べ終え、それぞれの部屋に戻るメンバー達。

「ねえねえバルト、1日休みだけど………」

そんな中、ヴィヴィオは早速バルトに次の休日に遊んでもらう約束を済ませようと考えていた。

「悪いヴィヴィオ、俺ちょっと行かなくちゃいけないところがあるからなのはと遊んで貰え」
「ええっ~!?バルトも一緒がいい!!」
「遊園地で沢山遊んだだろうが、我侭言うな」
「………じゃあ何処に行くの?」
「………何処だっていいだろ?」
「パチンコだ!!」
「違う。第一パチンコは地球でスった所為でやれる余裕無いっての………」
「じゃあ何処?」
「少し調べものだ。結構遠いから1日無いと無理そうなんだよ………」
「そうなんだ………」

そう言って悲しそうにバルトから距離を取るヴィヴィオ。
チラチラと物欲しそうにバルトを何度も何度も見る。

「………はぁ。分かった、次の休み………半日でも取れたら遊ぶのに付き合ってやるから………」
「本当!?」
「ああ、約束してやる」
「バルトの約束信じられないから………はい!!」
「小指?小指を向けて何するんだ?」
「バルトも出して!!」
「あ、ああ………」

ヴィヴィオに言われるがままに小指をヴィヴィオに向けるバルト。
ヴィヴィオはそんなバルトの小指を自分の小指で結んだ。

「指切りげんまん嘘ついたら針千本飲~ます!指切った!!」

最後に力強く指を放すヴィヴィオ。

「なのはお姉ちゃんに教えてもらったんだ。地球で昔からある風習で、約束する時に破られないようにこうしたんだって」
「なるほどな、針千本なんて飲みたかねえよな………」
「だからバルトも飲みたく無かったら約束破らないでね!!」
「分かった分かった………」

そう言って嬉しそうに歩くヴィヴィオと共に自分達の部屋へと戻っていくのだった………
















次の日………

「何で俺は外の警護じゃねえんだ………しかもこんな格好………」

そう言って自分の着ているタキシードを嫌そうに見る。
ガタイの良いバルトはスーツ姿の様なしっかりした服装だとスポーツマンの様に見え、似合うのだが本人は嫌っており、自分からは絶対に着ない。
当然タキシードも同じである。

「くそっ、ネクタイくらい外しても良いよな………息苦しいったらありゃしねえ………」

そう言って軽く緩ませる。

「ふう………少しはマシになったか………」

自分の中に風が通ったのを感じて、リラックスした顔になるバルト。

「はぁ………煙草吸いてえ………」

館内禁煙の標識を睨みながらそう呟く。

「バルトさん、お待たせしました!」

そう言ってやって来たのはドレスアップした隊長達とヴィヴィオの姿だった。
華やかなドレス姿の六課の隊長達。その人気はその場に居た男達の視線を釘付けにするのに充分だった。

「どうやバルトさん、惚れてまうやろ~!!」
「まあ確かに皆見違えたな。ただ強いて言えばもっと胸元が見える露出の高いドレスなら………特にフェイト」
「バルトさん、セクハラです」

かなり冷たい目で見られ、流石のバルトも言葉に詰まる。

「バルト、バルト!私のドレスはどう?」
「馬子にも衣装だな」
「馬子にも衣装?」

意味が分からないヴィヴィオはなのはの顔を見る。

「うっ………えっとね、可愛くない子でも立派な衣装を着れば可愛く見えるって意味………だよねフェイトちゃん?」
「えっ!?えっと………私諺とか苦手で………」
「まあなのはちゃんの意味であってるんちゃう?」
「何で地球の諺なのにそこの出身のお前等が自信無いんだよ………」

返す言葉もない3人は恥ずかしそうに俯いた。

「だけどよく諺なんて知ってましたね」
「地球ブームだからな。それに高町家に諺の本があったぞ?」
「いつの間に………」
「ヴィヴィオは可愛いもん!!」

「分かってるって、冗談だよ」

騒ぐヴィヴィオを宥めるようにバルトが言った。

「全く、相変わらず元気だね」
「あっ、ユーノ君!!」
「ユーノ!!」

後ろから声をかけられ、そこには眼鏡を掛けた優しそうな男が居た。

「久しぶり、元気だった?少し痩せてない?ちゃんと寝れてる?」
「だ、大丈夫だよなのは………」
「ユーノはどうしてここに?」
「オークションの品物紹介と鑑定をね。それに機動六課に警護の要請したのは僕だから」
「そうなんだ!」
「だから急遽合わせてくれたはやてには感謝してるよ」
「ええって、長い付き合いやんか」
「ありがとう……実は結構価値の高いものもあるからテロの可能性も高いって言われてたから。頼もしいよ」
「任せておいてユーノ君!!」

そんな楽しい会話をしている中、ヴィヴィオがなのはのドレスを軽く引っ張った。

「なのはお姉ちゃん、この人誰?」
「始めましてだね、僕はユーノ・スクライア。なのは達の古い友人だよ」
「そして私の魔法の師匠だよ」
「師匠!?それじゃあユーノお兄ちゃんも砲撃の雨を降らすの?」
「ああ、僕は防御系の魔法を得意にしてるから攻撃がちょっとね………」
「そうなんだ………あっ、私はヴィヴィオ・ベルバイン!!であれがバルト!!」
「あれとはなんだあれとは………俺はバルト・ベルバインだ。よろしくなユーノ」
「2人の事はよくなのはから聞いてます、よろしくお願いしますヴィヴィオちゃん、バルトさん」

そう言って互いに握手する両者。

「はやてこれって………!!」
「禁断の三角関係………トライアングラー!!」

とコソコソ話すフェイトとはやて。

「ユーノ!!」

そんな時大きな声でユーノを呼ぶ声があった。

「バカ!!そんな大声で呼んだら目立つじゃない!!」
「あっ、いやつい………」

そう言って馴れた足取りでなのは達の所へやって来た大悟と加奈。
なのは達のようにドレスやタキシードが似合っているだけでなく、その着こなし、振るまいが手慣れていた。

「大悟、久しぶり」
「ユーノも元気そうでなによりだよ」
「神崎君も間に合ったんやな」
「ああ。本局に呼ばれたけど対した用事じゃなかったよ」
「しかし着慣れてるね2人共」
「まあパーティとかよく大悟に付き合ってたからね。いつの間にか慣れちゃってたわ」
「上級階級の人だ………!!」

なのはの言った言葉に頷く皆。

「止めてよ、私そんなの望んでないし………」
「俺も。やっぱ普通が一番さ」
「まあ2人の組み合わせじゃ無理じゃないかな………」

そんなユーノの言葉にまたも皆が頷いた。

「そうだ、もしよければまだ時間に余裕があるしここにある品物の紹介をしようか?」
「良いのユーノ?準備とか色々あるでしょ?」
「僕の担当の仕事はもう無いからね。後は本番だけさ」
「それならお願いしようかな………」
「じゃあヴィヴィオとなのはちゃんは先には案内されててな。私とフェイトちゃんは外の部隊の様子を見に行ってくるで」
「俺と加奈も面倒だけど挨拶回り行かなくちゃ行けないから………」
「えっ、じゃあ私もスターズの様子を………」
「ヴィヴィオもいるんだし任せておいて」
「えっ、でも………」
「いいからいいから………」

そう言ってフェイトが優しくなのはを押した。

「………分かった。よろしくね、フェイトちゃん、はやてちゃん。ほら、バルトさん行きましょ」
「ああ、俺はいいや」
「えっ、何でです?」
「タバコ吸いてえ………なあユーノこのホテル喫煙所無いのか?」
「あっはい、えっと………確かトイレの横にスペースがあったような………」
「マジか、サンキュー」
「あっ、バルトさん、待っ………」

なのはが声もかけるもバルトはさっさと喫煙所へと行ってしまった………










「暇ね………」
「暇だな………」
「暇ですね………」

ホテルアグスタの正面入り口。
警護の為待機しているスターズの面々は暇そうにホテルの方を見ていた。

「隊長達今頃美味しい料理を山ほど………」
「スバル、ロストロギアのオークションだからそんなの無いわよ」
「そうなの!?」
「お前ちゃんと話を聞けって………」

副隊長のヴィータが呆れながらスバルを睨む。

「えへへ、すいません………」

恥ずかしそうに謝るスバル。
それと同時に3人の元へ向かってくる人影があった。

「はい、お待たせしました。飲み物とパン買ってきたわよ」
「わあ!!ありがとうギン姉!!」
「ありがとうございます!」
「サンキューギンガ」

それぞれがお礼を言ってパンと缶コーヒーを受け取った。

「始まりまで後1時間ですね」
「ああ、まだ何も起こってないけどな」

パンと缶コーヒーを持ちながらティアナがヴィータに声をかけた。

「来ると思いますか?」
「さあな。………だけど今回のオークションはいつもより珍しい物が集まったらしい。狙われてもおかしくはないな」
「まあ何事も無いのが一番ですけどね………」
「だな」

そんなギンガの一言にヴィータが同意した。

「ギン姉、まだパンある?」
「あまり食べ過ぎちゃ駄目よスバル」
「分かってるよ………」

子供扱いされるのが不満なのか、ギンガにそっぽを向きながらパンを食べるスバルだった………












「コアラ」
「ラッパ」
「パスタ」
「タイル」

「また『る』!?エローシュ君!!」
「何だ?敗けを認めるのかキャロ?」

対して裏口の警護に当たっているライトニング。
5人は暇な時間をしりとりで暇潰ししていた。

「ルーズ!!」
「それにしてもシグナム副隊長はどこ行ったんだろ………ずこう」
「他の地点を警護してる部隊に挨拶に行くって言ってたよ………うそ」
「シグナムさん律儀ね………ソーダ」
「だけどカッコいいよね………僕もあんな風に強くなりたい………だるま」
「胸もでかいしな。あれ絶対にGはあると思うぜ………マントル」
「またる!?」

うにゃあああ!!と猫みたいに騒ぐキャロを楽しそうに見ている他の4人。

「あれで大丈夫なのか………」

普段いる警備員がその様子を見て不安になるのだった………












「おっ、あったあった………」

トイレの隣にはユーノの言う通り、ガラス張りに中の見える喫煙室があった。

「ふぅ………………はぁ、やっぱりこんな服着るもんじゃねえな」

タキシードの首元を緩め、2つ目までボタンを外した。

「ユーノ・スクライアか………気弱そうだが、優しそうな奴だったな………」

煙を吐きながらそう呟く。

「アイツならヴィヴィオを任せられるな………」

そう言って懐から小さな端末を取り出し、映像を表示した。

「あの研究所の地図。あの時何かのためと残しておいたが………今更役に立つとはな………」

映像には立体的に表示された研究所の地図があった。

「えっと……ヴィヴィオの居た場所は覚えているんだが、俺が出てきた部屋は………何処だっけな………」

そう確認していくバルト。

「………ん?」

ふと視線を感じ、前を見てみるとガラスにへばりついてこっちを見ているなのはとヴィヴィオがいた。

「うおっ、何だこのブサイク!?」
『ブサイクじゃないよ!!』
『失礼ですよバルトさん!!』
『あはは………』

困った様な顔をしながら苦笑いするユーノ。

「何してんだよ………」

映像を消し、端末を懐に戻したバルトはタバコを吸いながら2人の前まで移動した。

『バルトさんを迎えに来たんですよ。せっかく来たのに何でタバコなんです?しかももう服装緩めてるし………』
「こんな堅苦しい服は俺には無理だ。耐えきれん」
『いいからバルトも来るのー!!』
「ちっ、………ったく」

まだ吸い終えていないタバコを吸い殻入れに入れ、部屋から出る。

「バルトさん………!!」
「少しだけだぞ!その後は俺の好きにさせてもらうからな!!」

そう言ってバルトはなのは達と共にユーノの案内を受けるのだった………










さて、その後ユーノに案内され今回出されるオークションの品と展示されているロストロギアの説明を受けていた。

「………で、この宝石の様な綺麗な石が古代ベルカ時代に作られた爆弾で、接触した瞬間に爆発する様になってるんだ」
「いや、危険だろこれ………」
「このロストロギア自体は故障しているのか爆発したりはしないよ」

と物騒なロストロギアがあったり。

「それは様々な世界の調味料を出すことが出来るロストロギアだよ。時代的には戦乱の後だと思うけど実はハッキリしてないんだ。大昔の食事習慣を調べられるって事でその道の学者さんの間で結構な値が付きそうな気がしてるんだよね」

と小さなレシピ本の様なロストロギアの前でユーノが説明した。

「何だかはやてちゃんの夜天の書みたい………」

とそんな風にバルトにとっても結構興味深い物ばかりで、何だかんだ楽しんでいた。

「で、これが今日のオークションで最大のロストロギア、聖王オリヴィエに仕えていた最強の聖騎士、キルレントが使っていたと言われる聖王器、ゼルフィスだよ」
「聖王器?」
「聖騎士に与えられた特別な武器、それが聖王器って呼ばれているんだよ。聖騎士達については残っている記述が古くてかなり少ないから全てが分かっている訳じゃないんだけど、今分かっているのがキルレントが使っていた聖王器がゼルフィス、リアレスが使っていたのがローフィアそれくらいかな。………まあゼルフィスが管理局、ローフィアは今でも聖王教会に安置されていたからこそ2つについての情報が分かったんだけどね」

そう苦笑いしながら説明するユーノ。
そんなゼルフィスをバルトとヴィヴィオは食い入るように見ていた。

「でもユーノ君、そんなかなり大事なロストロギア、オークションで出しちゃって良いの?」
「僕もそう思ったんだけど、上からの通達でね。まあゼルフィスは誰が使っても起動しないし、歴史的価値はあるけど、壁画とかもっと貴重な物がある以上、そこまで価値が無いと判断したんじゃないかな?」

となのはの質問に答えるユーノだったが、バルトとヴィヴィオには届いていなかった。

「これで3つ目………バルバドス、ガルディア、ゼルフィス」
「ヴィヴィオお前は………」
「バルト、この子も使い手を待ってる。そしてその人はここにいるよ」
「ここに………だと?」
「うん、そう感じる………」

聖王器が見つかるにつれてヴィヴィオにも変化が現れてきた。
バルバドスの時とは違い、覚えているような口振り。
あの双剣ガルディアを見つけた時も少し自分では無いような反応だった。

(双剣の時は実際に居たわけじゃねえが、なのはの話を聞いた限りじゃやはり変わってきている………)

自分の知っているヴィヴィオじゃ無くなっていくような感覚。

(何だこれは………もしかして不安になっているのか………?)

胸を締め付けるようなそんな不安がバルトを襲う。

「ヴィヴィオ………」
「バルト、私時々自分でも知らないはずの事がふわって浮かび上がるの。私って何なのかな?」
「変な質問してんじゃねえ、ヴィヴィオはヴィヴィオだろうが。それ以上でもそれ以下でもない」
「………うん、そうだね」

嬉しそうにバルトの言葉に頷くヴィヴィオ。

「バルトありがとう………」

そう話し、バルト達を待っていたなのは達のもとへと向かった………












「これ位かな。後はオークションでのお楽しみだね」
「ありがとうユーノ君」
「ありがとう、ユーノお兄ちゃん!ヴィヴィオ楽しみ!!」
「まあ小さい子にはあまり教育的に良いかどうか微妙だけど結構楽しめると思うよ」
「うん!!」

案内を終え、先程居た場所へ戻ってきた4人。

「ふぅ………それじゃあタバコを………」
「バルトさん、始まるまでそんなに時間無いんですからゆっくり吸ってちゃ駄目ですよ」
「分かってる。ここから外の方が早いから出て一本だけ吸ってくる」
「分かりました、じゃあ私達は会場にいるので早く来てくださいね」
「ああ、分かったよ」

そう返事をしてバルトは1人ホテルを出たのだった………











「ふぅ………」

外はすっかり暗くなり、星が見えるようになっていた。

「今のところ問題無しか………」

入り口から見えるスターズの部隊にも特に動きはない。

「このまま何事もなければ良いんだがな………」

そんなことを思いながら煙を吐く。

「バルトさん」
「ユーノか?お前準備に行かなくて良いのか?」
「あっ、はい行かなくちゃいけないんですけど、その前にバルトさんと2人で少し話したくて………」

そう言ってバルトの隣に座るユーノ。

「吸うか?」
「良いです。………バルトさん、なのはの事どう思ってますか?」

ユーノの質問は率直だった。
士郎された時と同じ質問。

「恋愛のような感情は無い。………だがなのはとヴィヴィオがいない生活も考えられない」

あの時と簡潔だが同じ様にそう答えた。

「あなたにとってなのはは何ですか?ただのヴィヴィオちゃんのお世話係ですか?」
「お世話係か………確かに最初こそそう思っていた。だがなのはとヴィヴィオは俺の今までの人生の価値観を変えた。変えるきっかけを作ってくれたのが俺のライバル、そしてそいつの相棒。分からねえ………俺はまだ混乱しているのかもしれないな………」
「どう言うことです?」
「俺にも良く分からん。俺にとっても初めての事だからな。あの時から人との関わりを断って来たからな………だからこそ今を守るためにケリをつけなきゃならねえ………」
「ケリ?………もしかしてあの何処かの地図が関係しているのですか?」
「気づいてたか」
「恐らくなのはも」
「そうか………」

そう言ってタバコを自分の携帯吸い殻入れに入れるバルト。

「なあユーノ、お前なのはの事好きだよな?」

不意にそんなことを言われ、驚くユーノ。

「………はい」

しかしバルトの正面を向いてしっかりとそう答えた。

「でも僕じゃ駄目なんです。あの頃の………最初にあったときのような無垢な笑顔を見せることは無くなりました」
「そうか?今日だってお前と会えて嬉しそうだったが………?」
「いえ、子供の時からの付き合いですから分かります。なのはが本当の笑顔を見せるのはバルトさんとヴィヴィオちゃんだけです。なのはにはバルトさんとヴィヴィオちゃんが必要なんです。だから………」

「逃げないでくださいね………」

そう言ってユーノは入り口の方へと向かっていった。

「逃げるな、か………」

逃げているわけではない。全てを終わらせるため、自分の過去を清算するため、バルトは覚悟を決めた。

「いや、確かに逃げなのかもな………」

そう正当化しているが、本当の事を話す事が出来ず、話さないまま行くとなると確かにユーノの言う通り逃げてる事になるのかもしれない。
例え上手く行ったとしてもそれでもバルトの過去は変わらない。

「だが話せるわけがない………話したら話したでもうアイツ等と一緒には居られなくなる………」

一緒に居られなくなる。それ自体はもうバルトも覚悟していた。だからこそ2人の為に全てを終わりにしようと明日から動き始めるのだ。

ただその日が来るまでは………

「どうすればベストなのか………くそっ、最近悩んでばかりだな………」
「あれ………?」

そんな事を考えているとユーノが入り口前で立っていた。

「どうしたユーノ?」
「バルトさん、何故か防災シャッターが降りてるんですよ。機械トラブルか………?」

そう呟いて中と連絡を取ろうと回線を繋げるが誰も出ない。

「!?ユーノ来い!!」
「えっ!?バルトさん!?」

シャッターが降りて行く中、シャッターへ突っ込むバルト。
いきなりそんな行動に出たバルトに驚いたまま見ているだけのユーノ。

「おおおおおお!!」

もう普通に立っては入れないほどシャッターは下がっているのにも関わらずバルトは突っ込む。

「バルトさん危ない!!」
「今!!」

そしてシャッターが完全に降りる直前にバルトはスライディング。
二塁へ盗塁を決めた野球選手の様に見事なスライディングを見せつけた。

「ユーノ!!」
『バルトさん、何て無茶を………!!』
「それより敵が来るぞ!!外の部隊の連中に伝えろ。それとこのシャッターをどうにかしてくれ!!」
『それが………このシャッターを操作出来るのは中のコントロール室だから外からじゃ出来ないんです!!』
「破ることは!?」
『対魔法対策として魔法に強い金属や補強を施しているので魔法で破るとなるとかなり時間がかかります!!質量兵器で破った方が速いです!!ですが………』
「準備するにも時間を喰うか………直接コントロール室に行くしかないか………」
『コントロール室はホテルの25階です。だけどもし不具合じゃなくてコントロール室が敵に完全に掌握されているとなると………』
「エレベーターを使っちゃ駄目って事だな。了解した。ユーノは出来るだけ早く中の様子の把握を!!」
『待ってバルトさん!!』

早速行こうとしたバルトをユーノが止めた。

「何だ!?」
『外からだとシャッターを通して念話等魔法での通信や転移は全て遮断されてしまうのでこうやって直接話すか通信機を使うしか連絡をとる方法がありません!!』
「何だと!?………ったく、分かった。通信機も見つけられたら見つける。じゃあ行くな!!」

そう言ってバルトは駆け出した。

「………お願いしますバルトさん」














「これでホテルに居る人間全てか?」
「まだ逃れた者がいるか引き続き調査しています」
「機動六課の魔導師達のデバイスは?」
「ここに………今いるメンバーは神崎大悟、佐藤加奈、高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやての5名です。他は外でバリアアーマーとガジェット部隊と交戦を開始しました」
「了解した」

オークション会場。そこにホテルの客、従業員全て集められた。
今回事件を起こしたテログループ、最近事件を起こしている冥王教会の一派だった。

「そうか………」

今回は今までとは違い、犯人達になのは達が居ることを把握され、デバイスも回収されていた。

「しかし凄いですねボス。こんなホテルにここまで防衛能力があったなんて………」
「だからこそ、ロストロギアのオークションをここで開催することにしたんだろう。まあ今回はそれが逆に仇となったがな………」

ホテルアグスタ。
ここのホテル全ての窓、入り口、裏口、屋上に先程の対魔防シャッターがあり、外からの侵入を完全に防げるようにしている。

前に起きたマリアージュ事件によりテロの脅威の為に強化した防衛システムが逆に自分達の首を占めていた。

「さて、急いでここのロストロギアを転移装置で拠点へと運べ」
「ボス、女は………?」
「全てが終わった後だ」
「へへっ、了解~」

そう言って嬉しそうにロストロギアを運ぶ準備をする手下の男。
ニヤニヤしながらオークションに準備していたロストロギアを運んでいく。

「さて、さっさと終わらせて退散しなければな………」
「あんた達、こんな事してただで済むと思っとるの?」
「貴様にはどうすることも出来ないよ八神はやて。いくらSSランクであろうとデバイスさえなければただの小娘。後は男達の慰め物だな」

ここで下心が見えればただのチンピラのように底が見えるのだがこのボスと呼ばれた男は淡々と冷酷に言った。

(この男油断できへん………今自由に動けるんは別行動を指示したリイン位………絶望的やな………せめてもっと時間があれば………)

オークション会場の中心に固まるように席に座らされ、それを囲むように手下達が銃を構えている。

(あの男なら人質を何人か殺しても何も思わないんやろな………)

考えても良い案が浮かんでこない。

(それにこの会場、AMFが展開されとる。魔法が使われないようにするための対処やな。だから質量兵器か………やっぱリイン次第やな………頼むでリイン)

そう祈りながらはやてはこの状況を脱する方法を再び考え始めるのだった………












「コントロールルームはまだまだ先ですね………」

リインは1人小さいからだで25階を目指していた。

「あっ!?」

階段を見に来た犯行グループのメンバーから上手く逃げ、再び上へと向かう。

「急がないとはやてちゃん達が………」

しかし今のリインは小人サイズ。
浮かんでいるとはいえ、どうしても上に行くのには時間がかかっていた。

「はやてちゃん、皆………うっ!?」

急ブレーキして止まり、手すり階段の裏にへばりつくようにくっついて敵から逃れる。

「危ない危ない………「うぎゃ!?」えっ!?」

いきなり敵の悲鳴が聞こえ、慌ててそっちを見ると、そこには乱れたタキシード姿のバルトが居た………












「どれくらい作業は進んでいる?」
「現在70%程、転移装置の方へ運び出しました。後はコントロール室でAMFを解除すればOKです」
「その前に先ずは機動六課の面々にはご同行願うか………」

そんなボスの言葉を聞いた女性人の体が全員強ばる。

「俺はあそこにいる女を!!」
「俺はあの女とあそこの女!!………へへっ!!」

そんな手下の言葉を聞いてパニックになるお客と従業員。

「加奈、もしもの時は頼むね」
「大悟………?」

小さく加奈に呟いた大悟はすっと静かに立ち上がった。

「何をしているエース・オブ・エース?お前にはこの状況が分からないのか?」
「いや、あまりにもゲスな奴等ばかりでね、見ていられなくなってつい立ち上がっちゃったよ」
「あ?何上から見てんだ!!」
「管理局の犬が!!いい気になってんじゃねえぞ!!」

「管理局の犬ね………俺が犬だったら、アンタ等はゴミを漁るネズミか?」

笑いながらそんな事を喋る大悟の頬を銃弾がかすめた。

「何を撃っている!!」
「す、すいません………」

「そうだよな………ここで人質が一斉に蜂起したらお前逹の人数じゃ抑えきれないだろうからな………」

テログループの人数は数10人。
対して人質は200人以上。
AMFによって魔法が使えない彼等にとってこの人数は抑えきれないのだ。

「質量兵器で固めているのを見るとAMF内での戦闘が碌に出来ないか、魔法を使えないメンバーだけなのか、どっちにしてもアンタ達にも不利な条件が多いって事だ」
「コイツ………!!」

手下の1人が大悟の前へとやって来て思いっきり殴りつける。

「なっ!?」
「遅い、そんなんじゃ俺を殴る事だって出来ないぜ?」
「この野郎………!!おい、このクソ生意気なエース様を袋にしてやろうぜ!!」
「おう!!」
「舐められたままにさせるか!!」

そう言って銃を持っていた奴さえ、大悟の所へやって来てステージの上へと引っ張りあげる。
大悟も抵抗するものの、複数の人間に掴まれた為、逃げることが出来なかった。

「止めろお前等!!」
「ボス、大丈夫だって!!銃の奴等も見てるし、客の中にそんな度胸のある奴居るわけねえよ」
「そうだぜ!!ボスは心配しすぎだっての!!」

そんな楽天的な考えの手下達に絶句するボス。

「………どうしますか?」
「………引き続き、ロストロギアを運べ。いざとなればコイツ等を置いて脱出する」

大悟をリンチし始める男達を見下しながらボスはロストロギアを運ぶ部下達に指示を与え続けていた………
 
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