問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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死
一輝は「一体出たから十体はいるだろ。」という、とある黒い虫のような考えで山中を散策し、追加で計二十体の鬼を陰陽術で退治し、帰宅のためバスに乗った。
既に九時を過ぎているが妖怪退治なら門限はないし、階段の無い裏から入る気なので、気にしていない。
「今日の成果は鬼が二十一体。買ったものはラノベが十冊だから、お金はプラスだな。」
一輝は基本的に、ラノベにDVD、CDを買う金を稼ぐために妖怪退治をしている。
「さて、この時間だとまだ修行やってるやつらがいるだろうし、静かに行かないと。」
門限がなくても、父の言うことを無視して出掛けたので、面倒なのだ。
まあ、次の日には会うことになるのだが、また逃げる気なのだろう。
そして、神社までたどり着くが…
「なんだ、この感じ…?」
今いるのとは反対側、表から禍々しい気配を大量に感じていた。
「普通の妖怪もたくさんいるみたいだけど…」
気配の中に一つ、変なものを感じ、さすがにあせり、表に走る。
そしてそこにたどり着くと、
「なんだよ…これ…」
そこには大量の妖怪と、そいつらに殺されたであろう、たくさんの人の死体があった。
「一輝か!?」
その中、唯一生き残っていた人間、一輝の父親が駆け寄ってくる。
「父さん、これはいったい…?」
「説明するからついてこい!!」
一輝の父親は一輝の手をつかみ社の中に入り、
「式神展開!“防”!」
持っている防御の式神を全てだし結界を張らせる。
一輝の父でも数十分くらいはもつだろう。
「で?何があってあんな集団が…ってか、なんで別の種類の妖怪が力を合わせてるんだ?」
「解らんが、同じ目的を持った妖怪をまとめあげた親玉がいる。」
一輝は言葉を失う。
妖怪に同じ種族の集まりはあるが、別のやつらが大量に集まるなど、ぬらりひょんが率いた百鬼夜行しか、一輝は知らない。
そして、ぬらりひょんは一輝の一族と契約し、それぞれの檻の中にいる。
「そんなことを出来るようなやつってもう…」
「ああ。霊獣位だろうな。」
もちろん、妖怪と霊獣では強さの桁が違う。
強さとしては、
妖怪、魔物<<<<<霊獣<<<<<<<<神
って感じだ。
妖怪の群れに加え、そんなやつが相手では一輝の父親では歯がたたない。
だから、一輝は提案する。
「俺がメインで戦うから、サポートを…」
「ダメだ。俺が一人で戦う」
「それで勝てるわけ無いだろ。」
「ああ、だろうな。」
「だったら…」
サポートにまわれ、そう言おうとした一輝を父がさえぎる。
「だが、お前が逃げる時間くらいは稼げる。」
「!!」
「確かに俺は一輝より弱い。それでもお前の親だ。そして、子供を守るのは親の仕事だ。」
そう言いながら、父親は立ち上がる。
「ダメだ!俺も、」
「最後くらい親の言うことを聞かんか!」
その言葉に、強い覚悟を感じ一輝は動けなくなる。
その姿を理解したと見た父親は、社から出ていく。
妖怪たちと戦い、死ぬつもりで。
そして、残された一輝は一人愚痴る。
「勝手に決めやがって…ふざけんなよ…」
そして、倉庫から式神をつかみ取り、
「式神展開。社にありしすべてのものを運び、我が背にある蔵に入れよ。」
後ろに空間倉庫を開き、命令を出す。
「さて、俺はご神体を回収するか。」
一輝は祀られているものを倉庫に運び入れていく。
そして、一番奥にあった刀、ご神体を運び入れたとき、ちょうど式神たちも回収を終えたようで一列に並んでいた。
「解。」
一輝は式神たちも倉庫にしまい、正面の出口を開く。
そこには、足を折り、妖怪たちに囲まれる父の姿があった。
「一輝…なぜ逃げていない…」
「俺は、家族を殺されておとなしくしてはいられないんでね。」
「ダメだ…今からでもにげ」
「うるせえよ。」
一輝の父は、言葉の途中で殺された。
そして、父の檻の中身、鬼道の一族が封印してきたすべての魂が一輝の檻の中に継承された。
「お前たちは何が目的で手を組んでるんだ?」
一輝は妖怪たちに問いかけた。
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