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ソードアート・オンライン ~双子の剣士~

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第二章 茅場晶彦


「あれっ、なんだこりゃ⋯⋯ログアウトボタンがねぇよ」


不意にクラインの頓狂な声が響いた



⋯⋯⋯このゲーム、ソードアート・オンラインが楽しいだけの《ゲーム》

だったのはこの瞬間までだった




キリト達がバグに気付いてからしばらくのこと


突然、リンゴーン、リンゴーンという鐘のようなあるいは

警報音のような大ボリュームのサウンドが鳴り響き

キリト達の体を鮮やかなブルーの光の柱が包んだ


「んな⋯⋯っ」

「えっ!!?」

「何だ!!?」



そして気付いたときには夕暮れの草原ではなく

《はじまりの街》の中央広場にいた

そこにはキリト達と同じSAOプレイヤー達が一万人近くはいた

どうやらキリト達と同じように現在ログインしているプレイヤーが

この広場に強制的にテレポートさせられたのだろう


「どうなってるの?」

「これでログアウトできるのか?」

「早くしてくれよ」

「ふざけんな」

「GM出てこい」


などという声が聞こえてくる


不意にそれらの声を押しのけ誰かが叫んだ


「あっ⋯⋯上を見ろ!!!」


百メートル上空、第二層の底を真紅の市松模様が染め上げられていく

空を埋め尽くす真紅のパターンの中央部分が

巨大な血液の雫のように垂れ下がった

それは落下することなく、赤い一滴は突如空中でその形を変えた


身長二十メートルはあるだろうフード付きのローブを纏った

中身が空っぽの巨大な人の姿だった


「あれ、GM?」

「何で顔ないの?」


というささやきが沸き起こる

そして


『プレイヤー諸君、私の世界へようこそ

私の名は茅場晶彦、今やこの世界をコントロールできる唯一の人間だ』

「な⋯⋯⋯」

「え⋯⋯⋯」


驚愕のあまり、キリトとノアは同時に喉を詰まらせた


『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューから

ログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う

しかしゲームの不具合ではない、繰り返すこれは不具合ではなく

《ソードアート・オンライン》本来の仕様である』

「し⋯⋯、仕様、だと」


クラインが割れた声でささやく


『諸君は今後、この城の頂を極めるまで、ゲームから自発的にログアウトすることはできない

⋯また、外部の人間の手による、ナーヴギアの停止あるいは解除も有り得ない

もしそれが試みられた場合⋯⋯

⋯⋯ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君の脳を破壊し、

生命活動を停止させる』

脳を破壊する、つまり殺すということだ


「はは⋯⋯何言ってんだアイツ、おかしいんじゃねえのか

んなことできるわけねぇナーヴギアは⋯⋯ただのゲーム機じゃねぇか

脳を破壊するなんて⋯⋯んな真似ができるわけねぇだろ

そうだろキリト!ノア!」

「⋯原理的には、不可能じゃないけど⋯⋯

でも、ハッタリに決まってる

だってナーヴギアの電源コードを引っこ抜けば、とてもそんな高出力の電磁波は

発生しないはずだよ

大容量のバッテリでも内蔵されてない⋯⋯限り⋯⋯⋯」


そこまで言ってノアが絶句した理由をキリトはもちろんクラインも察したのだろう


「内蔵されてるんだよ

ギアの重さの三割はバッテリセルだ」

「でも⋯⋯無茶苦茶だろそんなの!

瞬間停電でもあったらどうすんだよ!!!」


その時茅場のアナウンスが再開された


『より具体的には、十分間の外部電源切断、二時間のネットワーク回線切断、

ナーヴギア本体のロック解除または分解または破壊の試み

以上いずれかの条件によって脳破壊シークエンスが実行される

この条件はすでに外部世界で告知されている

ちなみに現時点でプレイヤーの家族、友人等が警告を無視してナーヴギアの強制除装を

試みた例が少なからずあり、その結果残念ながら、すでに二百十三名が、

アインクラッド及び現実世界からも永久退場している』

「信じねぇ⋯⋯信じねぇぞオレは」

「⋯ただの脅しなんだよね⋯⋯イベントなんでしょ全部⋯

⋯⋯オープニングの演出なんでしょ⋯⋯そう⋯だよね」

『諸君が、向こう側に置いてきた肉体の心配する必要はない

現在、あらゆるテレビ、ラジオ、ネットメディアはこの状況を、

死者が出ていることも含め繰り返し報道している

諸君のナーヴギアが強引に除装される危険はすでに低くなっていると言ってよかろう

今後、諸君の現実の体は二時間の回線切断猶予時間のうちに病院その他の施設へと搬送され

厳重な介護態勢のもとに置かれるはずだ

諸君には、安心して⋯⋯ゲーム攻略に励んでほしい』


そこでとうとう、キリトから叫びが迸った


「ふざけるな!ログアウト不能の状況で呑気に遊べってのか!!!」


『しかし、充分に留意してもらいたい

諸君にとって《ソードアート・オンライン》は、既にただのゲームではない

もう一つの現実というべき存在だ

⋯⋯今後、ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない

ヒットポイントがゼロになった瞬間、諸君のアバターは永久に消滅し、

同時に、諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される』 
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