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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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脱出

「アンタ誰?」
「いきなりその物騒なライフルの銃口を向けてくるなんて最近のGGOでの挨拶は変わったな。俺もその流行に乗らないとな」
「そんな流行はないわよ」

 そう言って降参というように両手を頭の後ろにつける。しかし少女は自分に向けている銃口を一向に下ろしてくれない。

「なあ、銃口下ろしてくれない?俺さ、銃あるけど弾丸なし、ナイフなしのほんとうに丸腰なんだぜ?それとアンタは自分を狙ってるんだと思うかもしれないけど俺はこのダンジョンの一個下のフロアのボスモンスターを倒してようやく脱出できるんだからその邪魔をしないで欲しいんだけど……」
「奇遇ね。私も今このフロアから出たいんだけどどうしようか考えてた時に怪しいあんたが来たから銃を構えたのよ」

 どうやら彼女も何かしら終えて帰る途中らしい。だが自分に向けている銃を下ろしてくれる気配はまったくない。本当にこんな状態じゃ埒が明かないと思い、少女に向けて言った。

「なら、一緒に帰るか?このバギーなら乗れると思うし普通に歩いて帰るよりも早いと思うけど」
「……」

 少女はそう聞くと僅かに考える。だがこの少女はどことなく自分に関してはどこか軽蔑のようなそして、どこか怯えているような感じの視線を向けている。自分は軽い男と思われているのだろうか?それとも何か人と関わることを恐れているのか?その辺は自分にはわからない。カウンセリングは専門じゃないのだからどうこうできるような問題じゃない。それはともかく、彼女からの返答を待つ。

「……いいわ。それならお願いしましょうか。ただし、変なことをしたら後ろから容赦なくぶっ放すわよ」
「怖いからやめてくれ。俺は何もしないから。それとここでゲットしたこいつをいきなり後ろから撃たれて奪われるなんてマジ勘弁して欲しいんだけど」
「そう。それならアンタを倒したらそのバギーが奪えるってわけね?」

 彼女はバギーを見てそういった。

「ちょ、待てって」

 いきなりライフルを自分の頭に標準を合わせる。そして引き金に手をかけた瞬間に自分もその予測線から頭を逸らさずに指を見た。目はスコープで隠れているために見えないが指の僅かな動きをちゃんと見れていれば避けれなくはない。まあその前に間合いに入れればこっちのものなのだが。しばらくの沈黙のあと、初めに警戒、というよりも銃を下ろしたのは少女のほうだった。

「……まあそんなことはしないわ。私も今は丁度ライフルの弾はないの」
「つまり、その太ももについているハンドガンには弾が入ってることね」

 そう言ってから少女はバギーの近くに来ると後ろにまたがった。

「このダンジョンから抜け出して街までお願い」
「俺はタクシードライバーか何かか?」

 そう呟いた瞬間に背中に拳銃を突きつけてくる。

「自分から誘ってきたんならそれくらい頼んだっていいんじゃない?それに主導権はこっちが握ってんのよ?」
「はいはい。でも近距離は拳銃じゃなくてナイフとかにしような」

 そう言うとアウラと初めて会った時と同じように拳銃をその少女の手から取り上げた。そしてそのまま手の中で回転させるとそのまま相手のホルスターに収納した。

「銃を突きつけるときは相手が完全に弱っててほぼ動けない状態のとき以外はこうやって取られるから気をつけろよ。それと、銃は確実に当てられる距離からで尚且つ、相手の攻撃が当たらないもしくは自分が当たらない距離でやろうな」
「ふん!」

 その言葉を聞いてイラッときたらしく、自分の足を蹴ってくる。

「ちょ、いきなり来たからこっちも対応したんだって!」

 蹴りを受けながらダメージを徐々に食らっていく。そしてようやく止まってくれるが後ろの席の端っこのほうに行く。

「早く行きましょう」
「……はいはい」

 そしてバギーのエンジンをかけてそのままダンジョンの出口に向かった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 少女を乗せたまま、ほとんど何も会話することなくそのまま街に戻ると最初に自分の用事を済ませるためにまずは店主の店へと向かった。

「ちょっと、アンタ、そっちは端っこのほうでしょ。街は中央の方なんだからこの方角をまっすぐ行けばいいでしょ」
「俺の用事を済ませてからでもいいだろ。弾をとりあえず補充しときたいし、なんなら奢るぞ?」
「……それならまあいいわ」

 少女は少し怪訝そうな顔をするがただなら別にいいだろうと考えたらしく了承した。そしていくつ物角を曲がって自分の依頼主の店である場所に着くと、バギーから降りる。

「ここ?」
「ああ。まあ狭いから外で待っててくれ」

 そう言って、扉を開けて中に入る。

「おーい、帰ってきたぞ」
「おう、ゲツガ。生きてたのか?てっきり死んだかと思ってたぞ」
「勝手に殺すなよ。まあ死にかけたけど。アウラから依頼のものは?」
「ああ、もちろん貰った。それで自分を助けてトラップに引っかかったお前をアウラがものすごく心配してたぞ。自分のせいで落ちたって。お前、相当懐かれてるもんな」
「はいはい、後でメッセ飛ばして大丈夫って送っておくよ。それと今回はまさかのシュートトラップのある階層まで行って見事に引っかかりながらも生きて帰ってきて弾薬もナイフもないから弾薬だけでも好きなだけ持って行かせやがれ」
「そんなの、自分の責任だろうが。大体、どうせお前のことだからボスでも倒したんだろ。それだったら普通に買え」
「ケチだな、おい」

 そう言ってとりあえず弾薬を相当な量を買う。もちろん外にいる彼女の分のライフルも買っている。

「ライフルでも出たのか?そんなに弾を買って、それともアウラに心配かけたから少しは機嫌を直そうってやつか?」
「ちげえよ。必要だから買ってるんだ。詮索すんな」
「はいはい」

 そしてある程度の弾丸を買うとそのままアイテムウィンドウに収納する。

「毎度」
「今度金がたまったらここにあったあのメリケン見たいなものがついてるナイフが欲しいんだけどあれいくら?」
「ん?ああファイティングナイフか。あれは別にそこまで高くないぞ。お前の財布の中からでも買えると思う」
「それならくれ。バタフライナイフ壊れたから新しいのに新調しようと思ってたんだよ」
「なるほどな。ほれ」

 とりあえずお金を払って武器を貰う。それをケースにしまってから後ろの腰につける。

「よし、これであらかた装備もちゃんと整っただろ」
「まあ、あれだけ使えばな。それじゃあ、これぐらいでいいな」
「ああ、ありがと」
「こっちも商売だから気にするな」

 サングラスをかけた厳つい顔の笑顔を向けられる。それを見て苦笑してから手を振ってそのまま店を出た。外には先ほどの少女がバギーに座ってウィンドウの中を整理してるのか指を動かしていた。

「お待たせ。ホラ、ライフルの弾」

 そう言って結構な量の弾を渡す。それを受け取るとすぐにウィンドウにしまった。

「どうも。それにしてもこんなところにも店なんてあったのね。外から見てたけどいい装備がたくさんあるじゃない」
「ああ、ここは店主は結構武器にはこだわってるからいい武器を見つけたいんならオススメだ。まあ店主の顔が厳ついから少しびびるけどな。それ以外ならかなりいい店だぜ」
「それなら今度行ってみようかしら。もしかしたら、掘り出し物を見つけられたりするかもしれないし」
「まああるかもな」

 そう言ってからバギーに乗った。その後に少女もバギーの後ろで座りなおす。それを確認エンジンをかけてそのまま、中央の街へと向かう。さっきの道をいったん戻り、そして中央にある総督府を目指す。普通に歩いては数十分はかかるのをほんの数分で着いた。

「よし、ここでいいだろ」
「ええ、ありがと。それにしてもアンタってこれ持ってるから移動には便利ね」
「まあ、確かにこれがあれば移動が楽だな。さっき気付いたけどこの座る部分の下が丁度物とか入れられるし結構運べるしいいかもな」
「運び屋かなんかすればいいじゃない。それでお金を稼ぐのも一つの手じゃない?」
「そうかもな。まあ、運び屋をするんなら客一号のアンタにこれ渡しとく」

 そう言って自分のキャラデータを渡す。それを少女は受け取った。

「まあ、どこか移動する時ぐらいはあんたに頼むわ」
「客第一号にはサービスで安くしてやるよ」
「そうでなくちゃね」

 そう言ってあちらもこちらにカードを渡してきたので受け取ってウィンドウに入れた。

「それじゃあ、私は行くから。送ってくれてありがと」
「おう」

 そして、その少女と総督府前で別れる。そしてウィンドウを開くとアウラに向けてメッセを送るためにアウラが現在もログインしているかを確認すると入っていたのでメッセを送ることにする。だが一文字も文字を打つ前に銃弾が自分の目の前を通り過ぎた。まるでロボットのように首を動かしてその方向を向くと、今丁度メッセを送ろうとしていた人物、アウラがいた。

「ゲツガ、私が心配していたのに気にしないで女といちゃいちゃしてるなんて」
「おい、仲良くはなったやつだけどいちゃいちゃはしてなかっただろ。心配していたのはありがたいけど街中で一発打つのはどうかと思うんだが」
「心配した私が馬鹿だった」
「話し聞いてるか、アウラ?」

 そう聞くと更にもう一発ライフルを構えて撃ってくる。それを接近して銃口を上に向けさせて止めてから言う。

「なんかムカつくことしたなら謝るからここで暴れるな。怒ってるなら謝るから。許してくれないならいつもの場所で鍋をいくらでも奢ってやる」
「……」

 そう言うとかなり迷ったように動きが止まる。どうやら怒りと鍋をてんびんに賭けているのだろう。まあどうせアウラのことだから鍋を優先するだろう。

「……わかった。ただし、さっきの女の子とは話してもらう」
「別にいいけど、お前って俺とあいつの関係がそんなに気になるのか?」
「ゲツガには関係ない」

 そう言ってアウラは自分を無視して先に行こうとする。だが、歩いていくのは遅くなるため、アウラの肩を掴んで止める。

「?」
「歩いていくよりあいつで行ったほうが早いぞ?」

 そう言って自分の近くにあるバギーを指す。

「ゲツガ、借りたの?」
「いや、俺の私物。お前と別れた後ボス倒したらゲットできた」

 そう言うとアウラは目を輝かせてバギーを見る。

「ゲツガのってことは乗れるのか?」
「ああ、俺が所有者だから認証さえあればいけるじゃね?」
「じゃあ乗せて」

 アウラは少し嬉しそうに自分の服を引っ張る。なんかこう見ていると世話を焼くお兄ちゃんのような感じだと思う。

「わかったわかった。じゃあ、俺が運転でいいよな」

 そう言うとアウラはこくんと頷いて後ろに乗る。そして自分も乗るとそのままエンジンをかけていつもの店へと向けてバギーを走らせた。 
 

 
後書き
これで装備取得編も終わりです。次からは本編です。まだ募集してるのでそちらのほうもよろしくお願いします
 
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