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リリカルなのは~優しき狂王~

作者:レスト
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外伝~if/ライが行ったのが、水の惑星であったら~(クロスARIA)

 
前書き
更新遅れてゴメンなさい。

報告として、話の内容を変えるという情けないことをするために第四十七話を書き直すことにしました。
これは自分の力足らずが原因です。続きを期待していた読者の皆様には謝罪申し上げます。

そして、以前から少しずつ書いていた外伝を載せておきます。 

 


 水の惑星「AQUA」。かつて火星と言われたその星はテラフォーミングにより人の住める惑星になっていた。星の地表の九割は水に覆われており、今では『水の星』と呼ばれている。
 その星にかつての地球に存在した街、ヴェネツィアをモデルにしたネオ・ヴェネツィアが存在した。その街は様々な人々が訪れたり、生活していたりと日々を過ごしていた。
 モデルとなったヴェネツィアと同じく観光場所となっているその街には、街を張り巡らせる水路を舟で進み、街を案内する女性たちがいた。彼女たちは皆からこう呼ばれる。

<水先案内人│ウンディーネ>と。




『出会い』


ARIAカンパニー・近辺の海


 その日、水無灯里はいつもの自主練習を終え、アリア社長と共に船で帰路についていた。

「綺麗な夕日ですね~、アリア社長」

 気の抜けるような、どこか落ち着くようなそんな声が響く。

「にゅ」

 彼女の言葉に同意するようにゴンドラの先に座っている白く、蒼い目を持った猫が返事をする。
 ゴンドラから見える水平線に沈む太陽を本当に嬉しそうに灯里は眺める。彼女は今、心のどこかで「この美しい光景が続けばいいのに」と考えていた。
 しかし、その風景を眺める時間が唐突に破られる。

ゴン!

「うわ!」

「ぷいにゅ!」

 いきなりゴンドラに振動が起こり、ゴンドラに立っていた灯里はバランスを崩して倒れそうになる。なんとか倒れるのを堪え、ゴンドラの先に移動する。

「なんですかね~、アリア社長?」

「ぷい」

 2人は恐る恐るゴンドラの影に隠れた、ぶつかった物体を覗き込んだ。そこにいたのは――

「…………はひ?」

「…………ぷい?」

 木の板にもたれかかるようにして浮いている男の漂流者であった。
 それを発見した一人と一匹は呆然としていたが、すぐに慌ててその男を引き上げ、手当てのために自分の所属会社であるARIAカンパニーに連れ込むのであった。
 これがその漂流者、ライと水無灯里との最初の出会いであった。
 その後、ライが目を覚まし、自分の境遇の一部を説明し、ARIAカンパニーの居候として生活することとなった。
 そして、ライが目を覚ました時に「頭が痛い」と言った為に灯里が平謝りしたことは余談である。




以下ダイジェスト的な話

原作二巻「雪虫」より


ARIAカンパニー


 ARIAカンパニーで居候する代わりに事務仕事などを手伝うことになったライは真面目に仕事をこなしていた。最初は不慣れなことも多かったが持ち前の器用さで徐々に仕事にも慣れ、今では立派にARIAカンパニーの一員である。そしてライが拾われ一ヶ月が経つとネオ・ヴェネツィアに冬がやってきた。


 この日、ライは先日の夜に少し夜更しをしてしまい、滅多にしない昼寝をしていた。部屋にある暖炉の火が心地よい温もりをくれることもその一助になっていた。
 そんな中、ライが昼寝をしている部屋に二人と一匹の足音が近づいてくる。そして部屋の扉を開けると、その足音の主である灯里とアリア社長、そしてARIAカンパニーのプリマ(一人前)であり、灯里の先輩でもあるアリシアが入ってくる。

「あ」

「あらあら」

「にゅ」

 二人と一匹は部屋に入るとライが寝ているのを見つけ、一瞬驚いた表情を浮かべる。その理由は、彼女たちはライとの共同生活の中でライの寝顔はもちろん、隙のある姿を見たことがなかったためだ。
 彼女たちは驚きの表情をした後、お互いに人差し指を立てた手を口の前に持って来て笑顔を浮かべた。
 そしてアリシアが部屋に備え付きの毛布を起こさないように、ライにかけた時にあることに気付いた。
 そして笑顔を浮かべたアリシアは手招きで灯里とアリア社長を呼び寄せ、“それ”を教える。“それ”に気付いた灯里もまた笑顔を浮かべた。

(あ!アリシアさん、カメラありましたよね?)

(ええ、一回の受付の所に)

 小声でそのやり取りをした後、灯里はカメラをすぐに持ってきた。そして“それ”をカメラのフィルターに収めた。



 後日、自分の寝顔と頭の上に乗った雪虫が写された写真を見つけ、ライは赤面することになった。




原作三巻「満開の森の桜の下」より


ネオ・ヴェネツィア郊外の森


 冬も年も超え、新たな命が芽吹く季節である春が訪れる。
 陽気が心地よく感じるその日、灯里、アリシア、アリア社長、ライの三人と一匹は森の中、古びた電車の中にいた。

「わあーーーーー!」

「うふふ」

「にゅっ」

「すごい」

 皆がこう言う理由は電車の外と電車の天井にあった。
 その古びた電車の車体の横には、生きていることを全体で表すように咲き誇る桜の木があった。そして電車の天井は一部がなくなっていて、そこから桜を見上げることができたのだ。
 その美しさに気をよくした灯里とアリシアは、電車の対面型の座席にそれぞれ並ぶように横になった。
 流石にその中に入るのは気まずかったライは電車の外から桜を眺めることにする。
 そしてある程度辺りが暗くなってきた時に、不意に彼女の言葉が耳に届いた。

「失敗や寄り道をしなきゃ、見つからないものもあるってお話」

 その言葉はライにとってどのように感じたのか、ライは桜の木を見上げながら一筋の涙で頬を濡らした。
 その後、近くにあった電線を弄っていたアリア社長のおかげで桜の木がライトアップされる。灯里は慌ててアリア社長の方に向かい、アリシアはライの方に向かった。

「え?」

 ライを見つけたアリシアは、ライの頬に残る涙跡を見つけ驚きを呟きで表した。
 当人であるライは桜をどこか愛おしむ様に、懐かしむ様に、そして悲しむ様に見つめていた。その姿が何故か痛々しく見えたアリシアはライの横に静かに腰を下ろす。

「……見つけた時、もう手遅れだったならどうします?」

「……」

 ライは目線を桜に固定したまま、静かに隣にいる女性に問いかけた。
 問いかけられた本人は、ライの方を見るがその質問に彼がどんな気持ちを込めたのかはわからなかった。
 しかし、だからこそ彼女は自分の考えを素直に話す。

「私は――素直に誰かに相談すると思うわ」

「……そうですか」

 ライは彼女の答えに悲しい笑顔で答えた。そこに込められたのは後悔か、それとも羨望か。

「あなたはすごいですね」

 最後の言葉に込められたのが羨望であることはアリシアも察することが出来ていた。




原作三巻「水の3大妖精」より


ARIAカンパニー


 ライはその日も、自分の職場である受付で事務仕事をこなしていた。
 いつもと同じようなその日、いつもと違うことと言えば灯里の友達である藍華が来ていることぐらいである。藍華はARIAカンパニーではなく、姫屋という会社で灯里と同じく一人前のウンディーネを目指している。
 そんな彼女が何故か今日は家出して(?)来ていた。
 事務仕事の為に必要な書類を取りに部屋の奥に一旦引っ込んでいたライは、店の外が騒がしくなっていることに気付いた。

「なんだろう?」

 必要な書類を持って受付に戻ると、そこには灯里、藍華、アリシアの他に見知らぬ女性がいた。そして何故かそれぞれにゴンドラに乗った灯里と藍華を見送った二人は、そこで初めてライの存在に気付いた。

「む、誰だ?」

 その見知らぬ女性の疑問に答える前に、ライはその女性の強気な雰囲気と声からある一人の女性を思い出し思わずといった風にその名を口にした。

「コーネリア皇女?」

「誰だそれは?」

「あらあら」

 初対面同士の出会いは割とグダグダであった。
 立ち話も変と思った三人は揃ってお茶をすることになった。そこでライと件の女性、晃はお互いに自己紹介をする。彼女はアリシアと所謂同期であり、彼女と並んで3大妖精と言われているウンディーネであった。

「それで、さっきお前は私と誰を間違えたんだ?」

「えっと、その、自分が以前住んでいた国の政治家の女性と声と雰囲気が似ていたので、その人と」

「ほう」

「あらあら」

 ライの話に興味を惹かれたのか晃は笑みを浮かべていた。

「なら、アリシアに似ている奴はいたのか?」

 そう言われてライはアリシアをジッと見つめる。

「うふふ」

 見つめられている本人は頬に手を当ていつもの笑顔を浮かべていた。

「……いました」

「どんな奴だ?コイツと一緒で天然か?」

「あらあら」

 ライは一瞬、悩むような顔をした後正直に話した。

「なんというか……いたずら好きというか、お祭り好きというか、割とはっちゃけた人でした」

 ライの答えが意外だったのか、始めはポカーンとした表情をしていた二人であったがすぐにクスクスと笑い出すのであった。

「ア、アリシアの声で、はっちゃけって、くっ、ハハ……」

「あらあら、うふふ」

 晃はよっぽど可笑しかったのか笑いを堪え、アリシアはいつもと同じく笑っていた。




原作四巻「レデントーレ」より


ARIAカンパニー


 日が沈み、星が海を照らし出すその時間、ライはARIAカンパニーの近くの沿岸である準備をしていた。
 このネオ・ヴェネツィアには『レデントーレ』と呼ばれる、日本で言う屋形船で夕食会を行うお祭りがあるのだ。
 そして今回、見習いウンディーネである灯里、藍華、そして二人と同じくウンディーネを目指し友達でもあるアリスの三人がレデントーレを行う際に、屋形船を一隻借りてその夕食会を執り行うことになったのである。
 そしてその事を聞いたライは彼女たちにお客として呼ばれたのだが、居候の身としてはお客になるのは気が引けたので、今回は用意をする側として協力を申し出たのである。
 最初は渋る三人であったが、ライの気持ちをくんでこれを承諾。そしてライが準備するのは祭りの最後に打ち上げられる花火である。
 もちろん、ライにはその知識も技能もなかったが、話が決まってから、花火職人にそのノウハウを伝授してもらい、早くも大玉を作れるようになっていた。この男実に器用である。
 そして祭りの当日、花火の準備の関係で結果的に屋形船に乗り込むことが出来なかったライはあらかじめ用意されていた軽食とワインを、花火の見える場所で食べられるように準備をしていた。

「乾杯」

 準備が整い、花火が上がったその空にグラスを掲げてライはそう呟いた。そして軽食を早々に食べ終え、ワインで喉を潤しながら花火を見つめていた。
 その花火を見つめながら、ライは元の世界の思い出を脳裏に浮かべていた。
 生徒会メンバーで行った温泉旅行。その時もこうして花火を見ていた。その時は周りに親友たちがいたが、今はいない。そのことを実感してしまったライは目尻に涙を浮かべた。

「お疲れ様」

 ふわりとライの鼻腔に女性特有の香りが伝わる。それと同時に、椅子に座っているライは後ろから包むように腕を回され、顔の横からその言葉を囁かれた。

「アリシアさん!?なんでここに?」

「顔を皆に見せて少ししてから、戻ってきちゃった」

 いきなり登場した彼女はそう説明した。元々ライを一人にする気のなかった彼女はここに来る予定であった。
 そして予定通りそこに来て、目尻に薄らと光るものを浮かべたライを見ると、いてもたってもおられずライを後ろから抱きしめていたのである。

「貴方は今独りじゃないわ」

「え?」

「私も灯里ちゃんもアリア社長もいるの。だから言いたいことがあるのなら言ってもいいのよ」

「……ありがとうございます」

 そしてその日の夜、二人に何があったのか当人達しか知らない。





 この水の星にある水の都で、世界を変えた王は優しさに包まれたその生活でどうなるのか。それは当人もわからないことである。
 しかし、少なくとも不幸なことにはならない。何故なら彼はもう幸せを感じているのだから。




 
 

 
後書き

これからしばらくの間、リアルの方が忙しくなりますので、更新は不定期とさせていただきます。
なるべく早めの更新を心がけますが、それでも遅くなると思います。しかし更新をして読んでくれる方がいればと思います。

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