| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

IS-最強の不良少女-

作者:炎狼
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

圧倒

 
前書き
ゴーレムとの戦闘です
響無双です

どうぞー 

 
 不適に微笑む響は後ろで呆然としている鈴音を一瞥すると、

「鈴、一夏を連れてお前らは一旦退け。エネルギーもそろそろ限界だろ?」

 急に振られた鈴音は、ハッとした後、同じように呆然としている一夏に告げた。

「一夏! 一旦退くわよ、心苦しいけど今は響に任せるしかないわ!」

「何言ってんだよ鈴! 俺達でさえてこずってたのに響一人で大丈夫なわけないだろ!!」

 我に返った一夏は鈴音に反論するが、響がそれを制した。

「なぁに、心配すんな。これでも一応は戦いなれてるからな」

「戦いなれてるからって……!」

 そこまで言ったところで一夏は言葉を詰まらせた。響と話しているときに自らのIS『白式』のエネルギー残量を見たところ、既にエネルギーが100を切っていた。もしこのまま戦えばエネルギー切れになり邪魔になることは間違いないだろう。

 鈴音の方もエネルギー残量が危険域に達しており、戦闘続行は不可能だ。

 一夏は悔しげな表情を浮かべた後、響に言い放った。

「……わかった、ひとまずここは頼む!」

「おう。一夏、ちゃんと鈴守りながらピットまでもどれよ?」

「ああ」

 一夏と鈴音は並びながら後退していくが、黒いISはそれを見逃さず、二人に照準を合わせる。

 だが、黒いISは発射態勢に入った瞬間大きく後ろに吹き飛ばされた。

 そして先ほどまで黒いISがいたところにいるのは響だ。彼女は軽く舌なめずりすると黒いISに言い放つ。

「テメェの相手はこの私だ、間違えんな機械ヤロー」

 態勢を低くした響は追撃に入った。

 一呼吸で敵ISの元に詰め寄ると、巨大な左腕で相手の腹部を目掛け拳を放つ。

「ラァ!!」

 敵が大きくくの字に曲がるがそんなことを気にした風もなく、響は攻撃の手を休めない。

 相手に隙ができたところを狙い、今度は顔面に右腕を叩き込む。敵ISの目のようなものが砕け散る。

「どうしたどうしたぁ!? そんなもんか……よっ!!」

 相手を煽るような声を発するが攻撃を緩めることはしない。今度は敵ISが後ろに一歩退いたところで右足で蹴りを見舞いする。しかもただの蹴りではない、脚部に取り付けられたブースターによって圧倒的に早さが向上した蹴りである。

 蹴りを叩きこまれた敵ISはまたしても吹き飛ばされた。だが今度は先ほどの比ではない、なにせアリーナの壁まで吹き飛んだのだ。壁に激突した衝撃で土煙がもうもうと立ち込めている。

 だがその瞬間、一筋の閃光が響を目掛けて土煙の中から発射された。

 突如として放たれたビームも響は軽く避ける。その後もビームが連続で射出されるが、響は全弾をまるで何処に来るかのように難なく避けてゆく。

 やがてビームの放出も止まり、土煙が晴れたところにいたのは、体の各部位からオイルのような液体をボタボタと垂らし、関節から火花を散らせているISの姿だった。

「あーぁ……、もう終わりかよ。つまんねーな」

 大きくため息をつきながら響は心底残念そうな声を上げた。

「でもまぁ、機械だからしょうがねぇかー。仕方ねぇ楽にしてやるよ!!」

 言うと同時にスラスターをふかした響は一気に接近する。黒いISも反応する暇がなくあっという間に腕を掴まれる。

 響は黒いISの腕を掴んだ状態で左腕で黒いISの顔面を潰した。そして掴んでいた右腕で黒いISの左腕を引きちぎり、投げ捨てる。

「まだまだぁ!!」

 叫ぶと今度は左足で黒いISを空中に蹴り上げる。蹴り上げられたISはまるで、紙の様に宙を舞う。しかも蹴り上げられた時の衝撃で片足が一本なくなっていた。

 だが響は追撃をやめることはしない。

 飛行ユニットで空中に躍り出ると、黒いISの背部に回りこみ、先ほどもやっとような脚部のブースターを利用し、踵落しを叩き込んだ。

 かなりの速度で黒いISは地面に叩きつけられ、その衝撃がアリーナに走る。

「コイツで終いだ!!」

 空中で言うと、響は左腕のブースターを限界までふかすと、黒いISに目掛け一気に急降下しその左腕で黒いISの腹部を穿つ。

 そのダメージで黒いISは完全に機能を停止したのか、まったく動かなくなった。あとに広がるのは無残にボロボロにされた機械の塊だけだ。

「あー……疲れた疲れた。早く戻って風呂でゆったりするかー」

 響はISを纏ったまま、退避した一夏達の元へ戻ろうと、残骸から踵を返す。そして数歩いったところで鈴音からプライベートチャネルが飛び込んできた。

『響! まだ終わってないわよ! アイツまだ動ける!!』

 響の後方を見ると、黒いISがまるで「まだ終わっていない」という風に胴体を立てた。するとその中心がガバッと開き、そこにエネルギーが集中していく。

『響!! さっさと回避を!!』

 焦る声で告げる鈴音だが響は、にやりと口角を上げ、

「そう焦るな、鈴。こっちには――――」

 そこまで言ったところで甲高い音がアリーナの端から発せられたかと思うと、黒いISの胴体の数箇所を青いビームが打ち抜いていった。ISは今度こそ完全に機能を停止したのか、力なくその場に崩れ落ちた。

 それを確認した響はセシリアにプライベートチャネルを開いた状態で、鈴音に告げた。

「――――こっちにゃ、最高のスナイパーがついてるからな。……そうだろ? セシリア」

『ええ、わたくしの狙撃は百発百中ですわ』

 聞こえてきたのはセシリアの誇らしげな声だった。それを聞いた響も苦笑を浮かべていた。

「……にしても、やっぱり生身の人間相手とやり合うほうが面白いな……」

『なんか言った?』

「いや、なんでもねぇ」

 響はそれだけ言うと、ピットの中に戻っていった。




 ISスーツからいつもの制服に着替え終えた一行は、寮へ向けて歩いていた。すると鈴音が口火を切る。

「それにしても響、アンタ一体なにもんよ。あんなデタラメな戦い方よくできたわね」

「そうか? アレぐらい誰だってできるだろ、なぁ?」

 同意を求めるためセシリアたちのほうを向く響だが、誰一人頷くものはいなかった。むしろ全員苦笑いだ。

「でも、響さんの戦い方……かっこよかったですわー……」

 ぽわわーんとした空気をかもしだしながら頬に手を当て、恍惚の表情を浮かべていた。

「でも、容赦なしって感じだったよなー……。その辺りは千冬姉に似てるかもな響は」

「やめろってーの、あんな鬼教師と一緒にされたくねーって」

「誰が、鬼教師だと?」

 唐突に発せられた女性にしては低音な声に皆が振り向くと、そこにいたのは冷徹なまなざしをした千冬だった。

 皆が震え上がる中、響だけは一人大きくため息をつくと落ち着いた様子で振り返る。

「急に声かけないでくださいよ織斑先生、びっくりするじゃないですか」

「フンッ、それぐらいでビクつかれても困るがな。ああ、それと鳴雨……」

 そこまで言うと千冬は響の肩に手を置き告げた。

「……更識が貴様のことを呼んでいた。生徒会室に来るようにとのことだ」

 小声で告げる千冬に響は軽く頷くと、皆の方に振り返り告げた。

「ちょっとばかし野暮用ができちまった。飯には間に合うように行くからみんな先帰っててくれ」

 それだけ言うと、皆の返答も聞かずに響は校舎、生徒会室に向かって駆けて行った。




「来たぞ楯無ー」

 ノックもせずに乱暴に生徒会室のドアを開け放つ響は、心底けだるそうだ。それに対し、奥の椅子に腰掛けてる楯無は微妙な表情を浮かべている。

「響ちゃん……一応生徒会員だからもう少し静かにって……。まぁいいや、そんなことよりお疲れ様、響ちゃんががんばってくれたおかげで一般生徒に被害もなく終わったよ」

「そーかい、でもそんなことを言うためにわざわざ呼んだ訳じゃあねぇよな?」

 髪の毛をかき上げながらいつもの席に着いた響が言うと、楯無も無言で頷いた。すると、奥の部屋にいたであろう、虚がやって来て静かに響に告げた。

「今回響さんが破壊したISはやはり無人機でした」

「だろうな、つーか無人機でなくちゃ困るっての。あれが無人機じゃなかったら私は人殺しだよ。しかも相手の頭、腕、足をもいだ極悪人だ」

 冗談交じりに言う響に、虚や楯無も少し笑っていた。

「では、話を戻します。あの無人機はISで間違いありませんが、アレに搭載されたISコアは登録されていないものでした。これにより考えられることは、今回の一件は亡国機業ではなく別のものによるものだと推測されます」

「ん? なんでアレにISコアがないってわかってんだ? 普通ああいうのは先生ぐらいしかしらねーんじゃねーのか?」

「生徒会長権限!!」

 高らかに宣言する楯無に、響は若干ジト目をしていたがそこはあえてスルーした。

 すると楯無が響に聞いた。

「まぁそんなことはおいといて、響ちゃんはどう思う? 今回のアレをけしかけた人物について」

「そりゃあお前……、一人しかいないだろ?」

「だよねぇ……」

 溜息をつきながら楯無は肩をすくめる。そう、未登録のISコア、本来有人でしか動くことのできないISが動く、これらをたどっていけば確実に一人の名前に辿り着く。

 ISを生み出した張本人であり、稀代の天才。

「篠ノ之束博士」

 楯無の言った人物名に響たちは無言で頷いた。

「つーか、たとえあの兎耳女がそうだったとしても、一体なんでこんなことをする必要がある?」

 疑問を投げかける響に楯無は解説する。

「もしかしたら織斑君の力を測るためだったのかもね、あの子のISも篠ノ之博士が調整したらしいし。または……」

 楯無は言葉を途中で切り、響のほうをむく。響も自らの指にはめられている『夜天月』を見ながら返答した。

「私の能力を測るため、か。……そーいや私に言ってたな、楽しませてくれるとかどうとか」

「楽しませる? 何を?」

「んなこと私が聞きたいっての」

 肩をすくませ返答する響をみて楯無は呟きをもらす。

「楽しませる……ねぇ」

 思うことがあるのか、あごに手を当て少し考え込んでいるが、すぐに顔を上げ響に告げた。

「とりあえず、今日はここまでにしましょうか。響ちゃん、またなにかあったら連絡するからね」

「了解」

 響はそれだけ答えると、生徒会室から退室して行った。

 生徒会室に残された楯無と虚は二人して顔を見合わせ、大きく溜息をつく。

「それにしても、響ちゃんの戦闘力には驚かされるわ。もし私の時あのISを装備してたらと思うとゾッとしちゃうもん」

「そうですねお嬢様、あれはもはや戦闘ではなく、圧倒的な力による蹂躙といった方が正しいですし」

「でもまぁ、あんなに強いんだから亡国機業との戦闘でも頼もしいだろうねー。っと、虚ちゃん。頼んでおいた響ちゃんの経歴ある?」

 楯無が虚に聞くと、彼女は持っていたファイルを広げ、その中にあるプリントを楯無に渡す。楯無は渡されたプリントに目を通すと少しだけ吹き出すと小さくつぶやいた。

「本当に面白い経歴、中学で1000人倒しちゃうって……、でもそれが今になって役に立ってるって言うのも面白いけどね」

 満足そうに言う楯無はプリントを机の中にしまいこんだ。




 響がいない中、セシリア、鈴音、一夏、箒の四人は食堂に集まって話をしていた。話の内容は勿論響のことである。

「それにしても、響の戦い方って本当におかしいわよねぇ。普通ISで殴る蹴るなんてしないって」

「ですが、そこが響さんのオリジナリティあふれるところですわ」

 鈴音の意見に対し、セシリアが抗議する。

「まぁそうだけどさ……、というか代表生でも代表候補生でもないのに専用機持ちって言うのもなんか胡散臭いのよねぇ。一夏、アンタはどう思うの?」

「俺か? そうだなぁ、確かに鈴の言うこともわかるけどさ。そんなことを言うと俺も代表生でもなければ代表候補生でもないのに専用機持ちなんだよな。それに響は俺達を守ってくれたじゃないか、それだけで十分だと思うぜ?」

 一夏の言葉に鈴音も反論はせず頷くと、言葉をつなぐ。

「別にアタシだって響が怪しいとか、憎たらしいわけじゃないわよ。ただ気になっただけ」

 そこまでいったところで、黙っていた箒が口を出した。

「今回は鳴雨が私達を救ってくれた、これだけでいいだろう。いちいち人の過去を詮索するものではない」

「そうだな、箒の言うとおりだ。今回は俺達が響に救われた、それだけにしておこうぜ?」

 一夏の言葉に鈴音もそうね、と答え首を縦に振った。するとそこへ、

「人がいないところで何をこそこそやってんだか」

 全員が声のするほうを見るとそこにいたのは先ほど話題になっていた響だった。

「ひ、響さん! いつからいましたの?」

「今ついたところだっての。それより早く飯食おうぜ? もう腹が減り過ぎて死にそうなんだ」

 響がお腹をさするしぐさを見せると、その場にいた全員がちいさく笑いをこぼした。その後は五人での夕食となった。




「いやー、いい湯だったー。やっぱ風呂は良いなぁ」

 大浴場から上がった響は軽く顔を上気させ、寮の廊下を歩いていた。片手には途中買ったであろうスポーツドリンクが握られていた。

 そしてある部屋の近くまで来たところで、響は声を聞いた。その声とは、

「私が優勝したら……付き合ってもらう!!」

 高らかに宣言されたその言葉の主は、箒だった。響が角からその姿を見つめていると、響の後ろからセシリアがやってきて。

「響さーん、このあと夜のお茶会などムグ!?」

「静かにしてろセシリア! 今面白いところなんだから!!」

 響はセシリアの口をふさぎ、耳元で小さく、だが強めに言い切った。だがセシリアはそれどころではない。

 ……あ、ああああ! ひ、響さんのお顔がこんなに近くに! いえ、それよりも!響さんの吐息が首筋にぃぃぃぃぃ!!!

 セシリアの脳内ではえらいことになっていた。

 するとそんな響たちの横を箒が駆け抜けていった。どうやら話が終わったようである、箒自身かなり焦っていたのか周りが見えておらず響たちに気付かずに駆けて行ってしまった。

 それを見た響はセシリアから手を離す。

 ……ああ!? そんな! 響さんの香りが遠のいていきますわぁぁぁぁ……カムバーック!!

 彼女は響の手が自分の口元から離れていったことが心底残念そうにうなだれた。

「何やってんだセシリア?」

 響に声をかけられ、セシリアは我に帰ったように響のほうに向き直る。

「コホンっ、なんでもありませんわ。それより響さん、これから夜のお茶会でも」

「あー、悪い。今日は本音と約束があるんだ、また今度な」

 そう告げると、響は足早に自分の部屋に戻っていった。後に残されたセシリアはその場にガクリと片膝をついていた。




 寮の廊下を駆けながら響は先ほどの箒の言葉を思い返していた。

 ……ずいぶんと篠ノ之は大胆なことをしたけど、果たして一夏に届いたのかねぇ。アイツの朴念仁ぶりは異常だからな、さぁてどうなるか。

「まぁ、面白そうだからしばらく見守ってるか」

 そういう響はまるで何かをたくらむ子供のように笑っていた。 
 

 
後書き
以上です

いやー、響さん強いなー
そして倒し方がエグイなー

最後の方は少し時系列を変更しました。

感想、アドバイス、ダメだしお待ちしております。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧