Tales Of The Abyss 〜Another story〜
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#14 食料の村 エンゲーブ
~食料の村 エンゲーブ~
流石にタルタロスで、入村する事は出来ないから、傍の平野にタルタロスを停め。エンゲーブへと入村した。そして、ジェイドは何やらここの村長と話があるようで、そちらの方へ向かっていった。
残された3人は。
「えっと……、イオン様も行くんですか?」
アルは、一緒に来ていたイオンに話しかけていた。それより思った事がある。
(あれ? アニスがいない……?)
それだった。イオン、アニス、アルの3人残っていたはずなのに、いつの間にかイオンと2人だけだったのだ。
「僕の事は、イオンでいいですよ。私も貴方の事はアルと呼びますから。私は少し気になる事があるので、エンゲーブの食料庫を調べに行こうと思ってます。」
イオンは笑いながらそう答えていた。因みに、調べるのには訳がある。
「うん、どうも ありがとう。イオン! えと、食料庫に? ……あっ、なるほど。さっき町の人達が話していたこの村の食料泥棒のことですか。うん、オレも一緒にイオンに付いていきますよ。あっと違う。オレも一緒に言っても良いですか?」
呼び捨てを許してくれたイオンに、とても大らかなイオンに、アルは感謝した。敬語を使う事に慣れてない訳じゃないけれど、やっぱり普通に話せる方が楽だから。それに、印象的には教団のトップってちょっと頭が固いのかと思っていたんだ。
でも、イオンはそんな感じが全然、全くしない。そうだからこそ、イオンにはとても人望があるのだろうと思った。導師、と言う肩書きじゃなく、イオン本人が。
イオンは、アルがついてきて良いか? と訊いた時。
「え! 手伝ってくれるのですか? ありがとうございます。アルは優しいですね」
イオンは、満面の笑みでそう返した。付いていっても良いかどうか? を聞いてイオンは歓迎。寧ろ喜ばしい事だと言ってくれた。
「えっと……その……、アニスがいないみたいですし、イオンの護衛は、こんなのどかな村じゃ、必要ないとは思うけど、やっぱり万が一もありますし……ね」
アルは、イオンが、まさかそこまで言ってくれると思って無かったからか、照れを隠しながらそう話していた。
その表情から、どうやらイオンも察してくれたようだ。そんなアルを見ながら微笑んでいた。
そして、アニスの事はと言うと、後でイオン聞くところによると、頻繁に離れてしまうとの事だった。
それは、イオンが故意的に巻いているのか、或いは天然なのかは判らない。
(……多分、後者だと思う)
アルは、イオンの事を考えて、そんな風に結論を出していた。……因みに的を得ているのである。
イオンとアルは、エンゲーブの食料庫に来ていた。中に入って見ると……何があったのかは直ぐに判った。……見てみたら一目瞭然だ。
「ああー…… こりゃほんとに酷いね。無茶苦茶だよ。犯人は、相当な空腹だったのかな?」
そこで 見たのは、見事に荒されていた食料庫内の惨状だった。食料庫、と言う名前なのに、そこには殆どが残っていない。本当に根こそぎ盗られている。
そして、聞くところによれば、この村の主力製品は食料との事だ。だからこそ、この村にとって食料と言うのは、何よりも価値のあるものだということだ。
喉かな村だと思った第一印象とは裏腹に、何やら村全体が殺気立っていると感じたのは、やはり そのせいだろう。
「これは………」
イオンは食料庫の中で何かを見つけたらしい。その場にしゃがみこんでいた。
「ん? 何か、手がかりがあった?」
離れて調べていたから、アルはイオンの方へと向かった。
「ええ。……これで犯人がハッキリしました」
そう言うと、イオンは拾ったそれを。……何か動物の体毛のような物を差出し、アルに見せた。アルは、それを見て。
「んっ、と……。あ、成る程、人じゃなく、獣が犯人ってことかな? んー……、さすがに、獣の種類まではわからないけど。 イオンは見ただけで判ったんだよね? う〜ん……もうちょっと勉強したらよかったかな……? 動物、生き物の事も……」
アルは、頭を捻りながら考えるがわからない。生物は、あまり勉強をしていないジャンルだから。鉱山内に生息しているモンスターの事は注意して、と言う事で学んだんだけど。
「あ! ごめんなさいアル。これはですね、《聖獣チーグル》の抜け毛ですよ」
イオンは、謝りながら説明してくれた。一般的なモノなのだが、アルの事を考えたら、仕方が無いから。謝罪を受けたアルは。
「あっ、謝らなくてもいいですよ。知らないのは事実ですし。……変に気を使わせるのも、ちょっと申し訳ありませんし。何より、今、とても勉強になりましたから」
アルは、笑いながらイオンにそう話した。イオンも、やっぱり悪そうにしていたが、最後にはアルの意志を組んでくれて、笑っていた。
「そういえば……、そのチーグルって あの〜……えーっと、うん そうだ。ユリアと並んで教団の象徴になってる草食獣…… でしたよね? 知能も高いって言う」
アルは、イオンに確認するように尋ねた。チーグルと言う名前は学んでいたから。
「はい。その通りですよ」
「んん……、ならどうして。何で、草食獣のチーグルがここの食料を? んー………」
アルは、 腕を組みながら考える。でも、証拠がある以上は、盗んだのはチーグルで間違いないんだろう。動機までは、やっぱりわからないんだ。知能がある、と言う事は考える事が出来るから、他の動物の様に本能だけでの行動じゃないだろう。
「とりあえず、わかった事を村長さんの所に報告しに行きましょう。」
「そうですね」
2人は頷き合うと、この1件の事を報告する為に村長の屋敷の方へ向かった。きっと、ジェイドもそこにいる筈だから。
食料庫から村長の家にまでの距離は直ぐ傍。だから、直ぐに到着した。
だけど……、着いたのはいいけど。
「何やら中、騒がしくないかな……?」
「そうですね……あまり、穏やかではありません……」
そう思うのも当然と言うものだ。何しろ、着いて気づいたんだけど、建物の中から『大人しくしろっ!! この泥棒め!』とか、『こいつ漆黒の翼なんじゃねーか??』とか聞えてくる。家の外にいるのに、はっきりと聞こえてくるのだ。
そして、その後に『ちげーーーーよ!!何でオレがんなことすんだよ!!』と さっき人達の声よりも、遥かに大きな声。……メチャメチャ大声が聞こえてきた。
穏やかじゃない、と表現するより、殺伐としている。喧しい、と言う表現が一番しっくりと来る。
イオンとアルは、その会話の一部始終を聞いて理解した。声が大きいから、嫌でも判る。
「早く言って誤解を解いてあげましょう!」
イオンはそう言うけど……、やっぱり ちょっと不安もある。話の中に、『店から食料を盗んだ』と言う話も聞こえてきたからだ。
「えっと………、 会話の流れから察するに、この声の人。もし店先での泥棒だったら 庇えないですよ?」
そう、オレたちがわかっているのは食糧庫の犯人だ。店頭の食料を盗んだ現行犯だったとしたら、庇えるものも庇えない。
「まあ、そうですが…… とりあえず入りましょう。食料に関する問題は少しでも解決したいですし」
「まぁ……確かにそうですね。勇気を出しますか……」
アルは、このドンチャン騒ぎになってる家の中に入るのは気が引けるけど仕方ない、と諦めていた。……反対にイオンは行く気満々だ。
ついて行く、と言っておいて、ここから先はイオン1人だけ行かせるのも……無責任な気もするから。そして、扉を開けようと手にかけた所で。
『ティアさんが…… 彼らは漆黒の翼じゃ…… 先ほど………逃走………私が保証します………』
聞き覚えのある声、そうジェイドの声が聞えてきた。それに そのジェイドの言葉から 心なしか騒ぎも静かになっていた。
「丁度良かった……、今のうちに入りましょう。アル」
「そうだね。今がチャンス」
イオンは、扉を開け、中へと入っていった。アルもそれに続く。
「食料泥棒のことで、少しお話をさせて下さい」
イオンがそう言うと、皆がこちらを注目していた。
「アル、イオン様。」
ジェイドは、入ってきた2人を確認した。イオンはジェイドに軽く頷くと、そのまま村長の方へと行き、先ほど見つけたチーグルの抜け毛を渡した。
「少し気になったので、彼と調べていたら部屋の隅で見つけました。」
「これは……チーグルの抜け毛だねぇ!」
それを見た村長も犯人を確定したようだ。イオンはそれを確信すると。
「ええ……恐らくはチーグルが犯人でしょう。」
「少し、何か解せない点もありますが……とりあえずそうでしょう」
イオンとアルで話を繋げた。これで万事解決。と思いきや。
「ほら見ろ!!! だから言ったじゃねーか!!!」
赤毛の長髪の男。恐らく、一番騒いでいた人(声が同じ)が一気に騒ぎ出した。彼が犯人扱いされていたのであろう。
疑いが晴れたとの事で、村の人達は、彼に謝罪していた。
「ふう、一件落着のようですね」
ジェイドは笑いながら言っていた。
「でも、根本的な解決にはなってないと思うけど…… チーグルが盗ったと言うことが判っただけだし」
アルはジェイドに突っ込んだ。
「おやおや 貴方は優しいですね。色々と、他にしなければならない事があるんですよ? 勿論貴方もそうでしょう?」
ジェイドがそう言うと。
「まあ…… オレが連れてきてもらった理由もアバウトだし、アクゼリュスを助けるためには貴方達といた方が良いんですが……、その、やっぱり見過ごせないというか……」
アルは、 少し暗い顔をしながら言った。確かに自分勝手な事、無責任な事を言ってる事は判る。そんな事、重々承知だったんだけれど……、困っている人が多いから。
この村の人達と少し話したけど、何処か殺気立っていたものの、歓迎をしてくれたから。
「ありがとうございます。アル!」
なぜか、イオンがアルに礼を言っていた。どうやら、イオンも、聖獣チーグルとエンゲーブの村に、ついて心配していたみたいだ。
イオンもジェイドに言おうとしたが、アルが先に言ってくれた、との事。
でも、アル本人はどうして礼を言われたのかが判らない。
「ええっと…… それは、何の礼かな?」
だからそう聞いていた。因みに、ジェイドは判っているみたいだ。やれやれ、と言った感じで苦笑していた。
イオンもにこやかに笑っていた。
「はぁ……」
アルは考えてもわからない。だから教えてくれても良いのに……と思いながら、ため息をつくしかなかった。
「まあそれはさておき、とりあえず用事の方は終わりました。本日は遅いですし、この村で1泊させてもらいましょう。それに、貴方にも聞きたい事がありますし。」
ジェイドがそう言うと、村長さんに案内された。どうやら宿屋じゃなく唯で部屋を使わせてくれるらしい。
そして、もう少ししてそこにアニスも乱入してきて。またまたイオンと楽しそうにもめるのだった。
それにしても、アルは本当に見ていて飽きない。 もめているんだけど、とても楽しそうに見えるから。
そして、楽しそうだから……、ついついアルも会話に入ってしまう。
「……あれ? でもさ。アニスが、いつの間にか いなくなったんじゃ無かったっけ?」
アルがそう聞くと。
「ちっがーーう! アルがイオン様についていったんでしょ~~! 私だけ置いて!」
思い切り反論をされた。吼える様に。
その言葉を聞いて。
「あ、あれ? ……そうだったっけ?」
アルは、否定できず苦笑いをした。
確かにイオンについて出たし、アニスとイオンは一緒にいることが多いから自然と先入観でアニスも側にいた、と勝手に解釈していただけかもしれないんだから。
アルは苦笑いをしている間、アニスは、更に不機嫌だった。
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