| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ロザリオとバンパイア〜Another story〜

作者:じーくw
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第14話 「必ず……また会える」




























アカーシャ side






アカーシャは、自分の足が震えていることに気がつかない。


見えるのは徐々に、そして確実に消え去って行く彼の姿。


それを見てしまって、ただただ……混乱していた。






なぜなぜなぜなぜ????

生きて帰ると約束した人が 消えていくの きえてくの キエテイクノ・・・??





我を失い そうになる寸前だ……



「駄目……だめっっ!!お願い!消えないでぇぇ!」



アカーシャは、声を振り絞り、叫んだ!




アカーシャ side out






他の2人も言葉が見つからず 立ち尽くしていた。

いや、状況が摑みきれていない。

つい今まで、普通に会話を交わしていたはずなのだ。


だが……今は。



アカーシャは目に涙を溜め、流しながら何度も、彼の名を何度も叫んでいた。



そして 戦いの疲労からか ジャックの所まで駆け出すことができずその場に倒れていた。


そこに……。



“ ポンッ ”



金色の霧を纏った……

ジャックがいつ間にかアカーシャの側へときていた。

そしてアカーシャの頭に手を置いた。


彼女を、優しく包みこむように。



『ごめん…。約束……破ってしまった。 ……暫くお別れだアカーシャ…それにみんな。』



ジャックが口を開いた……。

温かい目をしながら。



その言葉を聞いた御子神は全て理解した。

今の状況を。

アカーシャは見ただけで、恐らく本能的に解ったんだろう。

この男が……≪死に逝こうとしている事≫を。


「貴様!絶対に死なんと言ったではないか!我々との約束を違えるきか!」


御子神もその場で声を振り絞り叫んだ。

互いに死なない。そう誓い合った。



……4人でだ。誰一人欠けず……皆で帰ろうと。





「うっうっうっ………ッ……。」


アカーシャは倒れこむ前に 最後の気力を振り絞り叫んだためか、声がこれ以上出てこなかった。

目の前の大切な人の顔すら見えないほどにだ。

彼女の視界がぼやける。

ピントが合わない。

どう目を擦っても……涙があふれ出るから。



東方不敗も御子神同様に理解した。

そして、彼女の泣いている姿を見て更に熱くなる。


「おぬしは……ヌシは!女を女を泣かせたまま 去ると言うのか!男じゃろうが!!最後の最後まで責任をとらんかぁぁ!!」


東方不敗も又声を振り上げた。

皆で生きて帰る…。

その誓いは自分自身にとっても大切なものだから。



もう、この4人の中で誰1人欠けることがあってはならないんだ。

それほどまでの存在になっていたのに……



そして、アカーシャの頭に手を置いたまま・・・

2人の方を向いた。


『これは闇の力。……禁忌のひとつを限界まで使用したことへの代償なんだそうだ。 ……つまりは体が闇に喰われるんだ。ブラックホールみたいにな。  ……魔力と自然の力で闇を抑制しながら本来なら使うみたいだが……。 あの時はその余裕が無かったからな。何せ自分自身の所謂最終技を防がれたから……。自爆技を使わざるを得なかったんだ……。』


ジャックは、消えてゆく体を見ながらそう答えた。

その霧は、自分の体を奪いながら、上方へこの高い空へと吸い込まれる様に消えてゆく。


(闇なのに金色の霧か……。ブラックホールじゃなく、ゴールドホール、か。  ……これが 闇に消えるものへの闇からの餞別なのかもな。)


ジャックは…そうも感じていた。


消える事に悔いは無い。



だが……だけど、


まだ残している言葉がある。

まだ伝えたい言葉がある。



このまま…消えてはいけない。

東方不敗の言葉じゃないが、このまま消えるのは無責任もいい所だ。

ジャックは声を振り上げる。


『……だが信じてくれ。いつか、いつかは必ず帰ってくる。オレだってあいつを皆に押し付けて終われない!……オレだって…女を泣かせたままでは終わったりしない!……終わりたくない気持ちも…もちろんあるんだから。』


そして 再びアカーシャの傍に行き、膝を落として彼女の目を見た。

美しい赤い瞳。



『正直……何十年かかるか分からない。でも、戻ってくる。……必ず君に、会いに行く。……だから、その時まで お別れだ。アカーシャ。会いに行ったとき お前の子供を見るのを楽しみにしているからな。 その、一茶とは仲良くな?会いに言った時、幸せになっててくれよ?それを楽しみに戻ってくるから。』

そしてそう言ったそのジャックの身体は、上半身まで消えかかっていた。

アカーシャの頭にのせていた、優しくのせていた…

その手の感触が消えたその時。

アカーシャは俯いていた顔を上げる……。

必死に彼の言葉を思い出しながら……。





「わたし……達は、かな…らず……?」




これまでの戦いで、涙で、汚れた顔をジャックに向けた。

どんな表情だろうと……彼女の顔は綺麗で……美しかった。


『ああ かならず…だ…』


ジャックもまた。

アカーシャを見つめた。

それは、 いつもと変わらい笑顔だった。

最後には示し合わせたわけじゃない。

ただ、自然に……極自然に……。



『「必ず……また 会える!」』



2人の声は重なり合っていた。



『今度は約束を破らない……今度は今以上に頑張る……絶対…会いに行くから……。』

「う…うん…!まってる…ずっと…ずっと…まってる!」



ジャックは、堅くそう誓った。

アカーシャも頷いた。

彼のことを……信じたんだ。



そして。



ジャックの体が消えて逝く。



頭部の半分ほどが消えかかる所で……。




『じゃあ ≪またな≫、≪また≫会おう…。 俺の…大切な…最高の仲間たち…。』



さよならは…いわない…

だから、またな… ≪またな≫なんだ…

ずっと会えない…何てことはないんだ。



皆と約束した。


絶対に…帰ってくる……

この故郷に……。



そして……ジャックの体の全ては………。

頭部も金色の霧に包まれる。



それは…星のように鮮やかで…

それは…太陽のように暖かく…



天使のように…天へと去っていく……。


闇に奪われるのではなく。

まるで使命を果たして天へと帰って逝くかのように……。

最後の霧。

金色の一粒も空へと去っていった。





この日の夕刻。



この世界を救った。




≪ジャック・ブロウは背後の暁の空へと消えさって言った。≫













 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧