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ハイスクールD×D~小さな赤龍帝~

作者:九桜
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第0章 転生世界のチャイルドドラゴン
  第3話 龍王との出会い

 
前書き
 今回はオリキャラ登場です。

 見てみて下さい。

 では、どうぞ。

(注)オリ技名、変更しました。 

 
 Side:龍夜


 ドライグと対話し神器(セイクリッド・ギア)を発現させ、同時に謎の力まで目覚めさせてしまった俺――兵藤龍夜は今、町の郊外の森にいる。理由はもちろん、この謎の力を確かめるためだ。得体の知れない力である以上、家の中や人目の多い場所で使うわけにもいかないので、こうして遠出をしてきたってわけだ。


「ここでなら大丈夫か、ドライグ?」


『ああ。周囲に人の気配はない。相棒、あの力を出してみろ』


「ああ」


 ドライグに促され、俺は目を閉じ精神を集中する。先ず『赤龍帝の双角(ブーステッド・ギア)』を発動させ、それと同時に体の奥から湧き上がってくるあの力をそのまま解き放つ。


 全身からコロナのような赤い光を全身に纏う俺。初めてこの力を出した時のような疲労感はもう感じなくなっていた。むしろ頭のてっぺんからつま先に至るまで力が漲るこの感覚。俺は赤い光を纏う自分の手を見つめた。


「なあドライグ。この力は本当に何なんだ?ブーステッド・ギアの力じゃないのか?」


 最初俺は、この力はブーステッド・ギアの能力なのではないかと思ったが、ドライグの話ではどうやら違うようだ。


『ああ。この光はブーステッド・ギアの能力ではない。それは断言できる。……ただ」


「…?ただ……何だ?」


 言い淀むドライグに俺は話の続きを求める。


「ただ…これだけは解るんだ。この力は……ドラゴンの力だと」


 そう話してくれたドライグの言葉を俺はそのまま繰り返す。


「ドラゴンの…力?」


『ああ。何故かは分からない。だが漠然と、本能的に、それだけは理解できる』


 ドラゴンの力…ねぇ。まあ、ドラゴンのこいつが言うんだから間違いないのかもしれないけど。だけどそれだけじゃなぁ。危険な力なのかどうなのかも分からないままだし……。


「うーーん……まあいいや。とりあえず一回この力を使ってみよう」


 俺は一先ずそう決めて、周囲を見回す。―――と、近くにあった大きな岩のところで目を止めた。スタスタと歩いて岩の目の前まできた。


「この岩が丁度いいかな?」


 グルングルンと肩を回して岩を見上げる。全長はざっと3メートル弱ってとこだな。……よし。


 拳を握って左の拳を前に突出し右の拳を腰だめに構える。空手で言う中段突きの構えだ。目を瞑って軽く息を吐く。精神を集中させ全身に力を行き渡らせる。


 体の隅々にまで力が行き渡ったのを感じると同時に俺は強く足を踏み込み正拳突きを鋭く岩に放った。


「はあっ!!」







 ―――ドゴォンッ!!







 …………


 ………


 ……


 …………うん。結論から言おう。


 岩が粉々になった。


 …ってちょっとまてぇぇぇぇえええええッッッ!!!


「おいぃぃいいいい!!なんだよこれ!なんだよこれぇっ!?なんでパンチ一発でこんな大岩が木っ端微塵になってんだよ!え?これ俺がやったの?俺がやったのマジで!?いやいやいや、嘘だろ夢だろ冗談だろ!?どう考えたってありねぇだろいくらなんでもぉっ!!」


『あ、相棒っ!落ち着け、冷静になれ!深呼吸だ、深呼吸!!』


 ドライグの声で深呼吸をし、若干の冷静さを取り戻した俺だが頭の中は未だに混乱状態だった。俺は自分が粉微塵に破壊した大岩があった場所を見つめてプルプルと震えた。


 ヤバい、ヤバい、これはヤバい!いくらなんでもヤバすぎる!!まさかここまでとんでもない力だったとは思わなかった。


 どうする?これは軽率に使っていい代物じゃない。いや、それ以前にこんな馬鹿げた力、俺に制御できるのか?


 ああ駄目だ。そう思ったらいきなり怖くなってきた。体が震えてくる。


『…相棒、大丈夫か?気をしっかり持て』


 俺を気遣うドライグの声。俺とドライグは一心同体だ。俺が感じている恐怖をこいつも感じているんだろう。


「…ああ。大丈夫だ。ありがとなドライグ」


 ドライグのお陰で恐怖感がいくらか和らいだ。そうだ、ビビってる場合じゃない。この力を制御する方法を考えるんだ。でも、一体どうすれば……


「ほう、これは随分と珍しいものに出会(でお)うたものじゃ」


 ―――ッ!?


 俺が思考を巡らせているとそこに後ろから第三者の声が聞こえてきた。後ろを向いてみるとそこには一人の人物が木に寄りかかりながらこちらを見ていた。


 中国の服…長袍(チャンパオ)といったかな?それに編笠を頭に付けていた。何というか、少し怪しげな感じだ。というかこの人いつからそこにいたんだ?まったく気配を感じなかった。


「あの…あなたは?」


「おお、これはすまん。何やら懐かしいドラゴンの波動を感じたもので見に来たのじゃが、そうか、やはりお主だったか……ドライグよ」


 ―――ッ!?今この人、ドライグの名前を!?


「その赤い双角。それは紛れもなく神滅具(ロンギヌス)の一つ。赤龍帝の双角(ブーステッド・ギア)。なるほど、お主が今代の赤龍帝というわけか。ふふふ、なんとも可愛らしい『赤き龍の帝王(ウェルシュドラゴン)』じゃのう」


 そう言ってその人は頭に被っていた編笠を外して顔を見せた。歳は多分二十代後半。長い灰色の髪を三つ編みにした整った顔立ちの男性だった。


「あんた…何者だ?」


 身構える俺。ドライグや俺の神器を知っている時点で只者じゃないのはわかる。警戒心に満ちた眼差しを受けてその男性は苦笑する。


「そう構えんでくれ。お主に危害を加えるつもりはない。少し昔馴染みと話をしたいだけじゃ」


「昔馴染み?」


「お主の中にいる赤い龍のことじゃよ」


 ドライグのことか。おいドライグ、この人一体―――


『この気配、このオーラ……まさかお前は』


 驚いたような声を出すドライグ。やっぱりこの人のことを知っているのか?


『相棒、よく聞け。その男は人間じゃない』


 え?人間じゃない?ドライグ、それはどういう……


『そいつは……俺と同じだ』


 ドライグと同じ?……って、それってまさか!?


「どうやら、気付いたようじゃの。ではお見せしよう。……わしの正体を」


 愉快そうに笑う男性から凄まじいまでの圧力を感じる。瞬間、その男性を中心に突風が吹き荒れ、俺は思わず目を瞑り吹き飛ばされそうになるのを必死に堪える。


 突風が治まり俺はゆっくりと目を開ける。そして驚愕した。そこに男性の姿はなかった。かわりにそこにいたのは―――


「これがわしの、本来の姿じゃ」


 そこにいたのは、大きな翼を広げたドラゴンだった。


『やはりお前だったか。リンドブルム』


 リンドブルム?このドラゴンの名前か?


「自己紹介がおくれたの。わしは『練武の闘龍(レイジング・ブレイブ・ドラゴン)』リンドブルムという。お初にお目にかかる今代の赤龍帝殿」


 目の前のドラゴン―――リンドブルムが挨拶をくれる。意外な礼儀正しさに俺もつられて挨拶を返す。


「あ、どうも、赤龍帝の兵藤龍夜です。初めまして」


『久しぶりだな、リンドブルム』


 ドライグの言葉にリンドブルムは嬉しそうに笑う。


「うむ。実に久しい。息災なようでなによりじゃ」


『俺はもう魂だけの存在だ。息災もなにもないだろう?』


「かっかっかっ、そうじゃったな」


 何やら親しげに会話を交わす二人―――っつーか二匹?どうやら本当に知り合いのようだ。


「あのーードライグ?それでこちらのドラゴンさんは、どちら様で?」


『ああそうだ。紹介しよう相棒。こいつはリンドブルム。俺と同じく伝説のドラゴンの一体でな。ドラゴンの中でも俺や白いのに次ぐ実力の持ち主だ』


 伝説のドラゴンの一体で、ドライグ達二天龍に次ぐ実力の持ち主って!聞くだけでも凄そうだな。


「そんな大それたものではない。ただの修行好きなだけの変わり者のドラゴンじゃよ」


 ドライグの説明に苦笑交じりで謙遜するリンドブルム。―――ってか、


「……?修行好き?」


『ああ。こいつはちょっとした変り種でな。自分の力を修行や鍛錬によって高めたドラゴンなんだ』


 ……へえ、そんなドラゴンもいるのかぁ。感心しながら俺はリンドブルムの巨体を見上げた。


『まあ俺の知る限り、修行で自身を高めようとする物好きなドラゴンなどこいつぐらいのものだがな』


「かっかっかっ。まあ確かに少数派であることは否めんな」


 巨大な口を開けて愉快そうに笑うリンドブルム。なんだかいい人そうだな。ドラゴンだけど…。


『ところでリンドブルム。お前さっき相棒の力を珍しいと言っていたが、あれはどういう意味だ?』


 ああ、そうだそうだ。このドラゴンさんさっきそんなこと言ってたな。俺の力が珍しいって。


「む?ああ、そうじゃったな。なに実はな、昔あったことがあるんじゃ。お主と同じ力を持っていた者にの」


 な、なんだって!?リンドブルムの言葉に俺は心底驚いた。俺と同じ力を持つ人にあったことがある。確かにリンドブルムはそう言った。


『そ、それは本当か!?リンドブルム!』


 ドライグも驚いている様子だ。


「ああ。本当じゃとも。誓って嘘ではない」


 首肯するリンドブルム。その真剣な表情からは嘘をいっているような感じはしない。…ってことは……本当の本当に?


「あ、あの…リンドブルム…さん?その話、詳しく聞かせてもらえませんか?」


「うむ。聞きたいというならば、話してやろう」


 俺の要求を快く聞き入れてくれたリンドブルムはつらつらと話し始める。


「あれはそう、もう200年くらい前じゃったかのう?わしは一人の男と出会った。その男は魔力ともオーラとも違う不可思議な光を身に纏い絶大なまでの力を振るっておった。その力はたった一人で万の大軍を圧倒するほどじゃった」


 たった一人で万の大軍を圧倒って……。やっぱりその人が使っていたのは―――


「実はその男も神器の使い手での。龍夜よ、お主と同じドラゴンの力を宿した神器じゃった」


 俺と同じ力を持ってて、その上俺と同じドラゴンの神器の持ち主だったって!?


「じゃがその力のことについては、男も詳しくは分かっておらんかったようじゃ。ただ男はその力のことをこう呼んでいた。―――『龍通力(ドラゴン・フォース)』と」


「『龍通力(ドラゴン・フォース)』」


 俺はリンドブルムから教えられた力の名前を口にする。龍に通じる力か。なるほど、もしかしたらその通りなのかもしれないな。


「それでその男の力に興味を持ったわしは、男に弟子入りを志願しての。男が龍通力(ドラゴン・フォース)を使って編み出した闘技を伝授してもらったのじゃ!」


 得意そうに胸を張るリンドブルム。ってか、ドラゴンが弟子入りって……。


『はあ。本当に物好きな奴だな。修行オタクめ』


 ドライグも呆れていた。ホント、修行オタクなドラゴンだよな。


「かっかっかっ。ところで龍夜よ、話は変わるが」


 と、急にリンドブルムは真面目な顔をして俺を見た。


「…はい?何ですか?」


「お主…わしの弟子になる気はないか?」


 …え?で、弟子?


 突然のリンドブルムの言葉に俺の思考は数秒間フリーズした。その後―――


「え、えええぇぇぇえええええッッッ!!?で、弟子ぃっ!?お、俺が!?あんたの!?」


 俺は絶叫し自分を指さしてそれからリンドブルムを指した。


「うむ」


 しっかりと頷くリンドブルムに俺は開いた口が塞がらなくなっていた。


 ちょ、ちょっとまて。ちょっとまてぇ!!なんで俺いきなり弟子入りを訊ねられてんの!?しかもこんなメチャクチャ強そうなドラゴンから!!なんなんだこれ?なんなんだよこの状況!?さっきからもう分けが分からないんですけど!!ちょっと誰か説明して!!


「どうじゃ?」


 首を傾げながら再度訊ねるリンドブルム。


「い、いや、如何と訊かれても。そもそも何故俺を弟子に?」


 そうだ。何故いきなり出会ったばかりの俺を弟子にしたがるのか。そこが気になった。するとリンドブルムは腕組みをして唸る。


「む?お主を弟子にしたがる理由か?う~む、そうじゃのう。しいて言うならば……もう一度見たいからかもしれんのう」


 ふいにリンドブルムは遠い目をする。


「見たい?…何を?」


「あの男が生み出した闘技。『煌龍真闘技』。その真なる姿をじゃ。わしはあ奴からその闘技を教わりはしたが、龍通力(ドラゴン・フォース)を持たぬわしでは、やはりあの男と同じような真似はできんかった。じゃがしかし、お主なら、あの男と同じ龍通力(ドラゴン・フォース)を持つお主ならば、真なる『煌龍真闘技』をもう一度わしに見せてくれるやもしれぬと…そう思ったのじゃ。ふふっ、まあ詰まるところ、全てわしの我儘じゃよ」


 そう言いつつ、自嘲の笑みを浮かべるリンドブルム。俺は何も言わず黙ってそれを見ていた。


「あの男と同じ力をもっているというだけで、なんの関わりもないお主をわしの身勝手に巻き込もうなど、許せれることではないと思っている。じゃがそれでも、それでもわしは…どうしても諦めきれぬのじゃよ。あの華麗にして苛烈なる闘法。天を穿ち、大地を両断する絶技。幾多もの(つわもの)を薙ぎ払い、幾多もの魔物を屠り去った、あのこの世で最強の闘技の真の姿を、もう一度この眼に焼き付けたい。そんな阿呆らしい望みが、どうしても捨てきれぬのじゃよ」


 リンドブルムの言葉に俺は切実なまでの思いを感じた。そこまでリンドブルムはその闘技を思っているんだと。


「それにの。あの男が心血を注いで作り出した技術をこのまま誰にも伝えず闇に葬ってしまうのは悲しい。受け継いでくれる者が欲しいと思うのもある。お主ならば、この力を間違った方向には使わぬであろうと、思っておるしの」


「それは…どうして?」


 そう訊くとリンドブルムは俺の目をじいっと見つめた。


「目じゃよ。お主はとても澄んだ目をしておる。純粋で真っ直ぐ。そして自分の信念のためなら如何なるものも恐れぬ意思を感じる。それもお主を選んだ理由じゃよ」


 ニッと笑うリンドブルムの言葉に顔が熱くなるのを感じて逸らしてしまった。


「それにお主とて、自分の力を制御する方法を知っておいた方が何かと都合が良いじゃろう?わしならば微力ながらその手伝いが出来ると思うが?」


 ―――ッ!!その言葉にハッとする俺。確かにリンドブルムの言うとおりかもしれない。


『それには俺も賛成だ。ドラゴンの力については、ドラゴンに教えを乞うのが一番だからな』


 ドライグも賛同してくれる。そうだな。だったら、答えは一つだ。


「わかったよ、リンドブルム。あんたの望みを叶えられるかどうか分からないけど、俺もこの力をちゃんと使いこなしたい。この力で俺の大切なものを守るために。だから俺に力を貸してくれ!!」


「うむ!!その心意気、天晴れなり!!やはりわしの目に狂いはなかった。今代の赤龍帝はナリは小さくとも見事な信念をもっておる。良き宿主に巡り合えたな、ドライグよ!」


『ああ。俺もそう思う』


「では今日よりお主はわしの弟子だ。わしの修行は厳しいぞ。後悔するなよ?」


「はいっ!よろしくお願いします、師匠!!」


 こうして、俺は伝説のドラゴン、リンドブルムに弟子入りすることになった。










 余談


「ところでお主、さっきから気になっておったのじゃが、可愛らしい見た目の割に随分と男勝りな性格じゃの?」


「あの師匠、男勝りも何も……俺は男です」


「なぬぅっ!?」


 ドラゴンにまで間違われるって……とほほ。 
 

 
後書き
 いかがでしたでしょうか。

 次回をお楽しみに。


 感想、お待ちしています。 
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