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とある碧空の暴風族(ストームライダー)

作者:七の名
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常盤台中学襲撃事件
  Trick35_信乃にーちゃんは何してるのよ!




位置外(いちがい) (みず)。愛称はつーちゃん。

小烏丸(こがらすまる)≫に所属する彼女の得意分野は、情報技術、作戦立案と指揮。

そして、この得意分野を持っている人に共通しやすい特殊能力、
運動音痴も彼女には備わっていた。

A・T(エア・トレック)を使っている≪小烏丸≫で、
自身もA・Tを持っているにも関わらず、彼女は走る(ラン)すらまともにできない。

本当のインラインスケートと同じレベルでしか乗れないのだ。

信乃も、彼女には例外でA・Tを作っていない。
彼女がA・Tを履く身体能力と、飛びたいという意欲が無いからである。

A・Tを渡さない裏の理由としては、信乃は位置外水を苦手としているからだ。
実家ぐるみで信乃を婿養子、または実家が治めている機関の幹部代表にしようとを
目論んでいる。それを必死に否定しているが水も実家も諦めてはいない。

A・T使い(ライダー)としても関わりが薄く、
人間的にも苦手とする位置外水を、信乃は≪小烏丸≫として受け入れているのは
意外であり、異常なのだ。

しかし、これには信乃なりの理由があった。

このマイナスをプラスに変える程の価値を位置外水が持っているからだ。

それが得意分野。

この得意分野は“得意”の枠には留まらず、もはや“特化”または“進化”の方が適切だ。
信乃のA・Tを見よう見真似で再現して自分のA・Tを作る程の能力。

A・Tを作る技術だけでなく他の得意分野も、もちろんずば抜けている。


その得意分野を使って彼女は現在、世界最高峰のセキュリティが掛かっている
学園都市のコンピュータの一部を掌握して常盤台中学の監視をしていた。


****************************************


「A地区、異常なし」

一人しかいない部屋で呟く位置外 水。

ただ、現在はコンピュータを操作している状態な為、いつもの人見知りの話し方ではなく
どちらかと言えばスピーカー越しにしゃべっていた威圧的なものに近かった。

一部の人間は、彼女の母親に倣って今の彼女を≪(あお)モード≫と呼んでいる。


その目には壁一面の設置された5×5、つまり25にも及ぶディスプレイを捉えていた。

内容は常盤台がある学舎の園の全ての監視カメラが代わる代わる写っている。
しかも1つのディスプレイには5つ以上のウィンドウがあった。

つまり、最低でも125台のカメラをリアルタイムで操作、監視、判断を行っている。

「Z地区異常なし。引き続きA地区へ。  S地区に異常あり」

異常ありと言ってるいるが先程と口調は全く変わらない。
人が聞いていれば聞き逃した可能性が高い、起伏の無い話し方だった。

キーボードを叩き、同時に3人の携帯電話に連絡を入れる。

「S地区内倉庫に複数の平民(にんげん)が集合。要注意人物として・・・

 訂正。“武装した”愚民(にんげん)が複数、軍用トラックに乗り込んで倉庫を出発。
 進行方向上にある施設で該当するのは常盤台中学校。ただちに敵襲に備えろ」

『『『!? 了解!!』』』

「移動後に連絡をしろ。新たな命令を与えてやる」

『つーちゃ、いや、位置外 水、話したいことがある』

「なんだ? ・・・・・分かった、連絡を入れる。
 お前は特に早めに戻ってこい」

連絡後、ディスプレイ上の画面が目まぐるしく変わっていったが、
位置外本人としては何事もなかったかのように、変わらずに画面を操作しているだけだった。




****************************************



 数分前


「ありがとうございます。そんな特殊な材質をわざわざ極東の地にまで運んでもらって」

「気にすることはないよ少年。しかし、こんな材質を使うなんて今修理している
 職人ってのは相当な腕の持ち主だね。もしくは変わり者だ」

「あはははは・・・そうですね」

学園都市の外部と内部とを結ぶ専用ゲート。西折 信乃はそこに来ていた。

常盤台中学の校舎修復に使う材料を、ゲートに取りに来ていた。

特殊な材質ということで、入手するルートも限られている。
信乃が現在話しているのは、そういった材質を扱っているヨーロッパの企業の運び人。

ただ、相手は信乃が職人の弟子で、遣いパシリとしてここにいると勘違いしているようだ。
その職人を過大評価しているので、恥ずかしくて「修理人は自分です」とは言えずに
苦笑いで肯定するしかなかった。

「それにしても俺は初めて学園都市に配達に来たが、大げさな検査だな。
 運んできたのはただの石なのに、あんな特殊な機械で調べる必要があるのかね?」

しゃべっているのは日本語。相手は世界各地を相手にする企業のためにバイリンガル、
もしくはそれ以上の優秀な人のようだった。

学園都市の出入りは厳重に管理されている。もちろん、物でも同じ。

運び屋がぼやいた検査は、まるで地雷探知をしているかのような機器で
持ってきた複数の材質(鉱石など)を調べ、さらに別の機械でも調べている。

今は4つ目の機械を使っている。話しによれば合計10回の検査をするそうだ。

確かに厳重すぎる。知っていた信乃はそれほどでもなかったが、
初めて見たという運び屋の男にとってはかなりの驚きだっただろう。

「本当にすごいですね。私もびっくりしてます(嘘)。

 ですが、配達のサインは完了したので仕事の方はここまでで結構ですよ。
 配達先も、ここのゲートとなっているので都市内部まで運ばなくても大丈夫です」

「そりゃ良かった。このままだったら俺は暇すぎて眠ってたな。
 それじゃ少年、君の師匠によろしく言っといてくれ。今後もご贔屓に頼むって」

「わかりました。“修理の”師匠にもよろしく言っておきます。
 本当にありがとうございました」

持ってきた材料を必要とする修理員によろしくではなく、
信乃の修理の師匠(?)マリオにお願いしているので、表面上は快く了解した。





運び人も帰り、検査が終わるまで待合室でのんびりとしていた信乃に
電話が掛かってきた。

着信は位置外水。

「もし『S地区内倉庫に複数の平民(にんげん)が集合。要注意人物として・・・

 訂正。“武装した”愚民(にんげん)が複数、軍用トラックに乗り込んで倉庫を出発。
 進行方向上にある施設で該当するのは常盤台中学校。ただちに敵襲に備えろ』

 !? 了解!!」

すでに待合室から出て、人目の少ない近くの路地に走り始めていた。

「つーちゃ、いや、位置外 水、話したいことがある」

スピーカー越し、または機械を操作している彼女は≪(あお)モード≫になっていることを
信乃は知っていた。だからフルネームに言い直した。

『なんだ?』

話をしながらも人目が無いことを確認し、背中に隠し持っていたA・Tケースから
中身を取り出して足に装着する。

「常盤台にいる、“表向き”の警備員にも連絡を。
 出来れば御坂さんと白井さんにも連絡を入れてください。

 もちろん、戦いになっても無理をせずに時間稼ぎに専念するように
 きつく言ってください。彼女たちだって守る対象です。

 本当であれば戦わせたくないんですが、背は腹に変えられません。
 私が常盤台から離れてしまったばかりに・・・」

『分かった、連絡を入れる。お前は特に早めに戻ってこい』

 ブツッ   プープープー

一方的に電話を切られたが、今の彼女の態度からは普通の行動だった。
なんせ佐天が言っていた通り、高飛車な人と表現もできる≪蒼モード≫なのだ。

常盤台中学校が襲われて、裏では≪小烏丸≫が作られたが、もちろん表向きにも
何も行動しなかったわけではない。

女子校のため警備員(ほとんど男のため)は配備していなかった。

だが、発生した問題が今までにないこと。生徒の命を優先して
常盤台中学理事長が自己判断で学園統括理事会に申請し、常時3人の
防弾チョッキ、警棒、ゴム弾装填銃を装備した警備員を配備することになった。

正直に言えば、警備員は時間稼ぎにしかならないと信乃達は思っている。
さらに本音を言えば、勝てない戦いのなので逃げて欲しい。

だが、そうすれば怪我をするのは生徒たちだ。
なんの戦い手段を持たない子供たち。超能力のレベルが高いといっても戦いとなれば別。

優先すべきは無防備な女生徒たちだ。



装着し終わったA・Tを使って路地の壁を登り、建物の屋上へ。

そして火柱を上げながら、地図上で見れば文字通り一直線で常盤台へと向かって行った。


****************************************


プルルルル、プルルルル

「はい、こちら常盤台中学警備室です」

『匿名の電話だ。今から常盤台中学に不審車両が向かっている。
 信じられないかもしれないが、一応動くだけ動いた方が良い』

「な、なんだって!? あんたは一体だれ」ブツッ「 ・・・電話が切れた?」

「どうしたんだ?」

「いや、ここに不審車両が向かってくるっている匿名電話が・・・・
 誰だか聞く前に電話を切られちまった。でも女の子の声っぽかったけど」

「なんだそれ? イタズラだろ」

「でも警戒を少しだけ高めてもいいじゃないか?
 もし本当だったら後手後手になるし」

「それもそうだな。一応校門を閉めておくか。車とかで来られても。少しは防げるし」

3人の警備員は半信半疑ながらも、プロ意識として行動に出た。





電話がかかってきてから数分後、3人の警備員は校門に鍵を入れていた。

「これでよし」

「こっちも裏門の方も閉めてきた。2人とも装備は大丈夫だな」

「もちろんだ。ゴム弾の装填と、スタン警棒のバッテリーも大丈夫だ」

「俺も同じく大丈夫。ま、どうせイタズラだろうがな。

 ん? 車の音? なんだあのごついトラックは!?」

見えてきたのは大型トラック。深緑色をしている車は、テレビで放送される
軍隊が使用しているものと同じ。荷台には複数の人、もしくは兵器が乗っているだろう。

「まさかあれが不審車両!? やばい! あんなのなら校門をぶち壊せる!!
 おまえ、部屋に戻って外部に連絡を! 俺ら2人で食い止めるから!!」

「わ、わかった!」

トラックはどうやって学舎の園に入ったのかさえ疑うほどの大きさをしていた。
あの大きさであれば、たかが鉄でできた門など紙くずに等しいだろう。



****************************************



ブブブブ

(ん? 携帯の着信?)

警備員に電話をしていた同時刻。
授業中に御坂美琴のマナーモードの携帯電話が震えた。

電話には出るつもりはないが誰から来たのか気になり、
周りに気付かれないように開き、内容を確認する。

(あれ? 位置外さんからメールだわ)

一応優等生で優秀性の御坂は、普段であれば送り主を確認しただけで
携帯電話をしまっていただろう。

だが、メールの主は位置外 水。≪小烏丸≫関係で緊急な用事かもしれないと思い、
メールの内容を確認する。

そして御坂の考えは当たっていた。

(!? 不審者が来るから時間稼ぎしろって!? 冗談じゃないわ! 私が倒す!
 でも、その前に先生に知らせて皆の避難をさせないと!)

「あ、あの、先生」

携帯電話を仕舞い、授業妨害に少し躊躇しながらも手を挙げて中断させる。

「どうしたんですか? 御坂さん」

「ちょっと先生に相談したいことが!」

「今は授業中ですよ。後にしてください」

「ですが、ほんの少しでいいんです! 廊下に来てください!」

教師の返事を待たずに、走るようにして外に出た。

御坂の行動に教室がざわつく中、教師は仕方ないように廊下に出た。

「それでどうしたんです?」

「すみません。実は緊急の用事が出来たんです!」

声をひそませて言っているが、それでも御坂からは焦りを感じさせた。

「そうですか。しかし授業を抜けることを許可すると思っているんですか?」

御坂が言っていることを冗談半分で(もしくは完全に冗談として)受け取り、軽く返す。

「本当ですよ! それにもしかしたら生徒を緊急避難させないといけないかも
 しれません!」

「・・・それはどういうことです?」

「この前、常盤台(ここ)に侵入してきた男たちがいたじゃないですか?
 また襲ってきたときのための警備員と知り合いなんです!
 その人から連絡があって!」

「なるほど、事情は分かりました。ですが念には念を入れて今から確認をとってみます。
 全生徒の授業を止めて間違いでした、では済みませんからね」

「でも! 生徒に被害が出てからじゃ!」

「御坂さん。あなたは優秀な生徒で我々教師も信頼はしています。

 しかし、これほどの事ですとすぐには信じられませんし、警備員に連絡すれば
 すぐにわかることです。

 御坂さんは教室に戻って待っていてください。避難が必要な場合はあなたも一緒です」

「私は助けに行かないといけないんです!」

「あなたはもう・・・」


 ガッシャン!!!


何か、鉄が折れ曲がったような音が響いた。

外を見ずに話しあっていた2人には分からなかったが、それはトラックが門を
突き破る音だった。

「今の音は?」

「まさか!?」

疑問に思ったのは教師、しかしメールで敵の来訪を知らされていた御坂には
音の原因が不明にしても、それが強襲のものであると判断した。

急いで教室に入り、窓から門を見る。

そこにはトラックがグラウンドを横切って自分たちがいる校舎の入り口に前に
後輪を滑らせながら到着した瞬間だった。

そして校門の方から走ってトラックに向かい警備員。

 ズガガガガガガガ!!!

だが、荷台から降りた男の銃撃を受けてすぐに建物の影に警備員は隠れた。

「な、なによこれ?」

目の前の光景に御坂は戸惑っていた。

戦いがあるから覚悟をしていた、つもりだった。

前に襲ってきた男は、拳銃で白井を撃ち殺そうとした事以外は正々堂々と
戦いを挑んでいた。ように一応は見えた。御坂は少なからずそう認識していた。

だから今回は、前よりも強い奴が複数人で向かってくる。そう思っていた。

しかし、これは明らかに戦闘、いや戦争と思えるほどの手際の良さ。
躊躇いなく人を“壊せる”兵器を自分たちの学校で吠えさせる。

御坂を含めて、窓際にいた生徒全員が固まってみているだけだった。



時間にして1分も満たない、御坂が停止していたのは短い。
それでも軍隊の制圧行動には1分で十分だった。

なにより、御坂が我を取り戻したのは自分からではなく、廊下から聞こえる
重苦しい足音を聞いてからだった。

「動くな!!」

「「「キャーーーー!!!」」」

教室に入ってきたのはトラックから降りてきたであろう男2人。

いや、男であるかの確証はない。彼らは駆動鎧(パワードスーツ)を装着していた。

全身装甲で装着者の肌は一切見えない。顔も隠れていてどのような表情かすらも
わからない。

「なんなのよ! あんたたち!!」

停止から戻った御坂はすぐに電撃を飛ばして男たちを攻撃する。

直撃、2人はその場で倒れ伏す。

それが御坂が予想していた結果だった。

直撃まではいい。だが、直撃しても男たちは倒れることはなく、
銃を持っていない左腕を前に防御するように出して立っていた。

「効いてない!?」

「びっくりさせやがって・・・・・こちらは常盤台に攻め込んできてんだ。
 対策はしてあるぜ、≪常盤台の超電磁砲(レールガン)≫様よ」

「っ!?」

男たちが装着している駆動鎧には防電仕様になっていたために
御坂の電撃は通用しなかった。

「この前の筋肉男といい、なんで電撃対策ばっかり!」

「当然だろう」

ゆっくりと御坂に近付いてくる。それを防ぐために電撃を飛ばすが結果は出なかった。

困惑から首へと伸ばされる手に反応が遅れ、易々と捕まってしまう。

「くるしっ! 離し・・なさい・・・!」

「離せと言われて離すバカがいるかよ。一番やっかいなお前を黙らせれば
 後の仕事は楽になる。安心しろ、殺しはしないぜ」

窓から上半身を外に出すように首を絞める。

首を絞められて脳に酸素が行かなくなれば数秒で意識を失う。

だが、駆動鎧で強化された握力だと簡単に人を殺せる。
操作している男もそれは承知のようで、ゆっくりと御坂の首を絞めていた。
真綿で絞め殺すかのようにゆっくりと。

周りにいる生徒、さっきまで話していた教師も、あまり事に腰を抜かして
助けるどころか話しかける人は一人もいなかった。

意識を失う前に、御坂は必死でどうにかできないか考えた。

そして視界の端に見えたのは校庭の隅にある花壇。
窓から上半身を出している今は、花壇は御坂の真下にある。

花壇、土、そして次に連想したのは・・・・

「こ、これなら・・・」

酸欠の朦朧とする頭で演算し、花壇に電気を伸ばす。

御坂の手に集まったのは、花壇の土に含まれる砂鉄。
それを微振動させて男の肩に向けて振り下ろした。

「うぉ!?」

不意を突いた攻撃だったが、とっさに御坂の首から手を離して身を引いて避けられる。
砂鉄の剣は駆動鎧の左肩部表面だけを切り裂いただけで、中の男は無傷だった。

「びっくりさせやがって」

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

ようやく自由に呼吸ができるようになり息を整える御坂。

「はぁ・・あんたたちの・・はぁ・・・目的は・・・一体何なのよ!?」

「さぁな? 俺達は依頼を受けてお前らの自由を奪うだけだ。
 お前らが殺されようが、どんな実験に使われようが、“女”として“使われ”ようが
 俺らの知ったことじゃない。

 さすがの俺もガキの体には興味が無いからな」

今の言葉で御坂は気付いた。常盤台中学という組織が狙われたというよりも
“高レベル能力者が多数いる学校”として狙われていることに。

だから“実験”という言葉を男は言ったのだろう。詳しくは知らなくとも依頼人から
常盤台を狙う経緯を少しだけ聞いていれば雇われ身分の男でも気付き、そう口走った。

御坂も幻想御手(レベルアッパー)事件を通して、学園都市に人体実験があることを
知った。だから絶対にあり得ないとは思えなかった。

だが、常盤台中学は日本で有名な学園都市の中でも5本指に入る名門。
襲われたとなれば学園都市だけでなく日本中に、もしかしたら世界中にニュースが飛ぶ。

高レベル能力者を実験に使えるハイリターンよりも
世界規模で犯罪者となるリスクの方が、誰がどう考えてもスーパーハイの危険だ。

「おい! しゃべってないでさっさと黙らせろ! この教室で戦闘向きの
 能力者はこいつぐらいだ!」

御坂が思考中に別の男の声が聞こえた。

御坂を襲っていた奴とは別の男、入ってきてからずっと生徒たちに銃を向けて
威嚇している男が急かすように言う。

「わかってるよ。そんじゃ超電磁砲、眠ってもらうか」

もう一度首を絞めるためにゆっくりと近づく。

御坂達、生徒は商品。依頼人に言われて傷ができるだけつかないように
丁寧に捕獲する。

「その駆動鎧、防電仕様なのよね?」

「おう、だから諦めな」

さらに数歩近づいてくる。

「でもさ、防電仕様って言っても全てのパーツがそういうわけじゃないでしょ?
 機械なんて電気がなければ動かないわけだし。
 それならどれが防電の役割をしてると思う?

 私はね・・・その表面の金属があやしいと思ってるのよ!

 でも今は傷が付いていて完全には防げないんじゃないの!!?」

駆動鎧の表面に防電がされていれば中の機械は通常の駆動鎧のままで問題ない。
まさか御坂の事だけを考えてフルオーダーの駆動鎧のはずがない。

ならば一番怪しいのは表面。絶縁コーティングをしていれば簡単で安くすむ。

そして、対策がしてあるであろう表面も、砂鉄の剣で傷が入り隙ができた。

「そこに電撃を入れたら!!!」

三度雷光が迸る。ピンポイントで男に切りつけた左肩を狙って。

「残念だな。外れだよ」

御坂の電撃は男の前で阻まれたように四散した。

「こいつは電撃を反らす能力を参考にして作った、
 対 電撃使い(エレクトロマスター)の装備だ」

反らされる電撃の中心では、駆動鎧で表情は見えないが間違いなく笑っているであろう
嬉々とした声でベルト部分にある装置を指さしながら説明する男がいた。

1度目の電撃も2度目の電撃も、気が動転していて電撃を防がれた様子をよく見ていない。

だか今回は間近で、自分の3メートル手前でそれを視認した。
その反らされ方は御坂は何度か見ているものと同じだった。

「どうだ? 自分の力が通用しない無力感は? ははははは!」

「ほんと、残念ね。表面に絶縁加工でもしてれば、切りつけた後に攻撃するっている
 手間を私に掛けることができたのに・・・・」

「あん? 意味わかんねぇよ?」

「あんた、この前襲ってきた奴の仲間か、もしくは同じ奴に雇われたんでしょ?
 だったら報告を受けてないの?」

「だから意味がわかんねぇよ? 頭イカれてんのか?」

「イカれてるのはあんたの方よ。

 最近、普通に電気が効かないやつばっかりよね。

 無力化するは、人の電気は反らすわ。しかも反らすのは2人もいたし。
 あ、化物も含めたら2人と1体か」

無力化はもちろん上条当麻。
反らしたのは木山春生と前回の強襲筋肉男、そしてAIMバースト。

今までの経験から表面の絶縁加工で防いでいるのでなければ、この方法だと考えていた。
そう、ある波長の電撃を弾いて反らせる能力、木山春見達と同じだ。

「木山先生と同じ能力なら問題ないわね」

一度目を閉じ、イメージをして、それに合わせて演算をする。

「くらいなさい!!!」

飛びだしたのは七色の電撃。

それが今までと同じように駆動鎧に向かって突き進む。

「ぐぎゃあああああぁ!?」

だが結果だけは違った。いや、この前と同じだった。7色の電撃の3色は弾かれても
残りの4色が容赦なく男に襲いかかる。

そして大量の電撃が止むと黒い煙を上げた。

 ボスン

軌道よりのベルト部分にあった装置、体電撃使いの装備は爆竹程度の音を立る。
そして、駆動鎧が大きな音を立てて床に倒れた。

「な、なにが!? どうなって「あんたもくらいなさい!!!」 ぐらぴっ!?」

教室の生徒に銃を向けていたもう一人の男も同じ技で床に沈める。

「よかったわよ、電撃を弾いて反らす能力で。
 絶縁だったら切りつけた後に電気出さないと行けなくて面倒臭いと思ったのよね。

 痛ッ!?」

御坂は微かな頭痛を感じて頭を押さえた。

信乃に言われて使った時は、簡単にできてそれほど苦痛はなかった。
しかし、なぜか今は能力を酷使したとき特有の頭痛がある。

「もしかして信乃にーちゃんに言われてからイメージしたから成功しやすかった?
 どうなってるのよ、まったく。

 それに信乃にーちゃんは何してるのよ! 早く解決しなさいよ!!」

不在を知らされていない御坂は、怒りの矛先を勝手に信乃に向けて叫んだ。



つづく
 
 

 
後書き
最近、執筆のモチベーションを保つのが難しい。

信乃の過去編と妹達編を並行して書いているけど、どこかテンションが上がらずに適当に書いている気分になっています。これじゃあいけないですね。どうにかしないとな~


作中で不明、疑問などありましたらご連絡ください。
後書き、または補足話の投稿などでお答えします。

皆様の生温かい感想をお待ちしています。
誤字脱字がありましたら教えて頂くと嬉しいです。 
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