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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──

作者:なべさん
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ALO
~妖精郷と魔法の歌劇~
  そして、英雄達は殺し合う

ゴゴゴ、と土煙がゆっくりと晴れていく。

(げき)を持っている右手を油断なく向けながら、左手で口元を覆いつつ、リョロウは人間ほどもある太さの枝々を忍者のように伝ってきたセイに言う。

「やれて………ないよな」

それに、セイは気のせいかどこか引き攣ったような笑みを顔に貼り付けながら、肩をすくめた。

「当然、そうだろうね。彼、キミの一撃を喰らう寸前に密着してた僕を盾にしたんだ。まぁ、彼の筋力値じゃ僕をずらすくらいしかできなかったけどね。それに加えて、自分から後ろに全力で飛んで威力を殺してた。…………さすがは《冥王》だね。あの一瞬であそこまで行動できるなんて、熟練の軍隊員でも難しいんじゃないかな」

「だろうね。………どうだい、セイ君。彼の速さは」

ちらりと視線を向けると、セイは無言で左手を上げた。

つられたようにリョロウがそちらを見ると、ぎょっとした。

薄手のノースリーブジャケットのおかげで、皮膚が派手に露出しているそこは、幾つもの切り傷が付いていてそこから溢れ出した血によって真っ赤になっていた。

一つ一つの傷はそれほど深くはないようだが、しかしその数が凄まじい。結果、肘の辺りから血の雫が垂れるほどの出血量になっているようだ。

「いやはや……、バケモノの一言だね。僕も結構早い部類だと思ってたんだけど、あれを見たらプライドがズタズタになっちゃうね」

内容のシリアスぶりと真反対に、たははと笑いながらセイは言う。

「ふむ………、勝てると思うかい?」

「あれが全盛期だったら、まず間違いなく無理だったろうね。だけど────」

スッと表情をにわかに厳しくし、セイは呟くように言い放つ。

「残り数週間などという死に損ないだったら、僕の相手じゃない」

「…………やっぱり、動きが重いかい?」

「加えて集中力も、ね。どちらにせよ、今の彼は《六王》の第三席、《冥界の覇王》じゃない。ただのソレの成れの果てさ」

「…………………………………」

黙り込んだリョロウ。その顔には、様々な感情がこれでもかと言うほどに渦巻いている。

それを覗き込み、セイは何でもないことのようにさらりと言う。

「……君の言いたいことは分かるよ、リョロウ。病人を二人がかりで追い詰めることだろう?そして、他に解決策はないのか…………。違うかい?」

「………相変わらずだな、セイ君」

力ない笑みを顔に浮かべ、リョロウはう~んと背伸びをする。

「まぁ、我ながら情けないことだとは思うさ。こんなことを思っていたら、今のレン君にさえ殺されてしまう」

「それは、リョロウにココロが戻ってきてる証拠じゃないの?」

「ココロ?」

「うん。レンキさんやカガミちゃんと一緒になって、リョロウは変わった。悪いほうじゃなくて、とびっきりに良いほうにね」

そんな言葉を儚げに言って、セイは儚く笑った。

「彼は、レン君はココロを取り戻そうとしてる。それはいいことだと思うけど、そのやり方は決してやってはいけないことだ。今の彼のやり方だと、誰もが不幸せになってしまう。それは絶対に避けなくてはいけないことだと、僕は思うな」

「………………………………」

再び沈黙が場を支配する。

二人の前方の茂みが、風も吹いていないのにガサリと揺れる。

そこから葉を掻き分けて現れるのは、瘴気のような漆黒の霧を身に纏う《冥王》の成れの果てにして、ヒトとして擦り切れ、ボロボロになったモノ。

「さぁ、彼を、彼に関わるすべての存在を救おう」

セイが言う。それに《宵闇の軍神》と呼ばれた男は────

「………あぁ」

答えた。










「………やるッスね」

激しい風の激突の余波で不安定になっている気流のど真ん中で、《夕闇の瞬神》ウィルは静かに口を開いた。

その両手には、もう次弾のクナイが収められている。

「まさか爆風で風を相殺するとは、さすがの俺でも思わなかったッス」

その呟きを聞き届けたかのように、風が横薙ぎに振り払われた。

その向こうから現れるは、純白の白衣(びゃくえ)、緋色の緋袴(ひばかま)、そして────

灼熱の炎のごとき過剰光を刀身に纏わせ、もともと長かった刀身を倍近く肥大化させた大太刀を構えたカグラだった。

太刀から放出される熱気による膨大な上昇気流の影響か、緋袴がバタバタとはためかされている。

「《煉王聖火(れんおうせいか)》」

「……心意技ッスか。さすがはレン君の隣に並んでることはある」

「私も驚きました。まさか【神聖爵連盟】に《付与効果師(エンチャンター)》がいるとは。あれは全ての心意属性を会得せずにはできないものですからね」

カグラの言葉に、ハッハッハッ、とウィルは屈託なく笑う。

「そんな大層なモンじゃないッスよ、これは。確かに俺は全心意属性を扱えるッスが、結果的に質も量も中途半端。手数も威力もそこそこなモンになっちまったんスよ」

「ほう。しかし、練度はかなりの物だと見ましたが」

顔を一ミリも動かさずに放ったカグラの言葉に、ウィルはひょいっと肩をすくめた。次いで、へらっと笑う。

「お世辞と思って受け取っとくッスよ。さて────」

刹那。

ヴン、と空気が振動するような音とともにウィルの手が煙るように動いた。そこから放たれる左右合わせて十の鉄の塊。

会話中というのは、内容に集中力を裂かねばならないので、戦闘中でも分かりやすい隙だ。

加えて────

五行輝鉄為(ごぎょうのかがやきはてつをなし)全武具意思持(すべてのぶぐはいしをもたん)ッッ!」

十のクナイ全てに過剰光が集まり、ミサイルのような輝きになる。

それを迎撃せんと、カグラは己の心意技で巨大化した大太刀、固有銘《冬桜(とうおう)》を振るう。

しかし、ミサイルのようになったクナイ達は意思を持っているかのように、カグラの太刀の射程(リーチ)ギリギリのところで軌道を変える。

「──────ッッ!!な…………ッ!」

飛び回る羽虫のように周囲を旋回するクナイを、カグラは狼狽しながらも一つずつ確実に叩き潰さんと冬桜を振るう。

心意技《煉王聖火》の属性は《真空生成》。

刀身が通り過ぎた座標上、そしてその周囲の気流を半強制的にかき乱す。

周囲を、カグラの隙を窺うかのように旋回していたクナイは、弾かれたように軌道が頼りなくなりカグラに一閃された。

しかし、その隙に接近していたウィルが新たに手の中に出したクナイをクロスするように振るう。

刀身から漏れでた過剰光が、宙空に綺麗なバッテンを作り出す。それをカグラは身を屈めるようにして回避。だが────

和鉄鍛(わはてつをきたえ)其鋼造(そははがねをつくらん)ッ」

避けたカグラの頭上。

通り過ぎようとしていたクナイの刀身が突如として、グニャリと曲がった。

切っ先が向けられたのは、やはりというか、カグラがいる真下。しかも身を屈めているせいで、急所である天頂が隙だらけである。

そして、グニャリとスプーン曲げのように曲がっているクナイが今度は、伸びた。

まるで西遊記の主人公の持っている武器の如く、何の予備動作もなく、投擲でもなく、唐突に刀身だけが伸びたのだ。

「くっッ──────ッ!」

カグラは必死に首を捻り、急所である頭部への被弾を防ごうとする。

幸いにも鈍色の刀身は耳を浅く切り裂いただけで通過した。しかし、さすがに完全なる回避(イベイド)はできず、無防備な左肩に鈍い音とともに突き刺さった。

途端に、左肩を中心に灼熱の熱感が吹き荒れる。

よ湧き上がる激痛に顔をしかめながらも、カグラは接近を嫌って牽制の意味合いで冬桜を振るう。

しかし、大振りなモーションで振るわれたそれはあっさりと避けられ、ウィルはそこから更に翅を震わせて懐に飛び込んでくる。

それを見、カグラは胸中で激しくいぶかしむ。

ウィルは先刻、クナイを振るった。そのため、現在は振るったままの体勢のはずだ。

いくら強い者でも、手足が触手みたいなものでもない限りは、この短時間で硬直時間がとけるわけがない。

武器を大振りにすればするほど、当然ながらその後の反動も高くなる。逆に、隙を少なくしようとコンパクトな攻撃ばかりになると、相手に付け入る反撃のチャンスを多く与えてしまうことになってしまう。

技後硬直時間とは、武器を持ったもの全員が抱える最大のジレンマなのだから。

そう思っていたからこそ、カグラは振り下ろされてくる拳が空っぽなのを見て安堵した。なるほど、空中でクナイを捨てたのならば、技後硬直時間など無視できる。

普通ならば絶対にできない発想の仕方だ。

戦闘中での武器の有無は、大きく勝敗を分ける。それこそテオドラのような例外を除き、体術とはあくまでも主武器(メインアーム)の補助的な役割なのだ。

───ここで体術にもつれ込ませる腹ですか……。しかし、一歩考えが及びませんでしたね。

やっとのことで見出せた勝機に、カグラの口角が持ち上がる。

負傷したのが左肩で良かった。

利き腕のほうの右肩を潰されていたら危なかったのかもしれないが、カグラの心意技は今も継続中なのだ。

数倍まで膨れ上がった冬桜の刀身が纏っている業火が、今この瞬間にも辺りの空気を喰らい、かき乱している。その一閃の威力はもう計り知れない。鋼鉄すらも、バターのように寸断できるだろう。人間の身体など、もはや論外だ。

だから、カグラは笑う。

勝者の余裕で、勝利の笑みを浮かべる。

しかし、その笑みはまるで蝋燭に灯る炎のように、あっという間に掻き消えた。

振り下ろされてくるウィルの両手。

スローモーションのように、コマ送りでゆっくりと脳内に入ってくる彼の手が、視界の端から落ちてきたモノをしっかりとキャッチしたのだ。

そう、クナイを。

彼は捨て身で接近戦を挑んできたのではない。

全て、計算どおりだった。

多数の武器を使い、一対多を得意とする幻の《システム外スキル》。

その名を、カグラは知っている。しかし……そんな…………あれは………。

呆然とした顔で、カグラは

「多刀流………」

呟いた。 
 

 
後書き
なべさん「はい、始まりました!そーどあーとがき☆おんらいん!!」
レン「いやに張り切ってるね。どったの?」
なべさん「ムッフッフ~♪なんとあのLISAさんの握手会に行ってきたのだ~!」
レン「へぇ~っ!あのSAOのオープニングとか歌ってた?」
なべさん「そう!」
レン「エンジェル〇ーツの劇中歌を歌ってた?」
なべさん「その通り!」
レン「凄いな」
なべさん「実際すごかった~!なんかオーラとかバンバン出してたし」
レン「で、話せたの?」
なべさん「…………………………………………」
レン「………………は、はい、自作キャラ、感想を送ってきてくださいねー!」
なべさん「どーせ俺はチキンだよ、チキンですよーだ……」
──To be continued── 
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