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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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-新たな力withサンダー-

 
前書き
うーん…書き方が上手くいかない…
 

 
side遊矢

カミューラとの闇のデュエルからしばらく経ったが、新しいセブンスターズの話はさっぱりと聞かなかった。

人形から戻ったクロノス教諭も、いつもの調子に戻った…と、言って良いものか。

なんと、あのクロノス教諭が翔に対してイヤミを言わなかったのである。

…それがどうした、と思う人もいるかも知れない。

だが、我々からすれば、まさに驚天動地の出来事…言い過ぎか…なのだ。

カミューラとのデュエルで、十代や翔の声援に応えていたし、俺と明日香が来る前に何か心変わりがあったのかも知れない。

まあ、そんな感じでいつもの日常だったのだが、またもや何か事件が起こりそうだった。

「デュエルアカデミアを買収?」

「ああ。どうやらそういう話があるらしい。」

授業が終わった放課後、少し残って課題を片付けていた俺は、訪ねてきた三沢からその話を聞いた。

「なんだそりゃ?」


「なんでも、万丈目の兄たちがデュエルアカデミアの買収を企んでいるらしい。」

万丈目の兄たち…あいつらか。

俺は万丈目との友好デュエルの時に、万丈目の横にいた男たちのことを思いだす。

…ごめん、思いだせなかった。

スーツ姿だったな、確か。

それはともかく、万丈目財閥は、ニュースや新聞に出るぐらいのやり手の金持ちだ。

しかし、このデュエルアカデミアのオーナーは世界一の会社、海馬コーポレーション。

いくら万丈目財閥でも、海馬コーポレーション相手に買収などしようものなら、破産するのがオチだろうに。

それこそ、万丈目財閥が世界一にならない限りは。

「万丈目財閥は、何時の間に世界一になったんだ?」

「いや、買収とは言ったがお金じゃない。デュエルだそうだ。」

「デュエル?」

首を傾げる俺に、言いたいことは分かる、というようにする三沢。

「オーナーの意向だそうだ。『デュエルアカデミアを買収したいなら、生徒に勝て』ということだ。」

理にかなってんたが、かなってないんだか…


「じゃあ、対戦相手はどうなるんだ?」

「万丈目財閥からは、万丈目一家の長男。こちらからは、万丈目だそうだ。」

万丈目VS万丈目兄。

「何だ、心配ないじゃないか。」

単身、ノース校のトップにまで登りつめて、このデュエルアカデミアの中でもかなり強い方に入る万丈目。

それが、素人であろう万丈目兄に負ける筈が無い。

「それが、そうもいかないんだ。」

万丈目が強いことを知っている三沢が首を振る。

「色々事情があったらしく、万丈目は攻撃力500以下のモンスターでデッキを組むことになったんだ。」

「攻撃力500以下!?」

【機械戦士】とて、シンクロ関係を除けば、攻撃力500以下はほとんどいない。

ましてや、万丈目のデッキ、【アームド・ドラゴン】に攻撃力500以下のモンスターなど入っていないだろう。

「デッキ作り、手伝うところなんだろうけどな…」

「ああ。遊矢が思っている通り、断られたよ。」

万丈目だからな…

あいつは、基本的に人の力を借りようとしない。

そういうところが、あの自信に繋がっているだろうから、一概にはダメなところとは言えないが…


「それで万丈目は、どうやってデッキを作るつもりなんだ?」

「悩んでいたが、大徳寺先生に、デュエルアカデミアに伝わる話を聞いたんだ。」

「話?」

都市伝説みたいな物か?

「『森の中の井戸に、昔捨てられた低攻撃力のモンスターがある』だ、そうだ。」

…俺たちに借りたくないからって、その井戸を探しに行ったのか?


「そんな怪しげな都市伝説に頼るぐらいなら、相談してくれりば良いのによ…」

ほとんど意地だな。

「そういうわけで、俺たちに出来るのは、万丈目を信じることだけなんだ。」

「いいや、まだ出来ることはある。」

まったく、放っておけない奴だよな。

俺と三沢は、思いついたことを実行する為に、まずは俺の部屋に向かうことにした。



そして翌日。


いつものデュエル場で、万丈目兄弟は向かい合っていた。

観客席には、俺たちを含む観客で賑やかだ。

俺、明日香、三沢の三人で見物している。

「逃げずに良く来たな、準!…そもそも、デッキはあるのか?」

万丈目兄が白々しく万丈目に問う。

…ややこしいな。

「デッキならある。それと兄さん。デュエル前の話では、攻撃力500以下のモンスターのみということだったが、俺のデッキに入っているモンスターは、全て攻撃力0だ!」

攻撃力0!?

「万丈目…自分でハンデ増やしてどうすんだよ…」

「…なんでも、井戸で拾ったカードが、全て攻撃力0だったらしい。」

攻撃力0。

すなわち、攻撃しても相手にダメージを与えられないということだ。

「そういえば遊矢。昨日、三沢くんと何をしたの?」

隣の明日香が聞いてくる。

「ああ。万丈目の部屋に、攻撃力0のカード置いてきたんだよ。面と向かって渡したら、絶対受け取らないからな。」

結構役に立つカードを置いてきた。

採用しているかどうかはわからないが。

「舐めおって…負けた時の言い訳にするなよ、準!」

「負けた時の言い訳など必要無い!」

お互いに、デュエルディスクの準備が完了する。

「「デュエル!!」」


「俺の先行!ドロー!」

万丈目のターンから、デュエルは始まった。

「さて、万丈目はどんなデッキだ…?」

【アームド・ドラゴン】ではない事は確実だが。

「俺は、《ミスティック・パイパー》を召喚!」

ミスティック・パイパー
ATK0
DEF0

現れたのは、笛を持つ機械戦士!

「あれって、遊矢のカードじゃない?」

「ああ。…まさか、使ってくれるとは。」

ドロー効果を持つものの、使いにくいモンスターだ。

「ミスティック・パイパーの効果を発動!このカードをリリースすることで、カードを一枚ドローする!」

それだけじゃない。

「更に、引いたカードがレベル1モンスターの場合、お互いに確認し、カードをもう一枚ドローする!俺が引いたのは、レベル1モンスター、《ミスティック・パイパー》だ!もう一枚ドロー!」

もう一枚のミスティック・パイパーを引いたか。

「カードを二枚伏せ、ターンエンド!」

カードを二枚伏せたものの、万丈目のフィールドにはモンスターがいない。

「いくらドローしたところで、所詮は攻撃力0!敵ではない!私のターン、ドロー!」

万丈目兄の方のデッキは…

「私は魔法カード、《融合》を発動!手札の《ロード・オブ・ドラゴン-ドラゴンの支配者-》と、《神竜 ラグナロク》を融合!《竜魔神 キングドラグーン》を融合召喚!」

竜魔神 キングドラグーン
ATK2400
DEF1100

「竜魔神 キングドラグーン…万丈目長作のデッキは、【ドラゴン族】か!」

…長作って言うんだ。

ありがとう、三沢。

「竜魔神 キングドラグーンの効果を発動!手札からドラゴン族モンスターを特殊召喚する!現れろ!《ダイアモンド・ドラゴン!》」

ダイアモンド・ドラゴン
ATK2100
DEF2800


ダイヤモンドで出来たドラゴンが姿を現す。

「まさか、そのカードは…!」

「そうだ!あの時のデュエルで用意した、全てパラレルレアのカードで作ったデッキだ!」

あの時、というのは知らないが、…全部パラレルレアって。
どうりであんなに無駄にピカピカしてるのか。

「行け!竜魔神 キングドラグーン!準に…」

「リバースカード、オープン!《威嚇する咆哮》!このターン、相手は攻撃宣言が出来ない!」

竜魔神 キングドラグーンの攻撃宣言の前に発動したため、キングドラグーンは攻撃出来ない。

「チィッ…カードを一枚伏せ、ターン「待て!」何!?」

万丈目兄のターンエンドの宣言を、突然万丈目が止めた。

「兄さんのメインフェイズ2、俺はリバースカードを発動!《ウィジャ盤!》」

フィールドに、ウィジャ盤と『D』の文字が浮かび上がる。

「万丈目のデッキは、【ウィジャ盤】か…?」

なんとも扱いにくいデッキを使うな。

「ウィジャ盤は、相手のターンのエンドフェイズごとに、デッキ・手札から、《死のメッセージ》をフィールドに出し、五枚揃った瞬間、発動したプレイヤーの勝利となる!」

「何だと!?…ええい、発動前に倒してしまえば良いことだ!ターンエンド!」

「エンドフェイズ時に、《死のメッセージE》が出現する!」
『D』と『E』が現れる。

『DEATH』の完成まではまだ時間がかかるな。

「俺のターン、ドロー!」

万丈目のターンだ。

「俺は、再びミスティック・パイパーを召喚!」

ミスティック・パイパー
ATK0
DEF0

「効果を発動し、一枚ドロー!…引いたカードは、《薄幸の美少女!》よって、更にドロー!」

おお…万丈目、ミスティック・パイパーを使いこなしている…

考えてみれば当然だ。

万丈目のデッキは三つ。

一つ目は、元々使っていた地獄デッキ。

二つ目は、クロノス教諭から貰ったというVWXYZ。

三つ目は、ノース校に伝わる伝説のデッキ、アームド・ドラゴン。

コンセプトは基本的に力押しだが、意外と万丈目は、多種多様なカードを使えるデュエリストだ。

「更に俺は通常魔法、《一時休戦!》お互いにカードを一枚ドロー!」

なんか凄いカード引きまくってるな…

「ターンエンドだ!だが、俺の手札は七枚。よって、墓地に一枚捨てる。」

手札は六枚までだ。

「私のターン、ドロー!
プレイミスだな、準!フィールドががら空きだぞ!竜魔神 キングドラグーンの効果により、エメラルド・ドラゴンを特殊召喚!」

エメラルド・ドラゴン

ATK2400
DEF1400

また宝石ドラゴンか…

キラキラしすぎてむしろうざい…

「バトル!竜魔神 キングドラグーンで、準にダイレクトアタック!トワイライト・バーン!」

キングドラグーンの放つブレスが、万丈目を貫く。

ま、意味ないが。

「何!?」

キングドラグーンが放ったブレスに、全くダメージが無い万丈目が立っていた。

「一時休戦のもう一つの効果!次の俺のターンまで、全てのダメージを0にする!」

万丈目兄はデュエリストじゃない。

ただのコモンカードは覚えていないようだ。

「厄介な…!私はこれでターンエンドだ!」

「ターンエンドの瞬間!《死のメッセージA》がフィールドに現れる!」

残りは『T』と『H』。

万丈目のペースだ…!

「俺のターン、ドロー!
俺は魔法カード、《天使の施し》を発動!三枚引き、二枚捨てる!」

ウィジャ盤の進行と同時に、かなりの速度で手札交換をする万丈目。

「三枚目のミスティック・パイパーを召喚する!」

ミスティック・パイパー
ATK0
DEF0

「更に効果を発動!ミスティック・パイパーをリリースし、カードを一枚ドロー!…ドローしたカードは、《サクリファイス!》よって、カードを一枚ドロー!」

…毎ターン強欲な壺と同じ効果とか、どんな引きしてんだよ。

「カードを一枚伏せ、ターンエンドだ。…俺の手札は八枚。よって、二枚墓地に捨てる。」

万丈目のフィールドはがら空きのままだが、凄まじい勢いで手札交換と墓地肥やしが行われていく。

「ええい…私のターン、ドロー!」

いい加減、万丈目兄も焦ってきたな。

「フッ…速攻魔法、《サイクロン》を発動!私は、準のセットカードを破壊する!」

せっかくサイクロンを引いたのに、ウィジャ盤ではなくセットカードを破壊に行った。

セットカードが無くなれば、ドラゴン達の攻撃で万丈目のライフは尽きるため、あながちその選択は間違いじゃない。

が。

「兄さんのサイクロンにチェーンして、リバースカード、オープン!《和睦の使者!》このターン、戦闘ダメージは与えられない!」

フリーチェーンのカードじゃなかったらの話。

「くそっ!竜魔神 キングドラグーンの効果で、《アレキサンドライトドラゴン》を特殊召喚する!」

アレキサンドライトドラゴン
ATK2000
DEF100

また来たよキラキラ竜。


こうもたくさん見ると、パラレルレアがただのキラキラ光るカードに見えてくる…

「私はターンエンドだ。」

「ターンエンドの瞬間、《死のメッセージT》が出現する!」

残りは『H』のみ!

「俺のターン!ドロー!魔法カード、《死者蘇生》を発動!墓地からミスティック・パイパーを特殊召喚!」

ミスティック・パイパー
ATK0
DEF0

ミスティック・パイパー、四度目の登場。

…お疲れ様です。

「ミスティック・パイパーの効果を発動し、一枚ドロー!」

レベル1モンスターを引かなかったようだ。

「俺は、《薄幸の美少女》を守備表示で召喚!」

薄幸の美少女
ATK0
DEF100

薄幸の美少女…レイも良く使ってたな。

『薄幸』って響きからは程遠いが。

「更にカードを一枚伏せ、ターンエンド!」

「私のターン、ドロー!
《強欲な壺》を発動し、二枚ドロー!」

万丈目兄も負けじと二枚ドローする。

強欲な壺もパラレルレアか。

手が込んでるな。

ドローした瞬間、万丈目兄がニヤリと笑う。

「フッフッフッ…運命は私に味方したようだぞ、準!私は速攻魔法、《サイクロン》を発動!ウィジャ盤を破壊する!」

2枚目のサイクロン!?

しかも、今度はウィジャ盤狙い…!

「カウンタートラップを発動!《魔宮の賄賂!》相手の魔法・トラップを、相手に一枚ドローさせることで無効にして破壊する!」


カウンタートラップ!?

危うい賭けだ。

もし、万丈目兄がサイクロンを使わなかったら、ウィジャ盤が完成しなかったぞ。

「だが甘い!魔法カード《大嵐》を発動!フィールド場の魔法・トラップカードを全て破壊する!」

「何だと!?」

どんな引きしてやがる!

強欲な壺の時に引いてきたのだろうか。

サイクロンより遥かに強力な嵐が、万丈目のウィジャ盤と万丈目兄のリバースカードを全て破壊する。

ちなみに、万丈目兄のリバースカードはドラゴン族のサポートカード、《竜の逆鱗》だった。

「くっ…!」

「邪魔なウィジャ盤は破壊した!ダイヤモンド・ドラゴンで、雑魚モンスターに攻撃!《ダイヤモンド・ブレス!》」

ダイヤモンドで出来たキラキラブレスが、薄幸の美少女を蹴散らす。

「更に、竜魔神 キングドラグーンで、準にダイレクトアタック!トワイライト・バーン!」

しかし、なにもおきなかった。

「な、何故だ!?」

「薄幸の美少女が破壊されたターン、相手モンスターはやる気を無くし、バトルフェイズは終了する!」

やる気なんだ。

そう言われると、ドラゴン達にやる気が無いように見えなくもない。

「だが、ウィジャ盤が消えたお前には何も出来ないだろう、準!私のターンは終わりだ!」


万丈目兄の言う通りだ。

特殊勝利デッキは、普通はその特殊勝利意外勝利手段は無い。

…万丈目は、どうするか…?

「俺のターン、ドロー!
…ターンエンドだ!」

カードをチラリと見て、何もせずターンを終了する万丈目。

「遂に諦めたか、準!竜魔神 キングドラグーンで、準にダイレクトアタック!トワイライト・バーン!」

今度こそ、キングドラグーンのブレスが万丈目に迫る!

「手札から、《速攻のかかし》を発動!相手モンスターの攻撃を無効にし、バトルフェイズを終了させる!」


万丈目の手札から、くず鉄で作られたかかしが、キングドラグーンのブレスを防ぐ。

…焦げたな。

「いくらそんなカードで防ごうが、我がドラゴン達には勝てんぞ!カードを一枚伏せ、ターンエンド!」

確かに、ウィジャ盤が破壊された今、万丈目はどうするのか。

「遊矢。万丈目くんはどうすると思う?」

観客席は、すっかり万丈目のデュエルに魅せられていた。

次に万丈目が何をするのか?

明日香もその一人だろう。

「俺が渡したカードは、ミスティック・パイパーと、今使った速攻のかかしだけだ。…何をするかわからない。それと、万丈目のデッキが、本当に【ウィジャ盤】かどうかもわからない。」

「え!?」

【ウィジャ盤】意外の想像などしていなかったのだろう、明日香が驚きの声を出す。

「でも、万丈目くんはウィジャ盤を使って…」

「ウィジャ盤を使ってからと言って、【ウィジャ盤】だけとは限らない。何か、別の策があるのかもしれないな。」

明日香の疑問には、三沢が答えた。

今や観客席は、万丈目の一挙手一投足を見逃さないようにしていた。

「俺のターン、ドロー!
…兄さん!このターンで終わりだ!」

圧倒的に不利にも関わらず、万丈目は高々と宣言する。

「強がりはよすんだな、準!頼みのウィジャ盤も破壊され、お前に勝つ手段は残されてはいない!」

万丈目兄の正論を聞いても、万丈目は不敵な笑いを漏らす。

「それはどうかな、兄さん…こいつが、逆転に繋がるカードだ!魔法カード、《おジャマンダラ》を発動!」

おジャマンダラ!?

「ライフを1000払い、おジャマ三兄弟を墓地から特殊召喚する!」

万丈目LP4000→3000

残念ながら、俺はこのカードを知らなかった。

どんなモンスターが来るんだ…!?

そして、万丈目のフィールドに、三体のモンスターが現れる!


おジャマ・イエロー
ATK0
DEF1000

おジャマ・グリーン
ATK0
DEF1000

おジャマ・ブラック
ATK0
DEF1000

…なんだか形容しがたい物が、万丈目のフィールドに三体現れた。

なんだありゃ?

「ふざけているのか、準!何だそのカードは!」

万丈目兄が、怒り心頭といった様子で叫ぶ。

そりゃ怒るだろうさ、逆転に繋がるカードって言って、あいつらが出てきたら…


「こいつ等を馬鹿にすることは許さないぜ、兄さん!」


お、何か思い入れのあるカードなのか?

「確かにこいつ等は、攻撃力0で、見た目も性格も最低の雑魚モンスターだ!」

…おい、自分で言ってどうする。

自分は馬鹿にしていいのか?

「だが、俺はこいつ等に教えて貰ったことがある!」

何をだ?

『兄弟の絆をさ!!』

…!?

今、あいつら喋ったか!?
ソリッドビジョンにおいて、モンスターが雄叫びをあげることはある。

俺のフェイバリット、スピード・ウォリアーもそうだ。

だが、喋るモンスターなど、心当たりは一つしかない。

「精霊…」

カードの精霊。

一握りのカードにのみ存在し、精霊の存在を感じることが出来る人間も、また一握りだという。

万丈目のおジャマ達は、精霊なのか…?

「何か言った?遊矢。」

先程の独り言が少し聞こえたのだろう、明日香が不審そうにこちらを見る。

「いや、何でも無い…」

精霊のことなど、後で考えよう。

考え事をしている間に、万丈目が何かしようとしていた。

「兄さん、ウィジャ盤はただの囮!俺の本命はこいつだ!魔法カード|《おジャマ・デルタ・ハリケーン!》おジャマ三兄弟が自分フィールド場にいる時、相手フィールド場のカードを全て破壊する!」

「何だと!?」

おジャマ三兄弟が放った攻撃に、万丈目兄のドラゴン達が全滅する。

リバースカードは、《炸裂装甲》。

これで、万丈目兄のフィールドはがら空きだ。

「更に、魔法カード|《右手に盾を左手に剣を》を発動!このターン、フィールド場のモンスターの攻撃力・守備力を入れ替える!」

おジャマ・イエロー
ATK0→1000
DEF1000→0

おジャマ・グリーン
ATK0→1000
DEF1000→0

おジャマ・ブラック
ATK0→1000
DEF1000→0

合計攻撃力は、3000!

「行けぇ!くず共!おジャマ三兄弟で、兄さんにダイレクトアタック!」

おジャマ三兄弟が、思い思いの攻撃で万丈目兄を攻撃する。

「ぐぅぅぅっ!よくもやりおったな、準!」

万丈目長作LP4000→1000

屈辱的だろうなぁ…

「メインフェイズ2、俺は《速攻のかかし》を召喚!」

速攻のかかし
ATK0
DEF0

「速攻のかかし!?」

つい、声に出して驚いてしまった。

だが、速攻のかかしは、手札にあってこそ意味のあるカード。

何故フィールドに出す…?

「こいつで終わりだ!《サンダー・クラッシュ!》」

万丈目のフィールドに、魔法カードが表示されると、おジャマ三兄弟がトコトコ歩いて魔法カードを見に行った。

そんな、有り得ないことが起きているにもかかわらず、俺以外の観客は反応しない。

俺がおかしくなったのか、それとも…精霊が見えるようになったのか。
…いや、気のせいだろう。

「攻撃力0の役目は終わりだ!サンダー・クラッシュの効果により、俺のフィールド場のモンスターを全て破壊し、その数×300ポイントのダメージを与える!終わりだ!!」

「ぬおぉぉぉぉぉっ!」

万丈目長作LP1000→0

万丈目のフィールドの、速攻のかかしとおジャマ三兄弟の爆発により、デュエルは決着した。

勝者である万丈目は、敗者である兄に何も言わずに指を上げた。

「一!」

『十!』

「百!」

『千!』

「『万丈目サンダー!』」


…結局、いつものこれか。


万丈目が勝ったことにより、デュエルアカデミアの買収騒ぎは無くなった。

おジャマ三兄弟を上手く使っての勝利は、生徒たちの万丈目のイメージを大きく変え、かなり親しみやすくなったようだった。

…それから、精霊のことだが。

デュエル終了後に、万丈目の近くを見ても、精霊はいなかった。

…いや、見えなかっただけかも知れないが。

まあ、気のせいってことにしておこう…


余談だが、万丈目に貸した、ミスティック・パイパーと速攻のかかしだが、俺の部屋のドアに置いてあった。

盗まれたらどうすんだよ、と思いながら拾い上げると、カードの他に一枚の紙。

『なかなか使えるカードだから、今度からはこの俺様も使ってやろう。 サンダー。』

と、書いてある紙だ。

良く見てみると、三枚ずつ貸した筈の速攻のかかしが、一枚無い。

代わりに、新しいパックが二枚置いてあったが。


「トレードして欲しいなら、トレードして欲しいって言えよ…」

最後まで、万丈目は万丈目だった。
 
 

 
後書き
遊矢視点で他の人がデュエルするのって難しいですね…

これから遊矢以外の人のデュエルが始まると言うのに…

読みにくくありませんでした?

感想・アドバイス待ってます! 
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