| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第四十八話 会食その十八

「それで不得意でして」
「それでなんですか」
「野球はそれなりに得意ですが」
 それもだというのだ。
「アメフトの方が得意ですね」
「じゃあ学生時代や今は」
「ですがアメフト部にいたことはないです」
 これも上城にとっては思わぬ返答だった。
「それもないです」
「あれっ、じゃあ何をされてるんですか?」
「フェシングをしています」
 スペンサーは紳士的な微笑みで上城に答えた。
「それとマーシャルアーツもですが」
「フェシングですjか」
「はい、ただ使っている剣はレイピアやサーベルではなく」
「どんなのを」
「トゥーハンドソードです」
 上城がはじめて聞く名前の剣だった。
「それを使っています」
「トゥーハンドソード?」
「巨大な両刃の剣です」
 大石がいぶかしむ上城の横から彼に顔を向けて説明していた。
「一メートル五十はあり柄もかなり大きく」
「トゥーハンドっていいますと」
「両手に持って振ります」
「そうした剣を使って」
「それで戦います」
「重さもかなりのものです」
 スペンサーがここでまた言う。
「ですから膂力が必要な剣ですが」
「スペンサーさんはそれを使われているんですね」
「はい」
 穏やかで紳士的な笑みはそのままだった。
「私はその剣を使っています」
「そうなんですか」
「私に合っています」
 そのトゥーハンドソードがだというのだ。
「これさえあれば負ける気がしません」
「そこまで、ですか」
「上城君は何をされていますか」
「剣道です」
 上城はスペンサーに答えた。
「それをしています」
「日本の武道をされているのですか」
「はい」
 その通りだと返す。
「そうしています」
「それは工藤さんに高橋さんも同じですね」
「そうです」
「俺は柔道もしてます」
 工藤と高橋もそれぞれのメニューを食べながらスペンサーに答える。
「俺は四段です」
「実は俺も」
「四段、強さのランキングですね」
 スペンサーは段をこう考えた。
「それになりますね」
「大体そんなところです」 
 工藤はスペンサーにわかりやすく答えた。
「フェシングとは全く違う剣です」
「そうですか」
「我々はそれを嗜んでいます」
「では」
 ここでスペンサーは彼等にこう言った。
「その剣道を見せて頂けますか」
「我々のその剣道をですか」
「はい、見たいと思うのですが」
 こう工藤達に願い出る。
「駄目でしょうか」
「いいんじゃないですか?」
 高橋が工藤に言った。
「別に見せても減るものではないですし」
「そうだな」
「それに日本文化の紹介にもなりますよね」
 高橋は工藤にこのことも話した。
「それも自衛隊の幹部の仕事だって聞いてますけれど」
「海は特にだな」
 工藤もこう高橋の問いに答える。
「実際にそうだ」
「ですよね」
「幹部自衛官、将校は外交官としての一面もある」
 やはり特に海はそうなることだった。
「それならだ」
「絶好の機会ですね」
「ではだ」
 工藤は高橋の言葉に頷いたからスペンサーに顔を戻した。そしてそのうえで彼に対してこう答えたのである。
「ではこちらこそお願いします」
「見せて頂けますね」
「はい」
 工藤は微笑みと共にスペンサーに答える。
「そうさせてもらいます」
「では楽しみにさせてもらいます」
 スペンサーも微笑んで応える。四人は彼に対してそのそれぞれの剣技を見せることになったのだった。


第四十八話   完


                      2012・10・10 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧