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誓いを今

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第二章

 張飛は酒を飲んで不覚を取り劉備が受け入れていた呂布に城を奪われた、彼はこのことを恥じて劉備と張飛の前で自害しようとした。
 だがここでもだった、二人は強い声で末弟を止めた。
「駄目だ、それは」
「自害は許さぬ」
 二人は自分の前に跪き剣を首にやる張飛に言った。
「言った筈だ、我等は共に死ぬのだと」
「ここで死ぬことはならん」
「しかしわしは」
 張飛は剣を手にしたまま兄達に言う。
「国を奪われた、この失態は」
「なら生きて注げ」
 劉備は張飛に強い声で告げた。
「いいな、生きてだ」
「生きてか」
「死んではならん」
 このことは絶対に、というのだ。
「わかったな」
「生きて、か」
「桃園の誓いのことは忘れるな」
 吹雪の中を逃れていた時と同じ言葉だった。
「何があってもだ」
「あの誓いか」
「そうだ、常に共にあり常に死ぬ」 
 この誓いをしたが故にというのだ。
「そうしろ、いいな」
「・・・・・・では」
「呂布のことは必ず何とかなる」
 関羽にはわかっていた、呂布がこのまま国を維持出来ないことは。彼は確かに豪遊無比だが手に入れた国を護ることは出来ない男なのだ。
 それでだ、こう張飛に言ったのだ。
「それまで生きていろ、いいな」
「・・・・・・わかった」
 張飛は涙を流しながら兄達の言葉に応えた、そしてこの時も生きた。
 徐州は曹操の助けもあり呂布を滅ぼし取り戻した、だが。
 今度はその曹操と対立し徐州を奪われ劉備は袁紹の下に逃れ張飛は賊となった、関羽はその曹操の客将となった。
 だが客将は客将だ、それでだった。
 関羽は曹操がどれだけ厚遇しても何を渡しても受け取らなかった、受け取ったものは赤兎馬だけで劉備の妻子を護り続けていた。
 そして劉備が袁紹の下にいるとわかるとだった、曹操に別れを告げて彼の下に向かうのだった。
 その関羽にだ、曹操は苦い顔で問うた。
「何故行く、わしの下にいれば」
「天下の将となるのも夢ではないというのですな」
「そうだ、わしは必ず天下を取る」 
 その自信があるからこその言葉だ。
「そなたはわしの下にいれば位人臣を極め天下に名を残すのだぞ」
「そうなりましても」
「そういったものを全て捨ててか」
 曹操は苦い顔のまま関羽に言う。
「そなたは劉備の下に戻るのか」
「それがしは劉備様の弟です」
 血はつながっていない、だがそれでもだというのだ。
「それならばこれもです」
「当然だというのか」
「はい」
 だからだというのだ。
「共に生き共に死ぬと誓いましたので」
「誓い故にか」
「それがしは劉備様の下に戻ります」
 曹操に対して毅然として答える、とてつもなく巨大な身体の背筋は伸びていてそれが関羽をさらに大きく見せていた。
 だが大きいのは身体だけではなかった、その心もだった。
「ですからお世話になりましたが」
「そうか」
「では」
 関羽は多くの到底得られないものを捨てて劉備の下に戻った、途中血路を開き誤解していた張飛とも衝突した、だがそういったものを超えてだ。 
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