ロボスの娘で行ってみよう!
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第74話 後始末
前書き
9ヶ月振りの投稿です、どうも体調不良に因り詰まってしまい、中々アイデアが浮かびません。ジックリと更新して行くつもりです。
今回は、短いです。
宇宙暦795年5月
■自由惑星同盟 首都星 ハイネセン
戦わずして勝つ、正に今回の第二次ダゴン星域会戦はその一言で言い表された。損失艦艇ゼロ、犠牲者ゼロであり、囮として放棄したカプチェランカ基地以外の損害がないという状態であった。
しかしここ最近の敗戦で勝利に飢えていた市民という厄介な存在はその勝利ですら物足りなく感じ、『何故敵を追撃しなかったのか!』『帝国軍主力がダゴンへ向かって留守の間に別働隊がイゼルローン要塞を攻略しなかったのか!』『皇太子が死んだ混乱に乗じるべきであった』とか現状を無視した希望的観測だけで不平不満を爆発させていた。
これらの原因は、ロボス、シトレ枢軸により押さえ込まれた主戦派による足の引っ張り合い、フェザーンに因るマスコミへの情報リーク、トリューニヒトに因る憂国騎士団を使い市民をアジっている事も事態を一相混乱化させる一因と成っていた。
更に厄介な事は、前回の第6次イゼルローン攻略戦の敗戦に伴い、アンダーソン最高評議会議長、カスター国防委員長、レベロ財務委員長、ホアン人的資源委員長以外の辞任した各委員長のポストは一時的に副委員長が就いていたが、流石に半年も臨時職では駄目な為、各委員長の補欠選挙が行われる事と成ったのであるが、現在の市民感情では主戦派の押す人材が当選しかねない状態になりつつあった。
同じ頃、同盟軍軍事法廷では暗殺者アンドリュー・フォーク中尉に対する裁判が行われていたが、軍病院からの診断に“フォーク中尉に暗示をかけられた形跡があり”との一文で法廷は紛糾していた。
「したがってフォーク中尉の行動は何者かによる示唆の可能性が極めて高いことが立証されたのです。したがって事件当日のフォーク中尉は心神喪失状態に有った言える為、無罪を主張します」
弁護士が資料を指しながら声高に発言する。
「裁判長、示唆されたと言われますが普段からフォーク中尉の行動言動には疑念があることは確かであります。彼は日頃から自分が特別な人間だと勘違いしていたことを考えると、それを認めない人々への攻撃衝動に駆られた事が今回の事件の原因と言えます。その上で自己保身の為に自己暗示をかけたと医師の検査結果も出ております」
弁護士側の医師の判断は間違っていると検察側の医師が合っているとばかりに検察官が反論する。
裁判開始から2年以上経っても未だに判決が出ない状態で有ったが、ようやく判決が出る事に成った。
裁判長が判決を言い渡す。
「被告アンドリュー・フォーク中尉は心神喪失状態に有り、責任能力問えない、因って無罪」
無罪の判決に傍聴席からは不満の声が上がる。
「しかし、アンドリュー・フォーク中尉に対し病気療養の為入院を命ずる」
結果フォークは予備役に編入され病気療養する事に成った。
同じ頃に、コーネフ中将の軍法会議も結審していた。
「コーネフ中将を不名誉除隊と処す」
只此だけであり、百万人の犠牲者に対する詫びもなくひっそりと市井に消えていった。
宇宙暦795年7月
■自由惑星同盟 首都星ハイネセン 最高評議会ビル ジョアン・レベロ
この国には選挙というシステムがある、専制政治の帝国と違い市民の意見を須く拾い上げる事が民主主義のモットーであると私も思うが、昨今の選挙は嘗ての銀河連邦の最末期に於ける衆愚政治になりつつ有り、考慮すべき用件が多すぎる。
選挙民は自らの権利を行使せずに、投票率は軒並み50%を下回る状態で、堅実な主張より、勇ましい主張を言う主戦派や軍産産業の紐付き政治屋や、タレント議員が当選するという体たらくだ。今回の選挙も、帝国軍を追い返し、犠牲がないにも係わらず、追撃しない事に文句を言い、我々を誹謗中傷する事しかしない、マスコミの多い事か、此では議長や国防委員長が勇ましい主張をせざるを得なくなる訳だ。
今回の補欠選挙で、アンダーソン議長の椅子は辛うじて確保できたが、主戦派に押されたロイヤル・サンフォード、コーネリア・ウィンザーも評議会議員へ返り咲きをした事は、由々しき事だ。しかもヨブ・トリューニヒトが国防委員長の椅子を狙い、現職のカスター国防委員長を副議長へ推薦するという、褒め殺し戦法まで行ったのだから。
カスター委員長は各評議員の推薦を受け、表向きで見れば、No2への昇格である為に断る事も出来ずに、副議長兼国務委員長に就任する事と成った。
私や、ホアン、アンダーソン議長、そしてシトレなどで話し合った結果、私或いはホアンを国防委員長に就任させる事が、一番だと結論が出たが、自分の事をよく判るから言えるが、例えシトレの後押しがあろうとも、私では主戦派などの頭を押さえつける事は無理だと考え、“頭髪が更に薄くなる”とぼやくホアンに、国防委員長就任を頼み込んだ。
トリューニヒトには、意趣返しで、ホアンの前職、人的資源委員長に就任させる事とした。ざまあみろ、威勢よく宣伝しているが、実際の人的資源の枯渇に悩みやがれ、そして禿げろ!
いかんいかん、どうも最近過激になって来たようだ、此もやはりあの娘の仕業か。
取りあえずは、同盟の国力の増進を図って、少しでも帝国を抜けるようにせねばならないな。
帝国暦486年7月
■銀河帝国オーディン
同盟政府の新陣容が固まりつつある中、銀河帝国においても、皇太子ルードヴィヒの死により、後継者争いの火種が燻り始め、ブラウンシュバイク公爵、リッテンハイム侯爵、リヒテンラーデ侯爵の三者による次期皇太子のさや当てが水面下で始まっていた。
各陣営とも、因り有力な同盟者を求めて、種々の駆け引きを行い、外征どころでは無い状態であった。
しかしこの状態は、宇宙艦隊を率いるメルカッツ元帥にしてみれば、願ったり叶ったりであり、練度やモラルが低下している、帝国正規艦隊の訓練に費やす時間が増えた事を意味し、政治的に中立であり、皇帝陛下に忠誠を尽くすのが軍人の職務と考える、古武士メルカッツの限界と言えた。
そんな中、大将に昇進したラインハルトは同じく中佐に昇進したキルヒアイスを連れて、新たに下賜された新型戦艦ブリュンヒルトを見ながら、脳天気な事をほざきながら、簒奪への意志を更に深めていった。
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