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IS-最強の不良少女-

作者:炎狼
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専用機

 
前書き
響の専用機の登場です

ではどうぞ 

 
 楯無との勝負からしばらく経ち響は昼休み、屋上で1人寝転がっていた。気候もだんだんと暖かくなりまさに絶好の昼寝日和となり、響は満足そうに笑みを浮かべていた。

 またセシリアも一夏との戦いの翌日、一夏に自分の非をわびていた。一夏も気にした風はなく大きなことにはならなかった。

 だが響には一つ気がかりなことがあった。楯無との戦いの後響は一度も生徒会に呼ばれていないのだ。そのことを生徒会役員である本音に聞いてみても、

「そのうちよばれるよー。だから楽しみに待っててー」

 と返されるだけだったのだ。

「……なーんか嫌な感じしかしねー」

 虚空を見上げながら嘆息交じりにつぶやく響だが、やがて考えるのも馬鹿らしくなったのか瞳を閉じいつものように昼寝に入った。



「くぁ~……。いやーよく寝た」

 昼寝に入ってから十数分後響は伸びをしながら目を覚ました。時計を見ると5限が始まるか否かの時間帯である。それを確認した響はため息をつきながらも、授業に向かうために腰を上げた。

 なぜ今回はちゃんと授業に行こうとしているかというと、先日千冬に説得という名の脅しをかけられたからだ。その内容とは、

「私の授業をサボったら放課後みっちりとしごいてやる」

 だそうだ。

 響自身楯無との戦闘まで千冬に鍛えてもらったので、そのキツさは嫌というほど身にしみているので千冬の授業だけはちゃんと出るようにしているのだ。

 多少げんなりとしながら校舎に入ろうとしたところで響は屋上の一角を見つめる。そこにあったのはなんと。


 巨大な人参だった。


 その人参を見ると決して生ではない、なんと言うか機械的な光沢があるのだ。響はそれをしばらく見つめた後、にこやかに言い放つ。

「うん。私は何も見ていない。さーて早く行かないと織斑先生にどやされる」

 そそくさと立ち去ろうとドアノブに手をかけたときだった。響がいきなり後ろに倒れたのだ。まるで誰かに手を引かれたかのように。

 あまりに急なことで受身が取れなかったのか、響は頭を思いっきり屋上の床に打ち付けた。鈍い音が鳴り、あまりの痛さにのたうち回る響の隣に1人の女性が立っていた。

「もー。明らかに違和感に気付いてたのに触れないからそういうことになるんだよー?そこんところ理解してるのかなーびっきーは?」

 のたうち回る響を気にもしないような声で言う女性は快活そうな笑みを浮かべている。

 その女性の外見として一番目を引くのはその豊満な胸だろう。女性が動くたびにたゆんたゆんと弾んでいる。服装はメイド服のようでありながらどこか違う服装だった。頭には機械的な兎耳がピコピコと動いている。

 女性は響を見ながら爆笑していたが不意にその笑い声がやんだ。その代わりに聞こえてきたのは悲鳴のような声だった。

「にゃああああああ!?痛い痛い痛い!!すっごく痛いんだけど!?ちーちゃんよりも痛いなにこれ!?」

 女性の頭には響の指が深々と食い込んでいた。所謂アイアンクローである。

「……なんなんですかねーお前はぁ。人が痛がってるときにゲラゲラ爆笑しやがって……うるせぇったらありゃしねー」

「う、うん!ごめんそれは謝るから早く離してくれないかなー!?早くしないと束さんの大事な脳が!脳がーーー!!!?」

 あまりに喚き散らしたので響はため息をつきながら女性を解放した。しばらく掴まれていたところをさすった後女性は目に涙を溜めながら、響を見つめた。

「いやー……まさかあんなに痛いとは思わなかったなぁ……。ちーちゃんよりも痛いなんて思わなかったし」

 若干震え声で言う女性を一瞥しながら響は聞いた。

「それで?アンタは誰なんだよ。いきなり出てきやがって……」

「お!知りたい?私の正体知りたい!?」

 先ほどとは打って変り嬉しそうに笑みを浮かべながら女性はにじり寄ってくるが、響が右手を構えるとあたふたとし始める。

「わー!?まったまった!!言うからちゃんというから!」

「早くしろ……いい加減我慢ならねーからよ」

 すると女性は腕を腰にあてドヤ顔で言い放った。

「私の正体は!なーんとあの篠ノ之束さんでーす!どうどう!?驚いた!?」

「ふーん。……で?」

「え?」

 響のあまりに淡白な反応に束自身も驚いてしまったようだ。しばしの沈黙の後束が響に聞いた。

「なんとも思わないの?目の前にいるのはISを開発した張本人なんだよ?」

「まぁそうだな。でもそれがどうした?別に私は誰がIS作ったかなんて興味ないし」

「ははぁ……なるほどー。そういうところも他のやつらとは違うねー」

 感心したような声を上げる束に響は疑問を投げかける。

「んで、その篠ノ之束さんがIS学園になんの御用で?織斑先生に用でもあんの?」

 響の問いに束は腕を組み考える素振りを見せながら響に告げた。

「んー……確かにちーちゃんやいっくん、それに箒ちゃんとも会いたいけどねー。今日束さんが用があるのは君なんだよねーびっきー」

「私?てかちょっと待て……びっきーってなんだおい」

「君のあだ名だよーん。響だからびっきー。かわいいでしょ?」

 屈託のない笑みを向けられ響はただただ嘆息するばかりだった。

 ……なんつーかコイツ本当にめんどくせー。

 あまりのことに眉間を押さえる響に対し、束は気にすることなくポケットをまさぐり始める。そして取り出したのは藍色の指輪だった。

「これをびっきーに渡しに来たんだよー」

 その声に響は反応すると束が手をとり響に指輪を渡した。

「これは?」

「びっきーの専用機だよー。名前は『夜天月』(やてんげつ)って言うのさー」

 そういうと束は説明を始めた。

「今世界ではねISは第三世代まで開発されてるんだ。だけど研究者のやつらは四世代に発展させようと躍起になってるんだよ。……だけどね?実はもう束さんの手によって第四世代は作られていたのでしたー!ぱちぱちぱちー」

 自らを賞賛するように束が拍手するが響は渡された夜天月を少し見つめるた後、束に視線を戻し聞いた。

「そんなことを言うってことはコイツがその第四世代ってわけか?」

「うん!察しがいーねー。束さんは察しがいい子は好きだよー。正式名称は試作型第四世代IS夜天月って言うんだよ」

 満足そうな笑みを浮かべ説明する束に、響は鼻で笑うと突き放すように言った。

「別に私は専用機なんざほしかねーよ。第一もともとISすらに興味なかったんだ、今更こんなもん渡されたってな」

 夜天月を日の光にすかしてみながら響が言うが、束はそれすらも見透かしていたようににんまりと笑いながら小首をかしげた。

「ふーん……。いいのかなー?もしそれを受け取らなかったらびっきーのランクのこと……世界中に流すよー?」

 それを聞いた響の表情が一気に変わった。響は束を睨むと悔しげに言い放つ。

「てめぇ何処でそれを知った!」

「んふふふー。束さんに知らないことはないのだよー」

 響の睨みをものともせずに束は笑みを浮かべたままだ。それどころか束はさらに響を挑発する。

「でもさー。もしびっきーのランクのことがばれたら大変なのはびっきーだけじゃないよねー?……びっきーの家族も大変なんじゃない?」

 響の顔を覗き込みながら言う束は結構楽しそうである。

「脅しってわけか?」
 
 睨みをきかせたまま束に告げると束は首を横に振った。

「違うよー。これはプレゼントだよん。びっきーはなんか私を楽しませてくれそうだしねー」

「楽しませる?それは一体どういうことだ!!」

 激昂する響は束の胸倉を掴もうとするが、束はそれを軽やかによけるとそのまま先ほどのでかい人参のところまで行くと中に入る前に告げた。

「そのうちわかるよー!あとその子大切にしてあげてねー」

 それだけ告げると束は人参に乗り込み飛び去っていった。響はただただ渡された夜天月を握り締め束が飛び去っていった方向を睨むしか他になかった。

「……あのクソッたれ兎女。次ぎ会ったらただじゃおかねぇ、っと時間は……」

 束に対しての怒りをおさめながら時計を見た響は苦虫を噛み潰したような顔になった。なぜならば、

「5限もう終わるじゃん……」

 そうつぶやくとともに5限終了を告げるチャイムが鳴り響いた。そして響の放課後、織斑先生による補修という名の地獄が確定した。



 第一アリーナのハンガーにはむっすりとした顔の響と、その響を腕を組みながら椅子に座る千冬の姿があった。

 千冬は溜息混じりに響に聞いた。

「なるほど……大体の状況は理解した。またあの馬鹿は面倒なことをしてくれる」

 あの後響は千冬に何とか弁解したのだ。屋上で束とであったことに加え、その束に専用機を渡されたこと。

 千冬は再度大きくため息をつくと奥の方で端末を操作している真耶に目を向けた。

「山田先生何かわかりましたか?」

「はい。一応大体のところは……ただ殆ど表面上のことしかわかりませんでしたけど」

 真耶は多少落ち込んだ様子でモニタを表示させた。そこに表示されていたのは、先ほど響が渡された夜天月の大雑把なデータが表示されていた。

 しかしその中に肝心な夜天月の外見が表示されていなかった。表示されているのは名前と大まかな総重量などそのくらいだった。しかしその中の一角に使用者という欄には鳴雨響と確かに登録されていた。

 その表記を見た響はげんなりとする。その響を無視し千冬は真耶に聞いた。

「山田先生これだけですか?このISの外見などは?」

「残念ながら解析不能でした。おそらく鳴雨さんが乗らないと殆どのことは分からずじまいでしょうね」

 それを聞いた千冬は未だにげんなりムードな響に声をかける。

「鳴雨。貴様このISに乗れ」

「は?」

 疑問符を浮かべる響の指に千冬は強引に夜天月をはめ込む。

「あー!!?何してくれてんですか織斑先生!?」

「仕方あるまい。貴様がはめなければそのISの情報もまともに引き出せん。……なによりこのISは貴様にしか反応しないようにプログラムされている」

「……チッ。わかりましたよ」

 ムスッとした表情ながらも響はISスーツに着替えるためにその場を後にした。

 響が消えたすぐ後、真耶が千冬に声をかける。

「織斑先生?あのプログラムっていうの本当ですか?」

「やはり気付いていたか。いやあれは殆ど私の勘だ、あの馬鹿……束の考えることなど大まかなことは分かる。あいつはおそらく何が何でも鳴雨に専用機を持たせたいのだろうさ」

 嘆息混じりに言う千冬の顔は完全に呆れ顔だった。



「やっぱりこのISスーツって私嫌いなんすけど」

 紺色をベースとし、ところどころに白の配色がされたISスーツを着込んだ響は溜息を漏らす。

「文句を言うな。それよりさっさとはじめろ」

「へいへい」

 渋々といった様子で頷いた響は右手の中指にはめた夜天月に意識を集中する。

 そして次の瞬間響の体にIS、夜天月が装備されていた。

 藍色にさらに黒を入れたような暗く深い色を基調の色とし、ところどころには白銀に配色されたところも見える。

 そして一番目を引くのは巨大な左腕だ。左の手のひらを覆い隠すほど巨大なものが装着されているのだ。だがそれに対し右腕は特に何もついてはいない普通のISと同じようなデザインだった。

 飛行ユニットも普通のものよりも若干大きめだ。脚部も地面をがっしりとつかめるような形になっていた。

 全てを見終えた千冬が感嘆の声を漏らす。

「……なるほど。鳴雨、貴様なかなかISの展開が早いじゃないか。学生でそこまでできる奴はいないぞ」

「そりゃあどーも。それで何かわかったことありました?」

 夜天月に乗り込んだ状態で言う響に真耶がこたえる。

「いいえ……残念ながらそこまで大きな変化は見られませんでした」

「そうですか……まぁいいですよ私のISなんだからそのうちわかることはあるでしょ」

「ほう。自分のISと認めるのか?」

 ニヤリと笑いながら千冬は響に告げると響もそれに対し静かに頷いた。

「さっき展開した時に頭ん中にまた聞こえたんですよ。今度はマスター認証みたいな感じで。だからもうコイツは私のISと認める以外他にないでしょ」

「そうか……ああそうだ鳴雨、今日はもう帰っていいぞ特別に今日の補修は免除してやる。……ただし次はないからな」

 最後ににらみを聞かせながら言う千冬に響はため息をつくと軽く頷いた。

「へいへいわかりましたよ。そんじゃ」

 夜天月を瞬時に元の指輪に戻すと響はそそくさとハンガーを立ち去った。



 更衣室から制服に着替えて出てきた響を待っていたのはセシリアだった。

「あれ?セシリア?何してんだこんなところで」

「響さん!えっと……その一緒に帰りたいと思いまして。ダメだったでしょうか?」

「いんや別に大丈夫だって。だけど寮まで近くなのに待ってるなんて随分変わってるなセシリアは」

 ハハ、と笑いながら響が言うとセシリアは少し怒ったようにぷくっと頬を膨れさせた。

「もう!笑わないでください!」

「わりーわりー。そんじゃ帰ろうぜ?あ、夕飯も一緒に食うか?」

「はい!喜んで!!」

 先ほどのふくれっつらから一気に嬉しそうな顔になったセシリアとともに響は寮までの道を帰った。




 夕食時セシリアは響の右手中指にはめられている指輪について聞いた。朝はなかったのに今はあるということに疑問を思ったのだろう。

「ああこれか私の専用機だ」

「そうなのですか響さんの専用機……ってええ!?」

 いったんは納得しかけたセシリアだが、やはり納得しきれなかったのか大声を上げて響に詰め寄った。

「どどどど、どういうことなんですの!?」

「落ち着けって!!」

 立ち上がったセシリアを強制的に響は座らせる。先ほどのセシリアの大声のせいで既に数人の生徒が響たちを見つめていたので、さすがに大事にしたくなかったのだろう。

「いったいどうして響さんが専用機を?」

 ぼそぼそと内緒話をするように2人は態勢を低くして話し始めた。

「なんか今日の昼休みにさ……あの篠ノ之博士にあったんだよ」

「篠ノ之はかムグ!?」

「だからでけぇ声出すなって言ってんだろ!?コントしてるわけじゃねーんだよ!」

 再び大声で驚きそうになったセシリアの口を強制的にふさぐ響にセシリアは無言で頷く。

「でも何で篠ノ之博士が?」

「私だって細かいことは知らん。ただ楽しませてくれそうだからという理由だけでコイツを渡されたんだ」

 指輪を見せながら言うとセシリアは少し悩んだ顔を見せながら頷いた。だがそこで響が付け加える。

「まぁこれでお前と同じ専用機持ちだ。とりあえず専用機のことでわからないことがあったら聞くから、そん時はよろしくな」

 響の言葉にセシリアは背筋を伸ばし大きく頷いた。その目はなぜか爛々と輝いていた。



 セシリアとの夕食を終え部屋に戻った響は実家に連絡を入れるため携帯を取り出した。電話帳から実家にかけようとしたときだった、急にキャッチが入った。番号を確認するが知らない番号だっためでようか迷った響だが出てみることにした。

「もしも「やっほーやっほー!びっきー?夜天月を装着してくれたみたいだねーありがとう!束さんはとっても嬉しいよー!そりゃあもう……」

 そこまで聞こえたところで響は携帯しまった。だがしまった瞬間また着信が入った。

「もしも「いきなりきっちゃうなんてひどいよーびっきー!せっかく束さん電話してあげたのにー」」

 そこまで聞いたところで響はどすを聞かせた声で束に告げた。

「切っていいか?」

「まってまって!?びっきーに耳寄りな情報をあげるために電話をかけたんだってばー!」

「耳寄りな情報?あ、あと変な風に勿体つけたら容赦なくきるからな」

「なんと!?束さん思考を理解するなんて!?さてはびっきーエスパーでしょ!?」

 電話の向こうで大声を出して驚愕の声を上げる束の声に、かなりのうざさを感じた響はまた切ってしまおうかと思ったがそこで束が咳払いをさした声が聞こえたので、また携帯を耳に当てると束が再度話し始めた。

「こほん。まずその夜天月には武器という武器は一つしかないから気をつけてねー。気付いたとは思うけど左腕のでっかいやつだよー?」

「ああ、あれねそれで他には?」

「うんとねー……。あ、そうだ夜天月は普通のISの倍以上のスラスターとかブースターがついてるから本当に気をつけてねん。少しでも操作をミスると……死ぬからね。じゃあ後はがんばってねー。他にもいろいろあるけどそのときになったら教えるから!バイバーイ」

 一方的に話をされ一方的に電話を切られた響だったがその顔は少しだけ笑みを浮かべていた。

「なるほど……相当なじゃじゃ馬ISなわけだ。いいぜ上等だ」

 手を握り締めながら言う響はなぜかとても嬉しそうだった。



 同時刻セシリアは1人部屋の中で悶えていた。理由は勿論響に頼られたことだろう。 
 

 
後書き
響のISのモデルはわかっていただけたでしょうか?
読者様の一人からもらった案を採用させていただきました。

夜天月というの名の由来はそのうち明らかになりますのでしばしお待ちを。
束さんてこんな感じだよね……すこし不安になってきたけどまあいいやw

感想、アドバイス、ダメだしお待ちしております。 
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