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イドメネオ

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第一幕その二


第一幕その二

「こちらにです」
「左様ですか」
「御会いになられますか?」
「ええ」
 貴族の言葉にこくりと頷くイーリアだった。
「私は構いません」
「わかりました。それでは」
「イダマンテ様」
 ここでまた一人入って来た。そうして彼が誰かを呼んだ。するとここで黒く長い髪をたなびかせた黒い目の若者が入って来た。見事な鎧と紅のマントを羽織り女性的な中性の美貌を見せている。一見すると美少女にすら見える。そうした若者がイーリアの前に姿を現わした。
「イダマンテ様」
「まずは外に」
 ここでこの若者イダマンテが声をあげる。
「トロイアの人達を集めてくれ」
「トロイアの者達をですか」
「そうだ」
 貴族の一人に対して応える。
「すぐに。いいな」
「わかりました」
「そしてだ」
 イダマンテはさらに言葉を続ける。
「王宮に準備を整えるように伝えてくれ」
「王宮にですか」
「そうだ。祝う為に」
 また言うイダマンテだった。
「今日というこの素晴らしい日を」
「わかりました。それでは」
「イーリア姫」
 声を聞いた貴族が下がるのを見届けると彼は今度はイーリアに顔を向けた。
「甘い希望の光に私の苦悩は和らいでいます」
「希望の光をですか」
「そうです」
 優しい微笑みと共の言葉だった。
「ギリシアの守護神アテナが怒れる波から我が父を取り戻して下さりここから遠くない海に我が国と父上の艦隊が現われました」
「お父上が」
「そうです」
 優雅な笑みと共の言葉だった。
「それで今あるバーチェが捜しています。父上を」
「そうでしたか」
「ただ」
 ここでイダマンテの顔が曇った。
「どうなのでしょうか。父上は」
「御心配には及ばないかと」
 しかしここでイーリアはイダマンテに対して告げた。
「ギリシアはアテナの下にあり神々の怒りは全てトロイアに落ちました」
「全てですか」
「そうです」
 また暗い顔になるイーリアだったがまだ言う。
「ですからもう」
「姫」
 しかしイダマンテはその彼女に優しい声をかけた。
「悲しみはもう不要です」
「といいますと」
「トロイアの悲運を悲しむことはありません」
「何故ですか?」
「私は誓いましょう」
 今彼は宣言した。
「父やそのほかの寛大な勝者が為すことは」
「ええ」
「寛容です」
 これが彼の宣言だった。
「今その寛容を見せます」
「といいますと」
「もう戦いは終わったのです」
 またこのことをイーリアに告げた。
「ですから貴方達は自由になります」
「自由に」
「虜囚の暮らしは終わります」
 これもまた宣言であった。
「今ここに」
「では私は」
「私達は」
「そうです」
 また言うのだった。
 
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