問題児たちが異世界から来るそうですよ? ~無形物を統べるもの~
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交渉
各コミュニティがゲームの後始末をしているころ、一輝は宮殿の中を歩き回り、マンドラの部屋を探していた。
「誰もいなかったから簡単に入れたのはいいけど・・・どこだ?」
と、まったく場所がわからず、うろうろしていると・・・
ズドガァン!
「・・・・・・」
すぐ右にある部屋から何かを破壊したような音が聞こえてくる。
「・・・たぶんここだな。」
一輝はこの音を立てた犯人がわかり、連鎖してここがマンドラの部屋だと確信する。
「お邪魔しまーす。」
そして、珍しく普通に入る。
ノックなどのことは一切していないが。
「ん?何で一輝がいるんだ?メイドたちからの説教は終わったのか?」
「ちょっとマンドラに用事が二つあってな。今度お詫びはするってことで終わりにしてもらった。まあ、片方はオマエとかぶってると思うが。」
ちなみに、お説教の内容は何も言わずに魔王のところに向かったことである。
「なら、俺から用事を済ませてもいいか?」
「どうぞどうぞ。」
マンドラ、完全放置である。
「で、何が悪いことなんだ?」
十六夜はこの言葉からはじめ、サラマンドラがペストを祭りに招き入れた証拠を並べていく。
マンドラは自分のコミュニィを守ることの覚悟、仲間の意思を語り、最後には自分の命すら差し出してきた。
十六夜も、死んだ連中が承諾済みということもあり、マンドラに一つ、魔王との戦いで何かあったときには真っ先に駆けつけるように命じて、終わりとした。
「んじゃ、俺からはこれで終わりとして、次は一輝だな。」
「どうも。まあ、予想通りひとつはお前と被ってたから、コイツのことだけなんだが。」
一輝はそういいながら、三つの小瓶を取り出す。
これは、ゲーム再開の前に一輝の命令を受けていたものだ。
三つの中にはそれぞれ量の違う液体が入っている。
「さて、これの正体を説明する前に、一つ質問いいか?」
「ああ。なんだ?」
一輝はお言葉に甘えて、一つ、質問をする。
「死んだお仲間の死体ってどうなってる?」
「今回の祭りが完全に終わってから埋葬する予定だが・・・」
「そう。なら間に合うな。」
二人がこいつ、何言ってるんだ?という顔をしているので、一輝は説明を始める。
「まあ、はっきり言っちゃうと、この中身は今回死んだあんたのお仲間×3の魂だ。」
「・・・・!」
マンドラの表情は驚愕へと変わり、十六夜は笑みを浮かべていた。
「使い方は簡単。魂と適合する死体の口にこの中身を流し込むだけでその人は復活します。適合する死体の捜し方も、この瓶を死体に近づけた際に光りだしたらそれ、という簡単な仕様になっております。」
「では、それがあれば・・・」
「ああ。五人中三人はよみがえる。三人になった理由は、空き瓶の持ち合わせが三つしかなかったからだ。」
マンドラの顔に希望の色が見え始める。コミュニティの仲間は大切なのだろう。
「これを渡すにあたって、こちらからの要求はあるが、いいか?」
「構わん。私個人でやれる範囲ならば、すぐにでもやらせてもらう。」
「いや、そんな身構えるほどのことじゃねえよ?」
こいつ、言われたら即座に命でも捨てるんじゃねえか? という顔に、一輝は軽く引いている。
「まあ、たいしたことじゃねえよ。ただ、ジンとサンドラが友達として接することに対して文句を言うなってだけだ。」
「それは・・・」
サンドラの立場などを言おうとしているマンドラに対して、一輝は続ける。
「オマエはバカか?サンドラのことを思うなら、これは当たり前のことだぞ?」
「なにっ?」
「なにっ、じゃねえよ。あいつはまだ十一だぞ。そんな子供がフロアマスターになって、仕事も増えて、周りからの期待が高まって?そんな重圧をくらってるところに友達まで奪われてみろ。いつかつぶれるぞ?」
「それは・・・」
マンドラも、一輝の言葉に納得はしているのだろう。悩み始めている。
「本当にサンドラが成長して欲しいなら、そういったものもないと。まあ、どうなってもいいってんなら、話は別だが?」
「・・・解った。以降あの二人や、サンドラの友好関係について、私は口を出さない。」
「よろしい。まあ、不良とかなら口を出してもいいし、付き合うとかもかまわねえけどな。」
一瞬、マンドラの額に青筋が浮かぶ。シスコンか?
《たぶんそうなんだろ。》
・ ・・こんなことにも口を出すのか?
《いや、あんたと意見が合うってなかなかないな、と。》
そんなことで口を出すな。
「んじゃあ、これは渡しとくよ。」
「ああ。何か、サンドラから御礼の品が渡されるかもしれないから、そのつもりでいてくれ。」
「了解。」
そこで話は終わり、一輝と十六夜は扉から出て行った。
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ところ変わってコミュニティ本拠の回りの林で、一輝は伐採を行っていた。
メルンが肥やしがあれば土壌を復活出来るかもしれないと言っていたので、一輝は木を倒し、子供が二人がかりで運べる大きさまで切っている。
「ま、こんなもんか。」
切りすぎてもいけないのでほどほどで止めて子供達を呼ぶ。
「二人で一つを運ぶように。無理はするなよ?」
「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」
子供達は元気に返事をし、木を運び始めたので、一輝は少し休むことにする。
「ふう・・・なんか、予想以上に色々あったなぁ・・・」
今回のゲームで、一輝は自らのギフトについて、ほぼ全てを理解した。
無形物については、限界のライン、操るものとの距離と威力、代償との関係について、などの力任せにやっていたせいで知らなかったことを知り、陰陽術は進化した。
ちゃっかり、かなりの得をしているのだ。
「ぬらりひょんには感謝だな。」
「わしを呼んだか?」
いつのまにか、一輝の後ろにぬらりひょんがいた。
「どうやって出てきた?」
「わしはおぬしに封印されてはおらんからのう。契約に従い、おぬしの中に住んでおるだけ。ならば、出てこれて当然じゃろう。」
「はぁ・・・まあいいや。この間はありがとう。おかげで全部うまくいった。」
「おぬしが手に入れた力でおぬしがやったことじゃ。わしは何もしとらんよ。それでもお礼が言いたいのなら、おぬしの中の妖怪、全てに言うんじゃな。」
「了解。」
そこで、ぬらりひょんの表情が真剣なものになる。
「して、おぬし。名はどうするのだ?」
「・・・なんのことだ?」
「とぼけるでない。奥義を習得したのだ。《鬼道》を名乗ってもいいのではないか?」
鬼道、鬼の道。この名前に対して、一輝は何も感じないというわけではない。
かつてはこの名を名乗っていたのだから当たり前だ。しかし・・・
「まあ、名乗りたいって気持ちがないわけじゃない。」
「ならば・・・」
「でも、その名前を名乗るのは、俺の独断で決めていいことじゃない。もう一人、相談しないといけないやつがいる。」
「・・・そうか。」
「ああ。それに、ここに召喚されたのは“寺西 一輝”だからな。こっちでいいんだよ。」
「ならば、わしからはなにも言わん。中には名乗れ、と言っている者もいるが、わしが説得しておこう。」
「ああ、よろしく。」
ぬらりひょんは黒い霧となって一輝の中へと戻っていった。
「一輝さーん!」
「重くて運べないから、こっちに来て手伝って!」
音央と鳴央が呼んでいるので、一輝は、
「OK!今行く!」
返事をして、そっちに手伝いに向かう。
後書き
次回から当分のあいだはオリジナル、一輝の過去話とvs魔王をやりたいと思います。
それにあたり、当分のあいだ、十六夜などの原作キャラの出番がないです。
あったとしても、次回の最初に少しあるくらいです。
では、感想、意見、誤字脱字待ってます。
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